健康連載ブログ

2007年05月12日

この病気にこの名医Part3

【第89回】発症するとあっという間に肺圧迫

 悪性胸膜中皮腫(1)

 「キラー・ファイバー」「静かな時限爆弾」と呼ばれ、恐れられているアスベスト。それは、アスベストを吸入すると、アスベスト肺、アスベスト肺がん、悪性中皮腫(しゅ)など、死に至る危険性がある病気に結び付いてしまうからである。それも、発症までに長い潜伏期間がある。短い人では約10年、長い人では30年以上と、まさに「静かな時限爆弾」なのである。

 アスベスト被害が顕在化してきたことで、死亡者数が把握されるようになり、03年には878人が悪性中皮腫で死亡している。「これは世界の問題です。1980年代に学会でイタリアへ行きましたが、アスベストによる悪性中皮腫が大変な問題で、イタリアでも患者さんが1000人、2000人という数に上っていました。帰国してすぐに日本の数を調べましたが、当時、10人くらいだったことを覚えています。発見されていなかっただけだったのです。だから、ここへきて患者さんがどんどん増えてきています」と、悪性中皮腫増加の状況を話すのは、肺がんはもちろん、悪性中皮腫の治療でも知られる東京医科大学病院(東京都新宿区)呼吸器外科の加藤治文教授である。

 アスベストを吸入する可能性のある職業には、造船業、建設業、断熱業、発電所・変電所、自動車整備工、鉄道修理、電車製造、電気製品製造、歯科技工士など多くがあがる。「ご主人がアスベストを使う職場にいて、その作業着を洗っていた奥さんが悪性中皮腫になったケースもあります」。

 問題の悪性中皮腫は1つではない。悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫、悪性心膜中皮腫、精巣鞘膜(しょうまく)中皮腫があり、多いのは前の2つで、ここでは悪性胸膜中皮腫を取り上げる。

 「悪性胸膜中皮腫は肺がんと同様に、がんの一種です。肺がんは肺にできますが、悪性胸膜中皮腫は肺の周囲を覆っている胸膜にできます」。発症までの期間は長いものの、発症するやあっという間に胸膜が異常に厚くなり、肺を圧迫して死に至ってしまう。

 ◆アスベスト 石綿のこと。天然の鉱物繊維で極めて細い。分かりやすいところでは、かつて理科の実験で用いられていた金網、真ん中に白い部分があった。あそこにアスベストが使われていた。アスベストには白石綿、青石綿、茶石綿など6種類がある。

 【医療ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆悪性胸膜中皮腫の名医
 ▼国立がんセンター東病院(千葉県柏市)呼吸器外科・永井完治医長
 ▼東京医科大学病院(東京都新宿区)呼吸器外科・加藤治文教授、坪井正博講師
 ▼癌研有明病院(東京都江東区)呼吸器外科・中川健副院長
 ▼国立がんセンター中央病院(東京都中央区)呼吸器外科・浅村尚生医長
 ▼横須賀共済病院(神奈川県横須賀市)呼吸器外科・諸星隆夫部長

May 12, 2007 10:00 AM

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