2005年07月26日

長い1日だった:押谷謙爾

 数百人の大分サポーターがゴール裏に居残って「ファンボ、呼べ」とシュプレヒコールを挙げ、監督と社長がスタンドに向かって頭を下げた。リーグ7試合未勝利となった24日の新潟戦後のシーンである。その瞬間を取材して、率直な感想が2つある。

 1つはサポーターが「やっと」反応したかという思い。中断期間を挟んで2カ月半以上勝っていない。うっ憤がたまっていたのだろう。J関係者はこれまで「大分のサポーターは大人しいね」と妙な感心をしていたが、この日は恐らくクラブ史上、最大の抗議行動になった。

 前半の先制点がうそのように、後半は新潟MFファビーニョに好き放題にやられ、3連続失点でノックアウト。「彼にマークをつけようと考えたが、少し遅かった」(皇甫監督)。ほかにも敗因はあるが、ベンチワークの遅れが影響した。この日の内容と結果では、サポーターの怒りに火が点くのも理解できないわけでない(私も最後に勝利原稿を書いたのが、5月8日)。

 もう1つの感想は、皇甫監督がサポーターの前に出向いて頭を下げたことに対する、不思議だ。シーズン中、辞任でも解任でもない今、まるで白旗を揚げたような気がしてならないのだ。大規模な抗議行動にスタッフが右往左往する中、溝畑社長が「オレが守ってやる」と監督を連れ出したのだが、矢面に立たした印象がぬぐえない。

 勝利を求められるプロ監督だし、このまま結果が出ねば、辞任なり、解任なりで、チームを去るだろう。そのときに「ごめんなさい」なら分かるが…。「あんたのやり方が分からない。ビジョンを示せ」「責任を取ることも考えろ」「J2に落ちるのか」。厳しい声を浴びせた彼らも、別に監督のペコリを見たかったわけじゃなかろう。「ファンボ、呼べ」と話し合いを要求したが、負けが発端となってるから、冷静に話し合えるとは思えない。

 「大分が好きだから。今のままじゃだめでしょう」と1人が言った。本当にクラブのことを思い、心配したのだろう。だれもが興奮状態になる試合当日のスタジアムではなく、日を改めたほうが、言いたい意見はしっかり伝わると思うのだが…(ちなみにクラブ側は後日、説明会を開くと約束した)。みなさんはどう思われますか。

 韓国からやって来て、クラブの成長とともに歩んできた、生え抜き監督。あの瞬間、どんな思いで頭を下げたのだろうか。観衆の去ったスタジアムでは首脳陣による緊急ミーティングが行われた。先に部屋から出てきた皇甫監督はこちらの問いかけに、軽く手を挙げるのが精いっぱい。もうグッタリとしていた。

 日付が変わって、溝畑社長、強化部スタッフが重い足取りで姿を現した。「現時点で、解任はない。先を向いて、何が問題で、この中断期に何をすべきがじっくり検討し、行動する」。監督と一緒に批判を受けた社長の背中も小さくなっていた。

 今回の一部サポーターによる意思表示へのプロクラブ「大分トリニータ」としての対応が今後どう影響するのか。はたして転機の日になるのか。答えはシーズン後に出ている。

 取材者としても長い夜だった。

【サッカー担当 押谷謙爾】

July 26, 2005 12:35 AM 投稿者:押谷謙爾

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