2007年05月29日

天使のデビューに課された宿題:佐藤千晶

 クリクリした小動物のような目が、ピッチに立った途端に獲物を狙うハンターに変わった。福岡の「第4の男」がベールを脱いだ。

 27日の札幌戦、後半39分から福岡FWハファエルが出場した。今季ブラジルから新加入した19歳のデビューに、先発していたFWリンコン、MFアレックスの2人の「お兄さん」が一瞬、表情を和らげた。シュートは枠をとらえられず、ロスタイムに失点して4連敗したため、デビューの感想は、いまひとつ。「あのシュートが入っていれば、と思う。時間が短かったし、今でも悔しい」。

 外国人出場枠もあり、シーズン最初から控え組での調整が続いた。27日はベンチ入りも初めてだった。メンバー入りが分かった試合前、母国の家族に電話で報告したが、予感はあった。

 試合の2日前、リトバルスキー監督は主力を中心に個人面談を行った。この時、控え組から呼ばれたMF城後とハファエルの2人とも、札幌戦のベンチに入った。面談では、指揮官から「宿題」が出ていた。

 「監督から、ベンチに入りたかったら1週間に50個日本語を覚えるように言われた」。来日4カ月、実戦で必要に迫られているリンコンと比べると、ハファエルは人前で日本語を口にする機会が少ない。以前からノートに、覚えた日本語のアルファベット表記とポルトガル語の対訳を並べて書いていた。この「貯金」も生かして試合までに50個覚えたそうだ。内容は「スルー」「左」「右」などサッカーに関する用語から「おめでとう」「ありがとう」などのあいさつまで。デビュー前の一夜漬け? は「前、って何て言うんだっけ?」と早川通訳に尋ねるなど、まだまだ反復練習が必要な様子だが、日本語に対するモチベーションも引き上げたようだ。

 外国人選手はもとより、福岡では最年少の87年生まれ組の1人。キリスト教の大天使ラファエルと同じ名前を持ち、まだ少年といってもいい外見だが、さすがブラジリアン。「日本語を覚える早道は、女の子に習うことだと思う」。天使のひとみが、再びハンターに変わった。一緒に住んでいるリンコン同様「カノジョ」という言葉は、もう覚えている。2人ともガールフレンド募集中だ。

May 29, 2007 11:26 PM 投稿者:佐藤千晶 | トラックバック (0)

2007年05月21日

頭をひねる出場停止処分の対象試合:村田義治

 3試合連続の退場地獄から抜け出し、ようやく大分の連敗も止まった。人違いPKから始まった連続退場劇は、19日に対戦した川崎Fに禍を引き渡したかのように、FWジュニーニョが警告2枚で退場。その判定に抗議した関塚監督まで退席処分を受けるというなんとも皮肉な展開となった。

 今回の誤審騒動で大分の関係者も頭をひねったのが、出場停止処分の対象試合の規定。当初、誤審による警告2枚で退場処分を受けたMF藤田が、処分取り消しにならなければ9日のナビスコ杯磐田戦が出場停止になるはずだった。ところが大分関係者には「出場停止は、処分を受けた同大会で消化する」という認識があり、シャムスカ監督にも、そう伝えられていた。

 Jの規約によると、出場停止は、退場処分と累積警告によって対象試合が異なる。退場は同レベルの直近の大会で消化し、累積警告による出場停止は当該大会の直近の試合で消化する、ことが記されている。川崎F戦で通算4枚目の警告を受けた藤田は、23日のナビスコ杯磐田戦ではなく、26日のリーグ横浜FC戦が出場停止。でも、リーグ柏戦の退場で2試合の出場停止を受けたFW松橋優は、川崎F戦に続いて、ナビスコ杯磐田戦も出場停止となる。当該大会と、同レベルの大会…。大分関係者の頭も悩ました規定に、記者も「退場処分による出場停止も、当該大会で消化すれば、ややこしくないのに…」と、頭を抱え込んでしまった。

 それならば、もう1度じっくり再勉強しようとJの規約を読み返すと、オールスターやプレシーズンマッチで退場処分を受けた場合も、リーグ戦での出場停止が科されるという項目まであった。さすがに退場はないだろうと思いながら過去の記録をひも解くと、14試合で警告を受けた選手はわずか3人(97年MFラモス=京都、FWエジウソン=柏、04年DF宮本=G大阪)だけ。過去12試合が、1枚も警告のないクリーンな試合で、当然退場者はなし。オールスターでの退場で出場停止処分を受けた選手は、今のところいない。

 お祭り要素の高いオールスターと真剣勝負の公式戦では大いに違いがあるかもしれないが、警告0枚の試合はリーグ戦でも決して不可能なことではない。選手にはクリーンなプレーを望むとともに、ゲームコントロールを失って警告の乱発でしか事態の収拾を図れない審判団には、よりクールな目を養って欲しいと思う今回の連続退場劇だった。

May 21, 2007 11:48 PM 投稿者:村田義治 | トラックバック (4)

2007年05月14日

39秒で記事1行、日記は1行1分37秒:佐藤千晶

070514-0001.jpg 5月13日、日曜日、晴れ。アビスパのホームゲームの取材へ行きました。

 会場に入るのは、試合開始の2時間から1時間30分前。受付でクラブ広報が作った「報道用配布資料」をもらいます。リーグ戦順位や両チームの選手別成績など、記事を書く上で不可欠のデータが満載です。一般客向けには「マッチデーニュース」があり、福岡の主将MF布部陽功も会場入りの時に、1部取っていました。

