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2006年06月30日

2006年06月30日

【第169回】せきの時間帯で症状判別/川鉄千葉病院大森繁成元部長

風邪症候群(下)

 風邪は「風邪症候群」が正式名称。だが「風邪は万病のもと」といわれるように油断は禁物。あとで重病と分かった患者の多くが「風邪だと思っていたのに…」。悔しい言葉がついて出る。鼻腔(びくう)から咽頭(いんとう)までの上気道炎を起こして受診する患者に対し、診察は「問診」からスタート。風邪と思っても、その半分は別の病気ということが統計的に分かっているからである。

 ◆問診 「普通感冒(インフルエンザを別にする)の4分の1は2週間程度持続します。3週間を目安に、それ以上続く場合はほかの慢性疾患を疑います」というのは、呼吸器疾患を得意とする川鉄千葉病院内科の大森繁成元部長(8月上旬から千葉市花見川区の大森ファミリークリニック院長)。せきの症状だけを診ても、1日の中で病気によって大きな違いがある。「真夜中にせきが出るのは心不全に多く、早朝の場合はぜんそくが疑われます。起床時は副鼻腔炎(蓄膿症)。眠っていたときにたまった膿(うみ)が痰(たん)として出てきます」。

 また、どのようなことでせきの状態が悪化してしまうか。これも患者から様子を聞く。「冷気や運動でせきがよりひどくなるときはぜんそくが疑われます。食事をした後や前屈をしたときであれば逆流性食道炎も疑われます」。せきに伴う症状として、胸焼け、鼻汁、労作時呼吸困難、体重減少、血痰なども出ていることがある。「胸焼けは逆流性食道炎、鼻汁は後鼻漏(こうびろう)。労作時呼吸困難は心不全、体重減少・血痰は悪性腫瘍(しゅよう)も疑うことになります」。

 ◆診察所見 バイタルサインとして38度5分以上の発熱があると、季節的にインフルエンザのシーズンであれば、当然インフルエンザが疑われる。「お子さんならば溶連菌も疑います」。さらに、脈拍数1分間に100回以上、呼吸数が1分間に24回以上は肺炎が疑われる。このほか、咽頭の状態、頚部(けいぶ)リンパ節の腫れ具合、胸部聴診などから、普通感冒以外の肺炎などが疑われると「胸部エックス線検査」が行われる。「急性のせきで受診された患者さんの97%は胸部エックス線に異常はなく、約70%が急性気管支炎と診断されています」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆風邪症候群の名医
 ▼中田クリニック(東京都千代田区)中田紘一郎院長
 ▼杏林大学病院(東京都三鷹市)第一内科・後藤元教授
 ▼桜みちクリニック(神奈川県小田原市)永武毅院長
 ▼奈良県立医科大学付属病院(奈良県橿原市)感染症センター・三笠桂一教授

June 30, 2006 08:59 AM | トラックバック (0)

2006年06月29日

2006年06月29日

【第168回】万病のもと 自己判断危険/川鉄千葉病院大森繁成元部長

風邪症候群(上)

 「たかが風邪、されど風邪」-誰もがかかる風邪だが、インフルエンザで命を落とす人もいるし、風邪をこじらせ、肺炎で命を落とす人もいる。

 「よく言われることですが、まさしく『風邪は万病のもと』なのです。風邪は『風邪症候群』が正式名称で、鼻から咽頭(いんとう)までの上気道に急性上気道炎を起こす病気をいいます。もちろん、その90%以上がウイルスに感染して起こります」と言うのは、川鉄千葉病院内科の大森繁成元部長(8月上旬より千葉市花見川区の大森ファミリークリニック院長)。

 風邪を引き起こすウイルスはライノウイルス、アデノウイルスなどで200種類以上あり、インフルエンザもその1つだが、症状も感染力もだいぶ違いのあることからインフルエンザは特別に扱っている。

 「上気道炎の症状で受診した患者さんは疾患別で分類されています。『総合臨床1989』によると、せき、くしゃみ、鼻閉(鼻詰まり)、鼻汁、咽喉(いんこう)の症状で受診した患者さんのうち、50・7%が『風邪症候群』、残り半分は風邪と思っても風邪ではなく、なかなか治らなくてドクターショッピングをしてしまうことにもつながります」。

 それは、31・4%が「呼吸器感染症」、6・4%が「その他の感染症」、11・4%が「不明」である。「だから、呼吸器内科医はすぐに風邪と考えず、数多くの疾患を疑い、そして治療していくのが大事です。問診、つまり患者さんの訴えをよく聞けば、実は患者さん自らが病気を教えてくれているのです」。

 上気道炎症状を起こす疾患には風邪をはじめとして、咽頭炎、溶連菌感染症、気管支炎、副鼻腔(びくう)炎、アレルギー性鼻炎、後鼻漏、気管支ぜんそく、逆流性食道炎、うつ病など。上気道炎症状を起こす見逃せない疾患としては、肺がん、甲状腺がん、肺炎、肺結核、心不全、麻疹(ましん)、インフルエンザ、百日ぜきなど。緊急性の高い疾患としては急性喉頭蓋(ずがい)炎、無顆粒(かりゅう)球症、免疫不全など-。「基本的には、問診と診察でほぼ絞り込み、より早く対応するのが大事です」。

 患者側には、風邪とよく似た症状を出す病気は多いので、自己判断は危険、というアドバイスになっている。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆風邪症候群の名医
 ▼東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)遺伝子・呼吸器内科・渡辺彰助教授
 ▼大森ファミリークリニック(千葉市花見川区=8月上旬開院予定)大森繁成院長
 ▼信楽園病院(新潟市)呼吸器内科・青木信樹部長

June 29, 2006 11:04 AM | トラックバック (0)

2006年06月28日

2006年06月28日

【第167回】抗炎症薬で発作予防/昭和大学病院足立満主任教授

気管支ぜんそくの治療(下)

 気管支ぜんそくは、吸入ステロイドを中心とした抗炎症による治療をキチンと継続していれば対応はそれほど難しくはない。

 以前のぜんそく治療は発作時の気管支拡張薬が中心だったので、次第に重篤化する症例が少なくなかった。しかし現在、「治療の中心は、原因となる気道の炎症を抑えて発作を未然に防ぐ、いわゆる予防的治療法となっています」と、気管支ぜんそくの治療の第一人者、昭和大学病院(東京・品川区)第1内科の足立満主任教授は言う。

 予防的治療時代を迎え、治療の主体となる薬も「気管支拡張薬から吸入ステロイド薬に替わりました。そして、ロイコトリエン拮抗(きっこう)薬や気管支拡張薬などのさまざまな薬も予防的な使い方をするように変わってきました」。

 ◆吸入ステロイド薬 吸入ステロイド薬は気道に限定して届く。わずかな成分が気管支に達して抗炎症作用を発揮する。「日本では『ステロイドは怖い』というイメージが定着しています。副作用の問題があるからです。しかし、それは内服や注射の全身性ステロイドを長期に大量投与した場合に限られます。吸入ステロイド薬では全身的な副作用の心配はほとんどありません。なぜなら吸入ステロイド薬は内服薬や注射のステロイド薬の1000分の1の量で有効で、肝臓で速やかに壊され、ほとんど全身作用をきたさないからです」。吸入ステロイド薬の使用の目安は、大人の場合は「喘鳴(ぜんめい)、せき、呼吸困難が週に2回以上起きる」ステップ2の段階。「初めは吸入量を多めにして、改善してきたら吸入量を減らしていきます」。

 ◆その他の薬 吸入ステロイド薬のほかに、予防的に「ロイコトリエン拮抗薬」「長時間作用性β(ベータ)刺激薬」「徐放性テオフィリン薬」「抗コリン薬」なども広く使われており、患者の状態に合わせた適切な治療が可能となっている。「例えばCOPD(慢性閉そく性肺疾患)を合併している場合は吸入ステロイド薬に加えて、抗コリン薬を使います。スギ花粉症時にぜんそくが悪化する場合は抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬などの抗アレルギー薬を吸入ステロイド薬に加えたりします」。

 薬物療法のほかに、アレルギーによるぜんそくの場合には、ダニ、ハウスダストやペットのフケなど原因物質をできるだけ排除する「原因療法」。また、アレルゲンエキスを注射し、アレルゲンに接触してもアレルギー反応を起こさないようにする「減感作療法」なども重要である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆気管支ぜんそくの名医
 ▼神戸市立中央市民病院(神戸市中央区)呼吸器内科・石原享介副院長
 ▼国立病院機構南岡山医療センター(岡山県早島町)呼吸器内科・高橋清院長
 ▼久留米大学病院(福岡県久留米市)呼吸器病センター・相沢久道教授
 ▼佐世保市立総合病院(長崎県佐世保市)呼吸器科・浅井貞宏副院長

June 28, 2006 09:05 AM | トラックバック (0)

2006年06月27日

2006年06月27日

【第166回】日記やピークフローで薬の効果判定/昭和大学病院足立満主任教授

気管支ぜんそくの治療(上)

 ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難、また、せきが長い間(3週間以上)続いているときは、呼吸器科やアレルギー内科を受診し、診察・検査を受けよう。診察は「問診、聴診」から始まり「胸部エックス線検査」「呼吸機能検査」などへと進んでいく。

 ◆問診、聴診 「医師は患者さんの発作時に居合わせません。だから、発作時の様子を聞かないと診断がつきにくいのです。問診は重要ですし、聴診も重要です」とポイントを示すのは、昭和大学病院(東京・品川区)第1内科の足立満主任教授。患者は問診でスムーズに答えられるように「発作歴」「家族歴」「既往症」などをメモして受診すると良い。

 ◆胸部エックス線検査 呼吸器疾患においては欠かせない検査。気管支ぜんそくと他の病気との鑑別にも重要である。

 ◆呼吸機能検査 「スパイロメトリー」や「ピークフローメーター」を使った検査。スパイロメトリーは肺気量測定装置で、肺に出入りする空気の量や肺活量などさまざまなデータが曲線グラフで記録される。ピークフローメーターは自宅で測定が可能。「ぜんそくの診断には『努力肺活量』と『1秒量』から『1秒率』を割り出すと、気道の詰まり具合と気管支拡張薬吸入後の可逆性により、ぜんそくなのかどうかが分かります」。COPDではこの可逆性がぜんそくより低い。

 ◆気道過敏性テスト 「気管支を収縮させるヒスタミンやアセチルコリンなどの薬を患者さんに吸入してもらい、気道の反応をみます。薬の濃度が薄い段階で反応するほど気道の過敏性は高いと判断します」。ぜんそくの患者は健康な人の100~1000倍敏感である。

