2006年05月29日

日本-ブラジル、一方を熱烈応援のアラビアンナイト

海島 健(バーレーン大学講師)

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 湾岸諸国で今回W杯に出る国はサウジアラビアのみですが、自国が出場していなくても、この地域でのW杯本大会観戦は非常に盛り上がります。しかも少数のある国が圧倒的な人気を誇っているのですが、どこだと思いますか。

 まず、ダントツでブラジル、次がアルゼンチン。そしてスペインとイタリアです。この4か国を応援する人がほとんどで、ポルトガルとフランスという声をたまに聞くくらいです。W杯での実績が十分あるドイツや、日本などでは比較的人気のあるイングランドやオランダなどは、ほとんど見向きもされないのは面白いところです。

 なぜこういった現象になるのか、当の本人たちに聞いてもあまり自覚的な答えが返ってくることはありません。バーレーン在住のサウジアラビア人は「イングランドやドイツがすごい実力を持っていることはみんな認めているんだけど、サポートしたいという気になぜかならないんだよね」などと言っていました。

 私はこのことを結構、長いこと考えていたのですが、ある時、湾岸から北アフリカにまたがる中東地図を眺めてふと「この人たちはこの4つの国にどことなくアラブの血を感じ取っているのではないか!!」と思ったのです。

 アラブ地図の西の端のほうにモロッコがあり、その上(北)に目をやると欧州とアフリカを隔てるジブラルタル海峡。そこを渡ればもうイベリア半島です。その昔アラブ帝国は800年近くこの地域を支配していたわけですから、血の交わりもあったことでしょう。そして、歴史的にはイベリア半島の子供とも言える南米諸国の中でも特にサッカー強国のブラジル、アルゼンチンにつながっています。

 最近こういった筆者の考えをバーレーン人やカタール人と話してみたのですが、「どうかな~~、なんかひかれるんだよ、ブラジルとスペイン」で、まず終わりですね。感覚的にまとめると、どうせサッカーやるなら、ニコニコ、ニヤニヤしながらやって、しかも強いのがいいってことでしょうか。実際はどうか分かりませんが。

 さて、今回のドイツ大会のTV観戦ですが、実はこの地域、ドイツとは1~2時間の時差(国によって違う)しかなく、たとえば1次リーグの1、2戦目は開幕日を除き毎日3試合ありますが、バーレーンやサウジアラビアの場合、試合の開始時間がそれぞれ午後4時、午後7時、午後10時となっており、夜に強い湾岸人にとっては絶好のスケジュールということになります。ポルトガルで行われたユーロ2004やW杯フランス大会の時もそうでしたが、夜中の0時にゲームが終わってから友達としばらく語り合って家路に着くアラビアンナイトが続くことになるでしょう。

 日本ですと、午後10時、午前1時、午前4時で、3試合目の終わりが早朝の午前6時なので、できるだけライブで見たい人にとって大変なのは言うまでもありません。中東が文字通り“中”東であることを実感するときでもあります。

 あらかじめ喫茶店やバーの予約をしないと席がなくなってしまいそうな対戦カードは、やはり上記4カ国がらみのものと、アラブのサウジ、チュニジア関連ではないでしょうか。したがってH組(アラブ両国とスペイン)の各試合は盛り上がりそうです。アルゼンチンの入った死のC組、そして断然人気ブラジルのF組も当然、注目されます。F組…。そうです。バーレーンなどで日本-ブラジルを見ると、お店の中は私のように観戦している日本人にとっては完全なアウエー状態になります。03年にUAE(アラブ首長国連邦)で行われたWユースでもまさにこのカードがありました。スタジアムにつめかけたUAE人があまりにブラジル寄りで「日本なんかつぶしてしまえ!!」というノリだったので、驚きというより少し腹が立ちましたが、こういう大きな背景があったんですね。なので、1次リーグ3戦目の日本-ブラジルは、去年のコンフェで杯のような「どちらかが脱落する」状況になってほしくないのですが…。

 「おい、日本人、ブラジルとまともにやり合えるって思ってんのか?  ハハハ~~」などといった挑発をバーレーン人から受けることが多くなりました。
W杯はもう目の前なんですね。

※写真は2003年、UAEで行われたワールドユースでの日本-ブラジル戦。日本は1-5で大敗した

May 29, 2006 05:23 PM

2006年05月26日

W杯は23人で戦うわけではない

角澤照治(テレビ朝日アナウンサー)

