健康連載ブログ

2006年04月30日

2006年04月30日

【第109回】似たような疾患が多い/慶応大学病院日比紀文教授

潰瘍性大腸炎(下)

 潰瘍(かいよう)性大腸炎は原因がまだ分かっていない。ただ、自己免疫の異常のほか、遺伝、欧米型食生活、ストレス、ウイルス感染説など取りざたされている。

 大腸に潰瘍が生じるので、下痢が頻繁に起こり、出血も。粘液便、粘血便が主症状で、重症ともなると、発熱、貧血、体重減少が現れる。そして、症状が同じように続いたり、急激に悪化するというより、良くなったり悪くなったりするところに特徴がある。悪くなるときには風邪、ストレス過多、体調不良などがきっかけとなることもある。

 その潰瘍性大腸炎は、診断をつけるのも簡単ではない。潰瘍性大腸炎、クローン病の診断・治療で有名な慶応義塾大学病院(東京・新宿区)消化器内科の日比紀文教授が診断方法について次のように言う。

 「まずは問診。ついで注腸造影検査や大腸内視鏡検査で調べます。原因が分かっていないので、ほかの似ている病気を『これは違う』『これも違う』と、1つ1つ除外して、最後に潰瘍性大腸炎が残るとそこで診断がつきます。いわゆる除外診断です」。

 問診で今の症状がどのようなもので、いつから始まり、どんなときに悪化するかなどを詳しく聞く。同時に「血液検査」や「便の培養」も行われ「注腸造影検査」「大腸内視鏡検査」が加わり、大腸内視鏡検査では目で炎症の範囲を確認できる。ただし、他の疾患を否定するため、炎症の重症度をみるために、組織を採って確認する。

 「似たような症状を起こす疾患が多いのです。カンピロバクター腸炎、アメーバ赤痢、虚血腸炎、腸結核などを間違いなく除外していけるか否かが重要なのです」。

 カンピロバクター腸炎はカンピロバクターという細菌で引き起こされる食中毒で、便の培養などでしっかり除外できる。アメーバ赤痢は、赤痢アメーバという原虫に感染して、やはり潰瘍性大腸炎とよく似た症状を引き起こすが、これも便検査や特徴的な大腸内視鏡像などで除外できる。

 診断がついたら、潰瘍性大腸炎患者を多く診ている医師であればそのまま治療に入ればいい。が、もしそうでなければ、専門医の診察を受けるべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆潰瘍性大腸炎の名医
 ▽慶応義塾大学病院(東京都新宿区)消化器内科・日比紀文教授
 ▽東京女子医科大学病院(東京都新宿区)消化器病センター内科・飯塚文瑛准講師
 ▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)消化器内科・渡辺守教授
 ▽北里大学病院(神奈川県相模原市)消化器外科・渡辺昌彦教授

April 30, 2006 09:57 AM | トラックバック (0)

2006年04月29日

2006年04月29日

【第108回】下痢・血便・粘血便が主症状/慶応大学病院日比紀文教授

潰瘍性大腸炎(上)

 患者がひたすら減少していく疾患があれば、逆に患者が右肩上がりに増えている疾患もある。潰瘍(かいよう)性大腸炎の患者は現在8万人を超えている。患者数が多くなっている「特定疾患」、いわゆる難病に指定されている疾患である。「潰瘍性大腸炎は直腸の粘膜に炎症が起きる人、また直腸から大腸全体に炎症が起きる人など、炎症の起きる範囲には多少の違いはあっても、基本的には大腸に炎症が起きて潰瘍までも引き起こす病気をいいます」と、潰瘍性大腸炎、クローン病の診断・治療で知られる慶応義塾大学病院(東京都新宿区信濃町)消化器内科の日比紀文教授はいう。

 炎症は直腸から上へと向かうことが多いので、炎症の範囲で大きく3タイプに分類されている。

 ◆直腸炎タイプ 直腸だけに炎症、潰瘍が限局している。

 ◆左側(さそく)大腸炎タイプ 下から、直腸、S字結腸、下行結腸に炎症、潰瘍ができる。これらは体の左側にある。

 ◆全大腸炎タイプ 盲腸も含めて大腸全体に炎症、潰瘍ができる。

 「大腸の働きには水分吸収、便通調節が大事ですが、それが障害されてしまうので、下痢を引き起こします。回数が多くなるばかりか、突然の便意に襲われることもあり、腹痛、腹部不快感もあります」。さらに、粘膜が障害されるので下血も起こし、症状が重症化すると貧血、体重減少、倦怠(けんたい)感がでてくる。「下痢、血便、粘血便が主症状です」。20代の人々に多いものの、どの年代でも発症する病気である。

 これほど患者が増えたことに対して、膠原(こうげん9病などのように、原因を「免疫異常」と考える研究者は多い。免疫は外敵の侵入に対してそれをたたいて自己防衛する働きだが、何らかの異常で自分の体をたたいてしまうのである。このほか、欧米などにはこの病気で苦しむ人の頻度が日本の5~10倍にものぼるとあって、欧米型の食事などもあげられている。が、それもまだ解明されてはいない。原因は分からないので根本的治療がない。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆潰瘍(かいよう) 炎症は粘膜にできた赤いびらん状態。皮膚に起きた擦り傷のようなもの。潰瘍は大腸の壁面の粘膜のみならず、さらに深部までただれが及んだ状態。

 ◆潰瘍性大腸炎の名医
 ▽旭川医科大学付属病院(北海道旭川市)第3内科・高後裕教授
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)第1外科・佐々木巌教授
 ▽新潟大学医歯学総合病院(新潟市)第1外科・畠山勝義教授
 ▽東邦大学医学部付属佐倉病院(千葉県佐倉市)内科・鈴木康夫助教授

April 29, 2006 11:20 AM | トラックバック (0)

2006年04月28日

2006年04月28日

【第107回】日帰りできる腹腔鏡下摘出手術/湘南厚木病院篠崎伸明院長

胆石症の治療(下)

 胆のうや胆管に石ができる胆石症。これが検査で分かり、それ以降、定期的に検査を受けて石が大きくなったり、発作(疝痛=せんつう=と表現される激痛)を繰り返すようであれば治療が勧められる。

 胆石症の治療には「溶解療法」「破砕療法(体外衝撃波破砕術)」「腹腔(ふくくう)鏡下胆のう摘出術」「内視鏡的胆石除去術」がある。「ところが、今日ではほとんど行われなくなった治療も出てきています」と、湘南厚木病院(神奈川県厚木市)の篠崎伸明院長は指摘する。そのほとんど行われなくなった治療とは-。

 「溶解療法と破砕療法です。溶解療法は石を溶かす薬を使いますが、あまり効果がないのです。無症状のサイレントストーンの場合はそれでもいいのですが、症状が出ているときは薬で時間を費やすのは論外です」。もう1つの破砕療法は外部から胆石に衝撃波を当てて石を細かく砕いて排出しようという治療法。「石は細かく砕かれても総胆管を通ることになり、合併症が多発し、今はほとんど行われません」。

 勢い胆石の治療は腹腔鏡下胆のう摘出術になっている。「術者の目だけで見るのではなく、チーム5人の目がモニターを見ていますので、安全な手術だと思います」。

 90年から日本で開始された腹腔鏡下胆のう摘出術は、基本的には腹部4カ所(3カ所の施設もある)に1センチ(2カ所)と5ミリ(2カ所)の孔(あな)を開け、そこから腹腔鏡や手術道具を挿入してモニターを見ながら胆のうを摘出してくる手術である。全身麻酔下で行われ、手術時間は約1時間。開腹の場合は10~15センチは腹部を切るので、それと比べると患者の体への負担は極めて少ない。

 「体に優しい手術だからこそ、日帰り手術もできるのです。日帰りを希望した患者さんの60%が日帰りできており、40%が1泊もしくは2泊になっています」。ただ、肥満患者のケースなどでは胆のうが腹腔鏡では見えないことがあり、そういう場合は開腹手術に移行する。2~3%程度であるという。

 胆のうにある石は腹腔鏡下胆のう摘出術が行われるが、総胆管などに石が詰まっているケースが10%程度あるが、この場合は「内視鏡的胆石切除術」が行われる。口から内視鏡を入れて行う治療である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆胆石の腹腔鏡手術の名医
 ▽関西医科大学付属滝井病院(大阪府守口市)外科・權(こん)雅憲助教授
 ▽松原徳洲会病院(大阪府松原市)外科・佐野憲院長
 ▽出雲徳洲会病院(島根県出雲市)外科・田原英樹副院長
 ▽佐田病院(福岡市中央区)外科・佐田正之院長

April 28, 2006 10:18 AM | トラックバック (0)

2006年04月27日

2006年04月27日

【第106回】右上腹部痛は検査重要/湘南厚木病院篠崎伸明院長

胆石症の治療(上)

 胆のうなどに石ができる胆石症は、無症状のサイレントストーンであれば問題はないが、中には激痛を起こしたり、さらには合併症を引き起こし、生命にかかわることもある。

 また、サイレントストーンでも、いつ症状が現れるかは分からないし、胆石とばかり思っていたら、胆のうがんもあったということもある。だからこそ、定期的な検査は必要。また、初めて右上腹部痛の発作に襲われたときには、症状が消えても、しっかりと検査を受けることが重要である。

 「胆石の検査で、まず必ず行われるのが『腹部超音波検査』です。痛みなど全く無縁で、外来ですぐにできるとあって、患者さんの体への負担がありません。だから人気です。それに『血液検査』も欠かせません」と、湘南厚木病院(神奈川県厚木市)の篠崎伸明院長は言う。

 ●腹部超音波検査(腹部エコー) 腹部に超音波が通りやすいようにゼリーを塗って超音波発信器のプローベを滑らせていく。そして、超音波の反射波(エコー)を受け、その画像化したものをモニターで見て行う検査。胆石の有無、大きさ、さらに胆石の成分も推測できる。胆のうの中にある石であれば、まず100%発見できる。

 ●血液検査 「胆石による合併症や肝機能の状態を知るのに欠かせません。肝機能を示すGOT、GPT、ALP(アルカリフォスファターゼ)、γ(ガンマ)-GTPをチェックします。胆石で膵(すい)炎を起こすこともありますので、血清アミラーゼなどのチェックもしっかり行う必要があります」。

 ●腹部CT(コンピューター断層撮影)検査 腹部を輪切り状に調べることで、胆石の有無、大きさ、場所、石の数などのほか、胆石の成分も分かる。「胆のうがんとの鑑別も、この検査ではできます。そして、何より石灰化を見るのです。それによって治療方法も変わるからです」。腹腔(ふくくう)鏡での手術ではなく、薬で溶かす方法も考えられるからである。

