健康連載ブログ

2006年12月08日

こちら消化器科です

【第1回】アルコールが胃のバリア破壊

急性胃粘膜病変(1)

 忘年会の後、突然みぞおちの辺りが猛烈に痛くなったり、血を吐いた。こんな経験をしたことはないだろうか。

 東京女子医大成人医学センター所長の前田淳教授によると、「こんな時、胃の中を内視鏡でみると、胃の粘膜が真っ赤に充血してむくみ、ただれたり、胃壁がえぐれて出血を起こしていることが多い」のだそうだ。これが、急性胃粘膜病変。冬は年末年始の暴飲暴食や風邪薬、頭痛薬の服用などで急性胃粘膜病変を起こす人が増えるという。

 年末年始は酒量が増える時期。アルコールは胃にとっても大きな負担になる。ネズミの胃に純粋なアルコールを注入して内視鏡でみると、その様子がよく分かる。注入して30分から1時間後、胃の粘膜が充血して真っ赤になり、やがてそこからただれてくるそうだ。「アルコールによって血管が広がり、血液が鬱滞(うったい)するのが原因」と前田先生。血液は流れてこそ新鮮な酸素や栄養を運んでくれるもの。流れがよどむと、質の悪い血液しか供給されなくなってしまうのだ。

 こうなると、胃壁を胃酸の刺激から守る胃壁の防御能力も低下してしまう。ところが、一方でアルコールは、食前酒にも利用されるように、食欲を高進させる働きもある。これは、胃酸の分泌を高めて、胃壁を刺激するからだ。つまり、酒量が増えると、胃壁の防御能力は低下し、逆に胃酸の分泌は高まる。

 その上、アルコールには直接胃壁を障害する作用もある。普通、食物は胃で消化されて小腸で吸収されるが、アルコールだけはその20%ぐらいが胃で吸収される。この時、アルコールが胃の細胞の中に入り込んで浸透圧を変えるのだそうだ。その結果、胃粘膜の表面を覆って保護している粘液の組成が崩れて、バリア機能が破壊されてしまう。

 つまり、アルコールを飲み過ぎると胃壁の防御機構が低下する上、胃壁を保護している粘液も減少する。そこに、胃酸がどんどん分泌されて、胃壁が攻撃される。その結果、胃粘膜が急性の炎症やただれ、時には出血まで起こして激しい胃痛や吐血になるというわけだ。しかし、これもちょっとした注意で防ぐことができる。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆急性胃粘膜病変 胃痛や吐血、下血(便に出血した血液が混じる)などの症状があって、48~72時間以内に内視鏡検査を行うとみられる胃壁の急性病変の総称。急性の胃炎や出血性びらん、急性胃かいようなどがある。

December 8, 2006 09:00 AM

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