2007年10月30日
アビスパはどこに向かっている?:村田義治
アビスパは、どこに向かっているのか?
J1復帰は至上命題だったのだろうか。昨年12月22日。就任会見に臨んだ福岡のリトバルスキー監督は、強い口調で決意を述べた。「福岡は(J2の)チャンピオンになる可能性がある。J1に戻りたい、絶対に戻る」。それから309日。シーズンを1カ月以上残し、福岡の07年の戦いは終戦を迎えた。この10カ月。リトバルスキー監督、いや、福岡というクラブは、何を目指してきたのだろうか。
J1昇格が消滅した10月27日の仙台戦。瀬戸際の一戦を前に、福岡のフロントはリトバルスキー監督を来季続投させる方針を明らかにした。就任会見で公約したJ1昇格の成否に関わらず、だ。正式な続投要請は「これから」(都筑社長)とはいえ、なんとも不思議なタイミングだった。
今年1月中旬まで1年間、福岡の番記者を務め、松田元監督の解任、J2降格、リトバルスキー監督就任のニュースを追った。今シーズン大分の担当に移り、福岡とは違うクラブを取材していく中で、あらためて福岡の課題を痛感した。
「福岡というクラブのビジョンは何なのか」。担当時代も、フロントに何度も問いただしてきたが、いまだもって明確なビジョンが見えない、解らない。昨年12月、神戸との入れ替え戦で敗れた直後、都筑社長は「5年先、10年先、中長期的な視野に立って来季体制を進めたい」とピッチでマイクを握った。その流れに沿ってリトバルスキー監督を招へい。公言していた1年でのJ1復帰を果たせなかった監督に2年目を託すのも、都筑社長の口ぐせである「中長期的」な視点からなんだろうと皮肉った見方をしてしまう。でも、5年、10年先に福岡がどうあるべきか。どういうクラブを目指しているか、都筑社長の口から明確なビジョンが伝わってこない。
今、福岡は分岐点に立っている。J1に定着して戦っていくクラブになるのか。J1、J2は問わず、福岡市民の「俺がクラブ」となって、地元密着のクラブとして生き抜いていくのか。本当にJ1という結果を求めるクラブであるなら、今季早々とJ1昇格を逃した責任を、現場責任者に負わさないのは不思議でならない。社長が責任をとってくれるのか。J1昇格を心より願っていたサポーターは、どこに怒りをぶつければいいのか。
それとも“得意”の中長期的な視点で10年先にJ1に定着するクラブを目指し、1年目の結果には目をつぶるのか。あるいは、J1でもJ2でも成績は二の次で、経営的に10年先にクラブを存続させることが1番の主眼になっているのか。それならば、知名度のあるリトバルスキー監督の続投の理由が、解らないわけではないが…。
2年目を迎えることになるリトバルスキー体制。クラブが2年目に期待することは何なのか。その基準を明確にしてもらいたい。J1昇格なのか。結果を問わず、今年と同じように、攻撃的でサポーターが喜ぶサッカーを期待しているのか。そして2年目が、中長期的視野のどの部分に相当するのか。クラブのビジョンを来シーズン前までに明確にしなければ、福岡は「中長期的な失敗」を続けるだけのクラブになってしまうように思える。
October 30, 2007 10:47 AM 投稿者:村田義治 | トラックバック (3)
2007年10月24日
同じ境遇の人に勇気を与えるため:前田泰子
熊本県営八代野球場で行われた九州大学野球選手権へ取材に行ったとき、パンフレットの1人の選手の名前を見つけた。広田一弥選手。ちょうど昨年の今ごろ、まだ高校生だったときに取材した投手だ。
中3のとき脳こうそくで倒れた広田君が、病気を少しずつ克服しながら次の道を目指す姿を紙面で紹介した。広田君は必死のリハビリで高3の夏の最後の試合でマウンドを踏んだ。昨秋、高校で取材したときにはまだ左手にまひが残っていたが、それでも黙々と投げていた姿が印象的だった。「大学でも野球を続けます」ときっぱり言っていた。残念ながら今回は広田君と再会することはできなかったが、九州の大学野球の強豪・日本文理大に籍を置き、一生懸命頑張っていることだろう。
今年もハンディを克服しながら精いっぱい頑張っていた球児がたくさんいた。左手の先を事故でなくした明豊の小野投手は地方大会でエースとして投げ続けた。甲子園ではサングラスをかけて守備についた楊志館の久原選手が話題になった。打球を当てて右目が失明寸前になった久原君は、それでも野球を諦めなかった。最後に甲子園に立ったのは、頑張った久原君への神様のプレゼントだろう。