 このほか、状況に合わせて「超音波内視鏡検査」「MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影法)」「ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)」なども選択される。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆胆石の腹腔鏡手術の名医
 ▽湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)外科・渡部和巨部長
 ▽佐久総合病院(長野県佐久市)日帰り手術センター・大井悦弥センター長
 ▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)消化器外科・二村雄次教授
 ▽泉大津市立病院(大阪府泉大津市)内視鏡外科・永井祐吾副院長

April 27, 2006 11:07 AM | トラックバック (0)

2006年04月26日

2006年04月26日

【第105回】サイレントストーンに注意/湘南厚木病院篠崎伸明院長

胆石症(下)

 胆のうや胆管に石ができる胆石症の人は、日本の成人には1000万人いるという。およそ10人に1人になるが、これらの人が全員治療を必要とするわけではない。「胆石があっても無症状の人『サイレントストーン』と呼んでいますが、こういう人は問題はありません。無症状のまま生涯を全うすることができます」と、胆石症の日帰り手術を日本に定着させた1人、湘南厚木病院(神奈川県厚木市)の篠崎伸明院長は言う。

 無症状の人は胆石症の人の70~80%。逆にいうと、20~30%の人は症状が出て治療を必要とするのである。多くは天ぷら、ステーキ、焼き肉など脂っこい物を食べた後に症状は出てくる。胆汁を出すために胆のうが収縮し、それに伴って胆石が動いて胆のう粘膜を刺激し、痛みが生じる。

 また、胆石が胆管にこぼれ、胆管をふさいだり、急性の胆のう炎を引き起こすと痛みが出る。この痛みは単なる痛みではなく「疝痛(せんつう)発作」といわれ、激痛である。

 ごくまれには、胆石が腸管に排出され、便と一緒に出されてしまうこともあるが、多くは痛みが治まったり、また引き起こされたりして急性胆のう炎といった合併症を起こしてしまう。「この場合は緊急に治療が必要となります。急性胆のう炎の症状は発熱と腹痛。細菌が感染して繁殖し、炎症を起こすのです。糖尿病の方は免疫力が低下しており、感染症にかかりやすい状態になっているので、サイレントストーンから、ある日突然に急性胆のう炎を起こすケースがあるので、特に注意してほしいですね」。

 さらに、胆管と胆のう管が一緒になって総胆管として十二指腸へと入るが、その総胆管に石がこぼれたときには、症状の有無にかかわらず胆石を取り除く必要がある。「急性胆管炎では細菌感染症の敗血症を起こしやすく、多臓器不全に至るなど、生命の危機にさらされるからです。当然、黄疸(おうだん)も現れます」。

 だから、胆石があるのが分かっている場合は、定期的な検査が大事である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆胆のう 胆のうは「ナス」のような形をした6~8センチくらいの臓器で、十二指腸の上にある。肝臓で作られた消化液の胆汁をためておき、食事を取ったときに胆のうが収縮して胆汁が絞り出される。

 ◆胆石の腹腔鏡手術の名医
 ▽虎の門病院(東京都港区)消化器外科・渡辺五朗部長
 ▽東邦大学医療センター大橋病院(東京都目黒区)第3外科・炭山嘉伸教授(院長)
 ▽帝京大学溝口病院(川崎市高津区)外科・村田宣夫教授、山川達郎名誉教授
 ▽湘南厚木病院(神奈川県厚木市)篠崎伸明院長、小銭太朗副院長

April 26, 2006 10:48 AM | トラックバック (0)

2006年04月25日

2006年04月25日

【第104回】患者の特徴は「4つのF」/聖路加国際病院衛藤光部長

胆石症(上)

 「意志をしっかり持っている人」は立派だが、体の中の石は、基本的にできないに越したことはない。しかし、実際には石のできる人が増えている。胆石の場合、成人1000万人が持っているといわれているので10人に1人という多さ。

 胆石とは胆のうや胆管にできる結石で、大きく3種類に分けられる。

 <1>コレステロール結石 胆のうは肝臓で作られた消化液である胆汁をためておくところで、食事をすると胆のうが収縮して胆汁が絞り出される。その胆汁の主成分がコレステロールで、これが結晶化して石になった。白、あるいはクリーム色。

 <2>ビリルビン結石 胆汁の色素成分がビリルビンで、便の黄色はこのビリルビンの色。そのビリルビンが固まったもので、色は褐色。

 <3>混合結石 コレステロールとビリルビンが混じった石。

 「昭和40年代くらいまではビリルビン結石が多かったのですが、今はコレステロール結石が多くなっています」と言うのは、胆石症の日帰り手術を多く手掛ける湘南厚木病院(神奈川県厚木市)の篠崎伸明院長。そして、その理由を2つ付け加えた。

 「第1は、食事の欧米化です。つまり、脂肪分の多い食事となると、基本的にコレステロールが増えてしまい、石ができやすいのです。第2は、朝食を抜いてしまう不規則な食生活です。胆のうに胆汁をためておき、食事を取ると絞り出されます。朝食を抜くと15時間程度、胆汁が絞り出されない状態になりますので、胆のうの胆汁が濃縮してしまい、石ができやすくなるのです」。

 コレステロール結石のみならず、石のできやすい患者の特徴もあるといわれている。それは、すでにかなり知られるところとなった「4つのF」。Fから始まる4つとは-。<1>Fine(元気)<2>Fatty(体格がよい)<3>Forty(40歳以上)<4>Female(女性)である。つまり「元気で体格がよい40歳以上の女性」ということ。食欲旺盛で何でもモリモリ食べると肥満気味になる。女性とされるのは男女比が1対2で女性に多いから。ただし「女性ホルモンが関係しているとはいわれますが、まだ理由はよく分かっていません」ということである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆胆石の腹腔鏡手術の名医
 ▽手稲渓仁会病院(札幌市手稲区)消化器病センター・真口宏介センター長
 ▽自治医科大学付属病院(栃木県南河内町)消化器外科・永井秀雄教授
 ▽埼玉医科大学総合医療センター(埼玉県川越市)外科・橋本大定教授
 ▽杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)消化器・一般外科・跡見裕教授

April 25, 2006 08:53 AM | トラックバック (0)

2006年04月24日

2006年04月24日

【第103回】主流はコンビネーション/聖路加国際病院衛藤光部長

乾癬の治療(下)

 治りにくいといわれる皮膚疾患の「乾癬(かんせん)」は、外用薬、内服薬、紫外線療法が治療の3本柱。今回は紫外線療法を紹介する。

 「紫外線には炎症を抑えたり、皮膚の新陳代謝を抑える働きとともに、ビタミンDを体の中に作り皮膚を正常に戻す働きもあります。だから乾癬の治療に紫外線が使われるのです」と、紫外線療法の有用性を話すのは、聖路加国際病院(東京・中央区)皮膚科の衛藤光部長。

 紫外線療法には「PUVA(プバ)療法」「UVB療法」「ナローバンドUVB療法」の3方法が行われている。

 ●PUVA療法 光増感作用、つまり紫外線に反応しやすい「ソラレン」という薬を内服、もしくは患部に塗る。その後、波長の長い紫外線のUVAを1~2時間照射する方法である。ただし、服用するソラレンは毒性が強く、妊婦には禁忌とされている。

 ●UVB療法 蛍光管から中波長の紫外線のUVBが出る。50センチくらい離して患部だけに照射する。健康部には照射しない。

 ●ナローバンドUVB療法 「UVBが乾癬に効果のあることは以前から分かっていましたが、単独では日焼けの問題があって難しかったのです。そのUVBの中から乾癬により効果のある311~312ナノメーターの非常に幅の狭い波長を照射する方法です。だから、日焼けが起こりにくくPUVA療法と同等以上の効果があるとされています」。

 この療法は患者の多いヨーロッパ諸国ではすでに一般的だが、日本には聖路加国際病院をはじめとしてまだ10台程度しか機械が入っていないので、どこでも受けられるというわけにはいかない。「週に2~3回(1回に5~7分程度照射)を20回で1クールとしています。40回受ける患者さんもいます。全身照射なので、乾癬が全身に広がっている中等症から重症の人が適応です。限局タイプの方は外用薬になります」。

 紫外線療法に外用薬、内服薬。「いくつかの治療を半年間ずつ行っていき、副作用のリスクを減らすローテーションセラピーという方法がありました。今はむしろコンビネーションセラピーです。紫外線プラス外用薬といった具合に、上手に治療法を組み合わせて副作用を抑えるのです」。今日の治療の主流はコンビネーション治療なのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆乾癬の名医
 ▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)皮膚科・片山一朗教授
 ▽近畿大学医学部付属病院(大阪府大阪狭山市)皮膚科・川原繁助教授
 ▽山口大学医学部付属病院(山口県宇部市)皮膚科・武蔵正彦教授
 ▽高知大学医学部付属病院(高知県南国市)皮膚科・小玉肇教授
 ▽福岡大学病院(福岡市城南区)皮膚科・中山樹一郎教授

April 24, 2006 11:53 AM | トラックバック (1)

2006年04月23日

2006年04月23日

【第102回】外用、内服薬と紫外線療法/聖路加国際病院衛藤光部長

乾癬の治療(上)

 原因がまだよく分かっていない皮膚疾患「乾癬(かんせん)」。皮膚が赤くなって盛り上がり、皮膚に鱗屑(りんせつ)というガサガサした薄皮ができ、それがフケのようにはがれ落ちていく。

 「原因が分かっていないので根本治療はなく、治りにくいのは確かですが、一生持ち続ける病気ではなく、完治するケースもあります。1個1個の発疹(ほっしん)を治し、皮膚の改善はできます。新しく出てくる発疹を事前に抑えることはできなくても、できている発疹を治して日常生活に支障のないようにする。そういう患者さんが多いのです」と、聖路加国際病院(東京・中央区)皮膚科の衛藤光部長は患者の状況を話す。

 このことでも分かるように、乾癬の治療の基本は「症状の良い期間を長くする」ことにある。治療の3本柱は、外用薬、内服薬、紫外線療法。「そのときに、発疹の範囲と発疹の状態(性格)を客観的に診て、重症度に合った治療が的確に行われるのが重要です」。

