健康連載ブログ

2006年03月31日

2006年03月31日

【第79回】腹圧性ではまず体操、薬物/東京都済生会中央病院中村聡部長

女性の尿失禁の治療(下)

 女性に多い尿失禁。腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合性尿失禁の診断がつくと、本格的治療となる。

 その基本的な治療法を、東京都済生会中央病院(東京・港区)泌尿器科の中村聡部長は「腹圧性尿失禁の場合は骨盤底筋体操と外科的治療が中心で薬物療法は補助的になります。一方、切迫性尿失禁では生活指導、膀胱(ぼうこう)訓練法、薬物療法が中心で、骨盤底筋体操が補助的になり、外科的治療は対象となりません」と説明する。

 腹圧性尿失禁では、まずは骨盤底筋体操と薬物療法で様子をみる。骨盤底筋体操は骨盤底筋を強める目的で行う膣(ちつ)や肛門(こうもん)を引き締める体操。薬は膀胱の緊張をとり、尿道の締まりを改善する「ベータ2(ベーターツー)刺激薬」を使う。「体操の効果は3カ月でピークに達し、軽症の患者さんでは30%くらいが治ります。あとはQOL(生活の質)の問題で、患者さん個人個人の状況により、ある程度改善して用心のためのパッドで大丈夫ならばそれでもOKですが、短期間でしっかり治したい場合は外科的治療になります」。

 外科的治療は「TVT手術」が中心。93年にスウェーデンのウルムステン教授が考案したもので、すでに世界で70万例以上行われ、世界的に高い評価を受けている。「以前の経膣手術は長期成績が悪く、5年間のうちに6割近くが再発したという報告もありますが、TVT手術は7年間のデータで90%以上の高い成功率になっています」。

 TVT手術は局所麻酔と静脈麻酔で行われ、手術時間は30分程度で終わる体に優しい手術。腹部2カ所と膣1カ所を約1センチずつ切開し、そこから独自の器具を挿入して尿道の下に半永久的に使える幅1センチのテープを留置する。尿道をつり上げるのではなく、尿道をあるべき場所に固定するのである。「テープが尿道下に入ったら患者さんを覚せいさせて術中にせきをしてもらいます。せきをすると尿が漏れますので、テープの引き具合を微調整して最適の位置に固定します」。欧米では日帰り、日本でも2泊3日が中心である。今は、数施設でTVTを改良したTOT手術も登場し始めた。

 一方、切迫性尿失禁の治療で用いる薬は「抗コリン薬」。アセチルコリンという物質の受容体との結合を防ぎ、膀胱の収縮を抑えるのである。「この薬だけでかなり改善します。あとは水分を取り過ぎないように生活を改善し、トイレを我慢する膀胱訓練法と骨盤底筋体操を行います。自己流ではなく、正しいやり方を身に付けてもらいます」。

 治療すると大きく改善するので、まずは泌尿器科の「女性泌尿器科外来」を受診しよう。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆尿失禁の名医
 ▽岡山労災病院(岡山市)泌尿器科・小沢秀夫医師
 ▽松山赤十字病院(愛媛県松山市)泌尿器科・矢野明副部長
 ▽博愛会病院(福岡市中央区)泌尿器科・原律子医師
 ▽熊本大学医学部付属病院(熊本市)泌尿器科・吉田正貴助教授

March 31, 2006 10:18 AM | トラックバック (0)

2006年03月30日

2006年03月30日

【第78回】パッドテストで尿もれチェック/東京都済生会中央病院中村聡部長

女性の尿失禁の治療(上)

 女性に多い尿失禁は、的確な治療のためには確実な診察・診断が不可欠である。診察は、まずは問診からスタートする。「私どもの場合は、まず患者さんに『尿失禁問診表』2枚、国際学会の『QOL問診表(ICIQ-SF)』1枚に答えてもらい、時間をかけた問診を行います。この問診である程度の診断がつきます。腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合性尿失禁、この鑑別診断が最も重要になります」と、女性泌尿器科外来を設けている東京都済生会中央病院(東京・港区)泌尿器科の中村聡部長は言う。