 ◆血液検査 血液を採ってアトピー型(アレルギー性)か非アトピー型かを調べる。アトピー型ではアレルゲンに対する特異的IgE抗体を持っている。

 ◆皮膚反応テスト 原因と思われるアレルゲンのエキスを皮膚に直接接触させて調べる検査。

 ◆喀痰(かくたん)検査 痰の中の好酸球が増えているかどうかを調べる。ぜんそくでは増えていることが多い。

 以上のような検査が診断の参考となる。「確定診断までいかない場合でも、症状からみてかなりぜんそくが疑われる場合には、治療的診断に入ってもいいのです」。吸入ステロイド薬を中心とした抗炎症治療に反応して、症状の改善が認められれば、ぜんそくである可能性が高いと考えられる。

 吸入ステロイド薬に気管支拡張薬、ロイコトリエン拮抗(きっこう)薬などを併用し、ぜんそく日記とともにピークフローを記録することにより、客観的な診断や薬の効果判定もできる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆気管支ぜんそくの名医
 ▼公立陶生病院(愛知県瀬戸市)呼吸器・アレルギー内科・谷口博之部長
 ▼宮武内科(大阪市中央区)宮武明彦院長
 ▼近畿大学医学部付属病院(大阪府大阪狭山市)呼吸器・アレルギー内科・東田有智教授
 ▼和歌山県立医科大学付属病院(和歌山市)呼吸器・アレルギー内科・一ノ瀬正和教授

June 27, 2006 08:54 AM | トラックバック (0)

2006年06月26日

2006年06月26日

【第165回】80%は成人になって発症/昭和大学病院足立満主任教授

気管支ぜんそく(下)

 気管支ぜんそくは成人・小児を合わせて患者数約400万人といわれている。「小児ぜんそくを大人に持ち上がる人は20%で、80%は成人になって初めて発症する方々だと言われています」と、気管支喘息の治療の第一人者、昭和大学病院(東京・品川区)第1内科の足立満主任教授は言う。

 ところが、実際には子供のころのぜんそくを自覚していない人も多い。「医学部の5年生の学生を調査したことがあります。本人は自覚がなくても、学生の両親が『2、3歳のころ、ぜんそくでした』と話され、初発と思っていても、再発ということもあるのです」。

 しっかりとチェックすることが大事になる。それはぜんそくの症状をチェックする場合も同じ。気管支ぜんそくの症状には大きな特徴がある。「ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)を出す発作や呼吸困難は夜間や明け方に起こることが多いのです」。発作が起きると横になっていられず、1~2時間は寝付けない。

 「COPD(慢性閉そく性肺疾患)の場合は眠っているときは苦しくはありません。日中、動くときに息苦しいのです。加えて、COPDの場合にはたばこを数十年吸っているという喫煙歴や中年以降の高齢者に多いという特徴があります」。ただ、最近はヘビースモーカーの夫を持つ奥さんでCOPDに苦しめられる人も増えている、と報告されている。

 「COPDでは体を動かしているときに苦しくなるのが一般的ですが、ぜんそくの場合は夜間から明け方にかけて安静にしていても発作が起こります」。中には運動誘発性のぜんそくもある。しかし、吸入ステロイド薬などを中心とした治療により、運動による発作も起きなくなる。

 「そして特徴の3つめは、発作は自然に、あるいは治療により治まります。ただ、放置すると発作を繰り返すようになります。新しい治療、治療薬によって重症化は防がれているとはいえ、年間3000人以上の方が気管支ぜんそくで亡くなっています。難治性にならないようにしてほしいものです」。

 そのためにも、早期の診断・治療が重要である。

 ◆COPD 慢性閉そく性肺疾患。かつて慢性気管支炎、肺気腫(しゅ)と呼ばれていた病気。喫煙により肺に慢性的に炎症が起きて気道が狭くなったり、肺胞の壁が破壊されたりすることで気流制限(肺機能、特に1秒量が低下すること)が起きる病気である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

June 26, 2006 09:41 AM | トラックバック (0)

2006年06月25日

2006年06月25日

【第164回】大半がアレルギー反応/昭和大学病院足立満主任教授

気管支ぜんそく(上)

 「ぜんそく発作は生死にかかわる」といわれていた。ところが、今では-。「最近は新しい治療が研究開発され、ぜんそくがあっても、発作を起こすことなく生活できるようになっています」と、気管支ぜんそく治療の第一人者、昭和大学病院(品川区旗の台)第1内科の足立満主任教授は言う。「息」が苦しく「喘(あえ)ぐ」状態を発作的に繰り返す病気がコントロールできるようになってきたのである。

 気管支ぜんそくのメカニズムは、空気の通り道である気道、とりわけ気管支の過敏反応であり、その過敏反応を惹起(じゃっき)するのが気道の慢性炎症である。「過敏に反応した気道では(1)気管支を取り巻いている平滑筋が収縮する(2)気道の粘膜が炎症を起こしてむくむ(3)分泌物が増える、といった状態になっています。そして、気道の内腔(ないくう)が狭くなり、空気が通るときに摩擦が起こり、喘鳴(ぜんめい)が聞こえるようになります」。

 喘鳴とは気管支ぜんそくの特徴的なゼイゼイ、ヒューヒュー、ゼロゼロといった呼吸音である。こうなると息をするのも苦しくなり、横になっていられず起きて息をする「起坐呼吸」をするようになる。さらに発作が重くなると、「酸素が十分に取り込めないので、動脈血の酸素が低下し、唇、ほお、手足の先が冷たく紫色になります。さらに進むと意識が薄れて失神することもありますし、極端な場合は窒息死する場合もあります」。しかし、軽いときは発作が治まると、患者はうそのようにケロッとする。

 このような気管支ぜんそくの原因は、アレルギー反応によることが多く、小児ぜんそくの約90%、成人ぜんそくの約60%に原因アレルゲンが陽性になるといわれている。「小児ぜんそくではアレルギーの原因がダニのケースが多く、成人ぜんそくでもハウスダスト、ダニ、カビなどが多いのです。最近はイヌ、ネコ、ウサギ、ハムスターなどのペットアレルギーも増えています。アレルギー以外では、気道のウイルス感染、気候の変化、ストレス、過労、アスピリンなどの鎮痛解熱薬によるケースなどが引き金として挙げられます」。

 アレルギーのもとであるアレルゲンを探すのみならず、身近な生活空間の中に発作の原因や誘因はないか、それをチェックすることも重要である

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆気管支ぜんそくの名医
 ▼札幌医科大学付属病院(札幌市中央区)第3内科・田中裕士助教授
 ▼岩手医科大学付属病院(岩手県盛岡市)第3内科・井上洋西教授
 ▼東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)感染症・呼吸器内科・田村弦講師
 ▼独協医科大学病院(栃木県壬生町)呼吸器・アレルギー内科・福田健教授

June 25, 2006 09:40 AM | トラックバック (1)

2006年06月24日

2006年06月24日

【第163回】ベタフェロン継続使用が重要/国立病院機構宇多野病院斉田孝彦院長

多発性硬化症の治療(下)

 難病の1つとされている「多発性硬化症」。脳・脊髄(せきずい)・視神経からなる中枢神経系のあちこちに病巣ができる自己免疫疾患で、さまざまな神経症状が出てくる。

 かつては治療法がなかった。70年代に「ステロイド・パルス療法」が登場したが、効果は短期的だった。そして、日本では00年に多発性硬化症の再発を長期に抑える薬であるインターフェロン・ベータ1b「ベタフェロン」(自己注射薬)が認可され、治療革命をもたらした。「早い段階からベタフェロンを使うことで、付き合っていける病気になってきました」「海外では次の薬も出現し、さらに有望な薬の開発が続いています」と、国立病院機構宇多野病院(京都市右京区)の斉田孝彦院長は言う。

 今日の治療の中心は薬物療法。患者の状態によって治療方法は変わる。

 ◆急性期・増悪期の治療 急性増悪期に行われるのが「ステロイド・パルス療法」。点滴用のステロイド薬を3~5日間に大量投与。これを1クールとして通常は1~2クール行う。「ステロイド・パルス療法で効果がみられないときは、『血漿(けっしょう)交換療法』が行われます」。脚の付け根の血管から血液を抜き取り、血球と血漿に分け、血漿を機械できれいにして再び体内に戻す方法。通常、2~3週間に3~7回行う。「脳を攻撃する因子を除去する方法ですが、悪化した症状を押し戻す一時的な方法です」。

 ◆再発予防と障害進行の抑制 「長期の治療としては、今日の標準治療はベタフェロンです。多発性硬化症は再発と寛解(完治ではないが症状悪化が止まっている状態)を繰り返し、あるいは進行します。従って、再発回数を減らすことと進行を抑制することが重要です」。インターフェロン・ベータ1bは科学的に再発予防と進行抑制の効果が認められている。「症状が出ていないときでも、MRI(磁気共鳴画像装置)や特殊な方法で調べると何度も再発を繰り返していることが分かってきました。だから、症状進行がないときでもベタフェロンを使い続けるほうがいいのです」。この点は、多くの医師にも理解されていないとあって、斉田院長は強調した。

 このほか、インターフェロン製剤が使えない患者さんの場合には「免疫抑制剤」が使われることがある。より効果的な治療を受けるためにも、しっかりした専門医との二人三脚が重要となる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆多発性硬化症の名医
 ▼国立病院機構宇多野病院・関西脳神経筋センター(京都市右京区)神経内科・斉田孝彦院長、田中正美部長
 ▼九州大学病院(福岡市東区)神経内科・吉良潤一教授
 ▼長崎神経医療センター(長崎県川棚町)神経内科・近藤誉之部長

June 24, 2006 09:48 AM | トラックバック (0)

2006年06月23日

2006年06月23日

【第162回】問診、MRIなどで検査/国立病院機構宇多野病院斉田孝彦院長

多発性硬化症の治療(上)

 多発性硬化症は中枢神経系(脳・脊髄・視神経)のあちらこちらに病巣ができ、いろいろな神経症状を引き起こす。今日では治療がだいぶ進んだこともあって、この病気が難病でも亡くなることはほとんどない。が、それでも…。

 ◆問診 過去と現在の症状がどのようで、いつからどんなふうに経過したか詳しく話を聞くことから始まる。「ご本人が初発の時期、症状を忘れているケースがあり『そういえば数年前に目が見えにくいことが1週間くらいあった』と思い出すこともあります」。病状はさまざま。一過性か、それとも何度か繰り返しているか、詳細に聞かれる。「他の疾患を除外するためにも問診はきわめて重要になります」。

