2006年10月01日
ハイテク医療最前線
【第81回】血管は基本的なインフラ設備/先端医療センター浅原孝之副所長
血管再生医療(3)
幹細胞の内皮前駆細胞(EPC)を使う血管再生は、他の臓器、組織への幹細胞治療の可能性も大きくする。EPCの発見者で血管再生治療を進めている先端医療センター(神戸市)の浅原孝之副所長は「臓器や組織が再生するには、栄養と酸素を供給する血液が必要です。血管がない場所では再生医療も効果を発揮しないといえます。血管は基本的なインフラ設備です」と話す。
現在、日本を含め世界中で幹細胞による再生医療研究が進行している。先端医療センターでは歯槽骨再生も行われている。あごの骨と歯芽を結ぶ骨で、失われると歯が抜け落ちる。インプラント(人工歯根)も歯槽骨がないと埋め込めない。
歯槽骨再生は、骨髄液の中から間葉系幹細胞と呼ばれる幹細胞を分離・培養し、これをいずれ骨になる骨芽細胞に誘導することで再生する。間葉系幹細胞は、特別な培養をすると、骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化誘導できる。3700万人はいるといわれる歯周病治療として期待が大きい。
角膜移植では、幹細胞が多く含まれている口の中の粘膜(口腔粘膜)から採取した細胞を培養して移植する方法が研究されている。肝臓は再生能力の高い臓器。動物実験では肝幹細胞の移植で肝臓、胆管の再生に成功している。
再生能力が極めて低い神経細胞も、ラット実験では細胞増殖因子の注入で、海馬(記憶をつかさどる部分)の神経細胞が再生することが確認されている。
「血管再生を含め、幹細胞による再生治療は、自分の体が病気を治していることになります。身体への負担も少なく、これほど自然で安全なことはありません。理想的な治療法の1つでしょう」。
現状では再生医療は巨額な治療費がかかる。研究費からねん出して臨床研究を行っている。
「一般的な治療に使われるようになるまでには、国、自治体、企業など多くの協力が必要です。協力を惜しまないような成果を挙げることが、再生医療を実現化する早道になるはず」と浅原副所長は言う。
【医学ジャーナリスト小野隆司】
◆再生医療のELSI 韓国のES細胞研究スキャンダルのように再生医療の研究にはE(Ethical=倫理)L(Legal=法規制)SI(Social Implication=社会的課題)が求められている。ES細胞研究の取り扱いは特に焦点になっている。
October 1, 2006 01:07 PM
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