健康連載ブログ

2006年09月08日

ハイテク医療最前線

【第59回】インクジェット方式を応用/東京大学鄭雄一助教授

移植用テーラーメード人口骨(2)

 印刷技術のインクジェット方式から作られる人工骨が、今年から本格的な臨床研究、治験段階を迎えている。04年から有効性と安全性を確認するため13頭のビーグル犬に対し骨移植を行い、その結果をもとに今年1月、東大病院倫理委員会で臨床研究が承認され、今年度末か来年度初めにかけて全国10カ所前後の医療機関でも治験をスタートさせる予定になっている。

 共同チームの一員として開発に当たった鄭雄一東京大学助教授(医学部疾患生命工学センター、東大病院ティッシュ・エンジニアリング部)は「患部に最適な移植用人工骨開発はインクジェット技術がもたらしたものともいえます」と話す。

 パソコンのプリンターに使われるインクジェット方式はインクを微粒子化し、超微細な噴射孔(こう)から吹き付けて印字する。インクの代わりに骨の主成分であるリン酸三カルシウム(α‐TPC)の硬化剤を吹き付けて人工骨を作り出すというものだ。

 「硬化剤とともに吹き付けたものを一層ずつ重ねて立体的な骨を作っていきます。ラピッド・プロトタイプと呼ばれる分野で、電子部品の型作りなど、産業界ではすでに応用されている技術です」。

 具体的な人工骨製造はCT(コンピューター断層撮影)による骨欠損部分の測定(3次元画像)→コンピューター設計ソフト(CAD)を用いた人工骨の外観形状・密度・内部構造の設計→インクジェットによる人工骨形成、という手順になる。

 「通常、骨移植に使われる大きさの人工骨なら1時間30分から2時間ほどで成形できます。形状が患部に合っていますから手術時間も短縮されます。移植後の骨再生を促す内部構造も作れることで治療効果が高いのも特長です」。

 最先端技術を組み合わせ、3年間ほどの研究開発で臨床研究・治験を迎えた人工骨だが、最終的な目標からは3分の1程度の段階だという。さらに改良されれば医療への応用は格段に広がると期待されている。

 【医学ジャーナリスト小野隆司】

 ◆人工骨の歴史 80年代に骨の成分に近い素材が開発され、普及が進んだ。それまではステンレス製やアルミ製が中心だった。現在は原料を焼結させたタイプが使われているが、高強度である半面、形状を自由に作るのが難しい。手術中に削るなどして形を合わせる必要がある。また移植後、自分の骨に吸収置換されない場合も多い。

September 8, 2006 09:52 AM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nikkansports.com/mt/mt-tb.cgi/6441