2006年12月26日
こちら消化器科です
【第18回】腹痛から48時間以内に動注療法
急性膵炎(5)
急性膵炎(すいえん)の治療は、ここ20年ほどの間に大きな進歩を遂げている。その1つが、国立病院機構仙台医療センター外科医長の武田和憲先生が始めた膵酵素阻害剤の動注療法だ。膵酵素阻害剤は、膵臓の消化酵素の働きを抑えてくれる。軽症から中等の急性膵炎ならば、絶食して十分な輸液をし、膵酵素阻害剤と抗生物質などを点滴で投与する。これでほとんどの人は回復する。
ところが、重症の場合は「膵酵素阻害剤を使っても、死亡率に大差ないのであまり効いていないのではないかといわれていたのです」。そこで、調べてみると、腕の静脈から点滴で入れた膵酵素阻害剤は、排せつが早く、思ったほど膵臓に入っていないことが分かった。そこで、武田先生は足の付け根から管を入れ、膵臓の炎症部に直接膵酵素阻害剤を注入する「動注療法」の研究を始めたのである。「動物実験では、5倍ぐらい膵臓での薬の濃度が高くなり、治り方も全く違うことが分かったのです」。この結果に自信をもって、88年から実際に患者に動注療法を行うようになった。そのおかげで命拾いした人も多い。
Aさん(44=男性)は、腹痛が起きて6時間後には病院を受診したが、重症で呼吸困難を起こし、武田先生のもとに運ばれてきた。すでに膵臓の一部が腐り、かなりの重症だった。そこで直ちに集中治療室で動注療法を開始。「1週間ぐらい人工呼吸器を付け、生死の境をさまよったのですが、4週間後にはきれいに治って社会復帰した」そうだ。
やけ酒をあおって、急性膵炎を発症。治療中にどんどん呼吸機能が低下してショック状態に陥り、搬送されてきた女性もいる。この女性も動注療法を行い、1週間ほどで回復に向かった。
ほかにも、血液をろ過して炎症の原因物質を取り除く血液浄化療法や手術など、重症になるとさまざまな治療が動員される。それでも、治れば元気に元の生活に戻れるのが急性膵炎。その境目になるのは、やはり治療の時期。武田先生の調査では、腹痛が起きてから48時間以内に動注療法を行えば、死亡率は2・6%、3日以内だと8%、4日を過ぎると18%とどんどん高くなる。「とにかく、ひどい腹痛を我慢しないですぐに病院を受診してください」と武田先生は語っている。
【医療ジャーナリスト祢津加奈子】
◆動注療法 保険適応にはなっていないが、急性膵炎の診療ガイドラインでは、重症患者治療のオプションとされ、多くの病院で実施されている。重症患者は消化器や外科の専門医が常駐する高次医療施設で治療を受けるのが基本。
December 26, 2006 09:20 AM
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