2006年10月30日
FW松橋のブレークの裏には:押谷謙爾
これが編成の妙なのだろう。10月29日の鹿島戦。大分のFW松橋が今季10点目を挙げた。4アシスト目も記録した。無得点に終わった昨年オフには唯一、減俸され、J2へ移籍する話もあった。そんなFWが今では日本代表候補にリストアップされるまでになった。遠因、近因、どちらかは分からないが、ブレークの背景には強化部の働きがあると思っている。
今年1月。交渉を重ねた結果、前年18得点のエースFWマグノ・アウベスがG大阪に移籍。さらに主将のFW吉田も横浜へ移った。主力流出の“事件”にファンから厳しい意見もフロントに向けられた。得点力の低下を心配するのは自然だった(僕もその1人)。ただ、当時の「損」が現在の「得」を生んだ。
2人のベテランはクラブに収益を残した。マグノと吉田による移籍金収入は推定で1億6000万円ほど。この資金は補強や残留した選手の年俸増に多大な影響を与えた。さらにレギュラーだった彼らが去ったことは、年俸の高くないFW松橋、MF梅崎ら若手の出場機会が増える一因にもなった。
もちろん選手自身の努力、シャムスカ監督の指導力がある。ただ、一時のファン感情に押し流され、2人で軽く1億5000万円を超えたであろう高額年俸で残留させた場合、今のチーム編成は存在しない。強化費用はひっ迫し、若手の活動場所は今より少なかったはず。技術の高いマグノはゴールを量産し、今と同じような順位を確保していたかもしれない。でも、クラブは将来的に続くもの。若い力が育つ環境でなければ、編成にひずみが生じる。かつてリーグ上位にいたクラブが近年、低迷する理由の1つにはこの「世代交代」の難しさにある。
今年8月。溝畑社長はこう語った。「ほかのクラブから選手を獲得するのではなく、自前で育てることが大分の補強であり、競争に勝つ力になる。松橋、梅崎、高橋が出てきたのはいいこと。ベテランがいたら難しかった」。もちろん、こうも付け加えた。「ただ、若い選手は長丁場を戦う経験がない。そこで苦しむだろうし、逆にそれは財産にもなる」。
長・中・短、あらゆる時間軸でチーム編成を考える強化部の作業は成績でしか判断されない。かつては即効性を狙った補強でつまずき、バッシングも多かった。松橋に似て? 歩みは緩やかかもしれないが、フロント陣もまた成長しているのだ。
October 30, 2006 04:37 PM 投稿者:押谷謙爾
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