1. ニッカンスポーツ・コムホーム
  2. スポーツ
  3. コラム
  4. F1放浪記

2006年05月18日

アグリF1新型SA06投入しても厳しい

<F1:スペインGP>◇公式予選◇13日◇カタルーニャ・サーキット(1周4・627キロ)
 どんなに全力を出し切っても結果はいつも最下位、むしろ完走できればいい方で、いつクルマが壊れてリタイアするか分からない…。あなたはそんな状況で戦い続けることの辛さを想像したことがあるだろうか? 時速300キロを超える、常に危険と背中合わせのコクピットの中で感覚を研ぎ澄ませ、気力と体力の全てを注ぎ込んで得られるものが、自分の能力ではなく与えられた道具と環境によって、常に制限されている状況で、それでも全力を注ぎ込まなければならないとしたら、人はどこにそのエネルギーを求めればいいのだろうか? スーパーアグリF1で文字通りの「奮闘」を続ける佐藤琢磨の姿を見ながら、改めて彼の置かれている厳しい状況と、その中で戦い続けるコトの大変さを考えた。

 そもそも開幕戦に2台のマシンを並べることが最大の関門だった、スーパーアグリF1の成り立ちを考えれば、早い時期にきっちりとレースを完走し、少しずつでもチームが経験を重ねられたことは予想外の健闘だったと言うことができるだろう。だが、最初の関門をクリアし、レース本来の目的である「他者と競う」という段階に入った時点で、琢磨もそしてチーム全体もさらに高い壁に直面せざるを得なかった。言葉は悪いが「間に合わせ」で作った暫定マシンのSA05に他者と争うだけの戦闘力など期待するべくもないし、それはここまでの結果が見事に裏付けている。チームが経験を積み、マシンの特性を理解し、今あるモノから全てのポテンシャルを引き出せたとしても、正直、ミッドランドF1と戦うことすら難しいというのが現実だ。

 「いや、それもデビューが遅れているニューマシンが完成するまでの我慢、SA06がデビューすれば状況は一気に変わるはず!」と期待している人もいるかも知れない。しかし、残酷なようだがハッキリと言おう。仮にニューマシンが投入されても状況は大きく変わらないだろうし、正直なところそのニューマシンをフランスGPに間に合わせることすら、決して簡単ではないだろうと思っている。そもそも「ニューマシン」という言葉をどう解釈するのかにもよるだろうが、このチームの今の規模と予算状態を考えればニューマシンの開発に投じられる力は自ずから限られているし、ろくにテストもできない状態で新車をいきなり実戦投入することになれば、多くのトラブルに見舞われることは避けられない。戦闘力という面でみても最大期待できるのはミッドランドF1との差を詰め、あわよくばその前に出れる程度で、トロ・ロッソと対等に戦うことは至難のワザに違いない。

 もちろん、ホンダが採算を度外視し、マシンの設計開発も含めて全面的な支援を行うというのなら話は少し違うかも知れない。レギュレーション上の問題から簡単ではないはずだが、例えばワークスホンダのデータを部分的に流用し微妙に異なる「コピーマシン」を作るとなれば、もう少し上の成績(といってもやはりトロ・ロッソを上回る程度だろうが)を期待できるかもしれない。だが、肝心のワークスホンダにも多くの課題が残されている状況で、ホンダにそんな余力がある訳がないし、余力が少しでも残っているのなら、それはどう考えてもワークスホンダに注ぎ込むべきだろう。さらに言えば、こうした状況は今年だけでなく来年も大きく変わる事はないだろう。現行のレギュレーションで争われる最後の年である07年は、自動車メーカーが巨大な予算を投じて繰り広げる「最後の決戦」の場となる。規模も予算も比べ物にならないスーパーアグリやミッドランドが彼らと対等に戦うことなど望み得るはずがない。

 ファンの夢を壊すつもりはないが、今年と来年のスーパーアグリに何らかの「結果」を期待することはハッキリ言って現実的ではないだろう。もちろん、レースは「生き物」だし、何が起こるかは分からない。多くの偶然と幸運が重なって思わぬ結果へと結びつく可能性までは僕も否定しようとは思わない。だが、このチームに何かを期待できるようになるのは、早くても08年、新しいレギュレーションが導入され、他チームのマシンを買ったり、1年落ちの中古シャシーを使える「新しいF1」が生まれた時のために、今から参戦権を確保していると考えたほうがいいのだと思う。

 もちろん、琢磨もそんな状況は十分理解したうえで、このチームで走ることを決断したのだし、だからこそこうして、厳しい状況の中で黙々と全力を注ぎ続けているのだろう。もちろん、ここから再びトップチームのシートに舞い戻ることは簡単ではないが、諦めれば全てが終わりだし、今置かれている状況の中で全力を注ぎづ付ける以外に、もう一度「可能性」を切り開く方法が無いことを、彼はハッキリと自覚しているのだと思う。口で言うのは簡単だが、それを実行し続けつためには想像を絶する「意志の力」「精神力」が必要なはずだ。戦い続ける彼の姿を見るたび、その内なる強さに心から敬服させられる。


このニュース・話題の日記を書く

※ニュースの日記を書く方法はこちらで紹介しています。

このニュースには全0件の日記があります。


ソーシャルブックマークへ投稿

0

ソーシャルブックマークとは

  1. ニッカンスポーツ・コムホーム
  2. スポーツ
  3. コラム
  4. F1放浪記