 いよいよW杯目前、選手たちは決戦の地ドイツへと旅立ちました。少し前の話題になってしまいますが、代表発表の日(15日)に思ったことを書きます。

 思い返せば4年前、失意の中で気丈にマスコミ対応してくれた俊輔選手。その後、欧州で成長した彼だからこそ言える、力強い言葉だと感じました。今回、代表発表の後、くしくも同じ光景が見られました。改めてここに書くまでもなく、選から漏れた久保竜彦選手のことです。「今まで一緒に頑張ってきた仲間だから頑張って欲しい」。まさかの落選の後、しっかり胸の思いを言葉にしてくれた久保選手を、私はただ見守るしかありませんでした。

 日本にとってW杯は3回目。98年はカズさん、北沢さんの落選、02年は中村俊輔選手の落選と、代表発表で数々のドラマがありました。今回も23人の名前が読まれましたが、直後の会見で俊輔選手が発したひと言が印象に残りました。「落選した選手のことを考えれば、一瞬だって気の抜けたプレーをすることはできない」。私はこの言葉にグッと来ました。

 今、日本代表がとても頼もしく思います。俊輔選手は選ばれなかった選手を思い10番を付けてピッチに立ちます。そして選ばれなかった選手も代表を思いやっています。

 極端に言えば、W杯は23人だけで戦うわけではありません。これまで日本代表に名を連ね戦った多くの選手たち、そして代表を目指して戦った全ての選手たちが日本代表を支えています。また、サポーターも同様に、誰もがチケットを持ってスタジアムに入れるわけではありません。多くのサポーターが遠く日本の地から代表にエールを送ります。日本代表は多くの人の熱い思いで支えられています。

 私事で恐縮ですが、6月18日ドイツ・ニュルンベルクで日本-クロアチア戦の実況を担当することになりました。すべての選手の思い、すべてのサポーターの思いを胸に、当日はまっさらな思いで実況をお届けしたいと思います。


May 26, 2006 02:41 PM

2006年05月05日

「信じよう、日本の力」

煙山光紀(ニッポン放送サッカーパーソナリティー)

 W杯開幕まで1カ月余りになりました。少なくとも、僕の周りでは、専門家も、ファンも、日本の1次リーグ突破は相当苦しいという意見が多くなってきたように感じられます。「ブラジル? 無理無理。クロアチア? あのアルゼンチンに勝ったんだぜ。日本が勝てるわけないよ。オーストラリア? メンバー全部海外組で、監督はヒディンクだぜ。勝てないよ」という具合。また、そう言った方がサッカー通だし、日本が勝つと言うのが恥ずかしいというような傾向すらあるような気もします。

 あまのじゃくな僕はと言えば、実は最近、W杯で日本が何かすごいことをやってくれるんじゃないかという予感を感じています。根拠は、ジーコ監督です。僕にとってこの人、「ホント、わかりません。お手上げです」という存在でした。

 “ディフェンダー総とっかえ”に始まり、“サウナで暑熱対策”“最終予選なのに2日前スタメン発表”そして、ついには“スタメン全員とっかえ”と、おそらく、世界のどの監督もやらないようなことを平然とやってしまう。だけど、“サウナで暑熱対策”(笑)以外は、僕の中で「あれ? けっこう、これってありなのかも?」と、段々見方が変わってきました。

 世界のどの監督とも違う“ジーコイズム”が最大限発揮されたのが、昨年のコンフェデ杯のブラジル戦だったのではないでしょうか? それは、世界最強のブラジル相手に、引かずに打ち合いを挑んだこと。今までの日本じゃ、ありえなかった。常識的な監督であれば、守りをしっかり固めてカウンターを考えたと思います。ブラジル相手にああいう戦い方をしてくれたことだけで、興奮したし、大満足だったのに、試合後、ジーコが「ミスジャッジ(加地のゴールのオフサイド)がなければ、われわれが勝っていた」と言ったのにはしびれましたね。

 ジーコはいつも「日本代表の誇りを持って、自分はできるんだという気持ちを持って戦え」と繰り返します。おそらく、もっと自分の力を信じろと言いたいのだと思います。そして、どんな日本人よりも、日本が世界で戦えると信じているのがジーコ監督です。

 「ジーコが、W杯で優勝を狙うと言うなら、きっとその可能性を、力をオレ達の日本は持っているんだ」。
 そう、信じてみませんか? 今、僕は信じています。ドイツで、日本が、世界に、その力を見せつけてくれることを。

May 5, 2006 08:28 AM