 ◆神経学的診察 ハンマーで患者のひざをたたいて反射具合を診たり、眼の動きなどがチェックされる。神経内科の基本的検査である。

 ◆MRI検査 MRIの「T2(ティーツー)強調画像」では脳内画像は全体が黒いのに、脱髄(中枢神経系の軸索をカバーしているミエリンという髄鞘が脱落している状態)している部分があると、白くなった脱髄斑が見える。

 ◆大脳誘発電位検査 脱髄個所があると、当然、神経の伝わりが遅くなる。この検査では体に刺激を何度も与えて脳への刺激伝達のスピードを調べる。

 ◆脳脊髄液検査 背中から針を刺して髄液を採って調べる。多発性硬化症ではリンパ球、抗体(免疫グロブリンG)が増加しているし、ミエリン塩基性タンパクが増えていることもある。

 以上の検査を総合して診断されるのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆多発性硬化症の名医
 ▼国立病院機構宇多野病院・関西脳神経筋センター(京都市右京区)神経内科・齊田孝彦院長、田中正美部長
 ▼金沢医科大学病院(石川県内灘町)脳脊髄神経科・神経内科・松井真教授
 ▼広島大学病院(広島市南区)脳神経内科・郡山達男助教授

June 23, 2006 11:57 AM | トラックバック (0)

2006年06月22日

2006年06月22日

【第161回】日ごと、時間ごとに症状変化/国立病院機構宇多野病院斉田孝彦院長

多発性硬化症(下)

 自己免疫疾患の「多発性硬化症」は、脳、脊髄(せきずい)、視神経からなる中枢神経系のあちこちに病巣ができる。その病巣ができる場所によってさまざまな症状が出てくる。

 「病巣のあるところすべてで症状が出るのではなく、10カ所破壊されると1カ所程度しか症状を出さないのです。潜在的に病状が進行して、時々症状が表れるのです」と、多発性硬化症の治療に長く携わってきた国立病院機構宇多野病院(京都市右京区)の斉田孝彦院長は言う。

 症状はさまざまで、その重症度も日ごと、時間ごとに変化を見せる。主に大脳、小脳、脳幹、脊髄、視神経に病巣が出てくる。

 ●大脳に病巣がある 体の片側だけの感覚が異常になる「片側不全麻痺(へんそくふぜんまひ)」。言いたいことが話せない「失語症」。物が覚えられないとか判断に時間がかかる、物忘れをするといった「記憶・学習障害」。気分が不安定になる「情動障害」。片側の視野が欠損する「半盲」。性欲減退・感覚低下・勃起困難などの「性機能障害」など。

 ●小脳・脳幹に病巣がある 物が二重に見える「複視」。「重症のケースでは物がジャンプしているように見えるともいわれます」。うまく歩けない、シャツのボタンが留めにくい「運動障害」。ふらついたり、酔った感覚になる「目まい、平衡障害」。話し方がゆっくりになったり、発声が不明瞭になる「構音障害」。このほか、しゃっくりが異常に続いたり、物が飲み込みにくい「嚥下(えんげ)障害」などもある。

 ●脊髄に病巣がある 腕や手指に脱力が起きて筆記が難しくなったり、片方の足に脱力が起こるとうまく歩けない。また、手足が突っ張るなどの「運動障害」。体の至るところにチクチク、ピリピリといった「感覚異常」。トイレの回数が多い、急に排尿したくなる、残尿感、尿失禁などの「排尿障害」。重度の便秘や失禁といった「腸症状」などがある。

 ●視神経に病巣がある 視野の一部が欠ける「視野欠損」。「視神経炎」では目の中や周囲に痛みを生じ、眼を動かすとより強くなり、頭痛を伴うこともある。
 このほかにも、疲れを常に強く感じる「疲労」、風呂に入ると疲れたり、運動で疲れたりと「体温上昇での疲労」などさまざまあるので、専門医の受診が欠かせない。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆多発性硬化症の名医
 ▼東京女子医科大学(東京都新宿区)脳神経センター神経内科・太田宏平講師
 ▼順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)脳神経内科・横山和正助手(病棟医長)
 ▼国立精神・神経センター神経研究所(東京都小平市)免疫研究部・山村隆部長

June 22, 2006 01:37 PM | トラックバック (0)

2006年06月21日

2006年06月21日

【第160回】日照少ない地域に多い患者/国立病院機構宇多野病院斉田孝彦院長

多発性硬化症(上)

 「多発性硬化症」という病気をご存じだろうか。日本の患者数は1万人で、難病の1つ。それを知ると、多くの患者は不安がるが、病気を知って適当な治療を受けると、かなりコントロールができるようになってきた。

 この多発性硬化症は中枢神経系の病気である。日本で唯一の多発性硬化症のセンターを持つ国立病院機構宇多野病院(京都市右京区)の斉田孝彦院長は次のようにメカニズムを話す。

 「脳、脊髄(せきずい)、視神経からなる中枢神経系のあちこちに病巣ができます。神経細胞と神経細胞は軸索で結ばれており、その軸索を覆っているのが『ミエリン(髄鞘)』という膜です。ミエリンは神経同士を絶縁し、情報が早く伝わり、混乱を起こさないようにしています。ところが、自分の体を守るための免疫系が自分のミエリンを攻撃し、壊してしまうのがこの病気です。攻撃が強いとミエリンに覆われていた軸索も壊れ修復できなくなります。ミエリンが壊れることを『脱髄』、壊れた部分(病巣)は『脱髄斑』といいます」。

 ミエリンのタンパク質に対して起こる自己免疫疾患。ミエリンが壊れると視力障害、運動障害、感覚障害など、いろんな神経症状がでてくる。症状が新しく悪化したときが「急性期」もしくは「再燃」といい、症状が安定しているときを「寛解期」という。「寛解期といっても目に見える症状が加わっていないだけで、脳や脊髄の中では動き、進行があることが多いのです」。

 15歳以下や50~60歳以上での発病もあるものの、発病のピークは20代から30代。とりわけ20代に多いのが特徴である。男女比は3対1で女性に多い傾向がある。
 世界的にみると日照の少ない地域に患者が多く、暖かい地域は少ない。スウェーデン、デンマーク、ドイツ、英国などのヨーロッパやカナダ、米国などの北部、オーストラリアなどの南部に多い。日本でも北海道・東北に多く、沖縄に少ない傾向がある。

 ◆自己免疫疾患 免疫は体の外から侵入してくる細菌やウイルスなどをたたく自己防御システム。ところが、その免疫が自分の体をたたいてしまうのが自己免疫疾患である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆多発性硬化症の名医
 ▼渓仁会西円山病院(札幌市中央区)神経内科・深沢俊行副院長
 ▼北海道大学病院(札幌市北区)神経内科・菊地誠志助教授
 ▼東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)神経内科・糸山泰人教授、藤原一男助教

June 21, 2006 12:00 PM | トラックバック (0)

2006年06月20日

2006年06月20日

【第159回】レーザー始めたら紫外線に注意/湘南鎌倉総合病院山下理絵部長

あざの治療(下)

 あざの治療はレーザーが中心だが、昔を知っている人は「治らなかったり、ケロイドになるのでは…」と思うかもしれない。「昔はそういうこともありました。しかし、レーザー機器の進歩はめざましく、80年代とは雲泥の差で、安全でしっかりとした治療ができます」と、湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)形成外科の山下理絵部長は現状を正確に言葉にした。

 事実、赤あざの治療にはかつてはアルゴンレーザーや炭酸ガスレーザーが使われていたが、今日ではより効果のある色素レーザーが使われている。

 たとえば、いちご状血管腫は出生後、毛細血管が拡張し、皮膚は次第に隆起して3~6カ月までに急速に増大する。が、多くは7、8歳くらいまでに消える。ただ、跡が残るケースもあるので、今は積極的に治療を行う。「治療を始めるのは、早ければ早いほどレーザーを照射する回数も少なくてすみますし、効果的です」。

 いちご状血管腫では、生後1か月くらいから治療を始めると、幼稚園に入る前の3、4歳くらいまでに治療が完了する。「レーザー治療の間隔は疾患によって異なりますが、通常は3~4カ月に1度、ただし、いちご状血管腫の場合は1カ月に1回の照射を行うこともあります」。あざの場所、色、濃さによって効果に差はあるものの、レーザーを照射するたびにあざの色は薄くなっていく。「QOLが格段に良くなるので、お母さんがすごく明るくなられます」。

 このほか、生まれたときから顔やうなじなど、体の正中線に沿って現れる赤あざの「正中部母斑」。かつては治療をしないで放置していたが、これも今は色素レーザーで治療ができるようになった。青あざには「太田母斑」や「蒙古斑」などがある。今はQスイッチルビーレーザーが使われている。1回の治療では効果がないので、3~10回程度の照射が必要。「1~3回くらいまでは逆に少し黒くなり、その後、照射を重ねるに従って薄くなります」。

 そして、重要なのはレーザー治療を始めたら紫外線に注意をすること。UVカットのクリームは必ず塗り、小児の場合は遮光テープを継続して張る。これを守るのも治療の基本である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆あざの名医
 ▼湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)形成外科・美容外科・山下理絵部長
 ▼王丸クリニック(福岡市中央区)王丸光一院長
 ▼中野医院(宮崎市)中野俊二院長

June 20, 2006 09:13 AM | トラックバック (0)

2006年06月19日

2006年06月19日

【第158回】色素レーザーなどが基本/湘南鎌倉総合病院山下理絵部長

あざの治療(中)

 あざの治療の中心は「レーザー治療」。「一言でレーザーといってもさまざまな種類があり、あざによってレーザーを使い分けて治療を行います」と、「あざ」や「皮膚がん」などの治療で知られる湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)形成外科の山下理絵部長は言う。

 ここでは基本的なレーザーを紹介しよう。

 ◆Qスイッチルビーレーザー ルビーが使われた赤い色の光を出すレーザーにQスイッチがプラスされたものである。Qスイッチとはレーザー光線を一瞬遮る装置。これによって、よりエネルギーの強いレーザー光線がでる。Qスイッチの付いたレーザーは、Qスイッチルビーレーザーのほかに「Qスイッチアレキサンドライトレーザー」「Qスイッチヤグレーザー」がある。「この中ではQスイッチルビーレーザーが最も多くのあざに対応します」。太田母斑、伊藤母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、色素性母斑、老人性色素斑(シミ)、そばかすなどがある。Qスイッチヤグレーザーは太田母斑に使われ、Qスイッチアレキサンドライトレーザーは入れ墨などを消すために用いられる。