甲子園で取材をしていたときには知人から電話が入った。「愛工大名電の柴田投手に頑張ってと伝えてほしい」という内容だった。愛工大名電の柴田投手は国の難病にも指定されているベーチェット病と闘いながら甲子園出場を果たした。「私も同じ病気なので、テレビで応援しています。全国に同じ病気と闘っている人はいっぱいいるから、柴田君にも頑張ってほしい」とその人は続けた。
以前はハンディを背負いながらプレーする選手を取材するのはとても気が引けた。障害をクローズアップすることで、その選手を苦しめはしないか、チームメートもいい顔をしないのではないか、とあれこれ思い悩んだ。「こんな取材は迷惑ではないか」。広田選手の取材のときに思い切って本人に聞いてみた。すると「自分と同じ病気の人が、自分の姿を見て励みにしてくれたらと思っています」という答えが返ってきた。
ハンディのある体を持たなければならなくなった人は全国にたくさんいる。そういう人たちの励みになればとハンディを背負いながら一生懸命頑張る人がいる。それを伝えることで同じ境遇にいる人に勇気を与えることが出来るのではないか。広田君にそれを教えられた。
これからも頑張る姿に込められたメッセージを真摯(しんし)に伝えていかなければと思った。
October 24, 2007 08:07 PM 投稿者:前田泰子 | トラックバック (7)
2007年10月17日
J2にも危機感を:村田義治
九州リーグ所属のV・ファーレン長崎(以下V長崎)が、窮地に立たされた。16日、優勝チームに全国地域リーグ決勝大会出場権が与えられる全国社会人サッカー選手権で準決勝敗退。残り2節(V長崎は残り1試合)となった九州リーグでも現在3位に甘んじ、リーグ2位までに与えられる同出場権獲得に赤信号が点滅した。V長崎が休養日のリーグ21週(10月27日)に首位ホンダロックと2位ニューウェーブ北九州が勝ち点3を取ると、ホンダロックとの最終戦を残して来季のJFL昇格の道が完全に絶たれる。
V長崎は昨年、JFL昇格を目の前にした全国地域リーグ決勝大会で敗退。勝負どころで手痛い敗戦が続く。九州勢ではJFLでも、2位をキープしてきたロッソ熊本の勢いが、ここにきて陰りを見せている。13日に行われたロッソ熊本と佐川急便とのJFL首位決戦を視察したあるJチームの強化担当者は、こう嘆いた。「あまりにも(Jとの)力の差がありすぎる。ロッソはJリーグに上がっても、今のままだとなかなか勝てないんじゃないかな」。
加盟チーム増を狙うJリーグは、今年の昇格条件を4位以上に拡大させた。前半戦に貯金をつくったロッソは“逃げ切り”でJ昇格を勝ち取れる公算は高いが、それでいいのだろうか。クライマックスシリーズやプレーオフでもり上がりを見せる日本、海外のプロ野球とは裏腹に、シーズン終盤を迎えたJリーグの注目度は今イチ。昇格の可能性が消え、降格のないJ2の下位チームの試合は、もはや消化試合でしかない。
リーグ拡大を目指すJだが、実力を伴わないチームをJに引き上げても、大幅なチーム改革を打たない限りは苦戦は必至だ。むやみに数だけ増やしても“消化試合予備軍”が増えるだけのような気がする。昇格を前に苦戦を強いられるJ予備軍の姿からは「(降格のない)Jに昇格さえしてしまえば(その後はどうにかなる)」という安易な思惑があるようにも思える。
昇格を狙うクラブ同様、J2の下位に低迷するクラブからは、なぜか強豪クラブに成長したいという勢いや意欲が感じられない。そんなクラブ同士の対戦が増えても、リーグのレベルアップにならない。J1とJ2、そして地域リーグ勢との実力差が、さらに広がってしまうのではないだろうか。たやすく数だけ増やすことよりも、早くJ2からの降格規定をつくってチームに危機感を持たせること。これこそが、活気のあるJリーグへの発展につながる気がしてならない。
October 17, 2007 03:59 PM 投稿者:村田義治 | トラックバック (0)
2007年10月10日
高校球児、プロでも頑張れ:前田泰子
1通のメールが届いた。台湾でスポーツの取材をしている人からのメールだった。「福岡一の郭選手がドラフトで指名されなくて台湾では残念だという声が上がっています」という内容のメールだった。
夏の大会の取材のとき1人の台湾人のスポーツジャーナリストと出会った。自身のブログで台湾のスポーツ情報を発信しているのだという。日本の高校で頑張っている福岡一の郭恆孝と余聖傑を取材しに来ていたのだった。彼からのメールを見て「日本のプロに行きたくて、僕は日本の高校に来たんです」と言っていた郭の顔が浮かんだ。指名を受けるかもしれないと期待させられながら、指名が来なかった、という事実は10代の高校生にとってはつらい試練だと思う。
