2006年12月17日
こちら消化器科です
【第10回】長期の投薬より手術の選択も
逆流性食道炎(4)
逆流性食道炎の増加で、心配されているのが、食道がんとの関係だ。逆流性食道炎の炎症が治まると、炎症で壊れた細胞が再生される。このとき、元の食道の細胞(扁平=へんぺい=上皮細胞)ではなく胃と同じ細胞(円柱上皮細胞)になってしまうことがある。これを「バレット食道」と呼ぶ。東北大学病院総合診療部部長の本郷道夫先生によると「細胞の遺伝子が変異している可能性が大きい」という。
がんも細胞の遺伝子変異が複数重なることで起こる。つまり、バレット食道になると、そこから食道がんになる危険性も大きいのである。ただし、バレット食道から発生するのは食道腺がん。米国では、食道がんの半分は腺がんだが、日本の食道がんは扁平上皮がんが多く、腺がんは数%だそうだ。
逆流性食道炎の増加によって米国のように日本でも腺がんが増加するのだろうか。本郷先生によると「人種的な差もあり、まだ経過をみないと分からない状態」だそうだ。米国では、食道腺がんは圧倒的に白人に多く、日本人のように色素の多い人種はなりにくいのではないかという説もある。
また、食道腺がんの人に胸焼けが多いことは事実だが、仮にバレット食道が増えたとしても、そこから腺がんになる人は1000人から1万人に1人。それほど高い確率ではない。「逆流性食道炎でも、治療して検査を受けていれば心配はない」というのが、本郷先生の結論だ。
逆流性食道炎は、基本的には酸の分泌を抑える薬で治る。一方で、手術も進歩している。最近では腹部にあけた小さな穴から腹腔(ふくくう)鏡を入れて行う噴門形成術も行われている。これは、胃壁を引っ張って食道に巻き付けるように縫い付け、噴門を狭くする手術。「この手術は締め付け方が問題で、締め付けが強過ぎれば、食べ物が通らなくなってしまうし、緩過ぎると手術の意味がありません。ですから、上手な人に手術をしてもらうことが大切です」と本郷先生。ほかにも新しい手術法が検討されている。
逆流性食道炎は薬で治るとはいえ、若い人は30年、40年と長期に薬で症状を抑えなければならない。そういうときに、こうした手術も選択肢になるのではないかと、本郷先生は語っている。
【医療ジャーナリスト祢津加奈子】
◆逆流性食道炎の最新治療 噴門部粘膜縫縮術も現在、その効果が検討されているものの1つ。口から内視鏡を入れて、胃と食道の境目あたりをつまんで縫い、内側にコブを数個作り、食道を狭くする。狭くなり過ぎたらコブを1つほどいて調整できるのもメリット。
December 17, 2006 10:23 AM
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