2005年09月14日
涙のポン&Fresh Prince Of NBA Vol.4
ハリケーン・カトリーナの被害は甚大で、いまだ各界で救援対策や寄付活動が続いている。NBAでも例外ではなく、9月11日の日曜日--4年前の悲劇においても忘れられない日--に、被災者を救援するためのチャリティーゲームがヒューストンで行われた。「僕がここへ来た理由は、たった1つしかない。ニューオーリンズの人々を助けるため、それだけだ」と語ったKG(ケビン・ガーネット)をはじめ、コービー・ブライアント、T-Mac(トレーシー・マグレディ)、レブロン・ジェームズら、オールスター級の選手が多数参加し、豪華な顔ぶれとなった。
さかのぼるが、これより前の9月6日、NBAプレーヤーズ・アソシエーション(選手会)が250万ドル(約2億7500万円)の寄付をすることに決め、その記者会見が行われた。我がニックスからは、アラン・ヒューストン、そしてポン吉(ステフォン・マーブリー)が同席。他にはアントニオ・デービス、パット・ギャリティーらも集まり、選手が1人1人、マイクでスピーチをすることになったのだが、この席でなんとポン吉が、オイオイオイと泣き出してしまったのである。
「赤ちゃんたちが、洪水になった川に流されていくのを見たとき…グスッ、俺は子供たちのことを思ったんです…俺の、キッズたち…グスン、俺は、俺の息子を、思わずきつく、抱きしめたんだ。グスングスン、彼は、俺がどうして急にそんなことをしているのかさえ、分かっていない…俺はただ、俺のキッズたちをじっと見つめて…ウッウッウーッ!…」
みたいな感じで、スピーチを続けることができなくなってしまい、プレーヤーズ・アソシエーションのユニオン・ディレクター、ビリー・ハンターに「もういいよ、もういいから」と背を抱きとめられて自分の席に戻してもらわなければならないほど、泣き崩れてしまったのである。
自分の席に戻されてからも、しばらくエッエッエッ、とやっていたポン吉。アントニオ・デービスが、ポンの背中をトントントン、とたたいてやっていた。
もちろん、カトリーナの災害に心を痛めている私だが、こんなポン吉の姿にも思わずやられ、もらい泣きしそうであった。「分かった、分かったよー、ポンちゃん!! もうホント、ポン吉ってなんて愛情深い、カワイイやつなんだろう…グスグス」とは、私の気持ち。
もちろん、<泣いた>からすごく心配している、<泣いてない>からそうでもない、というわけではない。クールな表情で、心から痛みを感じている選手だって、たくさんいるだろう。ただ、今さらながら、ポン吉の人情派度、素直さが、あらためて人間として好ましく映ったのである。
NBAスターだけれども、依然としてすごく<人間くさい>んだなあ、この人、という感じ。我がNYニックスの選手で、日ごろ頻繁に顔を見、取材していることもあって、私はポン吉びいきなのかもしれないが、決して「もう、なんて大げさなヤツだ」とか、否定的には感じなかった。いつものポン吉を見ていれば、彼が本当にそういう人で、心から切なくて泣いてしまっていることが、きっと誰にでも分かると思う。
さて、そんなカトリーナ被害に揺れるアメリカ、NBAであるが、ここらで話をまた、我らがアレン・ザ・プリンスに戻そう(一体、いつになったらアイバーソン編が完結するのか!?)。前回は、パット・クローチの決断の下、アレンちゃんが晴れてシクサーズ入りするところまでだった。さて、その後を、少し--。
アレンのルーキー・シーズンは、センセーショナルだった。チームとしての成績はさほど上がらなかったが、彼の驚異的なクロスオーバーと、恐れを知らぬペネトレイトは、人々に強烈な印象を与えた。だが、プレーが素晴らしい反面、早くも銃の不法所持で捕まり、実際に3年間の保護観察を食らった。このとき一緒につるんでいたのが、アレンのホームタウンからのポッセ(仲間)だったため、クローチは、アレンをバッドボーイ流の行動に巻き込まないよう、彼らに頼んだ。しかし、何人かは、ふん、余計なお世話だと、反抗してきたという。