 ◆色素レーザー 色素レーザーは有機色素の溶液を媒質としている。代表的なのは、だいだい色の色素で緑色のレーザーを出すことができる。このレーザーが対応するあざは、単純性血管腫(ポートワイン母斑)、いちご状血管腫、星芒(せいぼう)状血管腫などの赤あざのほか、毛細血管拡張症(赤ら顔)などである。

 ◆炭酸ガスレーザー 二酸化炭素を媒質に用いているのが炭酸ガスレーザー。色素性母斑、いぼ、汗管腫、ニキビなどの治療に用いられる。

 --このほかにもレーザーの種類はある。そのため、多くのレーザー選択肢がある施設、もちろん、それを的確に使いこなす医師のいる施設を選択すべきである。

 ◆いちご状血管腫 いちごのように大きく盛りあがった赤あざ。血管内皮細胞の増殖に伴って毛細血管がどんどん新しく誕生することでできる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆あざの名医
 ▼湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)形成外科・美容外科・山下理絵部長
 ▼鈴木形成外科(京都市東山区)鈴木晴恵院長
 ▼宮本形成外科(広島市南区)宮本義洋院長

June 19, 2006 09:06 AM | トラックバック (0)

2006年06月18日

2006年06月18日

【第157回】赤、茶、青…レーザーも使い分け/湘南鎌倉総合病院山下理絵部長

あざの治療(上)

 あざは「赤あざ」「茶あざ」「黒あざ」「青あざ」と分けられる。「どのあざなのかは、患者さんのあざを診れば分かります。ただ、治療するにあたっては、きちっと検査を必要とするケースもあります」と、あざや皮膚がんなどの治療で知られる湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)形成外科の山下理絵部長は言う。

 例えば、赤あざにはいろいろ病気がある。片側の額からほおに赤あざがある場合、「スタージウェーバー症候群」という神経系の病気が潜んでいることもある。頭蓋内や目にも血管腫を伴うことがあるため「CT(コンピューター断層撮影)検査」「脳波検査」に加えて、眼科での検査を行うこともある。「生後2カ月でも『てんかん』発作を起こすことがあるからです」。

 脚1本が単純性血管腫の「クリッペルウェーバー症候群」では、骨や筋肉に脚の左右で違いがでてくる。脚の長さや太さが異なってくるので左右の脚の長さを確認するために「エックス線検査」が必要になる。青あざでは、眼圧などの眼科検査が必要なこともある。「青あざの太田母斑が顔にあり、それが白目にもある場合は、顔の青あざが治療で治っても白目の部分は残ります。そこにレーザーを当てると黒目に入って失明の危険があるから現状では治療ができません。青あざが白目にあると緑内障を起こす可能性があるため、顔のあざが治った後も、眼科での定期健診をしてもらいます」。

 あざと一言でいっても、細かくみるといろんな種類がある。「だから、視診でしっかり診断をつけて、必要な検査はきっちりと行うことが重要になります」。

 診断がつくと治療に入る。あざの治療の中心は、患者の体に優しいと人気のレーザー治療。

 そのレーザーには種類が多い。「基本は青あざには『Qスイッチルビーレーザー』『Qスイッチアレキサンドライトレーザー』『Qスイッチヤグレーザー』、赤あざには『色素レーザー』で、このほかに『炭酸ガスレーザー』『Nd:ヤグレーザー』などがあります」。レーザーの種類が多いのは、あざによってレーザーを使い分けて治療を行うからである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆あざの名医
 ▼カメイクリニック(富山県高岡市)亀井康二院長
 ▼林形成外科クリニック(石川県金沢市)林洋司院長
 ▼葛西形成外科(大阪市西区)葛西健一郎院長

June 18, 2006 09:25 AM | トラックバック (1)

2006年06月17日

2006年06月17日

【第156回】赤あざは血管の先天異常/湘南鎌倉総合病院山下理絵部長

あざ

 形成外科で治療を受ける疾患の中で「あざ」がある。その患者数は形成外科で1、2を競うほど多い。大きさ、重症度と違いはあれ、多くの人が持っている「あざ」は、その原因によって大きく2つに分けられる。湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)形成外科の山下理絵部長は、以下のように解説する。「メラニンの増殖によるあざと、血管の先天異常を原因とするあざです。前者に入るのが『茶あざ』『黒あざ』『青あざ』で、後者は『赤あざ』です」。

 人間の皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織となっており、メラニンを作り出すメラノサイトは表皮の基底層にある。本来、メラニンは紫外線から肌を守るものだが、それがときにはうまく消えずにあざとなってしまう。

 表皮に限局し、メラニンが増殖してできるのが茶あざ。黒あざは母斑細胞といわれる色素細胞が表皮から基底層、さらに真皮の上部で増加してできる。そして、本来、基底層にあるメラノサイトが真皮で増加すると青あざになる。「皮膚の表面に最も近いところにできるのが茶あざです。茶あざは医学的には『扁平(へんぺい)母斑』と呼ばれ、成人になってできるのを『遅発性扁平母斑』といいます」。

 黒あざは「色素性母斑」。小さいものはホクロと呼ばれ、大きいものが黒あざと呼ばれている。青あざには「太田母斑」「蒙古斑」などがある。

 一方、赤あざで代表的なのは「いちご状血管腫」と「単純性血管腫(ポートワイン母斑)」。いちご状血管腫は大きく盛り上がった赤あざで、血管内皮細胞の増殖に伴って毛細血管がどんどん新しく誕生することでできる。「いちご状血管腫の多くは7、8歳くらいまでに消えるので、少し前までは治療しないで様子を見るのが主流でした。でも、それではあとが残ることがあるのです。今は、生後1カ月くらいから積極的に治療を受けられる方が多くなり、喜ばれています」。

 また、単純性血管腫はポートワイン母斑といわれることで分かるように、赤ワイン色をした赤あざである。「こちらは自然消失しないので、早期治療が必要です」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆あざの名医
 ▼札幌スキンケアクリニック(札幌市北区)松本敏明院長
 ▼ちば美容・形成外科クリニック(千葉市中央区)野田宏子院長
 ▼湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)形成外科・美容外科・山下理絵部長

June 17, 2006 12:26 PM | トラックバック (0)

2006年06月16日

2006年06月16日

【第155回】体に優しいミニマム創手術/東京医科歯科大付属病院木原和徳教授

腎臓がんの治療(下)

 腎臓がんの第1選択は手術。これには腎臓を周囲の脂肪ごと切除する「根治的腎摘除」と、がん部分だけを切除する「腎部分切除」とがある。さらに、それぞれ手術術式が3通り行われている。「開放手術(開腹手術)」「腹腔(ふくくう)鏡手術」「ミニマム創内視鏡下手術」である。

 同様の選択肢がある前立腺がんでは、05年8月に読売新聞が調査・発表した資料によると、開放手術が主流で92・2%の施設で行われ、体に優しい腹腔鏡手術とミニマム創手術は合わせて7・8%。1年間に10例以上実施した施設は腹腔鏡手術が12施設350例、ミニマム創手術が14施設411例と、まだまだ少ない。が、ほかの手術がそうであるように、腎臓がんも確実に体に優しい治療へと向かっている。

 ◆開放手術 ごく一般的な手術で、腹部に20~30センチメスが入る。術者は自分の目で見て、天井の光のもとで手術を行う。

 ◆腹腔鏡手術 腹部に3から4カ所、5~10ミリの孔(あな)を開け、そこから内視鏡(光)と手術器具を入れ、ガスを注入し、モニターを見ながら手術を行う。加えて、最後に腎臓を外に出すため、腹部を6センチ程度切開する。

 ◆ミニマム創内視鏡下手術 腹部を5~6センチ程度切開するのが1カ所のみ。摘出した臓器を取り出す切開創のみで、ガスを使わない体に優しい手術。切開創から内視鏡を患部に挿入し、モニターと肉眼を併用しながら安全に手術を行う。

 このミニマム創手術を開発したのが東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)泌尿器科の木原和徳教授である。開放手術とは比較するまでもなくミニマム創手術の方が体に優しいことは明白。では、腹腔鏡手術と比較するとどうか。開発者の木原教授自身にミニマム創手術の勝っている点を挙げてもらった。

 (1)指2~3本の幅の小さな傷が1つだけ。
 (2)腹膜に傷をつけないので、術後に内臓の癒着が起こらない。
 (3)炭酸ガスを注入しないので、生命にかかわりかねないガス塞栓(そくせん)や肺梗塞(こうそく)のリスクが全くない。
 (4)以前に何度かおなかの開放手術を行った患者でも受けられる。

 今後、腎臓がん手術のみならず、前立腺がんの手術でも中核になると思われる。また一方で、皮膚から直接針を刺して腎臓がんを焼いて治療する「マイクロ波凝固療法」や「ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」も病状次第で試みがなされている。今は、病巣の取り出しも併せて行われているが、これも、今後は手術で病巣を取り出すことなく治療が終了する方向に行くものと思われる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆腎臓がんの名医
 ▼国立病院四国がんセンター(愛媛県松山市)泌尿器科・住吉義光医長
 ▼九州大学医学部付属病院(福岡市東区)泌尿器科・内藤誠二教授
 ▼鹿児島大学医学部付属病院(鹿児島市)泌尿器科・中川昌之教授

June 16, 2006 10:56 AM | トラックバック (0)

2006年06月15日

2006年06月15日

【第154回】手術以外は効果に限界/東京医科歯科大付属病院木原和徳教授

腎臓がんの治療(上)

 腎臓がんの3大症状は「血尿」「脇腹の痛み」「腹部の腫瘤(しゅりゅう)」。ただし、それで発見されると、がんは進行している。かつては画像検査が進んでいなかったので、症状に頼っていたが、今日では無症状の段階で発見される腎臓がんが増えてきている。

 人間ドックなどで無症状で発見されると、腎臓がんで定評のある医療施設を受診し、診察が行われる。

 ◆問診 受診理由のほかに、触診で腹部をチェックする。「無症状の方の多くは触診しても腫瘤はありませんので、分かりません。これ以降は、腎臓がんでは画像検査になります」と言うのは、東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)泌尿器科の木原和徳教授。腎臓がん手術の新術式「ミニマム創内視鏡下手術」の開発者である。

 ◆超音波(エコー)検査 「体に負担がなく、手軽に行えるので必ず行われます」。腹部に超音波が通りやすいようにゼリーを塗り、超音波のプローべを滑らせていく。そして、超音波の反射波(エコー)を受け、その画像化したものをモニターで見て行う検査。