 ●外用薬 「ステロイド薬」「ビタミンD3薬」がある。患部に1日1~2回塗り続ける。ステロイド薬は炎症を抑える働きがあり、重症度に合わせて選択して使う。効果は速い。「ステロイド薬には副作用がありますので、医師の指示を守って使用してほしい」。ビタミンD3薬は長期間塗り続けても副作用が少ない。そのため、ステロイド薬と一緒に使いながら、改善してくるとビタミンD3薬のみで治療を行っていく。

 ●内服薬 「いずれも副作用等がありますので、医師の服薬指導をしっかり守ることがポイントです」。内服薬には「ビタミンA誘導体(レチノイド)」「免疫抑制薬(シクロスポリン)」「抗リウマチ薬(メソトレキセート)」が使われる。ビタミンA誘導体は表皮の新陳代謝を抑えるが、胎児に影響を及ぼす危険があるので、避妊が必要。それに同意する文書にサインする。免疫抑制薬は自己免疫疾患として体が働く点を抑える。腎臓障害を起こすことがあるので、腎機能の悪い人は服用できない。また、服薬中は腎機能チェックが欠かせない。抗リウマチ薬は、重症の方には効果があるが、肝機能障害を起こすことがあるので、肝機能の悪い人には使えない。また、服薬中は肝機能チェックが不可欠。「同じ薬を長く服用するときも、医師のきちっとした管理のもとで量を調整すれば大丈夫です」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆乾癬の名医
 ▽名古屋市立大学医学部付属病院(名古屋市瑞穂区)皮膚科・森田明理教授
 ▽三重大学医学部付属病院(三重県津市)皮膚科・水谷仁教授
 ▽市立四日市病院(三重県四日市市)皮膚科・谷口芳記部長
 ▽日本生命済生会付属日生病院(大阪市西区)皮膚科・東山真理部長

April 23, 2006 10:38 AM | トラックバック (0)

2006年04月22日

2006年04月22日

【第101回】皮膚生検でタイプ判断/聖路加国際病院衛藤光部長

乾癬(下)

 注目されている乾癬(かんせん)とは、赤く盛り上がった発疹(ほっしん)に鱗屑(りんせつ)ができてカサカサした薄皮がはがれていく慢性疾患。重症のケースでは全身に広がることもある。

 このような症状がある場合は、皮膚科を受診する。まずは何をおいても皮膚の診断。「問診が重要なのですが、それと同時に患者さんの患部を見て、触ってというのが最も大切です。多くの場合は問診、視触診だけで正しい診断がつきます」と、乾癬の患者の会をバックアップする聖路加国際病院(東京・中央区)皮膚科の衛藤光部長は言う。

 もちろん、問診、視触診で100%というわけにはいかないこともある。「乾癬のごく初期の段階では診断がつかないこともあります。紛らわしい病気もあるからです。そういうときは、皮膚生検を行って顕微鏡で皮膚の表皮や真皮の状態を調べます」。皮膚生検では局所麻酔をして米粒くらいの皮膚を切除する。あとは2針くらい患部を縫う。「病変部の皮膚には乾癬特有の病理組織像があるので、はっきり分かります」。

 皮膚は表皮の下に真皮があり、真皮の部分には毛細血管が入ってきている。表皮は0・2~0・4ミリの細胞層だが、乾癬になると表皮部分の細胞層が大きく波打つように幅が0・1~0・6ミリと大きくなる。そして、真皮部分に白血球が集まっている。ここで確定診断がつく。

 そのときには、乾癬でもどのタイプなのかも、当然診断がつく。乾癬には「尋常性乾癬」「膿疱(のうほう)性乾癬」「乾癬性紅皮症」「急性滴状乾癬」などがある。

 尋常性乾癬は乾癬の90%を占め、尋常性(最も普通の)の意味が示すように、皮膚に紅斑ができ、その表面が鱗屑に覆われる。乾癬性紅皮症は尋常性乾癬が全身に広がった状態。膿疱性乾癬はカサカサした鱗屑の部分だけではなく、そこにジクジクとしたうみを持つ小さな発疹の膿疱も生じる。多くは尋常性乾癬が悪化して起きる。急性滴状乾癬は風邪や扁桃(へんとう)炎の後に、体中に水滴くらいの小さな乾癬が多発する疾患である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆乾癬第9回学習懇談会 5月14日(日)13時30分から東京慈恵会医科大学(東京都港区西新橋、都営地下鉄三田線御成門駅から徒歩5分)大講堂で開催される。乾癬の方、家族の方どなたでも参加OK。参加費は非会員1000円。講演は安倍正敏群馬大学医学部講師の「“劇”安!!ビフォーアフター」。

 ◆乾癬の名医
 ▽東京逓信病院(東京都千代田区)皮膚科・江藤隆史部長
 ▽東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)皮膚科・中川秀己教授、上出良一教授
 ▽日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)皮膚科・照井正教授
 ▽東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)皮膚科・小沢明教授

April 22, 2006 11:25 AM | トラックバック (0)

2006年04月21日

2006年04月21日

【第100回】朝起きてコップ1杯の水で胃腸刺激

乾癬(上)

 患者が増加し続けている皮膚疾患として「乾癬(かんせん)」が注目を集めている。赤く盛り上がった発疹(ほっしん)に、カサカサした薄皮、いわゆる鱗屑(りんせつ)ができてははがれていく慢性疾患で、かゆみや関節に痛みを伴うこともある。

 白人に多く、有色人種に少ない傾向があり、人口に対する発生頻度ではデンマークが最も多く2・9%、34人に1人が乾癬患者。米国は2%で100人に2人。日本は0・1~0・2%で1000人に1~2人。男女比では男性が女性の2倍である。

 日本の患者数は86年に5000人をわずかに切っていたのが02年には3万人を超えてしまった。「欧米型の食生活の普及とともに増えてきました。戦前の食生活の貧しいときには乾癬はみられませんでした。食生活が豊かになり、脂肪や肉をどんどん食べるようになって増えてきたのです」と指摘するのは、聖路加国際病院(東京・中央区)皮膚科の衛藤光部長。

 乾癬の発病の原因は、まだよく分かっていないが、体質的素因の上に、欧米型の生活といった環境因子が重なって発症するといわれている。「環境因子はそれだけではなく、気候、喫煙、アルコール、不眠、精神的ストレスのほか、風邪や扁桃(へんとう)炎などの感染症が引き金となって起こることもあります」。

 体質的素因とはその人が持って生まれた特徴のことで、自己免疫反応が起きやすいといわれている。実際、乾癬は、つめを含むあらゆる場所にできるものの、刺激を受けやすいひじ、ひざ、お尻、頭にできやすい。「日の光をよく浴びるところには少ないという特徴もあります」。

 患部では表皮の新陳代謝が活発になる。正常な皮膚は約28日でアカとなってはがれ落ちるのに対し、乾癬の病変部では約4日でアカとなってはがれ落ちてしまう。そのため、正常な表皮が作られず、皮膚がカサカサしてしまうのである。体内で自己免疫反応が起き、白血球などの血液成分が集まり、炎症を起こすので毛細血管を拡張させる。そのため、患部が赤く見える。「もぐらたたきのように発疹を治すことはできますが、事前に発疹を抑えることはできません。上手にコントロールできればQOL(生活の質)は悪くなりません」。乾癬はコントロール可能な病気なのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆乾癬の名医
 ▽小林皮膚科クリニック(札幌市北区)小林仁院長
 ▽山形大学医学部付属病院(山形市)皮膚科・三橋善比古助教授
 ▽自治医科大学付属病院(栃木県南河内町)皮膚科・大槻マミ太郎教授
 ▽聖路加国際病院(東京都中央区)皮膚科・衛藤光部長

April 21, 2006 10:56 AM | トラックバック (0)

2006年04月20日

2006年04月20日

【第99回】朝起きてコップ1杯の水で胃腸刺激/東京医科大学病院酒井義浩教授

過敏性腸症候群の治療(下)

 過敏性腸症候群はストレスが大きな誘因となっている。が、そのストレスが何なのかを突き止めるのは非常に困難を要する。「そこで、ストレスを解消する方法を患者さんとの話の中でアドバイスします」と、東京医科大学病院(東京・新宿区)消化器内科の酒井義浩教授は言う。

 そして続ける。「ストレスに加え、過敏性腸症候群の治療では、生活習慣の改善がとても重要になります。これらを行うことで、使っている薬もしだいに減らせ、最終的には薬を服用しなくてもよくなります」。

 ◆ストレス解消 ストレスを発散し、解消するには、運動や大声で歌うことを酒井教授は勧める。「家路に就くときは40分くらい歩いて帰りなさい、と言っています。また、大声で歌うのもいい、特にカラオケよりも合唱のグループに入って大声で歌うのが効果的です」。このほか、ヨガ、ストレッチ、気功など、すぐに行えて瞬間的にストレスを忘れていられるものがベスト。

 ◆生活習慣の改善 まずは規則正しい生活。「朝起きてコップ1杯の水を飲んで胃腸が刺激され、さらに朝食をとると便が出るタイミングができます。人間の体内時計はそのようにセットされているのです」。そのためには早寝も大事になる。早寝をするには、日中に十分日の光を浴びてウオーキングを行っておく。

 快便のためには食事の内容も重要。「朝食ではパンを食べる方が多くなりましたが、過敏性腸症候群の患者さんには、朝昼夕とも食物繊維の多いご飯を勧めています。白米でいいのですが、できれば雑穀を加えます。ただ、玄米はリンが多くてカルシウムを排出させてしまうので、女性には勧めません」。

 豆類も繊維が多く、きのこ類、海藻類、野菜をしっかり摂取する。食物繊維の摂取量は1日25グラムが目標。毎食1品は食物繊維の多い食材を摂ると、便通は改善へと向かう。「みそ汁、納豆などの発酵食品もお勧めです。腸内の善玉菌を増やしてくれるからです」。

 そして、1日3食規則正しく食べると、過敏性腸症候群は改善へと向かい、薬の服用もいらなくなる。

 ◆過敏性腸症候群 腹痛や腹部不快感が1年のうち12週以上(1週間のうち1日でもあると1週とする)ある。その上、「腹痛などは排便で改善する」「排便の回数の変化で腹痛などが始まる」「腹痛などは便の形状の変化から始まる」の2項目にあてはまり、腸に炎症や潰瘍(かいよう)がないものをいう。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆過敏性腸症候群の名医
 ▽大阪鉄道病院(大阪市阿倍野区)消化器内科・清水誠治部長
 ▽福岡大学筑紫病院(福岡県筑紫野市)消化器科・松井敏幸教授
 ▽済生会熊本病院(熊本市)須古博信院長
 ▽琉球大学医学部付属病院(沖縄県西原町)第1内科(光学医療診療部)・金城福則助教授

