2006年07月07日
「少頭数の美学」ある:岡山俊明
函館競馬の取材で当地に長期出張している。福島と京都の大半がフルゲートで行われているのに対して、10頭に満たないレースが少なくない。3週目を終え、1ケタ頭数は福島が72レース中4、京都が3、函館は24を数える。6日間の売り上げ前年比は83%、80%、89%、98%、93%、93%。上回った日は1日もない。JRAの嘆きが聞こえてくる。
函館は海が見える日本で唯一の競馬場。手を伸ばせば馬に届く錯覚に陥るほど、人と馬の距離が近い。昨年滞在した米国のK・デザーモ騎手も気に入った最高の避暑地。入場者は108%、106%、104%、86%、86%、100%と健闘しているのだから、そろわない頭数が、売り上げ不振の要因になっているのは否定できそうもない。
少頭数の競馬は味がある。何てったって、どの馬がどこを走っているのかひと目で分かる。18頭もいると先行した馬と自分の買った馬、人気馬を追いかけるだけで精いっぱい。先週の函館スプリントSを勝った秋山騎手は「少頭数だと乗るチャンスが少なくなるけれど、競馬はしやすいから好きですね。多いとごちゃごちゃするから」と話す。ジョッキーだって、不利を受ける確率が高まる多頭数は決して歓迎していない。
6頭立てながら素晴らしい役者がそろった77年宝塚記念を思い出す。勝ったトウショウボーイは皐月賞と有馬記念を、2着テンポイントは天皇賞(春)を、3着グリーングラスは菊花賞を、4着アイフルは天皇賞(秋)を、6着クライムカイザーはダービーを勝っていた。唯一G1級のタイトルがなかった5着ホクトボーイはその年の秋に天皇賞を制した。出走全馬がG1級の能力をぶつけ合った。最大のライバルに敗れたテンポイントは、やはり8頭立ての少頭数となった有馬記念で、トウショウボーイに雪辱を果たす劇的なストーリーの主役となって77年の幕は下ろされた。競馬で得る感動は、頭数には関係ない。
注目される馬がいれば売り上げは伸びる。2日目5Rの2歳新馬戦が好例。大物の呼び声が高かった単勝1・1倍のコンゴウダイオーに人気が集中して、馬券も売れた。1レースで2億5472万200円は、6日間の1~8レースで最も多かった。
少頭数は必ずしも本命サイドで決まる訳ではない。1ケタ頭数で行われた24レース中、馬単3ケタ配当はたった7レース。的中に対して相応のうまみは十分もたらされる。
少頭数の美学って、あると思う。
函館の独自性を追求するなら、無理に頭数を増やさなくてもいい。発想を転換して、少頭数をセールスポイントにするのも一手。もしも売り上げ増もと欲張るのなら、後半4レースに発売が限定されている3連単を、函館だけ試験的に全レース発売してみてはどうだろう。04年に登場してから短期間で主力馬券に成長した3連単を、出し惜しみする必要はない。
July 7, 2006 11:58 AM
