2006年03月08日
この病気にこの名医Part2
【第56回】チャレンジが光明、結果に/京大病院米田正始教授
閉塞性動脈硬化症の治療(下)
動脈硬化で動脈が狭くなったり閉塞(へいそく)すると、血流障害を引き起こす。特に下肢で起こると「閉塞性動脈硬化症」という。思うように改善しないと脚が壊疽(えそ)を起こして切断する事態にも至ってしまう。
治療は病態によってさまざまあるが、重症のケースに、今注目を集めているのが「血管新生療法」である。「血管新生療法というのは、閉塞してしまった動脈の代わりとなる新しい血管を多く再生し、血流を改善して脚が壊疽を起こさないようにしようという臨床研究中の治療です」。京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授が解説する血管新生療法は1つではない。「bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)治療」「HGF(肝細胞増殖因子)治療」「骨髄または末梢(まっしょう)血単核球細胞治療」などがある。
米田教授グループの開発したのはbFGF治療。bFGFは人体内にもある物質で、すでに製品化されて使われている。「皮膚の潰瘍(かいよう)や床ずれの治療薬に使われているもので、血管を新生する働きがあります。脚の付け根から血管の閉塞部まで40~50カ所にbFGFを筋肉注射するだけです」。
ウサギの動物実験で成功し、05年2月から臨床応用がスタート。すでに5人の患者に治療を行い、4例が著効で1例が有効と、極めて良好に進んでいる。1例目の患者は20代で、バージャー病で脚の血管が閉塞し、片足の4、5趾(し)が切断され、足の外側に潰瘍もできていた。脚に2センチおきに筋肉注射でbFGFを投与した。「車いすで入院した患者さんが、治療1週間後には痛みが軽くなって松葉づえで歩行可能に改善。3カ月後には痛みが消え、足の潰瘍も治ってしまい、今は普通に歩いて仕事復帰もしていらっしゃいます」。注目すべき結果になっている。
このほか、HGF治療は、肝細胞を増殖させる物質の遺伝子を用いた治療。これは肝細胞の増殖のみならず、血管新生に作用することも分かって大阪大学で治療が始まった。
そして、末梢血単核球細胞治療。血管は筋肉細胞と内皮細胞でできている。その内皮細胞を患部に注入すると血管が新生されることから、内皮細胞のもととなる血液成分「単核球」を患者の血液から採って移植するものである。
さまざまなチャレンジが、閉塞性動脈硬化症患者の光明となっている。
◆バージャー病 難病指定されている疾患の1つでビュルガー病ともいう。血管に炎症が起きる原因不明の疾患で、血管が閉塞してしまう。
◆閉塞性動脈硬化症の名医
▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)老年・高血圧内科・森下竜一教授
▽岸和田徳洲会病院(大阪府岸和田市)循環器科・横井良明副院長
▽川崎医科大学付属病院(岡山県倉敷市)胸部心臓血管外科・正木久男助教授
▽久留米大学病院(福岡県久留米市)循環器センター・勝田洋輔講師
March 8, 2006 09:44 AM
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