健康連載ブログ

2006年11月26日

予防歯科最新情報

【第48回】介護用くるリーナできれいに

 街路樹の並木、坂道、商店街を2台の電動自転車が駆け抜ける。デイパックを背負いペダルをこぐのは、「ふれあい歯科ごとう」(東京都新宿区)の五島朋幸医師と歯科衛生士の佐藤由紀子さん。自転車の前のカゴには歯科の7つ道具とカルテが収められている。

 この日訪問したのは脳梗塞(こうそく)で寝たきりのT子さん(78)のお宅だ。「こんにちは、調子はどうですか?」。五島医師は、ハンドルを握って冷えた自分の手をこすり合わせて温めると、T子さんのほおに触れ、マッサージを始める。首筋、あご、耳の下を順にマッサージして顔の筋肉をほぐしていく。寝たきりで固まっている口の周辺の筋肉がほぐれ、ほおにほんのりと赤みがさす。顔が終わると、医療用手袋をつけ口の中もマッサージする。さらに、くるリーナと呼ばれる介護専用のブラシで口の中を丁寧に掃除していく。

 その後、佐藤さんが凍らせた綿棒で、T子さんののどの奥にふれ、刺激する動作を何回か試みる。「オエッ」とするが、「ゴクッ」と飲み込む反射を起こすことが目的だ。T子さんは、嚥下(えんか)反射という飲み込む機能が低下してしまっている。食べ物は胃に直接チューブで送り込んでいるが、唾液(だえき)を飲み込むことにも支障が出ているという。

 健康な人でも、食べ物や飲み物がうっかり気管のほうに入ってしまうと、とても苦しいものだ。高齢者の場合、この嚥下機能が低下すると誤嚥といって、つばや食べ物が気管から肺に入ってしまう危険性がある。その時に、もしも口の中の衛生状態が悪いと、飲み込んだツバが誤って肺に入り、細菌感染で肺炎を誘発し、死に至るケースさえある。誤嚥は高齢者にとって恐ろしいことなのだ。

 逆に嚥下訓練をすることで、寝たきりだった人が、人工チューブをやめて再び自分の口で食べられるようになることもある。「T子さんがたとえ一口のゼリーでも自分の口で食べられることを目標にしています」と五島医師。歯科医の仕事は、虫歯を治すことだけではなく「その人が生涯にわたって自分の口で物を食べ、人生を楽しめるように口腔(こうくう)内の健康を守るお手伝いをすることです」と語る。

 【ジャーナリスト月崎時央】

 ◆くるリーナ 介護用に開発された専用の口腔清掃ブラシ。入れ歯の人や自分で磨くことが難しい人でも、特殊な形に作られたブラシで口の中の汚れが簡単に落とせる。

November 26, 2006 08:46 AM

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