 先発メンバーを書き込む日刊スポーツのサッカー用スコアブックは、B5判60ページ。見開き2ページを使って、1試合のメンバーや展開を記録します。開始時間によっては、この間に食事も取ります。アウエー草津戦で食べた「前橋とんとん汁」と串カツ、おいしかったなあ。

 開始30分前、ピッチでウオーミングアップが始まります。双眼鏡で選手全員の様子を確認。その後、スタンドも、ぐるりと見渡します。工夫を凝らしたデザインで各選手を応援する、ゲートフラッグ観察タイムです。20分前からは、スタジアムDJ信川竜太氏の選手紹介。私のお気に入りは「ゴールの陰に、この男あり」という、MF久藤清一の紹介コール。初めて聞いた時「こんなふうに、選手のことが分かる原稿を書きたい」と思い、まだ挑戦中です。福岡ユースには「信川さんに自分の名前を呼んでもらうのが目標」と話す選手もいます。フラッグや紹介コールは、選手の人となりを知るヒントにもなるんです。

070514-0002.jpg ハーフタイムに入り、会社へ電話。デスクという、記事のテーマや行数を決める上司と連絡を取ります。終盤にも電話して、京都に連敗し白星街道ストップのチームもので書くことになり、試合終了と同時に4階の記者席からピッチサイドに下ります。ロッカー室に引き揚げる選手やスタッフの表情を観察するためです。ベンチでは「あーっ」と、悔しそうな叫び声が。スタンドからは「次、勝とう」と温かい励ましや拍手が聞こえました。


 試合後は、アウエーの監督から会見。京都の美濃部監督が会見室に入った時、進行係が席を外していました。「ほったらかし?」。逆転勝ちの余裕か、美濃部監督は開始までジョークでつなぎます。リトバルスキー監督は、感情を面に出さず会見を終えました。

070514-0003.jpg 選手の取材はミックスゾーンという、バスに乗り込む直前のスペースで。福岡の選手は勝っても負けても早足なので、私の目は多分、ヒラメみたいに広がっていると思います。1人を取材しながら左右をチラチラ見て、コメントの必要な別の選手が現れると一礼し、そちらへ移ります。先に話を聞いていた選手に失礼だとは思いますが、約20分しか取材できないので、許してください。

 会見や選手のコメントを、デスクに報告し、メーンの記事は12字×40行、DF宮本亨のJ初ゴール雑観(短い記事)、欠場したFW田中佑昌の情報を添えると原稿量が決定しました。1時間20分で書き上げ、予定になかったMFアレックス選手のコメントや、WEB用の原稿も出し終わった午後6時30分すぎから、この日記を書き始めて今、午後9時31分。推敲(すいこう)が終わったら午後9時58分。遅い! 追い込まれないとスピードが出ない性格なんです。以上「リアル サッカー担当日記 試合編」でした。

May 14, 2007 11:45 AM 投稿者:佐藤千晶 | トラックバック (0)

2007年05月07日

全く同じ「人違い」だった:村田義治

 「サッカー人生初の体験」を、2度も経験してしまった。6日の大分-広島戦。後半34分に起きた「人違いPK事件」だ。試合から一夜明けた7日、Jリーグの規律委員会は、警告の対象者をMF藤田から、本来対象となるべきDF三木に変更。問題の終始を図ったが、この事務的な手続きがどうも腑に落ちない。

 MF藤田が「サッカー人生でこんなことは初めて」という珍事? だが、記者はまったく同じシーンを経験したことがあった。05年6月11日のJ2鳥栖-草津戦。「同点で迎えた試合終盤」で「相手にPKを与えたプレーで、プレーと関係ない場所にいた選手が警告を受ける」。今回の大分とまったく同じ人違いPKだった。

 大分、鳥栖ともに試合後、マッチコミッショナーに対象者の訂正を申し入れたが「Jリーグの、正規の手順があるから」と翌日にDVD(鳥栖はVTR)を添えた申立書(鳥栖は質問状)を提出。Jリーグの規律委員会で審議し、後日、処分の訂正を行った。だが、事実誤認は、試合直後のVTR検証などで一発で誤認と分かるもの。鳥栖のときは、マッチコミッショナーも誤認を認め、試合終了4時間半後に公式記録が1度は訂正されたが、手続きを踏んでいなかったために、その直後に再び差し戻したという経緯があった。1日以上、事実誤認を見て見ぬふりをしていたことになる。

 今回の大分の場合も、試合直後にマッチコミッショナーはうすうす、人違いだと分かっていたという。次戦が出場停止になる、ならないとモヤモヤした気持ちで一夜明けの練習を行った藤田選手の気持ちを、どう考えているのだろうか。

 Jリーグは、つじつまだけ合わせるように累積警告だけ付け替えたが、誤審で残り8分を10人で戦った試合はやり直せない。残り11人で戦っていれば、同点に追いつけたかもしれない。多額なお金が動くトトの結果にも影響が及ぶ可能性もあっただろう。

 高校野球の世界でも、何十年も前に作った学生野球憲章にとらわれ、大きな特待生問題を引き起こした。サッカーも、トトの導入などで取り巻く環境も様変わりしている。ルール、規定を守るのも大事だが、時代とともに変化させる柔軟な視点を関係者にもってほしい。「2度あることは3度ある」といわれるが、こんな人違い誤審は、もう見せられたくない。

May 7, 2007 11:05 PM 投稿者:村田義治 | トラックバック (0)