 尿失禁問診表の質問項目は32。排尿の状態から睡眠、心の問題まで。QOL問診表は尿もれ度が点数で評価されるようになっている。さらに、尿検査が初診時に行われる。「尿検査を行うのは、膀胱(ぼうこう)炎や尿路結石などがないかを調べるためです。多くは問診で十分に話を聞くことで、ある程度診断がつきます」。

 診断がつき、今後の診療方針が明らかな人は、症状に適した治療が行われる。自宅で行う「パッドテスト」と「排尿日誌」は、診断のついた人も、検査が必要な人も必要に応じて行う。

 パッドテストは、パッドをつけて水500ミリリットルを飲み、階段を上り下りしたり、走ったり、せきをしたりと腹圧のかかる動作を1時間行う。そして、テスト前と後のパッドの重さを調べて、もれた尿の量を調べる。排尿日誌は、トイレに行った時間と尿量、そのときの尿もれの程度、尿意の強さ、いつどれくらいの水分量を摂取したかなどを1週間記入する。そして再診。

 「パッドテスト、排尿日誌をチェックして、その後の症状を確認して治療を継続したり、他の治療を検討したりします。また、初診時から検査の必要だった人については『内診』『ストレステスト』『尿流量測定』『残尿測定』を行います」。

 膀胱が下がっていないかなどを内診で調べ、膀胱に清潔な水を入れて尿のたまった状態を再現した上で、せきをしてもらって尿もれ度を調べる(ストレステスト)。このほか、必要に応じてより詳しい検査が加えられる。「膀胱造影検査」「膀胱内圧測定検査」である。「患者さんの状態により、また、患者さんの希望を十分に反映して、本格的な治療に入ります」。

 ◆尿失禁の名医
 ▽信州大学医学部付属病院(長野県松本市)泌尿器科・西沢理教授
 ▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)泌尿器科・後藤百万講師
 ▽名古屋第一赤十字病院(名古屋市中林区)泌尿器科・加藤久美子副部長
 ▽大阪中央病院(大阪市北区)泌尿器科・竹山政美部長

March 30, 2006 09:51 AM | トラックバック (0)

2006年03月29日

2006年03月29日

【第77回】受診しやすい環境作り/東京都済生会中央病院中村聡部長

女性の尿失禁(下)

 女性の尿失禁(尿もれ)には「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「混合性尿失禁」がある。今回は切迫性尿失禁に注目しよう。

 「急に尿意を起こす。それも我慢できないほどの尿意のためにトイレに間に合わず、尿が出てしまうのを切迫性尿失禁といいます」と東京都済生会中央病院(東京・港区)泌尿器科の中村聡部長は切迫性尿失禁の定義を話す。

 急に強い尿意が起きるとトイレに間に合わない。それがいつ起きるか分からないので、患者は外出できなくなるケースも多くみられる。通常、腎臓で尿が作られて尿管を通って膀胱(ぼうこう)にたまる。尿がたまるに従って尿意が強まり、ある程度尿がたまるとその情報が脳に伝わり、大脳からの排尿許可が出て尿が出る。「切迫性尿失禁の方は、尿が膀胱にパンパンにたまっているのではなく、実際には100ミリリットル程度でも急に尿意を感じ、もれてしまいます。これには過活動膀胱が大きく関係しているのです」。

 過活動膀胱とは膀胱が極めて過敏になった状態。そのため、尿が多少たまっただけでも過敏に反応し、強い尿意、いわゆる「尿意切迫感」に襲われる。トイレに間一髪でも間に合えば大丈夫だが、間に合わずにもれてしまうと切迫性尿失禁となる。

 その切迫性尿失禁を知るための自己チェックがある。
 <1>昼間、10回以上トイレに行く。
 <2>就寝中、2回以上トイレに行く。
 <3>夜間、寝ているときに尿がもれたことがある。
 <4>強い尿意があるとき、もらしたことがある。
 <5>冷たい水で手を洗うとトイレに行きたくなったり、もれる。(日本家族計画協会『女性の尿もれは治療できます』より)

 このような症状に気付いても、1人で悩む人が多いようだが、QOL(生活の質)を悪くしてしまうので、早期に受診を。「膀胱炎、尿路結石といった膀胱の病気が原因だったり、脳卒中の後遺症ということもあります。そういった正確な診断のためにも早期の受診は大事です」。泌尿器科では女性泌尿器科外来を設け、女性が受診しやすい環境作りをしているところが増えている。