April 20, 2006 08:35 AM | トラックバック (0)

2006年04月19日

2006年04月19日

【第98回】第1選択薬ポリカルボフィルカルシウム/東京医科大学病院酒井義浩教授

過敏性腸症候群の治療(上)

 腹痛や腹部不快感に伴って便秘、下痢、また、それらを交互に繰り返す過敏性腸症候群。適切な診察でそれと診断がつくと、治療になる。「最初に、過敏性腸症候群の症状は改善していきますが、基本的には一生付き合っていく病気ということを知ってもらいます。もちろん、症状を改善することでQOL(生活の質)は良くなり、普通の方々と同じ生活ができます。それを理解してもらい、前向きな気持ちで治療を始めます」と言うのは、東京医科大学病院(東京・新宿区)消化器内科の酒井義浩教授。

 まずは薬物治療となる。基本的に第1選択薬となるのは「ポリカルボフィルカルシウム」。

 ◆ポリカルボフィルカルシウム 便秘、下痢、どちらにも効果のある薬。それというのも便形状改善薬だからである。2000年に認可された薬で「食物繊維と同じような働きをする高吸水性ポリマーでできているので、大変吸水性がいいのです」。そのため、便が下痢のときは正常な便に、便秘のときは水分吸収で軟らかくなり、やはり正常な便になる。さらに、高吸水性ポリマーは体に吸収されることがない。だから「副作用の心配はありません」ということである。

 第1選択薬であるポリカルボフィルカルシウムだけでは、症状の改善が難しいときには便秘に対しては下剤、下痢に対しては下痢止めも併用して処方される。「便秘にはマグネシウム、下剤にはカルシウムも使います」。このほか「腸内細菌調整薬」も使われる。「乳酸菌製剤とかを使い、腸内の善玉菌を増やして下痢、便秘を改善に向かわせます」。

 それでもコントロールが難しいときは「精神安定薬」が使われることもある。「基本的には薬を使って反応を診て、そして、薬の処方を調整していきます。それと同時に、私たちは心療内科と同じように患者さんの話を十分に聞き、ストレスになっている原因を探すことも時間をかけて行っています」。

 ストレスの原因、過敏性腸症候群を引き起こしているストレス原因が分かると、症状は大きく改善へと向かう。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆過敏性腸症候群の名医
 ▽北里大学東病院(神奈川県相模原市)消化器疾患治療センター・勝又伴栄センター長
 ▽藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)消化器内科・平田一郎教授
 ▽多田消化器クリニック(京都市中京区)多田正大院長

April 19, 2006 11:58 AM | トラックバック (0)

2006年04月18日

2006年04月18日

【第97回】基準3項目と内視鏡で診断/東京医科大学病院酒井義浩教授

過敏性腸症候群(下)

 ストレスが大きく関係して下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群。日本人の10人に1人はこの病気に悩まされているといわれている。「過敏性腸症候群は腸の中に炎症や潰瘍(かいよう)のないことが条件です。まずは専門医を受診して検査を受けることが大事です」と、悩んでいないで受診を勧めるのが東京医科大学病院(東京・新宿区)消化器内科の酒井義浩教授。

 受診すると、まずは「問診」から始まる。「問診は十分に時間をとって行います。どのようなときに症状が起き、それは下痢、便秘、それとも交互に繰り返すのかなど詳しく聞きます。これを『ローマ2基準』に当てはめます」。「ローマ2基準」とは過敏性腸症候群の世界の診断基準である。

 〈ローマ2基準〉<1>~<3>のすべてに当てはまる。

 <1>腹痛や腹部不快感がある。

 <2>腹痛や腹部不快感が過去1年間に12週以上あった(1週間に1日でも過敏性腸症候群が疑われる症状があれば1週とする)。

 <3>以下の3項目のうち2項目以上当てはまる。(A)腹痛、腹部不快感は排便後に改善する(B)腹痛、腹部不快感は排便の回数が多くなったり、少なくなったりの変化で始まる(C)腹痛、腹部不快感は便の形状の変化で始まる。

 これに、血液検査、エックス線検査(注腸造影)、大腸内視鏡検査を行う。「今はなるべく被爆を避けるということからエックス線検査は行わず、大腸内視鏡検査ですませています。ローマ2基準に当てはまり、内視鏡で腸に炎症、潰瘍がないと、過敏性腸症候群の可能性が極めて高くなります」。

 確定しないのは、そのほかに同じような症状を引き起こす病気を除外していく必要があるからで、過敏性腸症候群ではこの除外診断も必要なのである。

 大腸がん、潰瘍性大腸炎、クーロン病などは内視鏡で除外でき、食物アレルギーなどのあるときは、当然、除外される。「そのあたりは、問診が大事になります。だから消化器内科は心療内科と同じくらいに問診に時間をかけているのです」。除外するものを除外して、最終的に「過敏性腸症候群」と診断される。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆過敏性腸症候群の名医
 ▽東京医科大学病院(東京都新宿区)消化器内科・酒井義浩教授
 ▽順天堂大学付属順天堂医院(東京都文京区)消化器内科・荻原達雄助教授
 ▽アーツクリニック大崎(東京都品川区)筒井末春顧問(東邦大学医学部名誉教授)

April 18, 2006 01:50 PM | トラックバック (0)

2006年04月17日

2006年04月17日

【第96回】ストレスが大きく関係/東京医科大学病院酒井義浩教授

過敏性腸症候群(上)

 腹痛の鋭い痛みというより、むしろ「腹部不快感」に悩まされている人が現代には多く、重症では通勤時に各駅停車にしか乗れない人もいる。それは、電車に乗っているときに急に便意を催すため、快速などでは駅間が長くて、その間に漏らしてしまうことになりかねないからである。このように苦しむ人は、各駅のトイレの場所までも熟知している。

 実際、このような悩みを持つ人が多いとあって、各駅のトイレの場所を紹介した本まで出版されたほどである。「このような便通異常が続いたり、繰り返すようであれば過敏性腸症候群が強く疑われます。ただ、この疾患が増えているかというと、正確なところは分かりませんが、社会が複雑になり、能力主義時代になると、増えて不思議はないと思います」とは、東京医科大学病院(東京・新宿区)消化器内科の酒井義浩教授。

 便通異常を引き起こす過敏性腸症候群はその症状の現れ方によって3つのタイプに分かれる。

 ◆下痢型 便通は1日1~2回が理想だが、水分の多い下痢の場合は1日に4~5回も排便し、それを繰り返す。

 ◆便秘型 数日に1回しか便が出なくても排便後にすっきり感があれば問題はない。問題となるのは便意があるにもかかわらず4~5日も排便がなく、出てもコロッとした便。

 ◆交代型 下痢タイプ、便秘タイプとすっきりわかれるのではなく、下痢が続いたかと思うと便秘が続くというように、交互に繰り返していくタイプである。

 過敏性腸症候群が起きるメカニズムは-。「はっきりと原因が分かっているわけではありませんが、ストレスが大きく関係しているだろうということは間違いありません。腸には神経伝達物質が多く、ここから腸の状態が脳に信号として送られると、脳から腸が正常に働くように自律神経によって指令が伝えられます。ところが、その人にとってストレス過多状態になると、自律神経が混乱をきたして便通異常が起きるのです」。

 もちろん、他の疾患も考えられるので、まずは消化器内科を受診すべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆自律神経 自分自身の意志に関係なく反応する内臓や血管を支配する神経。互いに逆の作用を持つ交感神経と副交感神経が自動的に調節している。そのバランスが崩れるとさまざまな病気を引き起こす。

 ◆過敏性腸症候群の名医
 ▽弘前大学医学部付属病院(青森県弘前市)消化器内科・佐々木大輔教授
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)心療内科・本郷道夫教授
 ▽国立病院機構さいがた病院(新潟県上越市)消化器科・松枝啓院長

April 17, 2006 08:23 AM | トラックバック (1)

2006年04月16日

2006年04月16日

【第95回】ワン・フィンガー、ツー・ハンド/東京逓信病院江藤隆史部長

アトピー性皮膚炎の治療(下)

 「アトピー性皮膚炎とステロイド外用薬」と聞くと、恐怖心を持ってしまう人が今でも多い。「皮膚が黒くなる」「皮膚が象のように厚くなる」…。「これらはすべて誤りです!」と、東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長は強く言い切る。

 「ステロイド外用薬の長期使用は皮膚が黒くなったり、厚くなったりするどころか、むしろ白く薄くなるのです。ステロイド外用薬の副作用と思っていらっしゃるもののほとんどは、実はステロイド外用薬の塗り方が間違っているからです」。

 正しい塗り方は「ワン・フィンガー、ツー・ハンド」。大人の人さし指の第1関節まで軟こうをとった量が約0・5グラム。この量は大人の手のひら2つ分の面積を塗る適量なのである。(これをFTU=フィンガー・ティップ・ユニットと呼ぶ)。「つまり5グラムのチューブ1本で手のひら20個分の皮膚に塗ることができるのです。結構な量を塗りますから、患者さんを励ましてあげなければなりません」。

 このように正しく塗ると、炎症の赤みは4~5日でほとんど改善する。それ以降は医師の指示通りに徐々に塗る量を減らしていくようにし、上手にコントロールをする。

 それでも、塗り薬による局所的副作用が起きることがまれにある。それはホルモンの関係で起きるニキビ、多毛症、酒さ様(しゅさよう)皮膚炎、毛細血管拡張、皮膚委縮などである。「軟こうの量を適切に使えばアトピーの症状は必ず良くなりますし、そのような副作用が出てしまったときにも、きちっと対処ができます。逆に不十分な塗り方を続けてのアトピーの悪化や、脱ステロイド療法で起きるヘルペスやとびひなどの方が重症化します」。

 また、ステロイド外用薬の副作用ではなく、アトピーの目の合併症として白内障は若い年代から起こる。その手術をしたときにアトピーのコントロールをしっかりしないと網膜剥離(はくり)を起こすケースが多かった。「手術後に目の周囲を強くこすったりたたいたりしたのが原因でした。それが、コントロールをしっかり行うことで網膜剥離がグッと減っています」。

 アトピーは完治よりも「上手に付き合う」と考えて治療をすべきなのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アトピー性皮膚炎の名医
 ▽和歌山県立医科大学付属病院(和歌山市)皮膚科・古川福美教授
 ▽県立広島病院(広島市南区)皮膚科・高路修部長
 ▽産業医科大学病院(北九州市八幡西区)皮膚科・戸倉新樹教授
 ▽九州大学病院(福岡市東区)皮膚科・古江増隆 教授
 ▽長崎大学医学部・歯学部付属病院(長崎市)皮膚科・佐藤伸一教授