 ◆CT(コンピューター断層撮影)検査 腫瘍(しゅよう)の状態や内容を詳細に調べる検査で、腹部を輪切り状に調べることで、直径1センチ程度のがんも発見でき、広がり具合も分かる。

 ◆MRI(磁気共鳴画像装置)検査 「腫瘍の内容や広がり、中でも血管内への腫瘍の広がりを見るのに有用です。以前は血管造影検査も行われていましたが、CTやMRIの進歩でほとんど行われなくなりました」。

 以上の診察で診断がつき、腎臓にがんがある場合は「手術療法」が基本。手術療法は「根治的腎摘除」のほか、腎臓の患部のみを小さく切除する「腎部分切除」がかなり行われるようになってきた。また、がん部分を焼いてしまう「マイクロ波凝固療法」「ラジオ波焼灼(しゃく)療法」も試みられる。

 手術以外では「免疫療法」「化学療法」「放射線療法」がある。がんを取り切れなかったときや、再発したときに行われる。免疫療法では「インターフェロン」や「インターロイキン」といった腎臓がんに対して抵抗力を持つようにする薬を注射する。手術以外の3つの方法は効果に限界のあるのが現状である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆腎臓がんの名医
 ▼京都大学医学部付属病院(京都市左京区)泌尿器科・小川修教授
 ▼京都府立大学医学部付属病院(京都市上京区)泌尿器科・三木恒治教授
 ▼岡山医療センター(岡山市)泌尿器科・津島知靖部長
 ▼香川大学医学部付属病院(香川県三木町)泌尿器・副腎・腎移植外科・筧善行教授

June 15, 2006 08:52 AM | トラックバック (0)

2006年06月14日

2006年06月14日

【第153回】治療後20年でも転移はある/東京医科歯科大付属病院木原和徳教授

腎臓がん(下)

 腎臓がんは、ちょっと不思議ながんである。一般的にがんは治療してから再発することなく5年経過すると「完治」とされる。乳がんの場合は10年と多少の違いはあるものの、多くは決着がつく。それなのに、腎臓がんは-。「腎臓がんは治療後、10年、20年たっても完治とは言いません。長い時間が経過してから転移したがんが骨とか肺から出てくるのが現実です。それを私たちは患者さんから教えられるのです」と、腎臓がん治療で有名な東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)泌尿器科の木原和徳教授は言う。この大きな特徴は、腎臓がんの治療での問題点にもなっている。

 もちろん、腎臓がんにならないのがベストなのだが、なかなかそうはいかない。ただ、腎臓がんの多少のリスクは分かってきているので、そのリスクを除くように努める必要がある。

 ▼たばこは発がん物質が多いので禁煙を。
 ▼高血圧は腎臓を悪化させるので、高血圧の人は治療をしっかりと。
 ▼鎮痛解熱薬をよく服用するのは腎臓に負担を掛けるので、注意しよう。
 ▼脂肪分を多く取ると腎臓を悪化させる。

 そして、今日、糖尿病患者・予備軍合わせて1620万人時代とあって、糖尿病から透析に移行する人が最も多く、年間1万人を超えている。「『透析を受けている人は、一般の人に比べて腎臓がんになりやすく(10~40倍)』、さらに透析を10年以上続けると、10年未満の人よりも3倍腎臓がんになりやすいのです。ですから長期の透析患者さんは一般の人よりはるかに高率に腎臓がんになる危険が高いと言えます」。
 糖尿病はしっかり治療し、透析に進まないようにするべきである。それでも、腎臓がんになった場合は、がんの進行度によって、以下の4段階に分けられる。

 ◆1段階(T1) 腎臓内にがんがとどまり、がんの最大直径が7センチ以下。
 ◆2段階(T2) 腎臓内にがんがとどまり、がんの最大直径が7センチを超えている。
 ◆3段階(T3) 腎臓からがんが外に広がった状態。その範囲は腎臓のごく周囲の脂肪組織や副腎、腎静脈まで。
 ◆4段階(T4) 腎臓からがんが3段階以上に広がった状態。

 このような腎臓での発育のほかに、リンパ節や遠くの臓器に転移して進行がんとなる。治療に向けては、検査で状況をしっかり把握することが重要となる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆腎臓がんの名医
 ▼虎の門病院(東京都港区)泌尿器科・小松秀樹部長
 ▼国立がんセンター中央病院(東京都中央区)泌尿器グループ・藤元博行医長
 ▼横浜市立大学医学部付属病院(横浜市金沢区)泌尿器科・窪田吉信教授
 ▼金沢大学医学部付属病院(石川県金沢市)泌尿器科・並木幹夫教授

June 14, 2006 10:24 AM | トラックバック (0)

2006年06月13日

2006年06月13日

【第152回】血液集中、転移しやすい/東京医科歯科大付属病院木原和徳教授

腎臓がん(上)

 腎臓がんは緩やかではあるが、確実に患者数、死亡者数ともに増えている病気。その数、年間約1万人、死亡者数は約4000人が現状である。患者数がピークとなるのは50代、60代で、男女比では2対1もしくは3対1で男性に多くなっている。

 この腎臓がんには、特徴的な3つの症状がある。いわゆる「3大症状」といわれているもので(1)肉眼でも分かる痛みを伴わない血尿(2)脇腹の痛み(腰痛)(3)脇腹を触って分かるしこり(触診できる腫瘍=しゅよう)。さらに、発熱、貧血、高血圧、食欲不振、体重減少なども出てくる。

 「大きなものは触診で触れますが、その状態で発見すると、通常かなり進んでいる状態です。昔は、がんが転移し、その転移したがんが先に発見されることもかなりありました」と話すのは、東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)泌尿器科の木原和徳教授。事実、ちょっと転んだ程度なのに骨折し、整形外科で転移性骨がんが発見され、原発が腎臓がんと分かったり、血痰(たん)が出るので調べたら肺がんで、やはり原発が腎臓がんといったケースである。

 加えて、血尿にしても、1、2回で止まってしまうこともあるし、脇腹のしこりに至っては、肋骨(ろっこつ)に隠れているので腫瘤(りゅう)としてかなり大きくならないと触れられない難しさがある。

 腎臓がんが、骨、肺、そして肝臓に転移しやすいのは腎臓の働きにも一因がある。腎臓は背中側にある臓器で、腰の少し上あたりにあって左右に2つついている。腎臓の大きさは、成人で握りこぶし大で、そら豆のような形をしている。腎臓は血液をろ過して、体内で不要となった老廃物を尿として排出する。つまり、腎臓は血液の集中するところ。そこにがんがあると、血液中に入り込んで他臓器に流れて行きやすい。

 「ただ、最近は無症状で発見されるケースが増えてきました。それは、画像診断の進歩、そして、人間ドックなどを受診される人が増えたからです」。今日では、無症状で腎臓がんの発見されるケースは50%を超えているといわれる。腎臓がんもこの段階で発見するのが大事である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆腎臓がんの名医
 ▼札幌医科大学付属病院(札幌市中央区)泌尿器科・塚本泰司教授
 ▼東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)泌尿器科・荒井陽一教授
 ▼東京医科歯科大学医学部附属病院(東京都文京区)泌尿器科・木原和徳教授
 ▼癌研有明病院(東京都江東区)泌尿器科・福井巌部長

June 13, 2006 09:26 AM | トラックバック (0)

2006年06月12日

2006年06月12日

【第151回】「痛くて怖い」から「やさしい」に変ぼう/大和徳洲会病院望月高行部長

慢性副鼻腔炎の治療(下)

 慢性副鼻腔(びくう)炎の治療は「保存療法」と「手術療法」が行われる。保存療法とは局所治療と薬物療法だが、それで効果がないと手術療法が選択される。また、大きな鼻茸(はなたけ)ができている場合も手術になる。

 手術となると、昔から行われている「副鼻腔根本手術」を思い描き、手術選択に二の足を踏む人がいる。「確かに、かつての手術は犬歯窩(けんしか=歯ぐき)を切開して、根こそぎ病変をはがす手術でした。患者さんの体への負担ということでは大変だったと思います」と、かつての手術法を説明するのは、大和徳洲会病院(神奈川県大和市)耳鼻咽喉科の望月高行部長(横浜市立大学医学部非常勤講師)。

 今は内視鏡を使った「内視鏡下鼻内副鼻腔手術」が行われている。「腫れた粘膜をすべて除去しなくとも、空洞をつくって副鼻腔の換気を良くすれば、あとは内服治療を併用することで自然に粘膜の炎症も治まることが分かったからです」。

 手術は内視鏡を鼻の孔(あな)から挿入する。鼻腔には屋根のひさしのように鼻甲介があり、それが3層になっている。その中段と下段の中鼻甲介と下鼻甲介の間から篩骨洞(しこつどう)へ抜ける。開ける孔は直径1センチくらい。そして、篩骨洞から前上方は前頭洞(ぜんとうどう)、外側は上顎洞(じょうがくどう)、さらに奥に蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)と空洞を開放していく。

 「副鼻腔の空洞はハチの巣のように細かく、周囲には視神経や脳があるので、内視鏡を使いながらすべての副鼻腔に孔を開けて空洞を確保するのは、決して簡単ではありません」。経験と技術が大きく手術結果を左右する。

 内視鏡下手術になったことで、入院期間が非常に短くなり「日帰り手術」も十分可能となった。「私どもの施設は日帰り手術を積極的に勧めてきました。今まで左右2回や場合によって3回に分けていた複合手術を1回の手術で終了するため、積極的に全身麻酔下での手術を導入しました。完全な除痛が図れ、患者さんの負担も少なく手術がスムーズに行われます。遠方からの患者さんも多く、すべての患者さんが午前中に手術が終了できないため、最近では最初から短期滞在手術(ショートステイサージャリー)で2泊から3泊の入院をお勧めしています」。

 とまれ、「痛くて怖い」が知れ渡っていた慢性副鼻腔炎の手術が、日帰りも可能な体にやさしい手術に変ぼうしたのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆慢性副鼻腔炎(内視鏡下副鼻腔手術)の名医
 ▼三重大学医学部付属病院(三重県津市)耳鼻咽喉・頭頸部外科・間島雄一教授
 ▼兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)耳鼻咽喉科・深沢啓二郎助教授
 ▼鷹の子病院(愛媛県松山市)耳鼻咽喉科・比野平恭之部長
 ▼佐藤クリニック(大分市)佐藤公則院長
 ▼熊本大学医学部付属病院(熊本市)耳鼻咽喉科・湯本英二教授

June 12, 2006 09:21 AM | トラックバック (0)

