2006年03月20日

親子鷹で思い出す監督の涙:押谷謙爾

 大分が昨年王者のG大阪を打ち砕き、今季初勝利を挙げた。歓喜から一夜明けた19日、シャムスカ監督は来日した家族とともにテーマパークに出かけた。イベント出席のためで、長男の姿もあった。

 監督と息子。ドイツW杯ではクロアチア代表のクラニチャール監督と同代表MFのニコが親子鷹として注目を浴びている。監督特権で息子を選出したなど、地元メディアの中には厳しい意見もあるようだ。同国監督の息子と言えば、忘れられない思い出がある。

 4年前、クロアチアを訪れた。W杯出場チームの直前情報を取材するためだった。サッカー協会の事務所で当時のヨジッチ監督に会った。欧州予選のことやコロコロ(チリ)監督時代にトヨタ杯優勝を逃したこと、選手選考の難しさ…。冗舌だった。話題が旧ユーゴスラビアの内戦になったとき、同席した通訳が監督の話に聞き入り、どんどん悲しそうな顔になった。実は監督は内戦で息子を亡くしていた。

 愛息シルビオさんは大学卒業後、クロアチアとスペインの文化研究に打ち込んでいた。独立戦争が本格化すると、手にしたペンが銃に替わるのに時間はかからなかった。「そういう時代だった。みんな避けられなかったんだよ」。辛い過去を一生懸命、涙を流しながら話してくれた。静かな監督室でのインタビュー。通訳と僕も、泣かずにはいられなかった。

 クラニチャール親子の記事を読むと、すぐにヨジッチ監督の涙が脳裏をよぎる。ドイツW杯では日本同様、クロアチアの活躍が楽しみだ。シャムスカ監督が後任の監督候補に挙がるブラジルもいる。F組の戦いは忘れられないものになりそうだ。

【押谷謙爾】

March 20, 2006 12:42 AM 投稿者:押谷謙爾

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