2006年03月30日

競い合うチーム成績と観客動員数:押谷謙爾

 5季ぶりにJ1復帰した福岡がチームとフロントで、ある競争を行っている。開幕から1カ月。今のレース展開を見てみると、どっちもスタートダッシュに失敗しているようだ。

 今季、チームの現実的な目標はJ1残留。もちろんできる限り順位を上げたいとクラブは願っている。チーム成績の責任を負う松田監督も、全力で取り組んでいる。

 そしてフロント陣も入場者数という成績を追いかけ、奮走している。「1試合平均1万5000人は入るようにしないといかん」という池下専務だが、ホーム博多の森球技場でのリーグ戦2試合の入場者数は2万625人。「ファンの皆さんが待っていた」というJ1復帰にしては、出足が鈍い。同専務が悔しそうな顔で続ける。「監督が『(1万5000人に届かず)2連敗ですよ』って言ってたんだが、ごもっとも。こっちも負けられんと、気合が入った。いい意味で競争、刺激のし合いですよ」。監督のひと言は痛いところを突いたようである。

 監督業は結果が出なければ退任なり、解任なりでチームを去る場合が多い。フロントも同様にしろとは言わないが、自分たちで打ち出した目標に対する責任感、緊張感を持つことは大切だ。「お金がないから、これで我慢して」。クラブの収入が減るとチームにしわ寄せがくることが多い。チームが弱体化すれば、入場、広告収入にも影響がでる。サッカークラブでチームとフロントは大事な両輪。その1つが小さかったり、壊れていると運転に支障が出る。その点から言うと、「松田監督と池下専務の競争」は、アビスパ福岡という車を運転する燃料になると期待している。

 松田監督はサポーターで埋め尽くされる仙台スタジアムを例に出し、こう言っている。「あそこは客席がびっしり埋まって、ここじゃ勝てんなと思うこともありますよ。そういう雰囲気が博多の森にもほしい。サポーターの力で勝つということもある」。実際には仙台スタジアムで負けたことはないが、それだけアウエーチームに脅威となるスタジアムを求めている。

 ところで福岡はナビスコ杯を含めて、開幕から2敗4分け。5年ぶりのJ1勝利がつかめないでいる。入場者数も「未勝利」の状態である。レース終盤、秋には2人そろって、笑顔でいることを願いたい。【押谷謙爾】

March 30, 2006 04:45 PM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (2)

2006年03月20日

親子鷹で思い出す監督の涙:押谷謙爾

 大分が昨年王者のG大阪を打ち砕き、今季初勝利を挙げた。歓喜から一夜明けた19日、シャムスカ監督は来日した家族とともにテーマパークに出かけた。イベント出席のためで、長男の姿もあった。

 監督と息子。ドイツW杯ではクロアチア代表のクラニチャール監督と同代表MFのニコが親子鷹として注目を浴びている。監督特権で息子を選出したなど、地元メディアの中には厳しい意見もあるようだ。同国監督の息子と言えば、忘れられない思い出がある。

 4年前、クロアチアを訪れた。W杯出場チームの直前情報を取材するためだった。サッカー協会の事務所で当時のヨジッチ監督に会った。欧州予選のことやコロコロ(チリ)監督時代にトヨタ杯優勝を逃したこと、選手選考の難しさ…。冗舌だった。話題が旧ユーゴスラビアの内戦になったとき、同席した通訳が監督の話に聞き入り、どんどん悲しそうな顔になった。実は監督は内戦で息子を亡くしていた。

 愛息シルビオさんは大学卒業後、クロアチアとスペインの文化研究に打ち込んでいた。独立戦争が本格化すると、手にしたペンが銃に替わるのに時間はかからなかった。「そういう時代だった。みんな避けられなかったんだよ」。辛い過去を一生懸命、涙を流しながら話してくれた。静かな監督室でのインタビュー。通訳と僕も、泣かずにはいられなかった。

 クラニチャール親子の記事を読むと、すぐにヨジッチ監督の涙が脳裏をよぎる。ドイツW杯では日本同様、クロアチアの活躍が楽しみだ。シャムスカ監督が後任の監督候補に挙がるブラジルもいる。F組の戦いは忘れられないものになりそうだ。

【押谷謙爾】

March 20, 2006 12:42 AM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (0)