2006年08月28日

黄色が目立った博多の森:村田義治

 何も、この日じゃなくても…。26日、福岡のホーム博多の森球技場の入場者数は、1万7738人。クラブワーストの10試合未勝利だったチームにとって、何よりも心強い援軍になるはずだった…。

 ところが、スタンドには福岡とは縁がない「黄色」が目立つ。よーく見ると、何やらみんな「黄色いもの」を頭にかぶっていた、黄色い肌に、目や口や、耳が描かれている。「ん、これは見覚えがあるぞ」。そう。まさしくこれは「ポケモンじゃないか」。つい先日、子供と映画館で見た見慣れた笑顔が、スタンドのあちらこちらで浮かんでいた。

 夏休み中のこの日。子供向けのさまざまなイベントが、行われた。選手はピッチの上でハイタッチし、子供たちと触れ合った。だが、その頭には黄色いポケモンのかぶりもの。違う日だったら、何も問題ない好ましいシーンも、この日だけはバツが悪かった。そう。この日の対戦相手は、チームカラーの中に黄色が選ばれている千葉。本来ならアウエー席だけの“敵”が、球技場全体に陣取っていた。あたかも、千葉を応援するかのように…。

 熊本出身で日本代表の千葉FW巻は、クラブのホームページに、こうコメントを載せた。「九州各地から僕のために足を運んでいただき、その声援も届いた」。アウエー千葉の連敗ストップに、一役買ってしまった?格好だ。

 福岡はこの試合に合わせ、チームカラーのネイビーで作った「スティックバルーン」を作成。だが、ナイター開催では、ポケモンのかぶりものの下で、バンバンスティックバルーンを打ち鳴らす子供たちの姿も、沈みがちだった。懸命に応援してくれた小さなサポーターの期待に、今度こそ勝利で応えてほしい。2児の父としても、そう願わざるを得なかった。

August 28, 2006 10:42 PM 投稿者:村田義治 | トラックバック (2)

2006年08月21日

好調大分支える秘密スタッフ:押谷謙爾

 好調のシャムスカ大分を支える秘密スタッフ? が記者席にいる。試合当日、どこのスタジアムにも出没する。A4のレポート用紙にペンを走らせ、戦況を分析する。相手の弱点やこちらの問題点など、勝つための情報を試合中のシャムスカ監督に伝達する。正体はベンチ登録されていない2、3人のコーチである。

 中心メンバーはブラジル時代からシャムスカ監督の仕事仲間で、ジャフェとマルコス、そして監督の実弟、マルセロの3人。会場の高い位置から見た方がピッチ全体を把握しやすく、監督の戦術を熟知する3人が「もう1人のシャムスカ」として戦術を考えるわけだ。退場者を出しながら1-0で勝った広島戦(8月20日)も彼らは記者席にいた。

 ロッカー室に情報を届けたハーフタイムに続き、後半14分にはジャフェが記者席から客席の最前列へ移動して、ベンチ裏にいたマルコスへ指示を出した。マルコス経由で大分の3バックに関するアドバイスがベンチに届けられた。この連係プレーが直接、完封勝ちにつながったとまでは言わないが、勝因の1つに挙げてもいいだろう。

 プロ野球ではベンチ外から試合に関する情報の伝達は禁止されているが、Jリーグのルールにあるのは「ベンチ内での通信機器類の使用は禁止」くらい。Jリーグの広報部も「特にスタンドからの指示は禁止されておらず、度が過ぎない限り問題はない」との説明だった。確かに野球なら1球ずつサインが分かれば、打者は有利だろう。しかし、常にプレーが続くサッカーだと外部からの情報伝達より、戦況を自分で分析し、対応する力の方が大切になる。それを承知の上で少しでも勝利へ近づこうと、大分の分析部隊は努力を続けている。

 広島戦の勝利でシャムスカ体制で最高の6位に浮上した。その陰にはシャムスカの分身たちがいた。【押谷謙爾】

August 21, 2006 06:21 PM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (24)

