2006年03月19日
この病気にこの名医Part2
【第67回】副作用なくQOL維持の樹状細胞療法/ビオセラクリニック谷川啓司院長
がん免疫細胞療法(下)
注目されている「がん免疫細胞療法」の最も基本的治療としては、患者のリンパ球を活性化して体内に戻す「活性化自己リンパ球療法(CAT)」がある。リンパ球を一律に活性化させるので、実際にがん細胞を見つけてたたくリンパ球がどれだけ活性化しているか分からないという弱点がある。
「それより1歩進んだのが、がんを専門的に攻撃するTリンパ球を体内で教育し、リンパ球療法の効果を増強させる方法です」と言うのは、東京女子医大病院の関連施設、ビオセラクリニック(東京・新宿区)の谷川啓司院長。これが「樹状細胞療法」で、自分のがん組織の抽出物を教材に使う「自己ガン抽出抗原提示樹状細胞療法(TPDC)」と、がんに特徴的な抗原タンパク質を教材とする「人工抗原提示樹状細胞ワクチン療法(PPDC)」がある。どの治療を行うかは患者の置かれた状況による。
「樹状細胞は白血球の1つ単球と呼ばれる細胞を特殊な条件下で培養し、変化させて得られます。樹状細胞の機能としてはがん細胞を食べて消化したり、がんの特徴である抗原を取り込んだりして、その特徴を細胞の表面に提示してリンパ球たちに伝えるのです」。つまり、実際にがん細胞をたたく兵士であるTリンパ球に対して、樹状細胞は教官。その教官が攻撃すべき相手の特徴を徹底的に兵士に教え込む。しっかり教育された兵士は体の中を巡回して、がんという攻撃相手を発見すると攻撃を開始する。だから、この教育係と活性化リンパ球を同時に入れる治療がより効果を発揮すると期待されている。
このような免疫細胞療法は、原則として1~2週間に1回の治療が基本。採血後、1週間で投与準備ができ、点滴で患者の血管内に投与する。患者は採血とリンパ球投与があるため、2週間連続で来院する必要がある。合計4回の投与で1クールが終了する。「まだ歴史の浅い治療法ですが、将来的には手術、化学(抗がん剤)、放射線療法の一角に確実に組み入れられる治療法だと確信しています。副作用がなく、QOL(生活の質)の維持向上を可能にする点でも画期的な治療といえると思います」。
現時点では保険は適用されていない。そのため、治療費は総額約300万円かかるという。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆がん免疫細胞療法の歴史 がん免疫細胞療法は1970年代にスタート。結核の病原菌としてあまりに有名なBCG。その免疫反応はがんを縮小させる、と報告されたからだ。結果的にはBCGに免疫細胞を増やす働きはなかった。
◆がん免疫細胞療法の名医
▽薬院CAクリニック(福岡市中央区)森崎隆院長
▽久留米大学医学部付属病院(福岡県久留米市)集学治療センター・山名秀明教授
▽九州大学生体防御医学研究所付属病院(大分県別府市)腫瘍外科・森正樹教授
March 19, 2006 07:58 AM
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nikkansports.com/mt/mt-tb.cgi/3905
