健康連載ブログ

2006年10月29日

予防歯科最新情報

【第21回】見た目だけ整えても長持ちしない

 都内で広告代理店を経営するHさんは60歳。堂々たる体格に明るい笑顔が印象的だ。だが、Hさんは1年ほど前に入れた前歯の差し歯が気に入らない。形が入れ歯のようにそろいすぎているし、色も黄色っぽい。歯茎のピンクの部分が黒ずんでいるし、でこぼこなのもなんだか格好良くない。立場上、人前で話をすることも多いが、口臭もあるような気がして不安だし、近ごろは以前のように豪快に笑うことにも、抵抗を感じるのだ。

 「前歯を今すぐ作り直してほしい」という希望でこいけ歯科医院(川崎市)を受診したのは3カ月前のことだ。こいけ歯科医院は、予防を中心に丁寧な治療を行うことで評判だが、治療費は保険ではなく自費診療が中心だ。

 「前歯を作り直すのは簡単です。でもせっかくここにいらしたのですから、もっと根本的な治療をしてはどうでしょう」。小池匠医師の提案を、Hさんはすぐには理解できなかった。Hさんは高血圧の薬を飲んでいるため、唾液(だえき)の分泌が少なく虫歯になりやすい。「歯周病も進行しているようです。まずお口の中がどのような状態か検査しましょう」。

 次の回に来ると、検査の後にPMTC(機械的歯面清掃)と呼ばれる歯の清掃を担当の歯科衛生士の女性がしてくれた。柔らかいゴムの器具で歯を磨いてもらううちに、Hさんはうとうとと眠ってしまった。起きてみると、口の中のねばねばがすっかりとれて、歯もつるつるだ。「きれいな前歯を入れるには時間が必要」との説明が、次第に納得できるようになってきた。

 「歯を教えてもらったように磨いています。糸ようじも使っています。だって一生懸命教えてくれて、歯を手入れしてくれる歯科衛生士さんをがっかりさせたくないからね」とHさん。「予防は一見遠回りなように見えるかもしれませんが、見た目だけを整えても、歯は長持ちしないのです。口の中全体のバランスを考え、健康な歯茎を作るために、じっくりと取り組めば、何歳でもきれいな歯や口元が実現できるのです」と小池医師。「いい結果を出すために、焦らずやることにしました」とHさんは笑顔で答えた。

 【ジャーナリスト月崎時央】

 ◆歯周病 歯の周囲の組織に起こる病気。疾患の目安となるのは歯と歯茎の間の歯周ポケットの深さが4ミリ以上とされ、日本人の50代以上の約半数に達するとされている。

October 29, 2006 09:21 AM

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