2007年11月06日
伝統を破る力と守る力、どちらも大変:前田泰子
対照的な涙だった。
4日に行われた全国高校駅伝福岡県予選。男子は大牟田が22年連続28度目の優勝を決め、女子は北九州市立が初優勝を飾った。北九州市立は全国大会で3度優勝経験のある強豪・筑紫女学園を破って悲願の初優勝を挙げた。選手だけではなく、応援に来ていた保護者や卒業生もみんな、涙でほほを濡らしていた。毎年筑紫女学園に挑み、その壁にはね返されてきた。昨年も優勝候補筆頭とされながら、終盤で逆転を許し2位に甘んじた。悔し涙にくれる北九州市立(当時は戸畑商)の選手を見ながら、「名門」の伝統の底力と、それを追う新興勢力がトップに立つ難しさを改めて思い知らされたものだ。それから1年、悔しさをバネに選手は猛練習をこなしてきたという。「本当に食事が入らないぐらい練習しました。でも去年みたいなみじめな思いはしたくなかったので」と主力選手は話した。
そして、男子優勝の大牟田の赤池健監督(35)も22連覇を決めて選手よりも涙を流した。昨年、前監督から引き継ぐ形で名門大牟田の監督に就任。前監督が築き上げてきた名門校の重みと責任をずっしりとその双肩に感じていたことだろう。恩師でもある前監督の指導と自分のやりたい指導の狭間で苦悩したこともあると思う。1カ月前の駅伝大会では10位と惨敗した。それから赤池監督は自宅に選手を住まわせて選手をまとめようとした。「嫁さんや嫁さんのお母さんに選手の食事の世話もしてもらいました」。さらに県大会では「大牟田駅伝部の5年後、10年後を考えて」とインターハイで結果を出した選手以外の選手を起用して臨んだ。実績のある選手を外しての出場はかなり決断がいることだったと思う。しかも、県大会優勝が義務付けられているような名門校だ。OBでもある赤池監督にはその賭けがどれだけ勇気がいるものか、誰よりもわかっていただろう。「県大会で負けると思っていました。レースが始まれば、自分にできるのは声をかけることだけだった」。沿道で必死に選手に声をかけてきた赤池監督の、謙遜でも余裕でもなく、それが本音だったのだと思う。
伝統を破る力と、伝統を守る力。どちらが大変ということはない。奇しくも赤池監督と北九州市立の荻原知紀監督の口からは同じ言葉が出た。「ここまで励まし、支えてくれた皆さんに感謝したい」。悩み、苦しみ、周囲に励まされて優勝をつかんだこの1年間が凝縮された言葉だ。
集大成は来月の都大路。また、喜びの涙が見られることを期待している。
November 6, 2007 05:26 PM 投稿者:前田泰子
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