2006年12月11日
こちら消化器科です
【第4回】低用量アスピリン出血も
急性胃粘膜病変(4)
風邪薬や痛み止めで胃痛が起きやすいのは、胃壁の防御能力と胃酸という攻撃因子のバランスが崩れるためだ。実は、非ステロイド系の消炎鎮痛剤は「プロスタグランジン」という炎症を起こす物質の働きを抑えることで痛みを止める。ところが、ここに問題がある。プロスタグランジンには多様な働きがあり、炎症を起こして痛みを起こすタイプと胃壁を保護する働きを持つタイプがある。消炎鎮痛剤は、両方のプロスタグランジンの働きを抑えてしまうので、炎症も治まるけれど、胃の防御能力も低下し、胃粘膜が障害されることが多いのだ。
そこで、欧米を中心に炎症を起こすプロスタグランジンの働きだけを抑える消炎鎮痛剤が開発された。これは、夢の鎮痛剤といわれ、東京女子医大成人医学センター所長の前田淳教授によると「アメリカではED(インポテンツ)の治療薬であるバイアグラをしのぐ勢いで売れた」のだそうだ。ところが、その後問題が発覚した。発売後に副作用を調べたところ、胃の障害は確かに少ないけれど、心筋梗塞(こうそく)など心臓血管系の病気が多発することが分かったのだ。そのため、すでに発売中止になった薬もある。特定のプロスタグランジンの働きだけを抑えることによって、血液を凝固させる能力が高まってしまったのが原因とみられている。幸か不幸かこのタイプの鎮痛剤は、日本にはまだ導入されていない。
また、今、専門家の間では低用量アスピリンによる胃粘膜障害が注目されているという。前田先生によると「脳梗塞や心筋梗塞の再発予防によく使われる薬で、服用量が少ないので無防備に使われることが多い」という。ところが、こういう病気は高齢者に多く、高齢者は胃の防御能力も落ちている。そこに、ストレスや飲酒、風邪薬などが重なると、急性の出血性かいようを起こすことがあるのだ。「高齢者の場合、ただれ程度ならともかく、いったん出血を起こすと重症になって薬をやめただけでは治らないことも多い」という。その場合は内視鏡治療で止血できるが、止まらないと命にもかかわってくる。
「出血性かいようで止血できないケースは、ストレスなどに比べて非ステロイド系消炎鎮痛剤、特に低用量アスピリンに多いとされているので、注意が必要です」と前田先生は警告している。
【医療ジャーナリスト祢津加奈子】
◆座薬 鎮痛剤が胃を荒らすのならば、座薬の痛み止めを使えばいいのではないか、と考える人もいるはず。しかし、座薬も体内に吸収されると、血液にのって全身を巡り、プロスタグランジンの作用を抑える。痛みを止める仕組みは同じなので、胃を荒らす作用も変わらない。
December 11, 2006 09:27 AM
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