健康連載ブログ

2006年09月09日

ハイテク医療最前線

【第60回】高強度化と骨再生早める/東京大学鄭雄一助教授

移植用テーラーメード人口骨(3)

 インクジェット方式で作られる人工骨の移植の当面の対象疾患は、頭蓋(ずがい)や顎(がく)顔面部などの荷重のかからない骨の欠損や変形(先天性、外傷性、術後性、腫瘍=しゅよう=性)となっている。

 共同研究チームの一員として人工骨の開発に当たった鄭雄一東京大学助教授(医学部疾患生命工学センター、東大病院ティッシュ・エンジニアリング部)は「荷重がかかる部分ではまだ強度が不十分なため、顔を中心とした骨移植を対象にしています。3月から東大病院で上あごなど3例の人工骨移植を行っています。経過は順調で自分の骨への吸収置換も進んでいます」と話す。

 これから本格的な治験が始まる移植用テーラーメード人工骨だが、第2世代の人工骨開発も進んでいる。その眼目は高強度化と骨誘導物質や血管誘導物質を人工骨に噴射し、骨再生をさらに早める人工骨作り。自らが骨の形成を誘導する能動的な人工骨といえる。

 荷重がかかる部分に使われる人工骨の強度は最大で100Mpa(圧縮強度の単位)が必要だが、今回開発したものは20Mpa。最終的な目標までに達していないが、頭蓋骨などには十分適用できる、という。

 「設計と形成方法などの改良で、より高度な人工骨を作るのは可能です。骨誘導物質と血管誘導物質を組み込んだ人工骨の動物実験を今年度中に行う予定です」。

 荷重部分への対応が可能な移植用テーラーメード人工骨が実現すれば、医療への応用範囲も拡大する。特に期待されるのは高齢化に伴う骨疾患への適用。寝たきりの原因の上位を占める骨粗しょう症による大たい骨骨折や変形性膝関節症治療の大きな福音となる。

 「移植用の人工骨開発のゴールは自分の骨と置き換わっていき、自分の骨そのものになること。実現はそう遠くない段階にきています」。

 【医学ジャーナリスト小野隆司】

 ◆人工骨研究の進展 微小なテトラポット型にした骨の成分を組み合わせる成形方法も鄭助教授は研究中。インクジェット方式ではない作り方が必要だが、きちんとそろった孔(あな)ができ、骨の吸収置換が促進される。

September 9, 2006 09:02 AM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nikkansports.com/mt/mt-tb.cgi/6450