2006年06月11日

2006年06月11日

【第150回】薬服用、担当医と十分に相談/大和徳洲会病院望月高行部長

慢性副鼻腔炎の治療(上)

 慢性副鼻腔(びくう)炎、いわゆる蓄膿(ちくのう)症の治療は大きく分けると「保存療法」と「手術療法」になる。

 早期発見、早期治療を心掛けると、保存療法で十分に対応できる。「慢性副鼻腔炎は抗菌薬の進歩によって、すぐに手術になるのではなく、まずは重症でなければ保存療法で対応します」と、大和徳洲会病院(神奈川県大和市)耳鼻咽喉科の望月高行部長(横浜市立大学医学部非常勤講師)は言う。

 保存療法で、まず行われるのは、鼻腔内の清掃である。副鼻腔が細菌感染やアレルギーなどで粘膜が腫れ、小さな自然口がふさがれ、さらには膿(うみ)がたまっている状態なので、自然口を開くようにする必要があるからだ。「膿や鼻汁を吸引して自然口を確保するのです」。吸引に加えて、生理食塩水できれいに洗い流すことも行われる。

 吸引・洗浄が行われた後は、ステロイド薬と抗生物質を鼻腔のみならず副鼻腔にも噴霧することも行う。この薬の吸入は、局所治療といい、患者の症状を見ながら治療回数を減らしていく。

 ここまでの一連の保存療法と同時に、薬を服用する薬物治療も行われる。薬物治療の中核となっているのはマクロライド系抗菌薬の服用。「マクロライド系抗菌薬には、炎症を抑えることで鼻汁の分泌を抑えます。すると線毛が本来行っていた、外からの侵入物をキャッチして排出する働きが再生されます」。

 ただし、薬の服用がかなり長期(数カ月)に及ぶため、副作用の出ることもある。肝機能異常については、血液検査での数値に問題があれば、服用を中止すれば問題はない。「ただ、最近は成人発症型ぜんそくやアスピリンぜんそく、そのほかにアレルギー性鼻炎などを合併しているケースが多くなっています。この場合は、マクロライド系抗菌薬だけではなく、ぜんそくでは抗アレルギー薬とステロイド薬を併用します」。

 併用する場合は、より副作用には気を付ける必要があり、担当医と十分に話し合いながら治療は進められる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆慢性副鼻腔炎(内視鏡下副鼻腔手術)の名医
 ▼川村耳鼻咽喉科クリニック(大阪市城東区)川村繁樹院長
 ▼大阪医科大学付属病院(大阪府高槻市)耳鼻咽喉科・竹中洋教授
 ▼岩野耳鼻咽喉科サージセンター(大阪府豊中市)岩野正院長
 ▼耳鼻咽喉科サージクリニック 老木医院(大阪府和泉市)老木浩之院長
 ▼南大阪蔦(つた)耳鼻咽喉科(大阪府堺市)蔦佳明院長

June 11, 2006 11:13 AM | トラックバック (0)

2006年06月10日

2006年06月10日

【第149回】必要に応じ内視鏡で視診/大和徳洲会病院望月高行部長

慢性副鼻腔炎(下)

 慢性副鼻腔(びくう)炎、いわゆる蓄膿(ちくのう)症は、カゼウイルスが誘因となり細菌が感染して副鼻腔に炎症を引き起こし、繰り返しているうちに慢性化するのが一般的である。

 ところが「ここに最近変化が起きている」と、大和徳洲会病院(神奈川県大和市)耳鼻咽喉科の望月高行部長(横浜市立大学医学部非常勤講師)は指摘する。その変化とは-。「治りにくい難治性副鼻腔炎です。好酸球性副鼻腔炎で、成人発症型ぜんそくやアスピリンぜんそくの大多数がこの中に入ります。このほかのアレルギーを合併している慢性副鼻腔炎も多くなっています」。

 結果、栄養状態の良さや抗生物質の進歩で減少の一途をたどると思われていた慢性副鼻腔炎が、逆に多少ではあっても患者が増加傾向にある。

 その慢性副鼻腔炎の診察は以下のように行われる。

 ◆問診 問診では、どのような理由で受診したかを聞く。慢性副鼻腔炎で多い症状は「鼻水」「鼻詰まり」「頭痛」。さらにアレルギーを合併していると「くしゃみ」を伴ったりする。「アレルギーはあるか、アスピリンぜんそくはあるかなども聞きます。アスピリンぜんそくのある人は、鼻茸(はなたけ)ができやすい傾向があり、においが分からなくなってしまいます。もちろん、いつからその症状が出てきたかということは第1に聞きます」。

 ◆視診 「慢性副鼻腔炎の診察で最もよいのは、視診で、必要に応じ内視鏡を用いたりします」。鼻腔は鼻甲介が上、中、下と3層になっており、特に中鼻甲介や下鼻甲介の粘膜の腫れや鼻茸の状態を確認するとある程度分かる。「下鼻甲介の粘膜は急性では青っぽく、慢性では赤くなっています」。そのほか、のどに鼻水が流れているかなどを調べる。
 ◆単純エックス線検査、CT検査 「副鼻腔は空洞なので通常肺と同じように黒く見えるはずなのに、単純エックス線を撮って白くなっていると異常があるので、CT検査を加えます」。

 ◆アレルギー検査・その他の検査 鼻汁の好酸球の有無を顕微鏡で見て判定。
 このほか「血液検査」ではアレルギーの原因物質が分かる。必要に応じ「細菌検査」などを加えるとともに、上顎(がく)がんが疑われる場合には、「上顎洞試験開洞術」も行い組織検査も行う。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆慢性副鼻腔炎(内視鏡下副鼻腔手術)の名医
 ▼神奈川歯科大学付属病院横浜クリニック(横浜市神奈川区)耳鼻咽喉科・八尾和雄教授
 ▼耳鼻咽喉科・気管食道科 協愛医院(静岡県富士宮市)佐野真一院長
 ▼鼻・副鼻腔サージセンター名古屋(名古屋市中村区)黄川田徹院長
 ▼京都大学医学部付属病院(京都市左京区)耳鼻咽喉科・中川隆之助手
 ▼関西医科大学付属男山病院(京都府八幡市)耳鼻咽喉科・久保伸夫助教授

June 10, 2006 11:22 AM | トラックバック (0)

2006年06月09日

2006年06月09日

【第148回】細菌感染、アレルギーなどが原因/大和徳洲会病院望月高行部長

慢性副鼻腔炎(上)

 「慢性副鼻腔(びくう)炎」という病名を聞いてもピンとこない人が多いだろうが、「蓄膿(ちくのう)症」といわれれば多くの人が知っている認知度の高い病気である。

 そのポピュラーな病気も、国民の栄養状態の良さや抗生物質の進歩によって過去の病気になると思われていた。が、さにあらず。最近はアレルギー性のものなど、さまざまな原因の慢性副鼻腔炎が多くなり、決して消えゆく病気ではないようである。

 「細菌感染やアレルギーなどによって副鼻腔の粘膜が腫れると、小さな自然口はふさがれてしまいます。そうなると新鮮な空気が出入りできなくなり、細菌が繁殖して膿(うみ)がたまってしまいます。これが副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症です」と話すのは、大和徳洲会病院(神奈川県大和市)耳鼻咽喉科の望月高行部長(横浜市立大学医学部非常勤講師)。
 細菌感染としては「風邪をひいた後に起こることが多い」という。細菌感染が原因で急に起こるのが「急性副鼻腔炎」で、それが3カ月以上も続くと「慢性副鼻腔炎」といっている。

 発症メカニズムをより正確に知るには、副鼻腔の働き、また、どのように副鼻腔が存在しているかを知る必要がある。

 鼻は1日に約3万回も空気を吸い込んでいる。冬場は鼻の中で5度、湿度20%くらいの空気を、30度、湿度90%に加湿して肺へと送り込んでいる。さらに、粘液でホコリや細菌なども取り除いている。つまり、エアコンのような働きをしているのである。

 鼻から吸った空気が鼻道を通って気管支に行く間に副鼻腔という鼻腔以外の空洞があり、少しずつ換気が行われているところも通る。その空洞は「上顎洞(じょうがくどう)」「篩骨洞(しこつどう)」「前頭洞(ぜんとうどう)」「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」。この空洞は小さな自然口で結ばれ、ホコリや細菌、ウイルスなどを線毛で捕まえて排出している。「この副鼻腔に炎症が起きると排出すべき物が排出できずに膿がたまり、『鼻汁』『鼻詰まり』の症状が出てきます」。

 慢性化すると、それらの症状に「鼻茸(はなたけ)ができる」「頭痛」「においが分からない」といった症状までもが加わり、QOL(生活の質)を悪化させるのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆慢性副鼻腔炎(内視鏡下副鼻腔手術)の名医
 ▼自治医科大学付属病院(栃木県下野市)耳鼻咽喉科・市村恵一教授
 ▼独協医科大学病院(栃木県壬生町)耳鼻咽喉科・春名真一教授
 ▼東京慈恵会医科大学病院(東京都港区)耳鼻咽喉科・森山寛教授
 ▼聖路加国際病院(東京都中央区)耳鼻咽喉科・柳清副医長
 ▼横浜市立大学付属病院市民総合医療センター(横浜市南区)耳鼻咽喉科・石戸谷淳一準教授
 ▼大和徳洲会病院(神奈川県大和市)耳鼻咽喉科・望月高行部長

June 9, 2006 10:29 AM | トラックバック (0)

2006年06月08日

2006年06月08日

【第147回】腰やひざなどのストレッチも/昭和大学藤が丘リハビリテーション病院筒井広明院長

五十肩の治療(下)

 肩が痛くて歯が磨けなければ顔も洗えない、ファスナーの上げ下げもできなければシャツを脱いだり着たりもつらい-。重症の五十肩。もちろん、軽症でもQOL(生活の質)は下がってしまう。40代、50代の人々に多い五十肩。その治療は「薬物療法」「安静」「運動療法」である。

 ◆薬物療法 痛みが強いときには、肩を動かせるはずはなく、痛みの原因である肩関節の炎症を抑えるのが第1である。炎症を鎮める「消炎鎮痛剤の内服」。患部に直接注射して強力に炎症を鎮めるのが「ステロイド薬」。同じく注射として「ヒルアロン酸ナトリウム薬」も使われる。「薬で痛みが軽くなったからどんどんトレーニングを強くしていくのは間違いです。痛みが軽くなったからといって炎症がおさまったのではなく、肩の機能が改善したわけでもありません」と、五十肩など肩の治療で有名な昭和大学藤が丘リハビリテーション病院(横浜市青葉区)整形外科の筒井広明院長は言う。