April 16, 2006 10:39 AM | トラックバック (1)

2006年04月15日

2006年04月15日

【第94回】ステロイド薬の使い分け必要/東京逓信病院江藤隆史部長

アトピー性皮膚炎の治療(上)

 アトピー性皮膚炎と診断がつき、さらに重症度も判定されると治療がスタートする。日本皮膚科学会は2000年に「アトピー性皮膚炎治療のガイドライン」を作成。「薬物療法」「悪化要因の検索と対策」「スキンケア」を治療の3本柱と位置付けている。

 「3本の柱は互いに支え合って治療効果を上げます。その中で最も重要なのは薬による治療です」と言うのは、東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長。

 では、治療のトライアングルから、最重点の置かれる薬物療法をみていこう。「ステロイド外用薬やタクロリムス軟こうなどの塗り薬が基本ですが、補助的に抗アレルギー薬やヒスタミン薬の内服薬も使います」。ファーストチョイスのタクロリムスの場合は顔や首、ステロイド外用薬は体部。タクロリムス軟こうは99年に登場した局所免疫調整外用薬で、ステロイド薬のようなホルモン作用などによる副作用がない。「だから、ステロイド外用薬の局所副作用の出やすい顔や首に安心して塗ることができます」。

 炎症を抑える強さはステロイド外用薬ではウィータ(弱い)からストロンゲスト(最強)まで5段階あるが、タクロリムスはミディアムからストロングの段階に入る。体部の場合は強い炎症をステロイド外用薬で抑え、適切なタイミングでタクロリムス軟こうに切り替えるのである。

 一方、ステロイド薬は副腎から分泌される「副腎皮質ホルモン」と同じ作用を持ち、炎症や免疫の働きを制御する。重症度、使用期間、部位、年齢などを考慮してステロイド外用薬のランクを使い分ける。「体部でも重症のところがあれば軽症のところもありますので、そこでもステロイド薬の使い分けが必要です」。

 医師から指導された量を適切に塗って、月に1回は診察を受けていくと、難治性であっても90%の人は改善し、アトピーと上手に付き合うことができるようになる。

 改善に向かわない場合は「私どもには入院施設がありますので、糖尿病の方々のように教育入院を1週間してもらいます」。「ステロイドの副作用」「悪化原因について」「薬の塗り方」などが指導される。そして、朝夕に正しく薬を塗ることでどれだけ1週間で改善するかを体感してもらう。この体感が上手なコントロールに結び付くのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アトピー性皮膚炎の名医
 ▽杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)皮膚科・塩原哲夫教授
 ▽金沢大学医学部付属病院(石川県金沢市)皮膚科・竹原和彦教授
 ▽浜松医科大学付属病院(静岡県浜松市)皮膚科・瀧川雅浩教授
 ▽藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)皮膚科・松永佳世子教授
 ▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)皮膚科・宮地良樹教授
 ▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)皮膚科・片山一朗教授

April 15, 2006 10:05 AM | トラックバック (0)

2006年04月14日

2006年04月14日

【第93回】湿疹の状態で重症度判定/東京逓信病院江藤隆史部長

アトピー性皮膚炎(下)

 かゆみのある皮膚の炎症が体の一部、あるいは全身に現れ、良くなったり悪くなったりしながら慢性に続く病気、アトピー性皮膚炎。患者はまず皮膚科を受診することになる。

 初診時には問診表に記入する。過去の病歴や薬のアレルギーの有無など。そして、皮膚科ではそれ以上に患部を見る、触れるという視診、触診が極めて重要である。「患者さんから『検査はしないのですか?』と聞かれることがよくあります。皮膚のバリアー機能は見ると分かりますし、赤みで炎症度合いも分かります」と、東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長は言う。

 そして続ける。「重症のアトピーがイコールIgE(免疫グロブリンE)抗体価が上昇しているとは限りません。また、IgE値が高いからといっても、特定の抗原を1つに決めることができず、多くの抗原に反応しているのが分かるのみです」。だから、江藤部長は患者に数日通院してもらいながら、薬の効き具合をチェックし、問診を行い、必要に応じて検査を加える。問診時には、これまでアトピーの治療歴がある場合はこれを医師に伝え、使っていた薬、使用期間なども医師に伝える。

 アトピー性皮膚炎と診断がつくと、重症度も診断される。アトピーの重症度ではかゆみの強さなどの客観的な判定は難しい。そこで判定は視診で分かる湿疹(しっしん)の状態で行う。湿疹の状態は「軽度」と「強い炎症」に分け、軽度に入るのが赤みを帯びていたり乾燥しているタイプ、強い炎症に入るのは赤くはれて盛り上がっていたりジクジクしているタイプ。「この2つのタイプが体にどうような割合で分布しているかで、全体的重症度を『軽症』『中等症』『重症』『最重症』の4段階に分けています」。

 その重症度に合わせて、塗り薬、内服薬を処方する。「このときに、薬の塗り方をきちっと指導することが大事です」。帰宅すると、患者自身が薬を飲み、薬を塗る治療が始まる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アトピー性皮膚炎
 ▽自治医科大学付属病院(栃木県南河内町)皮膚科・大槻マミ太郎教授
 ▽東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)皮膚科・中川秀己教授
 ▽東京逓信病院(東京都千代田区)皮膚科・江藤隆史部長
 ▽国立国際医療センター(東京都新宿区)皮膚科・玉木毅医長
 ▽東京女子医科大学病院(東京都新宿区)皮膚科・川島真教授
 ▽NTT東日本関東病院(東京都品川区)皮膚科・五十嵐敦之部長

April 14, 2006 08:29 AM | トラックバック (0)

2006年04月13日

2006年04月13日

【第92回】症状出ないようにコントロール/東京逓信病院江藤隆史部長

アトピー性皮膚炎(上)

 認知度の高いアトピー性皮膚炎のアトピーとは、ギリシャ語で「不思議な」とか「奇妙な」といった意味で、病気自体は古い歴史書などから、紀元前からあったことが分かっている。

 「アトピー性皮膚炎と正式に病名をつけたのはアメリカの皮膚科医で、1933年のことです。それ以前はさまざまな病名で呼ばれていました」。アトピー性皮膚炎の治療でよく知られている東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長は言う。患者数は約40万人とされているが、実際にはその2~3倍の人々がアトピーで悩んでいると考えられている。

 患者の中には医師から「アトピーは一生治りません」と言われて落ち込んでしまった人も少なくない。「きちっと説明しない医師にも問題があります。アレルギー性の病気は骨折のように『治療しました、ハイ完治!』とはいきません。ただ、症状に合った薬を塗ってスキンケアを続けるとアトピーではない人と全く同じ生活ができます」。

 つまり、アトピー治療の基本的な考え方は「症状が出ないようにコントロールして、患者さんのQOL(生活の質)を少しでも高める」ことである。

 悩める患者の多いアトピー性皮膚炎とは、どのような病気なのか。「かゆみのある皮膚の炎症が体の一部、あるいは全身に現れ、良くなったり悪くなったりしながら慢性的に続く病気です」。このような症状が出るのは、アレルギー体質を持っていて、ここにハウスダストやダニ、カビなどの刺激が加わって皮膚に反応が出ると考えられていた。しかし、それだけではなかった。「持って生まれたアレルギー体質と皮膚のバリアー機能が低下する体質、この2つが重なり合って病気が起きるのです」。

 バリアー機能とは異物が体内に入るのを防ぐ機能。ところが、乾燥した皮膚はかゆみを起こし、これを手でかくとバリアー機能はますます壊れ、ダニ、ハウスダストの刺激が内部に至ってしまう。

 この2つの要因のほかに、生活環境、特定の食べ物、精神的ストレスなど、いくつもの要因が複雑に絡み合ってアトピーを治りにくい病気にしているのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アトピー性皮膚炎の名医
 ▽札幌皮膚科クリニック(札幌市中央区)根本治院長
 ▽網走皮膚科クリニック(北海道網走市)国分純院長
 ▽弘前大学医学部付属病院(青森県弘前市)皮膚科・花田勝美教授
 ▽岩手医科大学付属病院(岩手県盛岡市)皮膚科・赤坂俊英教授
 ▽山形大学医学部付属病院(山形市)皮膚科・三橋義比古助教授
 ▽福島県立医科大学付属病院(福島市)皮膚科・中村晃一郎助教授

April 13, 2006 11:02 AM | トラックバック (1)

2006年04月12日

2006年04月12日

【第91回】妊娠希望者は選択に注意/東京医科大学病院井坂恵一教授

子宮筋腫の治療(下)

 月経のある女性の4人に1人にある子宮筋腫(しゅ)は、子宮壁にできる筋腫。いわゆる良性の腫瘍(しゅよう)である。

 今回は体に優しく注目の治療である「腹腔(ふくくう)鏡下手術」「動脈塞栓(そくせん)療法(UAE)」「集束超音波治療(FUS)」を紹介する。

 ◎腹腔鏡下手術 内視鏡を使った手術には「腹腔鏡下手術」と「子宮鏡下手術」がある。

 腹腔鏡下手術はへその下に開けた孔(あな)から内視鏡を入れ、腹腔内をモニターで見ながら、ほかにあけた孔から手術器具を入れて手術を行う。その腹腔鏡下手術で定評のある東京医科大学病院(東京・新宿区)産婦人科の井坂恵一教授は、腹腔に二酸化炭素を入れてドーム状にする方法では「皮下鋼線吊(つ)り上げ法」を行っている。「私どもの方法では開ける孔が3~4カ所ではなく、1~2カ所でできます。対象となる筋腫は大きさが10センチ以内で、子宮の外側に向かってできている漿膜(しょうまく)下筋腫。子宮壁の筋層にできていても外に顔を出していると治療はできます。筋腫を取り除いた後は、りんごの皮をむくように削って外へ取り出します」

 一方、子宮鏡下手術は子宮鏡を子宮から入れて50%以上子宮内に出てきている粘膜下筋腫が適応となる。「私どもの施設では腹腔鏡下手術と子宮鏡下手術が圧倒的に多くなっています」。

 ◎UAE 太ももの付け根の動脈からカテーテル(細い管)を子宮動脈にまで通し、ゼラチンでできた塞栓物質を注入して子宮筋腫に栄養を届けている動脈をふさぐ。血管内治療の1つ。「不妊症になるリスクがあるので、妊娠希望者は治療の選択枝から外した方が良いでしょう」。

