2005年04月19日
遅咲きの新守護神:押谷謙爾
サッカー担当になって2試合連続で涙を流した選手を見たのは初めてだった。大分が前節清水戦(16日)を1-0で制して、最下位脱出に成功した。ロッカー室で歓喜の抱擁が行われる中、GK江角浩司(26)は191センチの体を少しうつむかせ、真っ赤な目を隠した。「やっとです。長かったけど、遠回りの僕らしいですね」。プロ4年目での初完封、初勝利。遅咲き人生を自認する江角にやっと春が訪れた。
プロ志望だった大体大4年の5月。オーバートレーニング症候群にかかり、体重が10キロ近く減った。体調を整え、7月にJクラブの練習に参加したが、「すぐ疲れた。急性腎炎にもかかり入院した」と、満足なプレーができたのは9月以降。アピール不足もあって入団話は自然と消えた。
だが、プロ入りの夢は捨てず、卒業後も大学の寮に居残った。食品メーカーのサンプリング配りのアルバイトで食いつなぎ、体をつくり直していたころ、大分のコーチから声をかけられ、入団となる。捨てる神があれば、拾う神もいた。
日常の気配りが、試合中のピンチの芽をつむ-。入団後はベテランGK岡中からそんな基本姿勢を学んだ。2年目からナビスコ杯などで出番を与えられたが、過去、出場した6試合(途中出場含む)で15失点。チームにも問題があったとは言え、GKにはショッキングな数字である。だが、その分、成長してきた。
「練習中にね、ゴールのそばのペットボトルやボールがじゃまだと思ったときには、彼が動いて移動させているんですよ。昔はなかった。普段からそんな意識がないと、DFに位置を修正させたり、コーチングができないんですよ。もう、僕が言うことはなくなった」。故障でポジションを奪われ、心中穏やかでないはずの岡中が評価するように、清水戦では組織的なピンチはほぼなし。前々節C大阪戦(13日)後半ロスタイムに逆転され、悔し涙にくれた江角は「無心でした」と高い集中力でチームをまとめた。
サッカーでは難しいとされる、1-0の勝利。苦労の分、重みがあった。自然と涙があふれた。初めて手にする満額の勝利給。「浪人中に親から少し仕送りしてもらったし、稼いで返さないと。ビッグアイの試合にも招待したいです」。新守護神としての地位を確立させたら、島根の実家から両親を呼ぶつもりだ。
【サッカー担当 押谷謙爾】
April 19, 2005 03:15 PM 投稿者:押谷謙爾 | トラックバック (4)
