健康連載ブログ

2006年07月20日

ハイテク医療最前線

【第9回】形状記憶合金利用の人工括約筋/東北大加齢医学研究所山家智之教授

人工臓器(3)

 人工臓器開発は患者のQOL(生活の質)向上や使いやすさ、負担の少ないことも重要なテーマになっている。形状記憶合金とエネルギー伝達システムを組み合わせた人工括約筋を開発した東北大学加齢医学研究所の山家(やんべ)智之教授は次のように話す。

 「埋め込み型の補助人工心臓は実用化されていますがサイズが大きく、日本人にはもっと小型のものを開発する必要があります。大腸がん手術では人工肛門(こうもん)を作りますが、自分で排便をコントロールできません。それが可能ならQOLはかなり違うはずです」。

 山家教授が中心となって開発された人工括約筋はコントロールできるように開発されたもの。形状記憶合金は熱を加えると変形前の形に戻る金属。投票用紙に使われるほど普及している。加える熱をコントロールできれば形も任意に変えられる。「工学部と共同で経皮エネルギー伝達システムが開発できました。コイルを利用して外部からエネルギーや信号を送る仕組みです。例えばトイレにこの装置をつけておけば便座に座っただけで人工括約筋が開いて排便が可能になります。便座から離れれば人工括約筋は閉まります」。

 欧米では人工括約筋の一種として尿道バルブが開発され、高度医療として実用化されているが、形状記憶合金を利用した人工括約筋は体への負担を軽減する面でも評価が高い。東北大学では完全埋め込み型人工肛門括約筋の実用化のため治験申請基準の検討、手術法の確立、製品化のための設計・開発に取り組んでいる。

 人工括約筋の応用では人工食道の開発も話題になっている。人工筋肉による蠕(ぜん)動運動を再現する多機能消化管ステント(管)と呼ぶもの。山家教授と共同開発グループは特許申請をしている。「食道がんの発見が遅れ切除手術ができない患者さんは食道内部が腫瘍(しゅよう)のため狭くなり食物を飲み込めません。そこに消化管ステントを入れれば食事も可能になります。管の内部はゲル状の物質をコーティングして食物が通りやすくなっています」。ステントは発熱機能もあるためハイパーサーミア療法(温熱療法)でのがん進行の抑制もできる。こちらも実用化を目指す体制が取られている。

 人工臓器の究極の目標はいろいろありそうだが「どの臓器も一刻も早い開発が求められているのは確かでしょう」。

 【医学ジャーナリスト小野隆司】

 ◆人工心筋 弱った心臓の働きを補う。形状記憶合金を用いた板(長さ約8センチ、幅1センチ)を心臓に張り付け、心臓マッサージをするように心臓の収縮を助ける。人工心臓と比べ大幅に小型軽量化できる。山家教授の加齢研究所と流体科学研究所(円山重直教授)の医学工学連携グループが開発。5~6年後をめどに臨床応用を目指す。

July 20, 2006 09:19 AM

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