 ◆尿失禁の名医
 ▽東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)泌尿器科・巴ひかる講師
 ▽東京都済生会中央病院(東京都港区)泌尿器科・中村聡部長
 ▽北里研究所病院(東京都港区)泌尿器科・大川あさ子医長
 ▽慶応義塾大学病院(東京都新宿区)泌尿器科・朝倉博孝講師
 ▽昭和大学横浜北部病院(横浜市都筑区)泌尿器科・島田誠教授

March 29, 2006 08:28 AM | トラックバック (0)

2006年03月28日

2006年03月28日

【第76回】成人の3人に1人が経験/東京都済生会中央病院中村聡部長

女性の尿失禁(上)

 QOL(生活の質)を悪くし、重症になると外出もできなくなってしまう病気として、最近、注目されているのが「尿失禁(尿もれ)」である。「尿失禁には腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流(いつりゅう)性尿失禁、機能性尿失禁、反射性尿失禁があります」と、東京都済生会中央病院(東京・港区)泌尿器科の中村聡部長は言う。

 溢流性尿失禁は前立腺肥大症などで尿道が狭窄(きょうさく)することで起きる。機能性尿失禁は認知症などで排尿自体の認識がない。反射性尿失禁は尿意がないのに反射的に尿を漏らす。脊髄(せきずい)の障害によって起こる。そして、女性の尿失禁として多いのは、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、その2つが合わさっている混合性尿失禁である。「成人女性の3人に1人は尿失禁を経験しており、その比率は腹圧性尿失禁が60%、切迫性尿失禁が20%、混合性尿失禁が20%となっています」。

 今回は、腹圧性尿失禁のメカニズムを紹介しよう。腹圧性尿失禁は「骨盤底筋の膀胱(ぼうこう)の出口から尿道にかけてを支える部分が弱くなる」ことで起きる。骨盤底筋とは膀胱、尿道、子宮など、骨盤内に収まっている臓器を、下から支えている筋肉の集団。これがしっかりしていると、腹圧が強くかかっても何の問題も起こらない。ところが「骨盤底筋の構造が破たんすると、腹圧がかかったときに対応できずに尿が漏れます」。つまり、尿道をしっかりと締められないのである。

 腹圧性尿失禁の原因はまだ完全に解明されたわけではないがリスクファクター(危険因子)として、以下のことが考えられている。

 ▽出産経験 何回も出産経験があると骨盤底筋は弱くなる。
 ▽加齢 「40代から急激に患者さんが増えます。出産後に骨盤底筋が弱ってもいったんは回復しますが、その後加齢に伴い、括約筋や骨盤底筋も衰え、脳血管障害、神経疾患なども併発する可能性が増加します」。
 ▽女性ホルモン 女性の尿道周囲の弾力性の維持に女性ホルモンが働くが、更年期によって女性ホルモンが減少し、尿道の粘膜が委縮し抵抗が低くなってしまう。
 このほかに、肥満、便秘も腹圧を余計にかける原因になっている。

 ◆腹圧のかかるとき 腹圧がかかって尿失禁を起こすのは「せきやくしゃみをしたとき」「重い物を持ち上げたとき」「急に走りだしたとき」「大笑いをしたとき」「立ち上がったとき」などがある。

 ◆尿失禁の名医
 ▽東北労災病院(仙台市青葉区)泌尿器科・大沼徹太郎部長
 ▽市立秋田総合病院(秋田市)泌尿器科・松尾重樹外科診療部長
 ▽星総合病院(福島県郡山市)泌尿器科・亀岡浩医師
 ▽三井記念病院(東京都千代田区)産婦人科・中田真木医長
 ▽日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)泌尿器科・高橋悟教授

March 28, 2006 12:08 PM | トラックバック (1)

2006年03月27日

2006年03月27日

【第75回】ワクチン接種の時代/国立病院機構東京病院永井英明医長

肺炎の治療(下)

 日本人の死亡原因第4位にランクされる肺炎の死亡者数は約9万5000人。その96%を占めているのが65歳以上の高齢者である。

 60歳以上の高齢者の肺炎の原因を調べると、46%が肺炎球菌によることが分かっている。それを基に、国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)呼吸器科の永井英明医長は「65歳以上の高齢者では、肺炎球菌性肺炎をしっかり予防できると、死亡者は激減すると思います」と話す。

