健康連載ブログ

2006年11月08日

予防歯科最新情報

【第31回】「本当の医療は保険で実現できない」

 T子さん(28)は食事のときに奥歯に痛みを感じて来院した。太田歯科医院(東京都豊島区)の太田裕明医師はレーザー光線を用いた虫歯診断機で検査した後、眼鏡に取り付けられた4・5倍のルーペを使って、1つ1つの歯を丁寧に調べていく。その後、簡単なかみ合わせの検査を行ってから、静かな口調で現在の状況を説明する。「前の歯医者さんでせっかく入れていただいた金属に無理な力がかかっていますね。表面には虫歯が見られないのですが、内部で虫歯が進行しているようです。接着剤が崩れてきているのでしょう」。

 だが、T子さんが今後、太田歯科医院の通院患者となるかは分からない。というのも、太田歯科医院は保険診療での治療をほとんど行わないからだ。通常、初診で予約をとって来院した患者は検査の後、カウンセリングコーナーに案内され「最善の治療」についての説明を受ける。

 太田医師は、従来の日本の歯科治療では50歳以降、多くの高齢者が歯を失ってしまう現実をまず提示する。「歯科医療は実は0・01ミリ単位の繊細なかみ合わせのバランスに手を加える作業です。それにより歯の寿命は劇的に変わります。この部分を専門的に行う医院はごく一部です」。丁寧で正確な治療を行うには1日で治療できる人数は7、8人が限界だと太田医師は考えており、1人の治療にたっぷり1時間をかける。治療方法も材料も技工所も、コストを考えず最善の選択をする。

 「私が本当の歯科医療だと感じる医療は、健康保険では実現できません。日本の保険診療は、欧米に比べて歯の治療にかけられる費用が10分の1程度に抑えられているためです」と自費診療を中心に行う背景を説明する。患者の状態や治療方針についてもパソコン画面や資料を示しながら、価格も含めて1つずつ話していく。

 「患者さんにとって一番大切なのは生涯にわたり歯の喪失を防ぐことです。ただ、自分の歯を守る本当の治療の方法を知らないことと、治療費用、通院距離など今までの常識にとらわれて判断しがちです。車が壊れたら修理に何十万円もかける方が、自分の歯にはもったいないと思われるのは歯科医の説明不足の部分もあります」。最近は太田医師のように自費診療中心で、納得のいく治療を提供したいという歯医者さんも増えている。

 【ジャーナリスト月崎時央】

 ◆自費診療 価格や治療の材料が細かく規定されている保険診療と異なり、医師が自由に決められる。必ず事前の見積もりや治療計画を確認し、契約を交わすことが必要。

November 8, 2006 09:17 AM

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