2005年07月30日

長髪になっても北斗の変わらぬ姿勢:押谷謙爾

 J2福岡が第3クール開幕戦を白星発進した。30日の湘南戦に快勝して4連勝。3位との勝ち点差「5」は今季最大だ。暑さの厳しい8月6試合の結果次第では後続を引き離せそうだ。

 ワールドユース選手権(オランダ)からチームに戻って5試合目のMF中村北斗(20)はこの日も豊富な運動量で右サイドを上下動していた。特にルーズボールの奪い合いでスタンドを沸かせた。ラインを割りそうなボールを全力で追いかけ、スライディングで奪い取る姿は国見高時代から変わらない。

 高校時代の同期でワールドユースも一緒に戦った筑波大FW平山相太(20)が再びオランダに向かった。フェイエノールトの練習に参加するためだ。出発前の平山から電話を受けた中村は「ずっと前から行くって言ってましたしね。たぶん(入団が)決まるんじゃないですか」と、自分のことのようにうれしそうだった。

 世界各国と戦い、高いレベルを肌で感じ、そこで勝負したい。アスリートとして単純な思いで海を渡った。中村自身もワールドユースのオランダ戦では背番号「7」のオブスアベイエに完膚なきまでに振り切られた。テレビの映像で見るたびにそのすごさが分かる。「予想外の速さだった」。率直すぎる中村の感想が相手の次元の高さを物語っていた。

 ところで海外移籍の夢とかは? 「今は…。それに今はJ2だし、やることがある。海外で生活できそうにないし…」。あまり欲がないというか、やるべきこと=J1昇格という目標を達成しないと気が済まないのだろう。そういえば高校時代から目立たないが、責任感の強い男だった。

 当時U-18日本代表との掛け持ちだったが、サッカー部の寮長を志願した。忙しい中村を思った小嶺総監督が「大変だからやらなくていい」と諭すと「自分がやる」と言うことをきかなかった。入団2年目。丸刈りから長髪になっても、変わらぬ姿勢が頼もしく思えた。

【サッカー担当 押谷謙爾】

July 30, 2005 11:21 PM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (0)

2005年07月26日

長い1日だった:押谷謙爾

 数百人の大分サポーターがゴール裏に居残って「ファンボ、呼べ」とシュプレヒコールを挙げ、監督と社長がスタンドに向かって頭を下げた。リーグ7試合未勝利となった24日の新潟戦後のシーンである。その瞬間を取材して、率直な感想が2つある。

 1つはサポーターが「やっと」反応したかという思い。中断期間を挟んで2カ月半以上勝っていない。うっ憤がたまっていたのだろう。J関係者はこれまで「大分のサポーターは大人しいね」と妙な感心をしていたが、この日は恐らくクラブ史上、最大の抗議行動になった。

 前半の先制点がうそのように、後半は新潟MFファビーニョに好き放題にやられ、3連続失点でノックアウト。「彼にマークをつけようと考えたが、少し遅かった」(皇甫監督)。ほかにも敗因はあるが、ベンチワークの遅れが影響した。この日の内容と結果では、サポーターの怒りに火が点くのも理解できないわけでない(私も最後に勝利原稿を書いたのが、5月8日)。

 もう1つの感想は、皇甫監督がサポーターの前に出向いて頭を下げたことに対する、不思議だ。シーズン中、辞任でも解任でもない今、まるで白旗を揚げたような気がしてならないのだ。大規模な抗議行動にスタッフが右往左往する中、溝畑社長が「オレが守ってやる」と監督を連れ出したのだが、矢面に立たした印象がぬぐえない。

 勝利を求められるプロ監督だし、このまま結果が出ねば、辞任なり、解任なりで、チームを去るだろう。そのときに「ごめんなさい」なら分かるが…。「あんたのやり方が分からない。ビジョンを示せ」「責任を取ることも考えろ」「J2に落ちるのか」。厳しい声を浴びせた彼らも、別に監督のペコリを見たかったわけじゃなかろう。「ファンボ、呼べ」と話し合いを要求したが、負けが発端となってるから、冷静に話し合えるとは思えない。

 「大分が好きだから。今のままじゃだめでしょう」と1人が言った。本当にクラブのことを思い、心配したのだろう。だれもが興奮状態になる試合当日のスタジアムではなく、日を改めたほうが、言いたい意見はしっかり伝わると思うのだが…(ちなみにクラブ側は後日、説明会を開くと約束した)。みなさんはどう思われますか。

 韓国からやって来て、クラブの成長とともに歩んできた、生え抜き監督。あの瞬間、どんな思いで頭を下げたのだろうか。観衆の去ったスタジアムでは首脳陣による緊急ミーティングが行われた。先に部屋から出てきた皇甫監督はこちらの問いかけに、軽く手を挙げるのが精いっぱい。もうグッタリとしていた。

 日付が変わって、溝畑社長、強化部スタッフが重い足取りで姿を現した。「現時点で、解任はない。先を向いて、何が問題で、この中断期に何をすべきがじっくり検討し、行動する」。監督と一緒に批判を受けた社長の背中も小さくなっていた。