 ◎FUS 虫眼鏡で日光を黒い紙の上に焦点を結ばせると紙が燃える。それと同じように超音波を筋腫に集中させて組織を壊死(えし)させる治療法。入院せずに治療が受けられるが保険適用はない。「筋腫が前の方にあるケースで直径10センチ以下、そして3個以下が適応と症例が限られる点が弱点ですね」。

 どの治療を受けるかは、医師と十分に話し合い、それぞれのメリット、デメリットを知った上で決定すべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆子宮筋腫の腹腔鏡下手術の名医
 ▽大阪医科大学付属病院(大阪府高槻市)産婦人科・奥田喜代司講師
 ▽近畿大学医学部付属病院(大阪府大阪狭山市)産婦人科・塩田充助教授
 ▽宝塚市立病院(兵庫県宝塚市)産婦人科・伊藤健一郎部長
 ▽倉敷成人病センター(岡山県倉敷市)産科・婦人科・安藤正明部長

April 12, 2006 10:24 AM | トラックバック (4)

2006年04月11日

2006年04月11日

【第90回】開腹手術は10センチ以上か30個以上/東京医科大学病院井坂恵一教授

子宮筋腫の治療(上)

 子宮筋腫(しゅ)の診断がつき、症状が強い場合には治療を行う。QOL(生活の質)を悪くする症状とは「貧血」「月経痛」「頻尿」「便秘」などである。

 治療には「経過観察」「薬物療法」「手術療法」のほか、体に優しい「内視鏡手術」「動脈塞栓(そくせん)療法(UAE)」「集束超音波治療(FUS)」が行われている。

 症状がなく筋腫も大きくない人は経過観察となる。「半年に1回程度は検査を受けて筋腫に変化がないかチェックする必要があります。その変化によっては経過観察から次の段階に進むことがあります」と、東京医科大学病院(東京・新宿区)産婦人科の井坂恵一教授は言う。

 次の薬物療法には「術前投与」と「逃げ込み投与」がある。「この薬物療法は筋腫の女性ホルモン依存性を利用した方法です」。女性ホルモンは、脳の中心部にある下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(FSH)に影響され、卵巣から分泌される。その下垂体に指示を出すのは脳の視床下部。ここからGnRHというホルモンが放出されて命令が次々と伝達される。「使われる薬は『GnRHアゴニスト』で、GnRHが働かないようにします。命令系統がストップするので女性ホルモンが分泌されなくなります」。

 閉経したのと同じ状態になる。すると、筋腫は小さくなる。「20代、30代の方々では術前に投与します。例えば12センチあった筋腫が8センチになると、開腹手術ではなく内視鏡手術ができるようになります。また、閉経の近い人であれば逃げ込み投与で閉経までつなぐため手術する必要がなくなります」。

 そして、手術療法には「筋腫核出術」と「子宮全摘出術」がある。筋腫核出術は筋腫だけを摘出する手術で、子宮全摘出術は子宮をすべて摘出してしまう。後者は妊娠希望者には適さない。開腹手術になるのは筋腫が10センチ以上、または筋腫が30個以上ある場合である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆子宮筋腫 子宮壁の筋肉が異常増殖したもので、腫瘍(しゅよう)の仲間。悪性腫瘍に変化することのない良性の腫瘍である。

 ◆子宮筋腫の腹腔鏡下手術の名医
 ▽湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)産婦人科・井上裕美副院長
 ▽藤田保健大学病院(愛知県豊明市)産婦人科・広田譲助教授
 ▽京都医療センター(京都市伏見区)産科・婦人科・杉並洋部長
 ▽伊藤病院(京都市左京区)産婦人科・伊藤將史院長

April 11, 2006 08:28 AM | トラックバック (3)

2006年04月10日

2006年04月10日

【第89回】MRI検査で最終確認/東京医科大学病院井坂恵一教授

子宮筋腫(下)

 月経過多による「貧血」と「月経痛」、膀胱(ぼうこう)・直腸の圧迫による「頻尿・便秘」などの症状を起こす女性の病気「子宮筋腫(しゅ)」。婦人科を受診するときも、この3つの症状が気になって、という人が多い。

 診察は、受診のきっかけなどを聞く「問診」に始まって、子宮を直接触診する「内診」に進む。これに「超音波検査」が加えられる。超音波検査は超音波の送受診を行うプローブを腹部にあて、子宮の様子を画像に映して状態を診る。筋腫の有無や大きさが分かる。さらに、超音波は超音波でも「経膣(けいちつ)超音波」は膣内にプローブを挿入して、より近くから子宮の様子を診ることができる。

 「経膣超音波は異常があるのが子宮か卵巣かについて分かり、子宮筋腫であればよりはっきりと子宮筋腫の状態が分かります。ここまでの問診、内診、超音波検査でほぼ診断がつきます」という東京医科大学病院(東京・新宿区)産婦人科の井坂恵一教授だが、必ず確認のために「MRI(磁気共鳴断層撮影)検査」を付け加える。「確認とともに、より正確に筋腫の大きさと場所が分かります。これによって、最終的に治療を必要とするのかしないのか、さらには治療するとしたらどのような方法が最善か、そこまで分かります」。

 子宮筋腫のできている場所、大きさ、筋腫の数、患者の年齢、不妊問題など、さまざまな問題を考え合わされて治療などが決定する。「閉経が近い人であれば、子宮筋腫は女性ホルモンに大きく依存していますので、女性ホルモンの減少。そして、閉経するので手術をするというのは良い方法ではありません。そこのところを判断するために『血液検査』を付け加えます」。閉経までの期間を知るための血液検査は、血液中の「性腺刺激ホルモン(FSH)」を調べるのである。刺激ホルモン量は20代、30代といった若い人ではその量が少なく、閉経が近いと刺激を強く行ってもなかなか女性ホルモンが十分には出てこないこともあって、性腺刺激ホルモン量は2倍を超える。

 閉経が近いと手術ではなく、薬物療法の選択となることが多い。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆子宮筋腫の腹腔鏡下手術の名医
 ▽東京大学医学部付属病院(東京都文京区)女性外科・堤治教授
 ▽日本医科大学付属病院(東京都文京区)産婦人科・明樂重夫助教授
 ▽東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)産婦人科・森田峰人助教授
 ▽駿河台日本大学病院(東京都千代田区)産婦人科・長田尚夫助教授

April 10, 2006 08:59 AM | トラックバック (4)

2006年04月09日

2006年04月09日

【第88回】筋肉異常増殖の良性腫瘍/東京医科大学病院井坂恵一教授

子宮筋腫(上)

 婦人科が扱う病気も数多いが、その中で最も多いといわれているのが子宮筋腫(しゅ)。「月経のある女性の20~30%、約4人に1人にある病気です」と、東京医科大学病院(東京・新宿区)産婦人科の井坂恵一教授は言う。

 子宮壁にできる筋腫。筋肉が異常増殖したもので腫瘍(しゅよう)の仲間である。「悪性腫瘍に変化するとか、そのようなことは全くない良性の腫瘍です。なぜできるのか、その原因は今のところははっきりとはしませんが、女性ホルモン依存性で筋腫が大きくなりますので、卵巣から分泌される女性ホルモンが深く関与していると思われます」。

 良性の腫瘍なので、どの時点で治療を行うかについては全く定義はない。加えて、どの人の子宮筋腫が急速に大きくなるか、といったことも人それぞれ異なる。「ただ、『貧血がつらい』『頻尿がつらい』『痛みが強い』などの症状があると手術の対象になります」。どのような症状が出るかは、子宮内のどの場所に筋腫ができるか(子宮筋腫の種類)、何個できるか、そして大きさによって異なる。

 子宮筋腫の種類は以下の4つに大別できる。

 ◎頚部筋腫 子宮の膣(ちつ)側にできる筋腫で、大きくなると過多月経になり、貧血状態が強く出てくる。その段階では手術が選択される。

 ◎粘膜下筋腫 子宮の内側に向かって筋腫ができる。すると、子宮の内側の表面積が増えるので子宮内膜の量が増える。「過多月経になるので貧血が強く出ます。これは心臓に負担もかかるので手術が強く選択されます」。

 ◎筋層内筋腫 子宮壁を構成する平滑筋という筋層にできる筋腫。「様子をみていてよいのですが、ときに不妊の原因になりますので、赤ちゃんを望む方の場合は手術が選択されます」。

 ◎漿膜下(しょうまくか)筋腫 子宮壁の最も外側にでき、腹腔(ふくくう)内、いわゆる外に向かって飛び出すタイプ。飛び出す場所によっては膀胱(ぼうこう)や直腸を圧迫するので、頻尿、便秘といった症状が起きる。「5センチ以上ならば、症状がなくても大きくなるので切除してよいとされています」。

 それぞれの子宮筋腫で、常に子宮を残すことを第一に考えて治療が考えられていくのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆子宮筋腫の腹腔鏡下手術の名医
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)産科・婦人科・村上節助教授
 ▽防衛医科大学校病院(埼玉県所沢市)産婦人科・古谷健一教授
 ▽東京医科大学病院(東京都新宿区)産婦人科・井坂恵一教授
 ▽順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)産婦人科・武内裕之助教授

April 9, 2006 11:51 AM | トラックバック (5)

2006年04月08日

2006年04月08日

【第87回】2種類のステロイド薬/東京医科歯科大学付属病院吉沢靖之教授

間質性肺炎の治療(下)

 間質性肺炎の原因を追究することで、東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)呼吸器内科の吉沢靖之教授の下では、原因の分からない特発性間質性肺炎は約20%にまで減少した。これが治療に大きく貢献する。

 「間質性肺炎の1つである過敏症肺炎の場合は、その原因がカビならばカビから、鳥ならば鳥から患者さんを離すと悪化は抑えられます」と、吉沢教授は言う。自宅のカビと分かったら腐った木を取り除いて改修したり、家を建て替えるなり、ほかのマンションに引っ越すなりする。鳥であれば、駅、公園、神社などの生活環境にいる鳥を避けるために、まずは高機能のマスクをし、自身が鳥を飼っているならそれをやめる。そして、しばらく経過観察する。

 「それでも悪くなるようならばステロイド(副腎皮質ホルモン)薬を使います」。ステロイド薬の「プレドニゾロン」から使い始めて、効果が不十分なときや急を要する呼吸不全のあるケースではステロイド薬の「メチルプレドニゾロン」のセミパルス療法を行う。