2006年08月14日

理解できない笛:村田義治

 審判もスケールアップしなきゃ、日本サッカー界も成長しない。そんな思いになった、些細(ささい)な出来事があった。8月5日に鳥栖スタジアムで行われた鳥栖対草津戦。鳥栖FW山口が、1枚目の警告を受けたプレーだった。

 まだ、0-0の前半の序盤だった。タッチラインを割って相手のスローインが宣告されたプレーに、鳥栖FW山口がボールを蹴った。いや、蹴ったというより「気を利かせた」という方が合っている。ボールをちょこんと浮かせ、スローイングを行う位置に立つ副審に“パス”したように見えたボールを、副審がスルーした。その副審は異を唱えることはない出来事だったが、遠くで警告を告げる主審の笛が勝ち誇ったかのように鳴り響いた。

 遅延行為による警告。ルール上、そう判定されたプレーだが、その警告がどうしても無意味のように思えてならない。鳥栖がリードを守ろうと時間稼ぎをした訳ではない。草津もカウンターを仕掛けられる体制でもなかった。「何のための遅延行為なのか」。最後まで理解できなかった。

 この試合、山口は2枚目の警告を受け、途中退場。「ルール上、仕方ないこと」と鳥栖関係者は振り返ったが、その後に決勝ゴールを許し、0-1敗退。1つの警告が、結果的に勝負を分けた格好となった。
 ルールはルール。でも、プレーに直接影響がないところでの、悪意のない些細(ささい)な行為までも、警告にする必要があるのだろうか。そんな、懐の狭いジャッジが、日本サッカー界の成長を阻んでいるようにも思えてならない。「もっとスケールの大きな笛を響かせて」。思わずそう叫んでいた。

August 14, 2006 10:02 PM 投稿者:村田義治 | トラックバック (5)

2006年08月07日

シャムスカマジックと辛い過去:押谷謙爾

 選手の健康管理に気を使うシャムスカ監督らしかった。大分は8月6日、韓国チームとのプレシーズンマッチに快勝した。ただ、FW高松、MF根本ら主力は故障もあって休ませた。理由は「今、無理をさせると長期的にだめになるから」。振り返ると、選手を強行出場させることは少ない。シャムスカ監督が昔、口にした1つの辛い過去の話を思い出した。

 ブラジルのサンカエターノで指揮を執った04年のこと。就任時14位のチームを当時から評判だった敏腕で4位まで浮上させた。優勝争いに食い込み、サポーターも大興奮だった。しかし、その年の10月に惨劇が起きる。サンパウロとの試合中にDFセルジーニョが心臓発作を起こして倒れ、そのまま帰らぬ人となった。ピッチ脇で医師団が心肺蘇生を試みるという、ショッキングなものだった。躍進を支えてきた守備の要が愛するサッカーで死亡するという惨劇…。もちろん試合は中止となった。

 「前から悪かったみたいで…」。シャムスカ監督は多くを語らなかったが、同選手は以前から心臓に問題を抱えていたという。その後、チームが混乱したのは想像に難くない。選手は落ち着きを失い、失点が増え、順位はズルズルと落ちた。ブラジルサッカー連盟からは「クラブの選手管理に問題があった」として、勝ち点24の減点処分を受け、4位から最終的に18位まで転落した。明るい表情と性格、華やかな経歴を持つ指揮官にはこんな過去が存在する。

 今季の大分は「休養も大切なトレーニングの1つ」という監督の考えのもと、休みをしっかり取る。ハートレートモニター(心拍計)を使って選手のコンディション変化に細かく目を光らせる。愛する選手の力を引き出すため、体調管理を徹底している。選手たちも安心してピッチで力を発揮できている。シャムスカマジックと呼ばれる采配の中にはこんな気配りがある。7位と好位につけているのは偶然ではない。

August 7, 2006 10:26 PM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (0)