2006年07月30日
ハイテク医療最前線
【第19回】日本発信の前立腺がん治療法/東海大八王子病院内田豊昭教授
HIFU療法(1)
ハイテク医療は欧米生まれのものが多いが、日本が発信地となっているものもある。前立腺がんの治療法として注目されている高密度焦点式超音波療法がそれに当たる。英語の頭文字からHIFU(ハイフ)と呼ばれている。
人の耳では聴き取れない周波数の高い音が超音波。光や電波より速度が遅いので反射を利用した距離測定がしやすく、早くから水中通信装置(ソナー)や魚群探知機などに利用されている。医学的応用としてはエコー診断装置が有名。体への害がないことから、腹部や心臓の診断、産科・小児科で広く使われている。
また超音波は高い音圧とパワー密度があるため、エネルギーとしても利用できる。眼鏡店に置いてある眼鏡洗浄器はこの超音波の性質を利用したものだ。
HIFUは強力な超音波が収束したポイント(焦点)で高熱(80~98度)を発生させ、その熱でがん組織を死滅させる装置。3×3×12ミリの範囲が収束ポイントになり、範囲外は高温を発しないため周囲の組織を損傷しない。コンピューター制御により自動的に焦点領域を移動させて患部の治療を行う。
もともとは前立腺肥大症の治療機器として米国のメーカーが開発したものだが、あまり治療成績が良くなかった。そのHIFUを前立腺がんの治療機器として再開発したのが東海大医学部八王子病院泌尿器科の内田豊昭教授。「前立腺肥大症を対象にしたHIFUの治験にも参加しましたが、当時からがんの治療にも有効なはずと考えていました」と話す。
前立腺がんの治療法は摘出手術、ホルモン療法、放射線療法など選択肢が広い。ただいずれも治療後のQOL(生活の質)を低下させる問題がある。HIFUが注目される理由の1つは、QOL確保の点で大幅なメリットがあることだ。
メーカーとの協力で機器の改良に取り組んだ内田教授がHIFUによる前立腺がん治療を始めたのが99年。「最初の3年間は学会などで発表しても、そんな療法で治るわけがないという反応が多かった」という。
その後、全国規模の治験も始まり現在、世界中が関心を寄せる最新療法となっている。HIFU治療の実際は次回で。
【医学ジャーナリスト小野隆司】
◆タイタニック号と超音波利用 超音波利用のきっかけとなったのが氷山に衝突して沈没したタイタニック号事件(1912年)。探知機利用の研究が進み、真空管の発明もあり、1919年にソナーや測探機が実用化された。伝わる媒質の性質で伝ぱ速度の変化が大きいことが応用範囲の広さにつながっている。
July 30, 2006 08:55 AM
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