 かつては「抗生物質を使えば肺炎は治る」と考えられていた。が、最近はペニシリン耐性のある肺炎球菌が増加。実際、肺炎球菌の約60%はペニシリンに対する耐性菌であるといわれている。となると、予防はインフルエンザがそうであるように、肺炎球菌性肺炎の場合も肺炎球菌ワクチンの接種が強い味方になるはず。

 88年から日本でも肺炎球菌ワクチンの接種が始まったものの、接種率はわずか2%にすぎない。「ワクチンの接種で肺炎から引き起こされる菌血症が予防できると、肺炎による死亡率を60%は減らすことができると考えられています。肺炎球菌による肺炎の重症化や死亡を防ぐのです」。

 実際、町の助成によって01年に65歳以上の町民に肺炎球菌ワクチン接種を行った町がある。北海道瀬棚町、現在のせたな町で、予防に重点を置き、高齢者の生命も守り、医療費の削減にも結び付けば、と実践した。「インフルエンザワクチン接種、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の原因となるピロリ菌の尿中抗体検査にも助成したのです。すると、1人当たりの老人医療費は約30%も下がり、北海道での老人医療費が多いところから24番目だったのが翌年には187位まで大きく下がりました」。

 それを知って、肺炎球菌ワクチンの公費助成を行う自治体が出てくるようになり、05年10月現在で27市町村となった。

 ただ、肺炎球菌ワクチンの有効期間は約5年といわれている。65歳でワクチンを接種すると、70歳を超えたらどうするといいのだろう。米国では条件付きだが再接種が許されている。「日本でも3~4年後には、再接種が可能になると思われます」。肺炎も予防接種の時代である。

 ◆菌血症 肺炎球菌性肺炎になると、肺炎球菌が血液に入って全身へ運ばれる。これが菌血症。この菌血症が髄膜炎や心内膜炎などを引き起こす。

 ◆肺炎の名医
 ▽公立刈田総合病院(宮城県白石市)呼吸器科・内山美寧部長
 ▽倉敷第一病院(岡山県倉敷市)呼吸器センター・松島敏春センター長
 ▽長崎大学医学部・歯学部付属病院(長崎市)呼吸器内科・河野茂教授
 ▽長崎原爆諫早病院(長崎県諫早市)斎藤厚院長

March 27, 2006 02:35 PM | トラックバック (0)

2006年03月26日

2006年03月26日

【第74回】喀痰グラム染色検査が診断の鍵/国立病院機構東京病院永井英明医長

肺炎の治療

 肺炎の中で、圧倒的に多い肺炎球菌が原因で起こる肺炎球菌性肺炎を治療するときは、まずはしっかりとした検査、そして診断が行われることが重要である。肺炎の検査は昔からそうであるように、まずは胸部エックス線検査。「エックス線検査が大事です。肺炎を引き起こしていると、肺に炎症が起きているので影が出ます。つまり、エックス線画像の肺にまっ白な部分が出てきます」と、国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)呼吸器科の永井英明医長。そして「症状だけでは気管支炎と区別ができません。専門医でもそうです」と付け加える。

 重症になると激しい咳(せき)に加え、黄色や緑色の痰(たん)、高熱に加えて〝息苦しさ〟も出てくる。「症状では高熱が特徴的でもあるのですが、高齢者の場合はそれが出ない時期もあるのです。それでも、基本となる診断に不可欠なのはエックス線、咳、痰、発熱です」。肺炎が疑われると「喀痰グラム染色検査」を行う。患者から痰を採取して染色し、それを顕微鏡で調べる。「染色の染まり具合や菌の形状で細菌感染の有無、細菌の種類がおよそ分かります」。
 さらに病原体を特定するには、菌を増やして調べる「培養検査」を必要とする。「検査結果を受けるまでに2、3日かかります。その結果を待っていたのでは、肺炎だったとしたらどんどん進行し、生死にかかわる状態になってしまいます。その日にすぐに治療を開始するには、喀痰グラム染色検査からおおよその診断をつけることが大事です。そして、培養検査は菌の確認と感受性を見るため、ということです」。これがごく一般的な診断、治療の進め具合である。
 治療は、軽症の場合は内服の抗菌薬が使われ、通院で行われる。重症になると1、2週間の入院となり、注射薬を使う。一般的には抗菌薬を使用後、3日で効果を判定し、効果がない場合は薬を代える。「通院の方で発疹(ほっしん)が出たり、下痢がひどい場合は抗菌薬の副作用が疑われますので、連絡をいただきます。そして、適切な治療が行われれば、若い方では問題はありません」。今日の治療では、抗菌薬を使うときは耐性菌による可能性があるという前提で行われている。

