健康連載ブログ

2006年12月13日

こちら消化器科です

【第6回】小腸病変にカプセル内視鏡

急性胃粘膜病変(6)

 20年ほど前、内視鏡検査が普及し始めたころのことだ。内視鏡検査をして1週間後、激しい胃の痛みを訴える人が続出したことがある。その原因を突き止めたのが東京女子医大成人医学センター所長の前田淳教授だ。「1週間前の内視鏡検査では異常がなかったのに、調べると胃の出口付近にただれができていたのです。発生までの期間が一定している、症状や内視鏡での所見が同じである、などの理由で、疑われたのは細菌感染でした」。

 実は、その原因がヘリコバクターピロリという細菌だった。今では胃かいようなどの原因として知られているピロリ菌だが、当時はまだその実態もよく分かっていなかった。検査に使われた内視鏡によってピロリ菌が感染し、胃に急性のただれが起きていたのだ。これをきっかけに、徹底して内視鏡の消毒が行われるようになり、今では内視鏡でピロリ菌が感染することはなくなっている。

 また、間もなくカプセル内視鏡も実用化される。これは、使い捨てなので感染の心配がない上、内視鏡のようにオエッとならないのがメリット。内視鏡を口から入れると、舌根が刺激されて嚥下(えんか)反射が起こる。そのためにオエッとなるのが、患者には一番苦しい。しかし、カプセル内視鏡は、カプセルの薬を大きくしたようなもの。飲み下してしまうので、こういう苦しさがない。

 今のところ、研究用に使われているだけだが、前田先生によると、そこから新たな事実が分かってきたという。「非ステロイド系の消炎鎮痛剤を服用して、吐血や下血を起こした患者さんを内視鏡で調べても、胃にも大腸にも異常がない。つまり、出血源の分からないケースがあったのです。ところが、カプセル内視鏡で見たら、小腸にただれやかいようが発生していることが多いことが分かったのです」。

 内視鏡は口から胃に入れるか肛門(こうもん)から大腸に挿入する。よほどでないと、その中間の小腸までは入れなかったのだが、カプセル内視鏡は口から肛門まで消化管を通過しながら写真を撮る。その結果、意外に小腸の病変が多いことが分かってきたのだ。「カプセル内視鏡で、消炎鎮痛剤による消化管粘膜障害といわれていた病気の実態が、小腸を含めて解明されるかも」と前田先生は期待している。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆カプセル内視鏡 長さ26ミリ、直径11ミリでカプセル薬より2~3倍大きい。飲み込んで横になっていると、電池が切れるまで8時間ほどの間に、通過する消化管の写真を5万~6万枚撮り続ける。その後、便の中に排せつされる。

December 13, 2006 11:37 AM

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