2006年08月30日
ハイテク医療最前線
【第49回】42・5度の熱でがん細胞消滅/船橋市立医療センター黒崎弘正医師
ハイパーサーミア(1)
ハイパーサーミアを日本語にすると温熱療法。狭義的には“がん温熱治療”を意味する。マイクロ波やラジオ波を利用して腫瘍(しゅよう)部分を42・5~43度に加熱し、がん細胞を殺す治療法である。
日本ハイパーサーミア学会指導医で評議員を務める船橋市立医療センターの黒崎弘正医師(放射線科)は、ハイパーサーミアの現状について次のように話す。
「がん細胞は正常細胞に比べて温まりやすく、熱に弱いという性質があります。これを利用したのがハイパーサーミア。80年代から治療機器の開発が始まり、今に至っています」。
がんが熱に弱いことは古くから知られている。医学の祖、ヒポクラテス(紀元前460~375年)も熱によって、がんが消滅したと記している。がん細胞に限らず42・5度以上になると、正常細胞も死んでしまうが、「正常細胞は血管が拡張して血流が増え、それによって熱を運び去る機能が働きます。ところが、がん細胞内の血管は拡張しないのです。42・5~43度の範囲で加温した際、がん細胞は死にますが、周囲の正常細胞は冷却作用が働くので致死的な温度になりません。ハイパーサーミアの基本的原理となっています」。
がん治療の3大療法は、手術、化学(抗がん薬)、放射線だが、ハイパーサーミアも96年からラジオ波およびマイクロ波を使う局所治療がすべてのがんに対して保険適応となっている。
「理論的にはあらゆるがんに有効ですが、実際は加温しにくい種類のがんもあります。有効性の報告が多いのは、再発乳がん、子宮頸(けい)がん、直腸がん、膀胱(ぼうこう)がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、頸部リンパ節転移などです」。
ハイパーサーミアは副作用がなく、何度でも行えるという長所がある。がんの3大療法は、がんを取り除くことでは最大の効果を発揮するが、周囲の細胞を傷つけるため副作用が伴うのが通常である。
ところが、長所の割にはハイパーサーミアが広がっていないという現実がある。3大療法と比較したハイパーサーミア自体の有効性もあるが、がん治療への考え方の問題ともリンクしている。次回に。
【医学ジャーナリスト小野隆司】
◆ハイパーサーミア機器 平行な2枚の電極で体を挟んで高周波を流すサーモトロン装置が主。全国80施設ほどに備えられている。保険点数は深部加温9000点(9万円)、浅部加温6000点(6万円)。全身ハイパーサーミアは保険適応外の自由診療となっている。
August 30, 2006 10:09 AM
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