 ◆肺炎の名医
 ▽三宿病院(目黒区上目黒)呼吸器科・中森祥隆部長
 ▽桜みちクリニック(神奈川県小田原市)永武毅院長
 ▽中浜医院(大阪市旭区)中浜力院長
 ▽奈良県立医科大学付属病院(奈良県橿原市)感染症センター・三笠桂一教授

March 26, 2006 08:32 AM | トラックバック (1)

2006年03月25日

2006年03月25日

【第73回】高齢者は重症化死亡者の95・6%/国立病院機構東京病院永井英明医長

肺炎(下)

 日本人の死亡原因第4位の肺炎。その肺炎、60歳以上では約50%が「肺炎球菌」によるものである。

 肺炎球菌に感染して発症する肺炎球菌性肺炎は、最初から肺炎球菌に感染した場合と、風邪やインフルエンザから2次的に感染する場合とがある。「風邪やインフルエンザは鼻や咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、気管・気管支の炎症です。炎症が起こると気道の粘膜が破壊されて細菌により感染しやすい無防備な状態になってしまうので、2次感染も多いのです」と、国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)呼吸器科の永井英明医長は言う。そして続ける。「肺炎球菌性肺炎の最大の特徴は、ほかの肺炎と比較して、格段に重症化しやすいことです」。

 肺炎球菌性肺炎になると、細菌は血管の中に入り、血液とともに全身に運ばれる。「菌血症がおよそ20%の人に起こるといわれています」。菌血症によって引き起こされるのが、脳・脊髄(せきずい)に細菌が巣くうと髄膜炎、心臓では心内膜炎。これらは生死にかかわることにもなる。このほか、菌血症から関節炎、腹膜炎も起こるし、肺炎から直接に胸膜炎、膿胸(のうきょう)、心外膜炎なども引き起こされる。

 特に重症化しやすく、生死に大きくかかわるのは65歳以上の高齢者で、肺炎の死亡者の95・6%を占めている。そして、心臓病、腎臓病、肝臓病、糖尿病、人工透析患者、呼吸器病などのある人も感染しやすく、重症化しやすいのである。

 症状としては「38度以上の高熱が出る」「激しいせき」、さらに「たん」が出る。ただし、どの人にもワンパターンの症状となるのではない。「高齢者では、特徴的な症状が出ないで、元気がなかったり、息切れしたりといった症状が肺炎の症状だったというケースもあります。だから、注意が必要なのです」。

 65歳以上の肺炎は死亡率が高く、特に肺炎球菌性肺炎はそれが高いので、高齢者の場合は、周囲の人々がしっかりと気を付けてあげることが生死を分けることにもつながるといって過言ではない。

 ◆肺炎の名医
 ▽東北大学病院(仙台市青葉区)遺伝子・呼吸器内科・渡辺彰助教授
 ▽杏林大学病院(東京都三鷹市)呼吸器系・呼吸器(第一内科)・後藤元教授
 ▽神奈川県立循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)呼吸器科・綿貫祐司医師
 ▽川崎医科大学付属病院(岡山県倉敷市)呼吸器内科・二木芳人副医長(講師)

March 25, 2006 08:18 AM | トラックバック (0)

2006年03月24日

2006年03月24日

【第72回】死亡者数第4位、年間9万5000人/国立病院機構東京病院永井英明医長

肺炎(上)

 日本人の死亡者数を原因別に挙げると「がん」「虚血性心疾患(心筋こうそくなど)」「脳卒中」の順である。では、死亡者数の多さで第4位になるのは-。それは今回取りあげる「肺炎」で、約9%を占め、年間9万5000人を超えている。