<Fresh Prince-生意気な王子>アレンの、敵チーム選手に対するトラッシュ・トークもやまなかった。若手だろうが、ベテランだろうが、構わず連発するので、かのマイケル・ジョーダンがある日、彼に注意を与えた。もう少し、皆に敬意を表した方がいいのではないかい、と。ところが、この<神様>のアドバイスに対して、アレンはあの有名なセリフを吐いたのである。
「俺は、誰をもリスペクトしちゃいない」。
そのシーズンのオールスター、ルーキーゲームに出場したアレン王子は、ファンからも大きなブーイングを浴びるほど、既に立派な<悪役>となっていた。
こんなアレンを見て、クローチは考えた。「彼には誰か、適任のコーチを迎えなければならない」。そこで、アレンと同じようにハードなバックグラウンドを持ち、数十年前にはアレンと同じような性格の若者であったラリー・ブラウンに白羽の矢を立てた。
ブラウンは、アレンの母アンと話した。彼女はアレンについて、こういう境遇で育ったこういう子だから、ぜひあなたにコーチしてもらいたい、もしもあなたがアレンのことを絶え間なく叱らなくてはならなくても、それがアレンにとってのベストならば望むところだから、と訴えた。
アレンのバックグラウンド、性格を知ったブラウンは、まるで昔の自分を見るようだ、と思った。自分をコーチしてくれたマクガイアーを、当時のシーンを、思い出していた。ラリー少年は、マクガイアー・コーチにしょっちゅう叱られ、その度にむくれて不機嫌になり、落ち込んだ。叔父たちがラリー少年に諭した。「もしもコーチがキミに何も言わなくなったら、それはキミがもう愛されていないということなんだから」と--。全く同じことを、今度は自分が、あの生意気な少年に対して根気よくやっていかねばならないのだ、ということを、ブラウンは感じた。
そして、その予想は当たった。「I’m yours-俺は、コーチのいうことなら何でも従う」。この言葉がアレンの口から出てくるまで、その後5年の月日を要したのである。
September 14, 2005 10:54 AM
トラックバック
コメント
いつも楽しく拝見させて頂いております。
アメリカ人の方の愛国心には敵いません。
日本でも地震などの災害があったときに、どれだけの人が動いたのでしょうか?芸能人はテレビがこないとそういうことをしないのでしょうか?もっとイベントなどを開き、取り上げるべきではないでしょうか?
投稿者 maxmax : 2005年09月14日 12:42
今回も感動させていただきました(文が…変?)。ニューオーリンズの方はホントに大惨事ですね。1日でも早くの復興を願ってます。
さて、話が変わって今日遂に田臥選手がクリッパーズと契約しましたね!!いきなりだったので嬉しいのが半分、驚きが半分です。「自分と同じ日本人としてNBAの舞台に立つ」ってことには特別な意味を感じます。是非これから1秒でも長く試合に出てもらいたいですね。もうすぐ始まる来シーズンがますます楽しみデス☆
投稿者 Blue : 2005年09月16日 18:23
すごい中身のつまった文章ですね。きっと彼等の生きてきた道がそうさせてるのでしょう。
アイバーソンは、とても素直な人間なんだろうと思います。みなを尊敬する。こんなこと、できるわけないでしょう。どこか卑屈な心を人は皆持ってるものです。それを全面に出して衝突し、戦うことで、自分の小ささを知り、人は大きくなってくものなのでしょう。
おれも頑張んなきゃって素直に思わせてくれるNBAの選手達を紹介してくれてありがとうございます。毎週楽しませてもらっております。
投稿者 hironori : 2005年09月20日 12:48
すごい中身のつまった文章ですね。きっと彼等の生きてきた道がそうさせてるのでしょう。
アイバーソンは、とても素直な人間なんだろうと思います。みなを尊敬する。こんなこと、できるわけないでしょう。どこか卑屈な心を人は皆持ってるものです。それを全面に出して衝突し、戦うことで、自分の小ささを知り、人は大きくなってくものなのでしょう。
おれも頑張んなきゃって素直に思わせてくれるNBAの選手達を紹介してくれてありがとうございます。毎週楽しませてもらっております。
投稿者 hironori : 2005年09月20日 12:49

