記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年08月27日

中学部活に新モデル:横田和幸

 サッカー日本代表は来年のドイツ大会で、3大会連続の出場を決めている。Jリーグの誕生で競技人口が増え、選手の質が飛躍的に向上した結果だろう。

 しかし、黄金時代が永遠に続くわけではない。「日本が20XX年W杯本大会出場を逃す」。2010年、14年、18年大会、いや、その先かもしれないが、近い将来、冬の時代が訪れる可能性は十分にある。

 日本の少子化に歯止めがかからない。女性1人の平均出産数は最高だった71年が2・16人で、04年が1・29人。最近は4年連続で過去最低を更新中という。少子化が進めば、サッカーの競技人口や質まで低下するのは必然的だからだ。

 すでに学校体育の現場では、生徒数の減少で、大阪府下の中学では92年から8年間で約900の部活が休部に追い込まれたという。日本サッカー協会への選手登録は04年で約86万人。確実に増加傾向にあるが、未登録者の登録比率が上がっただけという指摘もある。

 02年4月、大阪・吹田市の千里丘中学を舞台に「吹田JFC千里丘」(略称・千里丘FC)という男子中学生のクラブチームが誕生した。同校部員と周辺の他校選手で構成。千里丘中は新潟DF藤井、千葉FW川淵らJリーガーを輩出し、01年の全国大会で準優勝した名門だが、02年は少子化の影響などで部員が十数人に激減した。有能選手を抱えながら休部危機に迫られた。

 千里丘中教諭の吉沢秀樹監督(43)は、同じ悩みを持つ中学が多いとは感じていた。そこで学校の壁を取り除き、各学校関係者や地域の理解と、吹田市サッカー連盟の後押しを受け、新概念の千里丘FCをつくった。

 「基本技術を学ぶ大切な3年間に、何もしなければレベルは下がる。世界に通用するには、この年代の育成が欠かせないと思っていましたから」。

 中学の部活とJクラブのジュニアユースが合体した感覚に近い。ある選手はクラブユースの大会を目指し、試合に出られない選手は中体連の大会に目標を変更する。ハード面を理由に競技と決別する選手を呼び止め、技量向上に有効な場となる。今は約80人の大所帯へと成長した。

 千里丘FCを運営するのは、吉沢監督ら地域の大人たちだ。「吹田フットボールネットワーク」と命名し、この3月には特定非営利活動(NPO)法人の認可を受けた。「学校体育と地域スポーツの融合」を広く認知してもらうのが狙いだった。趣旨に賛同したセルジオ越後氏(日刊スポーツ評論家)が特別顧問に名を連ねた。

 法人化発起人の四國(しこく)光氏(49)宮井教孝氏(42)は時間があれば、校庭内の練習を見守る。「大人がいれば、不法侵入者を防ぐ事件抑止効果もある。この組織が日本のモデルケースになればと思います」。Jリーグが掲げた普及スローガン「百年構想」は、Jクラブだけのものではない。千里丘FCが掲げた理念は、少子化に悩む日本を救う貴重なアシストとなる。

August 27, 2005 12:20 PM