 「日常の生活の中で感染して起こる市中肺炎で、28%と最も多い原因となっているのが肺炎球菌です。60歳以上の高齢者に限ってみますと、肺炎球菌が原因の46%を占めています」と、国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)呼吸器科の永井英明医長は解説する。そして「日本人の栄養状態が良くなるとともに、肺炎は減少してきましたが、ここへきて再び増加傾向を見せていますので、十分な注意が必要です」と警告する。

 それは、肺炎と似た疾患の風邪やインフルエンザなどと区別ができず「変だなあ!」と思ったときは肺炎が重症になっていたというケースが多いからであろう。

 区別の難しい風邪とインフルエンザと肺炎の違いは-。

 ◆風邪 原因となる病原体はライノウイルス、アデノウイルスなどのウイルス。手や指などからの接触感染が主。発症すると鼻水、くしゃみ、せき、のどの痛みといった症状を出す。熱はそれほど高くなく、高くなっても38度まで。1週間程度で治ってしまう。

 ◆インフルエンザ インフルエンザウイルスが原因。このウイルスに感染した人のせきによって空気中にまき散らされ、それを吸い込んで感染する飛沫(ひまつ)感染が主。38度以上の高熱で、体がだるくなる。関節の節々が痛く、筋肉痛、頭痛も伴う。「このような症状が急に起こるのが大きな特徴です」。

 ◆肺炎 主に細菌、マイコプラズマ、クラミジアの感染が原因。風邪とインフルエンザは主に鼻、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、気管・気管支に炎症が起こるのに対し、肺炎は肺の中に炎症が起こる。そのため、症状は激しく、38度以上の高熱、激しいせき、黄色や緑色のたんが出て、症状は長く続く。
 「このような違いをしっかり知っておいていただくと、的確な対応ができると思います」。それによって、医療機関を受診するタイミングを逃さないと思われる。

 ◆肺炎の名医
 ▽日本医科大学付属病院(東京都文京区)呼吸器内科・工藤翔二教授
 ▽中田クリニック(東京都千代田区)中田紘一郎院長
 ▽国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)呼吸器科・永井英明医長
 ▽倉敷中央病院(岡山県倉敷市)呼吸器内科・石田直主任部長

March 24, 2006 07:54 AM | トラックバック (1)

2006年03月23日

2006年03月23日

【第71回】ピロリ除菌で再発防止/国際医療福祉大熱海病院川口実

胃・十二指腸潰瘍の治療(下)

 空腹時に上腹部が痛んだり、出血したりする胃・十二指腸潰瘍(かいよう)は、吐血したり、下血したりすることもある。原因の大きな要素を担っているのが胃の出口の幽門部付近により多くすみついているヘリコバクター・ピロリ菌。

 「再発を防ぐためには、ピロリ菌の検査でピロリ菌の感染が分かると、患者さんと話し合って除菌を行います。この除菌が成功すると再発はまずなくなります」と、国際医療福祉大付属熱海病院(静岡県熱海市)内科の川口実教授(兼副院長)は強調する。

 ピロリ菌の「除菌治療」は、00年から胃・十二指腸潰瘍を患っている人に限って、健康保険が適用されている。

 除菌治療は「3剤併用療法」。3種類の薬を1週間服用する。3種類のうち2種類が抗菌薬で「アモキシシリン」と「クラリスロマイシン」、残り1種類は胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)で「ランソプラゾール」もしくは「オメプラゾール」を使う。副作用としては軽い下痢などがあるが、これは大きな問題とはならない。すぐに受診する必要のあるのは出血性大腸炎を起こした場合で、血便とともに重症の下痢にも見舞われる。

 除菌治療4週間以上たって再度ピロリ菌の検査を行い、除菌の成否を判定する。「私どもの場合は再検査は8週間後に行います。ピロリ菌検査は少し残っていても陰性に出てしまいます。ピロリ菌が残っていると増殖してきますので、判定は少し遅い方がいいのです」。

 除菌率は85%くらいだったが、最近は耐性菌が出現してきて、75%くらいにまで低下してきた。「クラリスロマイシンに耐性が出てきたのです。この場合は2度目の除菌治療となりますが、同じ薬を使わないと保険が適用になりません。これでは除菌率は10%くらいにしかなりません」。除菌の成功率を高めるには、クラリスロマイシンをメトロニタゾールに替えて治療を行うことになる。

