健康連載ブログ

2006年10月02日

ハイテク医療最前線

【第82回】高周波エネルギーで患部蒸発/聖マリアンナ医大橋本卓雄教授

電磁場メス(1)

 脳腫瘍(しゅよう)と聞くと、助からない病気というイメージがある。手術の成功率も低いはずと思ってしまう。実際にはそんなことはない。脳腫瘍は脳内に腫瘍ができる病気の総称。脳のがんだが、いろいろなタイプがあり、比較的多い神経膠(こう)腫(グリオーマ)と呼ばれる脳腫瘍手術の5年生存率は90%台に達している。

 手術自体が原因で死亡につながることも、現在ではほとんどなくなった。それほど脳外科手術が進歩しているともいえる。電磁場メスは脳腫瘍手術用として新たに日本で開発された手術道具である。高周波エネルギーを利用し、メスの先端部を当てると高熱で患部が蒸発・気化してしまう“スーパー・メス”である。

 開発協力者である聖マリアンナ医科大学脳神経外科の橋本卓雄主任教授は、電磁場メスについて次のように話す。

 「脳腫瘍治療の第1の目標は腫瘍をすべて取り除くことです。完治が望め再発も防げます。その最も効果的な方法が摘出手術ですが、腫瘍ができた場所によっては困難なケースがあります。電磁場メスは従来、手術適用が難しかった脳深部などの腫瘍摘出を可能にしたといえます」。

 一般にがんの摘出手術は、取り残しを避けるため、正常な組織を含めて摘出することがある。胃がんの全摘手術などその代表だ。しかし、脳腫瘍手術はそうはいかない。少しでも正常な部分を傷つけると、深刻な機能障害を起こす可能性が高い。

 「いかに正常な部分を傷つけず、腫瘍を残さず、取り除けるかが、脳外科医の腕ということになります。手技だけでなく、手術用具の開発も昔から熱心に行われてきた歴史があります」と橋本教授は言う。

 脳神経医の父、と呼ばれる米国のハーヴェー・W・クッシング博士(1869~1939)が、電気メスを使って脳腫瘍手術を行ったのは1926年のことだ。物理学者のウイリアム・ボビー博士の協力のもと実施された。

 以来、レーザーメスや超音波メスなどが開発され、電磁場メスにつながることになる。3年前から本格的に導入され、かなり普及している。

 【医学ジャーナリスト小野隆司】

 ◆脳腫瘍の患者数 10万人あたり10人程度。よくある病気とはいえないが、まれな病気でもない。一般に40~50代に多く発症しているが、乳幼児から高齢者まで幅広い年代でみられる病気でもある。肺がん、乳がん、腎臓がんなどからの転移性脳腫瘍もある。

October 2, 2006 11:52 AM

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