 ◆安静 激しい痛みが続いているときは、安静を守る。三角巾(きん)を使って肩患部を固定する。「固定するといっても、関節の内圧をアップさせたり、関節組織を擦ったり伸張させたりしない。左右の肩の高さを平行にし、力を抜くことで、関節組織に加わる機械的刺激を極力減らすのです」。

 ◆運動療法 痛みが和らいできたら、運動療法。運動療法の基本はリラクセーション。「肩周辺の筋肉からすっかり力を抜いて、肩関節を慢性的なストレス状態から解放します」。例えば「アイロン体操」があるが、あのアイロンを持たずに、腕をダラッと落としてその腕の重みを感じることが大事。これだけで肩関節、筋肉が伸び、内側の筋肉であるインナーマッスルが自然と収縮する。「さらに、腱(けん)板トレーニングとしては、テーブルにひじをつける姿勢で座って、ひじを支点にして腕を左右にゆっくり水平移動させる『テーブルふきトレーニング』。これが腱板にパワーをつけるのです」。そして、肩の故障は肩の問題だけではないことを知ろう。「全身の運動の連鎖なのです。肩以外の場所、例えば腰やひざなどのストレッチなども良い影響が出ることがあります」。効果を見ながらステップアップしていくと、若さを取り戻した治りに結び付く。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆五十肩の名医
 ▼広島大学病院(広島市)整形外科・望月由講師
 ▼細木病院(高知市)スポーツ整形外科・森沢豊部長
 ▼福岡大学病院(福岡市)整形外科・柴田陽三助教授
 ▼熊本大学医学部付属病院(熊本市)整形外科・井出淳二助教授

June 8, 2006 02:34 PM | トラックバック (0)

2006年06月07日

2006年06月07日

【第146回】様々なテストで方針決定/昭和大学藤が丘リハビリテーション病院筒井広明院長

五十肩の治療(上)

 肩関節周囲の痛みやしびれに苦しめられる「五十肩」は、ほっておいても治ると安易に考えず、しっかりと診察を受けるべきである。肩関節周囲の疾患は五十肩のみならず「腱板断裂」や「石灰性腱板炎」などもあるし、それ以外に、ほかの怖い病気の症状が五十肩と思われる肩の痛みとなって出ていることもあるからである。整形外科を受診すると、まずは「問診」から始まる。

 ◆問診、視診、触診 「問診を行う前に、JOCスコアと問診表に書き込んでもらいます。JOCスコアでは夜間痛や日常生活動作などについてチェックしてもらいます。専門医の方々が評価しやすいものになっていますし、聞き逃しのないような工夫もされています」と、五十肩の治療で有名な昭和大学藤が丘リハビリテーション病院(横浜市青葉区)整形外科の筒井広明院長は言う。視診では全身のゆがみ、肩の形の違いなどを見ると共に、患者の目もしっかり見る。「患者さんと向き合うことで治療が始まります。画像や局所だけを見ていては、けっして患者さんは治せません」。そして、実際に肩に触れて診る。

 ◆理学所見 「他動運動による診察」「自動抵抗運動による診察」。さらに、症状を誘発させて腱板などの状態を診る「症状誘発テスト」を行う。

 ◆画像診断 「単純X線撮影」「MRI(磁気共鳴断層撮影)」。「肩が壊れるのは軟部組織なので単純X線では多くの情報は望めません。MRIが一般的で診断率が高い。このほか、撮り方で機能が見える『スカプラ・45X線撮影法』があります。肩関節の機能を診るには不可欠な画像診断です」。

 ◆機能診断 「運動の範囲」「自動運動の正確性」「運動軸のぶれ」などが調べられる。運動が正確に、運動軸がぶれずにできないと代償運動が生じ、関節に機械的刺激が加わってしまう。患者の体全体を動かして調べる。「ここまでくると病態が見えてきます。五十肩の場合は痛みと可動制限が主な症状です。最終的に症状の出ている所を刺激するテストをして総合的に診断ができ治療方針が決定します」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆五十肩の名医
 ▼済生会新潟第二病院(新潟市寺地)整形外科・塩崎浩之部長
 ▼名鉄病院(名古屋市西区)整形外科・杉本勝正部長
 ▼愛知医科大学病院(愛知県長久手町)整形外科・岩堀祐介助教授
 ▼信原病院(兵庫県龍野市)整形外科・橋本卓医師

June 7, 2006 09:19 AM | トラックバック (0)

2006年06月06日

2006年06月06日

【第145回】日常の心がけで予防できる/昭和大藤が丘リハビリテーション病院筒井広明院長

五十肩(下)

 肩周辺の痛みや不調。いわゆる五十肩をほっておいてはいないだろうか。以下の10項目中、3項目以上に該当すると、あなたは五十肩と思って間違いない。

(1)左右の肩の形(高さなど)が違う。
(2)肩甲骨がスムーズに動かない。
(3)肩が重だるい感じがする。
(4)肩を動かすと、ときどき痛いことがある。
(5)背中など、以前は手が届いていたところに手が届かなくなった。
(6)肩に痛みがあって動かない。
(7)何もしないでジッとしていても肩が痛い。
(8)肩だけでなく、腕までが痛い。
(9)夜、肩の痛みでなかなか眠れない。
(10)眠っていても、肩の痛みで起きてしまう。

 「該当項目が多い人は重症です。さらに、6番から10番に該当する人は専門医の診断と治療を受けるのが最善です」というのは、この「五十肩チェック」を作成した昭和大学藤が丘リハビリテーション病院(横浜市青葉区)整形外科の筒井広明院長。プロスポーツ選手の肩の治療も多く行っていることでも有名である。

「たかが五十肩」と思って専門医を受診せずにいる人が多い。が、「されど五十肩」である。「五十肩は明らかに肩の故障であり疾患です。放置しておいては本当の意味での治癒は難しい疾患です」。

 また、五十肩以外に四十肩ともいわれるように、肩の老化で起きるこの疾患は、50代のみならず40代にも多い疾患である。では、20代では五十肩は起きないのか。「五十肩は若い20代であっても発症する可能性があります。普通の人では老化に伴って起きる肩周辺の筋肉バランスの崩れが、プロスポーツ選手などのように特殊な肩の使い方、鍛え方をしている場合には、若くても起きてしまいます」。

 そうならないために、日常生活では次の点を実行すると五十肩対策に結び付く。

(1)荷物は両方の手、それぞれに平行に持つ。
(2)手作業は手前で、ひじの高さで行う。
(3)掃除機やモップは腕より足を先に出す。
(4)物を書くときは背筋の通った姿勢で。
(5)パソコン作業は手前に腕の置ける台を用意する。
(6)物を取るとき持ち上げるときは、上半身や腕だけで取らず、腰を入れるのが大事。
 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆五十肩の名医
 ▼船橋整形外科(千葉県船橋市)スポーツ医学センター・菅谷啓之医師
 ▼同愛記念病院(東京都墨田区)整形外科・中川照彦医長
 ▼昭和大学藤が丘リハビリテーション病院(横浜市青葉区)整形外科・筒井広明院長
 ▼信州大学医学部付属病院(長野県松本市)リハビリテーション部・畑幸彦講師

June 6, 2006 10:01 AM | トラックバック (0)

2006年06月05日

2006年06月05日

【第144回】基本的に自然治癒はない/昭和大藤が丘リハビリテーション病院筒井広明院長

五十肩(上)

 ある日突然、肩関節に痛みが走ったり、腕が思うように動かないといった症状が起きる。これを機に、これまで自然にできていた動作ができなくなる。

 それは「棚に手が届かない」「洗濯物が干せない」「髪が結えない」「歯が磨けない」「ファスナーの上げ下げができない」「上着が着られない」「胸ポケットの物が取れない」「戸の開閉ができない」など、ごく簡単な日常生活の動きが痛みのためにできない。

 肩関節の炎症が原因で起きている痛みで、その代表疾患が「五十肩」。「正しくは『肩関節周囲炎』です。ただ、肩関節周囲炎でもきちっと診断名のつくものは除外されますので、肩関節周囲炎イコール五十肩と思っていただいても間違いではありません」と昭和大学藤が丘リハビリテーション病院(横浜市青葉区)整形外科の筒井広明院長。

 その五十肩、一般的には40代、50代の人々に多く発生し“ほっておいても半年、長くても1年もすれば治る”とよくいわれる。「それは厳密に言うなら外れています」と筒井院長は指摘し、その理由を以下のように言う。「老化を背景とする五十肩。老化した部分に合わせるように他の部分の機能を低下させることで体全体のバランスを取り直したのです。つまり、人間の体は組織を守ろうとして肩を上手に使うことを学習し、痛くならないように肩を使うのです。これはけっして歓迎すべき『治り方』ではありません」。

 自然治癒したように見える治り方は、最も老化した部分に全体が合わせる治り方で、若々しさを保つ治り方ではない、ということである。これが“厳密にいうなら外れている”の意味である。

 この五十肩は加齢変化、老化に伴う肩関節周囲の不調、炎症。「肩周辺の組織が退行変性を起こし、そこにある種の刺激や外傷が生じることで、炎症が起こったり、腱板(上腕骨と肩甲骨を連結する筋肉で、肩甲下筋=けんこうかきん、棘上筋=きょくじょうきん、棘下筋=きょっかきん、小円筋=しょうえんきん、の4つの小さな筋肉からなっている)の一部に断裂が起こるなどした結果なのです」。だから、基本的には自然治癒は起こらないのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆五十肩の名医
 ▼北海道大学病院(札幌市北区)整形外科・末永直樹医師
 ▼青森労災病院(青森県八戸市)整形外科・佐藤英樹医師
 ▼東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)整形外科・井樋栄二教授(6月1日から)
 ▼桑野協立病院(福島県郡山市)整形外科・浜田純一郎副院長
 ▼群馬大学医学部付属病院(群馬県前橋市)整形外科・高岸憲二教授

June 5, 2006 09:35 AM | トラックバック (0)

2006年06月04日

2006年06月04日

【第143回】薬物療法の中核SSRI/ひもろぎ心のクリニック渡部芳徳理事長

社会不安障害の治療(下)

 米国同様、日本でも約14%の人が「社会不安障害(SAD)」、もしくはその可能性があるといわれている。今、注目の神経症の1つ社会不安障害の治療は、精神療法の「認知療法」と「薬物療法」で行われる。

