2006年03月31日
この病気にこの名医Part2
【第79回】腹圧性ではまず体操、薬物/東京都済生会中央病院中村聡部長
女性の尿失禁の治療(下)
女性に多い尿失禁。腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合性尿失禁の診断がつくと、本格的治療となる。
その基本的な治療法を、東京都済生会中央病院(東京・港区)泌尿器科の中村聡部長は「腹圧性尿失禁の場合は骨盤底筋体操と外科的治療が中心で薬物療法は補助的になります。一方、切迫性尿失禁では生活指導、膀胱(ぼうこう)訓練法、薬物療法が中心で、骨盤底筋体操が補助的になり、外科的治療は対象となりません」と説明する。
腹圧性尿失禁では、まずは骨盤底筋体操と薬物療法で様子をみる。骨盤底筋体操は骨盤底筋を強める目的で行う膣(ちつ)や肛門(こうもん)を引き締める体操。薬は膀胱の緊張をとり、尿道の締まりを改善する「ベータ2(ベーターツー)刺激薬」を使う。「体操の効果は3カ月でピークに達し、軽症の患者さんでは30%くらいが治ります。あとはQOL(生活の質)の問題で、患者さん個人個人の状況により、ある程度改善して用心のためのパッドで大丈夫ならばそれでもOKですが、短期間でしっかり治したい場合は外科的治療になります」。
外科的治療は「TVT手術」が中心。93年にスウェーデンのウルムステン教授が考案したもので、すでに世界で70万例以上行われ、世界的に高い評価を受けている。「以前の経膣手術は長期成績が悪く、5年間のうちに6割近くが再発したという報告もありますが、TVT手術は7年間のデータで90%以上の高い成功率になっています」。
TVT手術は局所麻酔と静脈麻酔で行われ、手術時間は30分程度で終わる体に優しい手術。腹部2カ所と膣1カ所を約1センチずつ切開し、そこから独自の器具を挿入して尿道の下に半永久的に使える幅1センチのテープを留置する。尿道をつり上げるのではなく、尿道をあるべき場所に固定するのである。「テープが尿道下に入ったら患者さんを覚せいさせて術中にせきをしてもらいます。せきをすると尿が漏れますので、テープの引き具合を微調整して最適の位置に固定します」。欧米では日帰り、日本でも2泊3日が中心である。今は、数施設でTVTを改良したTOT手術も登場し始めた。
一方、切迫性尿失禁の治療で用いる薬は「抗コリン薬」。アセチルコリンという物質の受容体との結合を防ぎ、膀胱の収縮を抑えるのである。「この薬だけでかなり改善します。あとは水分を取り過ぎないように生活を改善し、トイレを我慢する膀胱訓練法と骨盤底筋体操を行います。自己流ではなく、正しいやり方を身に付けてもらいます」。
治療すると大きく改善するので、まずは泌尿器科の「女性泌尿器科外来」を受診しよう。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆尿失禁の名医
▽岡山労災病院(岡山市)泌尿器科・小沢秀夫医師
▽松山赤十字病院(愛媛県松山市)泌尿器科・矢野明副部長
▽博愛会病院(福岡市中央区)泌尿器科・原律子医師
▽熊本大学医学部付属病院(熊本市)泌尿器科・吉田正貴助教授
March 31, 2006 10:18 AM
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