 セミパルス療法とは、メチルプレドニゾロン500ミリグラムを1日1回点滴静注をして、3日間行う治療法である。「プレドニゾロン減量中に再び症状が悪化したようなケースでは、保険は利きませんが、免疫抑制剤のシクロスポリンを併用します」。

 間質性肺炎は、関節リウマチ、強皮症、皮膚筋炎などといった膠原(こうげん)病から起こることもあり、特に肺の病気が先に起きるときは原因が分からないので特発性間質性肺炎とされている。関節リウマチに合併して起きるときは、患者はほとんどが中高年の男性。「間質性肺炎が先に起きて、その後に関節リウマチが起きてきます。間質性肺炎は命とりになるので、治療はまず間質性肺炎を先に行います。このときはプレドニゾロンを使い、良くなって薬を減量中に関節リウマチの症状が出てきます」。

 どれだけ原因追究を行っても分からない特発性間質性肺炎の場合は、全国的な治療研究を2種類の薬を使った2方法で行っている。「免疫抑制剤を使いますので、真菌感染症などの感染を防ぐために十分な予防、チェックが大事です」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆間質性肺炎 肺の先端部、ぶどうの房のような形をしたガス交換を行う肺胞の壁(間質)に炎症が起き、修復の過程で線維化し、呼吸困難が起きてくる疾患をいう。

 ◆間質性肺炎の名医
 ▽近畿中央胸部疾患センター(大阪府堺市)内科・呼吸器科・井上義一部長
 ▽天理よろず相談所病院(奈良県天理市)呼吸器内科・田口善夫医師
 ▽済生会熊本病院(熊本市)呼吸器センター・菅守隆部長

April 8, 2006 08:14 AM | トラックバック (0)

2006年04月07日

2006年04月07日

【第86回】ばち状指の有無チェック/東京医科歯科大学付属病院吉沢靖之教授

間質性肺炎の治療(上)

 間質性肺炎は、肺の線維化で死を招いてしまう怖い病気である。その多くは原因不明の「特発性間質性肺炎」といわれていたが、その原因を徹底的に追究し、原因が分かると防ぐ方法も取ることができる。

 その徹底した原因追究で知られるのが東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)呼吸器内科の吉沢靖之教授。「例えば、家の水回りの周囲の腐った木の『トリコスポロン』といったカビで起こる『夏型過敏性肺炎』、鳥に対するアレルギーで引き起こされる『鳥飼(とりかい)病』などは、その抗原であるカビ、鳥から離せばいいのです。ただ、鳥の場合は飼育している鳥ではなく、野鳥のハトなどが駅などに多くいます。それが原因の人も多いのです」。

 とまれ、原因を追究するためにも、まずは正確な診断が行われる必要がある。診察は問診から始まる。症状を診ていく。「駅の階段で息切れはしないか」「階段の途中で休まないか」「せきの具合はどうか」-。「乾いたせきとともにせきの出る時間帯が重要です。せきぜんそくの場合は夜中や夜明けにせき込みます。一方、間質性肺炎ではせきは日中に、体を動かしたときに出ます」。

 このほか、チアノーゼ(唇などが青紫色になる)、指のばち状指(スプーンを伏せて置いたようなつめの形)の有無をチェック。ただ、ばち状指は間質性肺炎だけに出る症状ではなく、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肝硬変や甲状腺機能亢進症などでも出てくる。「画像診断より何より聴診器で肺の音を聴くのが一番。一呼吸ごとに、左右対称に肺の音を聴いていくと、特徴的なパチパチといった音がします」。

 問診の次は胸の「エックス線撮影」と「HRCT」を撮る。「HRCTは一般のCT以上に高分解で、間質性肺炎の特徴のハチの巣状の様子がはっきり分かります。エックス線写真では肺の容積の減少や網状影が確認できると間違いありません」。

 この時点で病気は確定できるが、万全を期すために「肺機能検査」「血液検査」「6分間歩行試験」「気管支肺胞洗浄」。最終的には「胸腔(きょうくう)鏡下肺生検」を行う。「このように検査をすることで、多かった原因不明の特発性間質性肺炎が約20%にまで減らせました」。病気の絞りこみができたのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆間質性肺炎の名医
 ▽日本医科大学付属病院(東京都文京区)第4内科・工藤翔二教授、吾妻安良太講師
 ▽虎の門病院(東京都港区)呼吸器科・吉村邦彦部長

April 7, 2006 09:50 AM | トラックバック (0)

2006年04月06日

2006年04月06日

【第85回】症状軽い段階で受診を/東京医科歯科大学付属病院吉沢靖之教授

間質性肺炎(下)

 肺のガス交換を行う肺胞の壁(間質)に炎症が起き、その修復過程で線維化して呼吸困難へと進む間質性肺炎。一度線維化すると、元に戻ることはない。そのため、最終的には肺全体が線維化し、それが原因で死に至ってしまう。

 急性に襲うタイプもあれば、慢性化し、じわじわと真綿で締めつけるタイプもある。「急性型は激しい炎症のために最初は38度を超える熱が出て、息切れやせきが次第に強くなってきます。よく風邪と診断されることがありますが、これは怖いです」と言うのは、間質性肺炎の診断・治療で有名な東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)呼吸器内科の吉沢靖之教授。

 一方、慢性型は緩やかだが、肺胞の間質では線維化が着々と進んでいる。そして、特有の症状がみられる。

 ◎労作時の息切れ 家の階段は問題がないのに駅の長い階段になると息切れしてしまう。息切れは最近患者が多いことで有名になったCOPD(慢性閉塞性肺疾患)でも起きる。「COPDの場合、呼吸は腹式だが、間質性肺炎の場合は肩で早い息をするタイプです」。

 ◎乾いたせき 間質性肺炎のせきの特徴は、たんが出ない乾いたせき。「間質は腔内(くうない)ではなく気道の外側に病変があるので、たんが出ないのです。ただし、末期になると、たんも出ます」。

 ◎ばち状指 病気が長く続いて進行してくると、手足のつめに変化が現れる。スプーンを伏せて置いた形のつめで「ばち状指」といわれているが、そのほかに「ヒポクラテスつめ」「時計ガラスつめ」などともいわれる。指の先端部分が肥大してくるのでこのような変化が生じる。

 ◎チアノーゼ 唇などが青紫色になるチアノーゼが出てくるのは、血液中の酸素が不足するからである。「間質の線維化が進んでいるためにガス交換が十分にできないのです。初期の段階では動いたりすると息苦しさがあり、進行すると安静にしていても呼吸が苦しくなります」。

 このような症状、それも軽い段階で気付いて専門医を受診すべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆間質性肺炎の名医
 ▽自治医科大学付属病院(栃木県南河内町)呼吸器内科・杉山幸比呂教授
 ▽帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)呼吸器内科・大田健教授
 ▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)呼吸器内科・吉沢靖之教授

April 6, 2006 09:34 AM | トラックバック (0)

2006年04月05日

2006年04月05日

【第84回】羽毛布団に反応する場合も/東京医科歯科大学付属病院吉沢靖之教授

間質性肺炎(上)

 「肺炎」と聞くと、多くの人は日常の生活の中で細菌感染で起きる市中肺炎を思い描く。その場合は肺炎球菌などが原因となる。そして、炎症は、肺の最先端の酸素と二酸化炭素とのガス交換を行うブドウの房のような肺胞の内側に起きる。

 これとは原因も異なれば、炎症の起きる場所も異なる肺炎がある。間質性肺炎である。「間質性肺炎は肺胞の中ではなく、肺胞を取り囲んでいる壁(間質)に炎症が起きてきます」と解説するのは、東京医科歯科大学医学部付属病院(東京・文京区)呼吸器内科の吉沢靖之教授。「炎症部分を修復する過程で線維化が起こり、間質は厚く弾力がなくなり呼吸困難へと進んでいきます」と付け加えた。

 その炎症を引き起こす原因については、分かっているものと、分からないものがある。原因が分からないものは「特発性間質性肺炎」と呼ぶ。原因が分かっているものとして有名なのは「じん肺」。鉱物の粉を長期間にわたって吸い続けたことによる。陶器などを作ったりしていて特発性間質性肺炎といわれた人などもじん肺と考えてよい。

 「ビルの解体業の人の場合はアスベストによるケース。それと同様なのが昔、運転手をしていて自分で車のブレーキを直していた人たち。このような人々は精密検査で原因を追究していくことで分かります」。

 間質性肺炎の中には薬剤が原因の「薬剤性肺炎」、放射線治療が原因の「放射線肺炎」のほか、カビ、鳥などに対してアレルギー反応を起こす「過敏性肺炎」がある。家の中のカビに反応するのが「夏型過敏性肺炎」。「家の水回りの周囲の腐った木のカビ、『トリコスポロン』というカビを吸い込むことが原因です。最近は鳥関連の過敏性肺炎が多く、羽毛布団にも反応する人もいます」。

 このように、吉沢教授の下では原因追究が行われるため、60~70%は特発性といわれていた間質性肺炎も、今では20%まで低下した。原因を特定することで、より良い対応策がとれるのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アスベスト 石綿のことで、天然の鉱物繊維。この繊維を吸い込むと、20~30年後に肺の線維化、悪性中皮腫や肺がんなどを引き起こす。「静かな時限爆弾」といわれている。

 ◆間質性肺炎の名医
 ▽札幌医科大学付属病院(札幌市中央区)第3内科・高橋弘毅教授
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)遺伝子・呼吸器内科・貫和敏博教授、海老原雅仁講師
 ▽福島県立医科大学付属病院(福島市)呼吸器科・棟方充教授

April 5, 2006 08:28 AM | トラックバック (0)

2006年04月04日

2006年04月04日

【第83回】カウンセリングなどで断酒/慈友クリニック米沢宏院長

アルコール依存症の治療(下)

 「アルコール依存症と診断をしますと、受診したその日から、ピタッとお酒を断つ患者さんが約40%いらっしゃいます」と、驚異的とも思われる数字を挙げるのは、慈友クリニック(東京・新宿区)精神科の米沢宏院長。それは、アルコール依存症という病気の概略と、どのような治療が必要かについて説明するからである。なぜ、酒をやめなければならないか、十分に納得できた人が約40%ということである。

 ただし、入院治療が最初から必要になる場合もある。それは「衰弱して全身状態が悪い」「各種の臓器障害の程度が悪い」「断酒意志はあっても飲酒欲求が強くて自宅では酒が切れない」「振顫(しんせん)、せん妄、幻覚、妄想などの精神症状が強い」ケースである。それ以外は通院治療となる。

