2006年12月15日
こちら消化器科です
【第8回】ピロリ菌感染減も1つの要因
逆流性食道炎(2)
しょっちゅう胸焼けがして気持ちが悪いという人が、最近増えている。これは、胃から食道に酸が逆流して起こる逆流性食道炎が日本でも増えているからだ。
東北大学病院総合診療部部長の本郷道夫先生によると、原因は高齢者の増加と食生活の変化、そしてピロリ菌感染者の激減にあるらしい。食道と胃の間にあって胃の内容物の逆流を防ぐバルブも筋肉でできている。当然年を取れば、筋力が衰えて緩んでくる。さらに豊かになった食生活も原因になる。「食べ過ぎや脂っこい食事をすれば胸焼けも起こりやすいのです」と本郷先生。
そして、もう1つの原因はヘリコバクターピロリという細菌の感染者が激減していること。ピロリ菌は、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の原因として胃壁から発見された細菌だ。「以前、日本では、高齢になると胃酸の分泌が低下するのは老化現象と考えられていたんです。ところが、ピロリ菌が発見されて、年を取って胃酸の分泌が低下するのは、ピロリ菌によって慢性胃炎が起こり、その結果、胃の粘膜が委縮するせいだと分かったのです」。胃酸の減少は、細菌感染が原因だったのだ。
衛生状態が悪かった戦後世代までは、ピロリ菌の感染率が極めて高く、日本では8~9割の人が感染していた。ところが、今の20代は数%。「1940年から60年の間に、感染者は激減したとみられます」と本郷先生。水道設備の普及が大きなターニングポイントだったといわれる。
栄養状態が良くなり、体格も良くなっているので、昔より胃酸の分泌も増えているはず。そして、ピロリ菌で胃が痛めつけられていないので、年を取っても胃袋は元気に胃酸をどんどんつくりだす。それでも、年を取れば逆流を防ぐバルブの力は衰えるから、胃酸の逆流が起こりやすくなるというわけだ。
ピロリ菌感染者が減ったことで、日本人の胃は丈夫になってきたが、一方で逆流性食道炎を増やす結果になったのである。「実際に、十二指腸潰瘍は若い人でピロリ菌感染者に多いのですが、これが減少して反対に逆流症が増加。87年あたりを境に両者の数が逆転している」という。今の若い人が高齢化していけば、逆流性食道炎はますます増えるとみられている。
【医療ジャーナリスト祢津加奈子】
◆除菌治療 胃・十二指腸潰瘍の治療などで、ピロリ菌を退治すると、1割ぐらいの人が逆流症になるが、食道炎にまでなる人は数%。「それも裂孔(れっこう)ヘルニアや腰が曲がっているなど危険因子のある人なので、一般には心配ない」と本郷先生。
December 15, 2006 08:54 AM
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