 今回の一部サポーターによる意思表示へのプロクラブ「大分トリニータ」としての対応が今後どう影響するのか。はたして転機の日になるのか。答えはシーズン後に出ている。

 取材者としても長い夜だった。

【サッカー担当 押谷謙爾】

July 26, 2005 12:35 AM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (2)

2005年07月14日

オランダでの活躍を願う:押谷謙爾

 J1大分DFパトリックが15日午前、日本を離れる。1年契約を満了して、来季は母国オランダリーグのNACでプレーする。帰国後、チームのドイツ合宿に合流と、休む時間はない。

 前所属のユトレヒト時代からファンを大切にする姿勢は有名だった。「日本に来る前『ラストサムライ』を見て、日本はなんてきれいな国なんだと思っていた。来てみると本当に美しい国だし、人々の心が温かかった」。日本を大好きになると、必死に日本語を勉強した。今ではヒアリングはほぼOKで、ファンとのコミュニケーションに通訳は要らない。練習見学に訪れた子供たちに日本語で話しかけ、1時間以上もサインに応じる。その姿勢を見習った選手もいたのではないだろうか。

 退団に納得できないファンもいるが、いつかは去る時期がくる。「システム変更で彼のプレースタイルとチームスタイルがかみ合わなくなってきた。ただ、いい選手であることは変わらない。興行面、人格面でも優良外国人選手だった。契約更新に関しては、お互い利益のある選択をしよう、最大公約数の選択をしようと話し合ってきた」。契約を更新しなかったことに関して、クラブ側の説明はこんな感じだ。

 いくつかのオファーを受けたパトリックも、大分を優先しつつ自分にとって最適の決断をした。ファンの期待に応えて残留したとしても、この先、出場機会はなかっただろう。新天地での活躍を願うばかりだ。

 ただ、心配な点が1つ。オフがなかったことだ。6月の退団決定後は1カ月間、サテライトチームの一員として契約満了日までプレーを続けた。休養のないまま、8月のオランダリーグ開幕を迎えるのは体力的にかなり厳しそうだ。

 毎夏、カリブ海に浮かぶ小さな島国アルーバで、母国のTV局が企画するビーチバレーサッカー大会でリフレッシュするのが楽しみだった。オランダ代表のカイトとのコンビがもっぱら。ファンニステルローイやコクー、マカーイらと家族ぐるみで息抜きをする。「気温は35度もあるし、足元はビーチ。熱くて、常に動いていないといけないから、足腰にもいいんだ」。自主トレも兼ねたバカンスはお預けになった。

 個人的には取材した外国人選手の中で、人間性にひかれた選手の1人だし、英語を勉強するきっかけももらった。母国でのプレーはチェックするつもりだ。帰国前、最後だからと、パトリックが行きつけのすし屋に連れて行ってくれた。湯飲み茶碗が似合う彼を見てると、やはり寂しい思いになった。

【サッカー担当 押谷謙爾】

July 14, 2005 02:36 PM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (8)

2005年07月06日

私のせいではないと思うが…:村田義治

 一般スポーツ担当として初めて取材現場に出たのは、00年夏だった。当時、J2で下位に低迷する鳥栖の練習に顔を出すと、取材陣が自分1人なんてことはザラ。「スポーツ紙で全国唯一の鳥栖番記者」と、よく冷やかされたものだった。

 リーグ2位で迎えた第15節の甲府戦。約3カ月ぶりの取材に、試合前、松本監督から「珍しいじゃない。今日負けるかもしれない」と、痛烈なカウンターパンチが飛んできた。予想が的中して? 開始7分で2失点。「このままじゃ本当に鳥栖スタジアムに出入り禁止になるよ ! 」。泣き声がピッチまで届いたのか、結果は2点差を追いついての引き分け。首の皮をつなげてくれた選手の変身ぶりに、感謝した。

 毎年のように経営問題で揺れていた昨年まで、主力組と控え組の溝が大きく広がっていた。少ない強化費の中、アマチュアしか経験のない選手もいた。「どうしたって勝てない。強くなれない。試合に出られない」。ベンチに入れない選手のモチベーションの低さが、開幕から試合を重ねるたびに、チーム全体の甘さ、弱さとして広がっていった。

 運営会社が変わった今年、初めてサテライトリーグに参加。チーム内に常に競争意識を持たせた結果、今季はすでに全フィールドプレーヤーがリーグ戦に出場。テレビドラマ、金八先生でいうところの「腐ったみかん」を取り除いたことが、快進撃につながった。

 ここ5試合、勝利から遠ざかっている。筆者が顔を出してから、1度も勝っていないことになる。「そんなに気にしないでください」という、チーム広報の言葉が心に染みる。「腐ったみかんの正体は、5年前から実は自分なのか…」。シーズン折り返しに向かう7月。本当に生まれ変わった姿を示すチームとともに、1人の鳥栖担当も正念場を迎えている。

【村田義治】

July 6, 2005 01:43 PM 投稿者:村田義治 | トラックバック (3)