2007年05月16日
この病気にこの名医Part3
【第92回】初の対象治療薬アリムタ
悪性胸膜中皮腫(4)
アスベスト(石綿)が原因の悪性胸膜中皮腫(しゅ)。アスベストに暴露して10年から30年以上の潜伏期の後、発症する。肺の周囲を覆う胸膜にできるがんで、発症すると胸膜が厚くなり、呼吸困難を引き起こして死に至らしめる。
治療は手術、化学療法、放射線療法があり、いわゆる早期がんであれば手術成績は2年生存率68%、5年生存率46%という状態。ところが、化学療法や放射線療法にはいまだに標準的な治療はない。ただ、今年1月、悪性胸膜中皮腫の治療を対象とした初の治療薬が承認、発売され、医師・患者の双方から注目を集めている。
その薬とはペメトレキセド(商品名アリムタ)。04年にはすでにアメリカで承認され、その他の国でも承認されていた。承認に結び付いた第3相の臨床試験(最終の臨床試験)は20カ国448人の患者を対象に行われた。肺がんによく使われる抗がん剤のシスプラチン単独と、シスプラチンとペメトレキセドの2剤併用とのグループで比較したところ「生存率では単独群が9・3カ月、1年生存率38・0%に対し、2剤併用群は12・1カ月、1年生存率が50・3%と、2剤併用群が良い結果だったのです」と、東京医科大学病院(東京都新宿区)呼吸器外科の加藤治文教授は解説する。
奏効率(良くなった率)になると、単独群と2剤併用群の差はもっと広がる。単独群では17%なのに対し、2剤併用群は41%。この差は極めて大きい。「生存率に現れる数字以上に効果は高いと思われます。画期的な薬だと思います」。ただし、良い薬についてまわる副作用の強さは、ペメトレキセドも例外ではない。
好中球数減少(84・2%)、白血球数減少(78・9%)、血小板数減少(36・8%)、ヘモグロビン減少(94・7%)、リンパ球数減少(57・9%)、悪心(94・7%)、食欲不振(84・2%)、嘔吐(おうと=78・9%)、倦怠(けんたい)感(52・6%)、発疹(はっしん=31・6%)などが現れている。「ペメトレキセドの副作用で最も注意しなければならないのがリンパ球が減る、ヘモグロビンが減るなどの骨髄抑制が最も大きい。これを注意しながら治療を進めていくことになります」。
悪性胸膜中皮腫の治療に前進がみられるだけに、さらなる改良が望まれる。
【医療ジャーナリスト松井宏夫】
◆悪性胸膜中皮腫の名医
▼岡山労災病院(岡山市)内科・岸本卓巳副院長
▼広島市民病院(広島市中区)呼吸器外科・片岡和彦部長
▼国立病院機構山陽病院(山口県宇部市)外科・呼吸器外科・岡部和倫医長
▼国立病院機構九州がんセンター(福岡市南区)呼吸器部・一瀬幸人部長
May 16, 2007 10:00 AM
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