 治療には断酒が不可欠だが、断酒を実行しても、それを継続することは実に難しい。そこで<1>定期的カウンセリング<2>抗酒剤の服用<3>集団精神療法(自助グループを含む)が治療の3本柱となる。

 <1>定期的カウンセリング 「週に1度、診察を行います。親との複雑な関係とかがある場合は別途カウンセラーと面接を行うこともあります」。

 <2>抗酒剤 肝機能が極端に悪くないときは抗酒剤を用い、日本ではシアナマイド(液体)とノックビン(粉末)の2種類が使われている。「この薬は酒が嫌いになる薬ではなく、この薬を飲んだことで酒を飲まないように自制するためのものです」。

 <3>集団精神療法 同じアルコール依存症者10人前後によるミーティングで、毎日行われており、患者はできるだけ多く通院して参加する。「最初の2カ月は集中的に参加してもらうように指導しています」。

 順調に進むと2~3週で変化が表れる。「前向きに明るくなられます。ミーティングに出てほっとする。自分だけではなかった、などの安心が生まれるのです。そして酒なしで生きる知恵を学び、最終的には生き方が変わっていきます」。そして、60%の人は酒を飲んだり止めたりをしながら、5年治療を続けると、80%の人々はお酒をやめられるという。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アルコール依存症の名医
 ▽ひがし布施クリニック(大阪府東大阪市)辻本士郎院長
 ▽宋神経科クリニック(神戸市中央区)宋龍啓理事長・院長
 ▽下司病院(高知市)下司孝麿理事長
 ▽雁の巣病院(福岡市東区)熊谷雅之院長代行
 ▽西脇病院(長崎市)西脇健三郎理事長
 ▽指宿竹元病院(鹿児島県指宿市)竹元隆洋院長

April 4, 2006 11:27 AM | トラックバック (1)

2006年04月03日

2006年04月03日

【第82回】KASTの点数で患者説得/慈友クリニック米沢宏院長

アルコール依存症の治療(上)

 アルコール依存症の治療は70年代から大きく変わり、精神科の一般病棟からアルコール依存症専門病棟へと移った。さらに80年代からは治療の場はクリニックへ-。「病院ではむりやり入院させられるのではと、患者さんは反抗的になります。ところが、私どものようなクリニックではそういうことがなく、患者さんは素直ですし、早期の方が多く受診されるようになりました」と、慈友クリニック(新宿区高田馬場)精神科の米沢宏院長はいう。

 アルコール依存症も早期発見、早期治療が重要で、その点ではアルコール依存症を専門とするクリニックの増加が早期発見、早期治療に大きく貢献しているといえる。早期発見のための診察は、慈友クリニックの場合は予約の電話から始まる。「予約の際に誰から電話がかかるかで、その患者さんの職業や生活状況がおおよそ分かります。福祉事務所のケースワーカーからならば生活保護を受けていることが分かるし、企業の健康管理室のスタッフからならば、おそらく会社で問題を起こしている人だろうと分かります。家族から連絡が入る場合は、家族が困っている状況であることが予想できます」。

 そして、初診。慈友クリニックのケースはソーシャルワーカー、臨床心理士、看護師が受診者の病状や情報を約1時間の面接によって収集。それらの情報が医師に提出されて、医師による問診が始まる。「この問診が最も大事です。まずは来院の経緯を聞き、いつからアルコールによる問題が生じ始めたかを聞きます」。20代で胃・十二指腸潰瘍を経験する人が少なくない。30代になって肝機能障害が指摘される。「飲み方、酔い方でも問題が生じ、二日酔いで仕事を休む、会社に酒のにおいをさせて出社する、家族から飲み過ぎといわれている。さらに、暴力などで家庭の雰囲気が悪くなったなど、詳しく聞きます」。

 これに「血液検査」と久里浜アルコール症センターが作成した「KAST(久里浜式アルコール症スクリーニング・テスト)」を行う。「血液検査では肝機能や膵(すい)機能などをチェックします。KASTはアルコール依存症診断の強い材料になり、点数で出ますので患者さんの説得材料にもなります」。そして、アルコール依存症と診断されると、患者の40%が、その日からお酒を断つという。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アルコール依存症の名医
 ▽ゆたかクリニック(神奈川県相模原市)村岡英雄院長
 ▽ひろメンタルクリニック(金沢市)奥田宏院長
 ▽西山クリニック(名古屋市中区)西山仁院長・猪野亜朗副院長
 ▽小杉クリニック本院(大阪市天王寺)小杉好弘理事長・院長
 ▽新生会病院(大阪府和泉市)和気隆三院長
 ▽新阿武山クリニック(大阪市淀川区)平野建二院長

April 3, 2006 11:50 AM | トラックバック (1)

2006年04月02日

2006年04月02日

【第81回】子に「遺伝」四十数%/慈友クリニック米沢宏院長

アルコール依存症(下)

 240万人とも427万人ともいわれている日本のアルコール依存症患者。その定義は「飲酒のコントロール障害」もしくは「離脱症状(酒を断ったり減らした時の症状)」。どちらかがあるとアルコール依存症である。

 「ある程度以上のアルコールをある期間以上飲めば、誰でもアルコール依存症になる可能性があります」と、慈友クリニック(東京・新宿区)精神科の米沢宏院長が言うアルコールの量とは-。「1日につき日本酒に換算して3~4合以上を毎日10~15年以上続けた場合の飲酒量です。ただ、何の問題も起きない人もいますし、逆に早く依存症になってしまう人もいます。女性は男性の半分の量で依存症になる人が多いのですが、それは女性ホルモンとの関係といわれています」。

 また、アルコール依存症は脳の問題ともいわれている。長い年月、脳の神経細胞がアルコールやアセトアルデヒドに侵され続けると、神経細胞に複雑な変化が起こり、脳のアルコールに対する反応が変わってしまう。「その変化とはアルコールが一口でも体に入ると脳がしびれたような状態になり、その人の意志を超えて脳が『次の酒をくれ!』と命令するようになるのです。これがアルコール依存症の本態です」。

 そして、体、精神、家庭、職場、社会などで問題を引き起こす。体では肝臓、すい臓、食道、胃、小腸、大腸などの疾患のほかに、がん、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、心筋症、痛風、大腿骨頭壊死(えし)など数多い。精神症状ではアルコール幻覚症、アルコール嫉妬(しっと)妄想、うつ病など。家庭問題は嫉妬、不和、暴力、離婚、経済破たんなど。職場の問題としては遅刻、欠勤、ミス、事故、けんかなど。社会の問題としては事故、火災、けんか、傷害、性犯罪、暴力、殺人など。

 そして、家庭への問題として、アルコール依存症患者の子供には「親のようにはなりたくない」と思いながら、なぜか自身もアルコール依存症になるケースが多い。「私どもの施設でアルコール依存症者に調査したところ、彼らの親もアルコール依存症であった確率は四十数%と高いものです。体質以外に、ストレス発散の方法が親をモデルにしてしまうのだと思います」。アルコール依存症を子供に受け継がせないためにも、早期発見、早期治療こそ大事である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アセトアルデヒド アルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素の働きでアセトアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素の働きで酢酸に分解される。アセトアルデヒドはアルコールが分解されて登場する物質である。

 ◆アルコール依存症の名医
 ▽白峰クリニック(さいたま市浦和区)山崎茂樹院長
 ▽栞クリニック(さいたま市中央区)竹内伸一医師
 ▽慈友クリニック(東京都新宿区)米沢宏院長
 ▽東京アルコール医療総合センター(東京都板橋区)垣渕洋一医師
 ▽都立松沢病院(東京都世田谷区)精神科・梅野充医師
 ▽久里浜アルコール症センター(神奈川横須賀市)樋口進臨床研究部長

April 2, 2006 08:50 AM | トラックバック (1)

2006年04月01日

2006年04月01日

【第80回】患者の10年生存率60%/慈友クリニック米沢宏院長

アルコール依存症(上)

 飲酒人口約6300万人。お酒の消費量は有史以来最大といわれている。アルコール依存症患者も、さぞ多いことだろう。「調査はいろいろありまして、それぞれかなり数字が異なります。03年の厚労省研究班の調べでは約82万人。そのほかの調査報告では約240万人、約427万人の数字もあります。ほぼ毎日飲酒をする人は1000万人以上いると考えられるので、実際には82万人より多いと考えます」と分析するのは慈友クリニック(東京・新宿区)精神科の米沢宏院長。

 そして続ける。「厚労省の患者調査(02年10月時点)では入院・外来合計で1万7100人ですから、アルコール依存患者約240万人とすると、単純に計算すれば約140人に1人しか医療機関で治療を受けていないことになります」。このような数字が出てくる疾患は極めて珍しい。他の病気であれば最大ケースでも「潜在患者は10倍」止まりである。

 ただ、アルコール依存症患者の場合、内臓疾患で内科に入院している人が多い。「内科に入院中の患者さんに入院の原因を調査すると二十数%がアルコールが原因でした」。実際、その二十数%の人々に久里浜アルコール症センターが作成したKAST(久里浜式アルコール症スクリーニング・テスト)を行うと、その80%の人々がアルコール依存症である確率が高いと判定されたのである。

 治療を受けていない患者の多いアルコール依存症の定義は<1>飲酒のコントロール障害<2>離脱症状(酒を断ったり減らした時の症状)。このどちらかがあるとアルコール依存症である。「<1>のケースは昼間から飲んでしまうとか、今日1日飲まないでおこうと思っても飲んでしまう。果ては酔いつぶれるまで飲んでしまうように、コントロールが利かないのです。<2>はアルコールを飲まないと手や体が震えたり、動悸(どうき)がしたり、イライラしたり、幻覚が現れるケースもあります」。

 アルコール依存症を診断するには血液の検査数値などがなく、グレーゾーンが多いので患者は気付くのが遅くなっているのが現状。ただし、治療を受けたアルコール依存症患者の10年生存率でさえ約60%と低く、がん患者のそれに匹敵する。このことを強く認識する必要がある。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆アルコール依存症の名医
 ▽札幌医科大学付属病院(札幌市中央区)神経精神科・斎藤利和教授
 ▽石橋病院(北海道小樽市)白坂知信院長
 ▽東北会病院(仙台市青葉区)石川達副院長
 ▽すがのクリニック(福島県郡山市)菅野圭樹院長
 ▽広瀬クリニック(茨城県水戸市)広瀬久益院長
 ▽赤城高原ホスピタル(群馬県渋川市)竹村道夫院長

April 1, 2006 09:05 AM | トラックバック (1)