 除菌がうまくいった場合、胃の粘膜が若々しくなるため、10人に1人くらいに胸焼けの症状を起こす「逆流性食道炎」が見られる。このようにメリットは多いがデメリットもある。除菌治療を受けるときは、担当医と十分に話し合ってからにするべきである。

 ◆胃・十二指腸潰瘍の名医
 ▽三重県立志摩病院(三重県志摩市)内科・吉村平副院長
 ▽大阪市立大学医学部付属病院(大阪市阿倍野区)消化器内科・荒川哲男教授
 ▽川崎医科大学付属病院(岡山県倉敷市)食道・胃腸内科・春間賢教授
 ▽詫間町立国民健康保険永康病院(香川県詫間町)内田善仁病院長
 ▽福岡大学筑紫病院(福岡県筑紫野市)消化器科・松井敏幸教授

March 23, 2006 08:39 AM | トラックバック (1)

2006年03月22日

2006年03月22日

【第70回】まず内視鏡でしっかりチェック/国際医療福祉大熱海病院川口実

胃・十二指腸潰瘍の治療(上)

 胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の患者は、多いように思われるが、実際には約200万人程度である。空腹時に上腹部がキリキリ痛む特徴があり、牛乳や食事を取ると一時的に痛みが治まる。受診する場合は内科は内科でも消化器内科になる。

 国際医療福祉大学付属熱海病院(静岡県熱海市)内科の川口実教授(兼副院長)は、胃・十二指腸潰瘍の診断までの診察を、次のように話す。「どのような痛み方かを患者さんから話を聞きます。十分に問診を行った後、今は内視鏡によって胃・十二指腸潰瘍を確認するのが最もオーソドックスだと思います」。

 「上部消化管内視鏡検査」である。この検査を受けるときは、前日の夜9時以降は食事をせず、当日は多少の水分摂取は問題ないが、食事は取らずに受診する。「胃・十二指腸潰瘍疾患の鑑別診断、確定診断になるので、胃がん、胃ポリープなども見逃さないように内視鏡の画像をチェックします。そして、胃・十二指腸潰瘍と確定したときは、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているか否かを調べるために、胃の組織の一部を採取します」。

 もちろん、除菌を必要としない人には胃の組織を採る検査は不要。その場合は、そのまま胃・十二指腸潰瘍の治療となる。
 胃・十二指腸潰瘍の治療に用いられる薬は「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」と「ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)」。胃酸分泌の最終段階にタッチするのがプロトンポンプという酵素。PPIにはこのプロトンポンプの作用を抑える働きがある。もう1つのH2ブロッカーは、プロトンポンプの前段階のヒスタミンが受容体に結合し、その信号がプロトンポンプに伝えられるところの受容体結合を阻害する。やはり胃液の分泌は抑えられる。

 さて、再発を防ぐため、ピロリ菌の除菌を考える人は、より簡単な「尿素呼気試験」でピロリ菌の感染を調べる必要がある。「ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出しますが、これが胃内の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。このピロリ菌の働きを利用したのが尿素呼気試験で、特殊な炭素を含んだ尿素の検査薬を飲む前と後の息を採って確認する検査です」。ピロリ菌が胃内に住んでいると、特殊な炭素が多く含まれていることになる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆胃・十二指腸潰瘍の名医
 ▽東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)消化器内科・高木敦司教授
 ▽新潟大学医歯学総合病院(新潟市)第3内科・成沢林太郎助教授
 ▽国際医療福祉大学付属熱海病院(静岡県熱海市)消化器内科・川口実副院長
 ▽藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院(名古屋市中川区)消化器内科・芳野純治教授
 ▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)消化器内科・丹羽康正講師

March 22, 2006 11:43 AM | トラックバック (0)

2006年03月21日

2006年03月21日

【第69回】ピロリ菌の除菌が最優先/国際医療福祉大熱海病院川口実

胃・十二指腸潰瘍(下)

 胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の原因となることですっかり有名になったヘリコバクター・ピロリ菌。日本には6000万人の感染者がいると推測されている。が、実際に胃・十二指腸潰瘍で苦しんでいるのは約200万人前後。