 「ここへきて治療法が大きく変化しました」と言うのは「うつ病」や「不安障害」の治療で知られる、ひもろぎ心のクリニック(東京・豊島区)の渡部芳徳理事長。そして、以前の治療法を話す。「心理カウンセリングと薬物療法が行われてきました。薬物療法の中心は抗不安薬の服用。社会不安障害なので抗不安薬であれば問題はないのですが、抗不安薬のリスクとなる依存症を引き起こすケースが多かったのです」。

 ◎薬物療法 05年から「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」に社会不安障害の適応が追加されたことにより、SSRIが薬物療法の中核となった。脳内の神経伝達にはセロトニンなどの伝達物質が重要な役割を果たしている。ところが、SAD患者では、脳内のセロトニンが不足している状態になっているため不安が大きくなる。そこで、セロトニンの再取り込みをSSRIで阻害すると、セロトニン量が増加し不安を抑えてくれるのである。「このSSRIを少なくとも1年間は服用すべきです。そして、長く服用した方が薬を中止したときの再発は少なくなります」。

 ◎認知療法 認知とは物事の受け止め方。社会不安障害の患者には、まずこれが病気であることを教え、認知してもらうことが大事となる。さらに行動療法を加えることもある。実際に行動を繰り返すことで患者の適応力を高めていく治療法である。薬を使って不安を和らげて、例えば人前でスピーチをする。人前でドキドキしなかった。「この体験を繰り返すと、最終的には薬を服用しなくても、過剰な不安から回避をしなくなるのです」。

 寛解には約1年とみるケースが多いが、2~3年かかる人もいる。治療経過をチェックするには、社会不安障害評価尺度(LSAS)が用いられる。

 ◆社会不安障害評価尺度 24のチェック項目に答えていき、点数化するスコアシート。24の項目はこの1週間に感じている様子に最も近いケースを選択する。その点数によって「健常者」「境界型」「軽症」「中等症」「重症」が判断される。治療前と比較すれば回復度が分かる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆社会不安障害の名医
 ▼福島クリニック(大阪市北区)福島淳院長
 ▼はたけやまクリニック(北九州市小倉北区)畠山淳子院長
 ▼脇元クリニック(福岡市東区)脇元安院長
 ▼アイさくらクリニック(福岡市中央区)木村昌幹院長
 ▼いまとうクリニック(福岡市南区)今任信彦院長

June 4, 2006 09:21 AM | トラックバック (0)

2006年06月03日

2006年06月03日

【第142回】パーキンソン病と共通点多い/ひもろぎ心のクリニック渡部芳徳理事長

社会不安障害の治療(上)

 日本では社会不安障害(SAD)が見過ごされてきた。今、遅まきながら病気と認識され始めてきた社会不安障害とは、人前で発言しようとすると心臓がドキドキして震える。いわゆる緊張が過敏に出過ぎる人で、もう一歩進むと発言の場自体を避け、日常生活にも社会生活にも大きな支障をきたしてしまう病気で、不安障害の1つである。

 診察は精神科を受診し、まずは「問診」とともに「社会不安障害評価尺度(LSAS)」を用いての検査も受ける。このLSASは、検査としてかなり大きな信頼が寄せられている。

 「社会不安障害を判定する評価は高いです。加えて、治療の経過観察としても大いに役立ちます。病状が改善していくと、数値が確実に健常者域へと低下していきます」と「うつ病」や「不安障害」の治療で知られる、ひもろぎ心のクリニック(東京・豊島区)の渡部芳徳理事長は言う。

 もちろん、診断は問診とLSASだけで行うのではなく「鑑別診断」も行われる。「うつ病やパニック障害といった他の疾患との識別をしっかり行うことが重要です」。

 ◎うつ病 うつ状態に陥っていないときには、うつ病では不安障害の症状がない。

 ◎パニック障害 パニック障害では不安発作の起きるのが「予測不可能」。SADでは不安が予測できる。

 ◎統合失調症性人格障害 人との付き合いに全く無関心。一方、SADの患者は人との付き合いに関心はあるものの、それを恐れている。

 このほかに、神経内科領域の疾患であるパーキンソン病では、SADの一部として診断しても良いのでは、と考える専門医の意見もある。「中枢の黒質にある神経細胞の変性で起きるパーキンソン病は、特徴的な『振戦』『固縮』『動作緩慢』『姿勢保持障害』の4大症状が出てきます。すると、人前に出るのを避けるようになる人が多いのです。これはSADではありませんが、SADと共通する点が多いのです。治療もSADの治療を行うと症状が改善するからです」。

 加えて、家族歴が大いに診断の参考になる。「家族に人前でのスピーチを避けたりする、といった人が多いのです」。以上の診察を終えて、診断がなされ、治療に入る。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆社会不安障害の名医
 ▼たわらクリニック(横浜市神奈川区)田原康孝院長
 ▼なごやメンタルクリニック(名古屋市中村区)貝谷久宣理事長
 ▼西村クリニック(大阪府東大阪市)西村雅一院長
 ▼なんば太田クリニック(大阪市浪速区)太田幹夫院長

June 3, 2006 09:49 AM | トラックバック (0)

2006年06月02日

2006年06月02日

【第141回】LSAでチェック/ひもろぎ心のクリニック渡部芳徳理事長

社会不安障害(下)

 「人前に立つと足が震え、心臓がドキドキする」「人前に出ると顔が赤くなる」、だから「人前で話をするのを極力避ける」-あなたはこのようなことがあるのだろうか。あるとしたら「社会不安障害(SAD)」かもしれない。

 「日本では『対人恐怖症』『赤面恐怖症』『吃音(きつおん)恐怖症』などといわれてきた緊張過多の人々で、これは性格ではなく病気なのです。思春期、青年期の15歳くらいで発症する人が多く、社会的状況に顕著な恐怖、不安におびえているのです」と、社会不安障害の解説をするのは、「うつ病」や「不安障害」の治療を得意とする、ひもろぎ心のクリニック(東京・豊島区)の渡部芳徳理事長。

 診察は、まず問診を行う。受診の理由を聞き、社会不安障害が疑われるような場合は「LSAS(社会不安障害評価尺度)」を用いてチェックする。以下の24の質問に対して「恐怖感・不安感」0~3点の4段階、「回避」も0~3点の4段階で点数化する。答えるときは、この1週間の自分自身の思いに最も近い段階を選択する。

 (1)人前で電話をかける。
 (2)少人数のグループ活動に参加する。
 (3)公共の場所で食事をする。
 (4)人と一緒に公共の場所でお酒(飲み物)を飲む。
 (5)権威ある人と話をする。
 (6)観衆の前で何か行為をしたり話をする。
 (7)パーティーに行く。
 (8)人に姿を見られながら仕事(勉強)をする。
 (9)人に見られながら字を書く。
 (10)あまりよく知らない人に電話をする。
 (11)あまりよく知らない人たちと話し合う。
 (12)全く初対面の人と会う。
 (13)公衆トイレで用を足す。
 (14)ほかの人たちが着席して待っている部屋に入っていく。
 (15)人々の注目を浴びる。
 (16)会議で意見を言う。
 (17)試験を受ける。
 (18)あまりよく知らない人に不賛成であると言う。
 (19)あまりよく知らない人と目を合わせる。
 (20)仲間の前で報告する。
 (21)誰かを誘おうとする。
 (22)店に品物を返品する。
 (23)パーティーを主催する。
 (24)強引なセールスマンの誘いに抵抗する。

 評価の目安は、0~30点「健常者」、30~50点「境界域」、50~70点「軽症」、70~95点「中等症」、95点以上「重症」となる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆社会不安障害の名医
 ▼金杉クリニック(東京都練馬区)金杉和夫院長
 ▼神谷町ヒルサイドクリニック(東京都港区)文元秀雄院長
 ▼さいとうクリニック(東京都港区)沼田真一院長
 ▼やしまクリニック(東京都新宿区)八島章太郎院長
 ▼横浜クリニック(横浜市西区)山田和夫院長

June 2, 2006 01:21 PM | トラックバック (1)

2006年06月01日

2006年06月01日

【第140回】ニート、引きこもり原因にも/ひもろぎ心のクリニック渡部芳徳理事長

社会不安障害(上)

 「ニート」や「引きこもり」が、大きな社会問題となっている。それを「性格」と片付けていたりするケースが多いが、実は「社会不安障害(SAD)」という病気が原因のケースが意外に多く、深くかかわっている。

 「社会不安障害という病気であることを認知し、早く治療を受けるとニートや引きこもりの問題は大きく前進すると思われます」と指摘するのは「うつ病」「不安障害」などの治療で知られるひもろぎ心のクリニック(東京・豊島区)渡部芳徳理事長。

 社会不安障害とは、日本では「対人恐怖症」「赤面恐怖症」「吃音(きつおん)恐怖症」などといわれていたものである。つまり、人前に出ると非常に緊張しやすい。「それが性格ではなく病気なのです。よく知らない人々の前で、他人の注視を浴びる社会的状況に対し、顕著で持続的な恐怖を抱いてしまい、逃げだしたり、耐えるのに大変な苦痛を伴っている人は社会不安障害といえます」。

 顕著で持続的な恐怖を抱くケースは、社会不安障害ではない人々からすると、ささいな行動場面ととられる。例えば「人前で話す」「初対面の人と話す」「権威者の相手をする」「人前で文字を書く」「人前で食事をする」-このようなときに、パニック発作の形を取ることもある。「つまり定義として示すと『社会的状況や行為状況に対する顕著な恐怖』となります」。

 日本人での有病率はデータがない。ただ、米国のデータによると社会不安障害の生涯有病率は約14%。精神・神経疾患の中では「うつ病」「アルコール依存症」に次いで多い疾患となっている。

 その患者の多さで上をいく2つの疾患と社会不安障害は併存するケースが多い。「SADの方の3分の1は生涯にわたってうつ病に罹患(りかん)しており、逆にうつ病患者の5分の1は生涯にわたりSADを罹患しています」。同様に、SAD患者の19%はアルコール依存症である。「恐怖、不安から逃れるために酒の力を借りるのです。来院時にお酒のにおいのする人もいます。だから、より早期の治療が大事なのです」。

 SADを思春期や青年期に治療ができると、ニート予防のみならず、うつ病やアルコール依存症の合併予防にも結び付くのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆社会不安障害の名医
 ▼川口クリニック(埼玉県川口市)田玉逸男院長
 ▼ひもろぎ心のクリニック(東京都豊島区)渡部芳徳理事長
 ▼青山メンタルクリニック(東京都港区)中村稔院長
 ▼心療内科・神経科赤坂クリニック(東京都港区)貝谷久宣理事長
 ▼はりかえメンタルクリニック(東京都中野区)張替直基院長

June 1, 2006 11:45 AM | トラックバック (2)