福岡工大城東の安部友裕は広島の1巡目指名に喜ぶというよりびっくりしていた。「甲子園で活躍している選手がたくさんいるのに、本当に自分でいいのかな」。ドラフト前から「外れ1位候補」として名前を挙げられていた。ドラフト直前の取材でも「自分でいいのかな。もっとほかにいい人がいるんじゃないかなとか思って不安です」と話していた。「安部は甲子園に出ていないことが心に強くあるんでしょうね」と同校の杉山繁俊監督は言っていた。
もう1人の「アベちゃん」大牟田の阿部和成はロッテの指名を受けて涙を流した。安部と同じく「外れ1位候補」と新聞やテレビで報じられていたが、実際には4巡目指名。なかなか来ない指名の知らせに不安で胸がつぶれそうだったことだろう。ホッとして思わず涙がこぼれた。同じ涙でも希望球団に指名されず涙を流す選手もいる中で、これは幸せな涙だろう。
縁あって学生時代に取材した選手が毎年プロに行っているが、実際に1軍で活躍している選手はその中のひと握りだ。ほんの数年でプロの世界にいられなくなる選手もたくさんいる。逆に、高校時代はそれほど目立つ選手ではなかったが、大学や社会人でメキメキと実力を伸ばし、プロに入って即戦力で活躍する選手もいる。福岡一の台湾人選手もそうやってまた次のステージでプロを目指してほしい。
今年は九州から指名された高校生は4人。ドラフトよりもつらい試練がたくさん待っているだろう。いつか1軍で活躍する選手に成長してほしいと、心から思う。
October 10, 2007 03:23 PM 投稿者:前田泰子 | トラックバック (1)
2007年10月02日
サポーターも腕の見せどころ:村田義治
サポーターとは? そう考えさせられる1日だった。9月30日。大分市営陸上競技場で行われたサテライトリーグ大分-福岡戦。試合後、とても残念な光景を目にした。
「お前ら(大分の選手に)ケガをさせにきたんか!」
メーンスタンド最前列に立った大分サポーターから、ピッチ上でクールダウンを行う福岡イレブンに向かって飛ばされた心無いひと言だった。
サポーターの怒りが頂点に達したのは、試合終了直前のプレーだったのだろう。福岡FW宇野沢が、後方から大分MF梅田と接触。転倒した梅田は起き上がり、そのまま宇野沢に体をぶつけていった。今度は宇野沢がピッチに倒れると、両チームの選手が集まる騒動に。宇野沢は著しく不正なプレー、また梅田が乱暴な行為の名目で両者が退場処分を受けた“乱闘”の余韻が収まりきらない中で試合が終わった直後に、競技場内を凍りつかせる声が響いた。
この試合、開始直後から両チームが激しくせめぎあい、ピリピリしたムードが漂ってきた。さらに、審判の不可解な判定がそのムードに拍車をかけたこともあった。このサポーターも、そんなイライラをどこかにぶつけずにいられなかったのだろう。だが、それを敵のチームとはいえ、90分戦い終えた選手にぶつけることは、レッドカードに相当する行為だ。
時を同じくしてこの日、等々力競技場でもサポーターの行動が話題となった。アジアチャンピオンリーグ(ACL)を控えた川崎Fが、先月23日のリーグ戦で選手を大幅に入れ替えた。それを「サポーターへの裏切り」と批判したJリーグ犬飼専務理事に対して、川崎Fサポーターが「犬飼さん、我々は裏切られていません」との横断幕を掲げ、裏切り発言に抗議した。
「サポーター」とは、他競技でいうところの「ファン」であるが、その言葉には文字どおり、チームを支援するという意味がある。惜しくもチームはACL準々決勝で敗退したが、川崎Fサポーターの行動からは「おらがチーム」への、ゆるぎない愛情を感じた。
心ない言葉で緊迫した試合会場に、別の大分サポーターからエールの声がかかった。「来年はJ1に戻ってこいよ」。その言葉をきっかけに、多くの大分サポーターから、そして福岡サポーターからJ1復帰を目指す福岡イレブンにエールの拍手が巻き起こった。
大分は、J1残留へまだまだ厳しい戦いが続く。福岡も逆転昇格へ、後がない試合が続く。チームが苦しいときだからこそ、今まで以上に一丸となってチームを信じ、応援し、目標達成への大きなパワーを送ることは不可欠なのでないだろうか。両チームのサポーターにとって、これからが本当の「腕」の見せどころだと思う。
October 2, 2007 12:08 AM 投稿者:村田義治 | トラックバック (0)