 ピロリ菌がどのように胃・十二指腸潰瘍への道を作るのか-。「まず、ピロリ菌は胃の中の粘液にすみ、胃酸から身を守るために、自分自身で酵素を出し、ウレアーゼ活性といって、胃にある尿素から二酸化炭素とアンモニアを作ります。そのアンモニアはアルカリ性。それでピロリ菌は自身を胃液から守るものの、胃にとってはつらいことになります」と解説するのは、国際医療福祉大学付属熱海病院(静岡県熱海市)内科の川口実教授(兼副院長)。

 それは“慢性胃炎”の状態をピロリ菌がアンモニアを作ることで起こしてしまうからである。
 胃壁は5層になっており、その最も内側が「粘膜」。ピロリ菌はここにすみついていると思っている人が多いが、実はそれは正解ではない。ピロリ菌は粘液の中に、そして、より胃の出口である幽門付近に多くすみついている。
 「粘膜から胃液も粘液も分泌されますが、胃の内側から胃液、粘液、粘膜となって、アルカリ性の粘液が胃液から粘膜を守っています。ところが、ピロリ菌に感染していると、ピロリ菌の作るアンモニアなどが胃の粘膜に障害を与え、慢性胃炎の状態にするのです」。
 慢性胃炎は、胃・十二指腸潰瘍の前身で、いつ胃・十二指腸潰瘍を引き起こしても不思議ではない。「この段階になると、ちょっとしたストレスでも胃・十二指腸潰瘍は起きてしまいます」。つまり、胃粘膜側の抵抗力がストレスで低下し、胃酸がドッと粘膜を攻撃することになるからである。「ピロリ菌を除菌してしまわない限り、胃・十二指腸潰瘍は何度でも再発します」。

 胃・十二指腸潰瘍の治療は、何をおいてもピロリ菌の除菌となるようである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆委縮性胃炎 ピロリ菌によって慢性胃炎状態が続くと、委縮性胃炎になる。委縮性胃炎は弾力があって厚みもあった胃の粘膜が、硬く薄くなった状態で、抵抗力が弱く、より胃・十二指腸潰瘍になりやすい状態である。

 ◆胃・十二指腸潰瘍の名医
 ▽社会保険中央総合病院(東京都新宿区)消化器内科(消化管)・浜田勉部長
 ▽国立国際医療センター(東京都新宿区)消化器科(内視鏡)・上村直美部長
 ▽ムラタクリニック(東京都港区)村田洋子院長
 ▽杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)消化器(第3内科)・高橋信一教授

March 21, 2006 04:11 PM | トラックバック (0)

2006年03月20日

2006年03月20日

【第68回】99%はピロリ菌感染/国際医療福祉大熱海病院川口実教授

胃・十二指腸潰瘍(上)

 昨年10月、カロリンスカ研究所(スウェーデン)は05年のノーベル医学生理学賞を西オーストラリア大のバリー・マーシャル教授と、病理学者のロビン・ウォーレン博士に授与すると発表した。授賞理由は「ヘリコバクター・ピロリ菌の発見と、胃炎や消化性潰瘍(かいよう)における役割の発見」。

 ノーベル賞に結び付いた2人の発見、研究は胃・十二指腸潰瘍の治療を大きく変えた。それは、胃・十二指腸潰瘍のメカニズムの考え方も大きく変わったからである。「ピロリ菌が胃・十二指腸潰瘍を起こす原因の90%は占めています。そして、残り10%がストレスと特別な病気に伴うケースと考えられるようになりました」。

 国際医療福祉大学付属熱海病院(静岡県熱海市)内科の川口実教授(兼副院長)は言う。そして続ける。「実際、胃・十二指腸潰瘍を引き起こしている人の99・数%は確実にピロリ菌に感染しています」。

 今日、日本人のピロリ菌感染者は約50%、約6000万人といわれている。50代以上では80%近くが感染しているものの、若い人々には感染者が減少している。10代では7~8%、20代で15%くらい。「胃や十二指腸に潰瘍を作る胃・十二指腸潰瘍は、どんどん減少し、ピロリ菌の感染者がいなくなると、消えることにもなると思われます」。

 若い人々に減少しているピロリ菌は、乳幼児期に感染したもので、50代以上の人々に感染者が多いのは、幼児期に衛生状態の悪い中で育ったからと思われる。

 では、今の10代、20代の若者で感染している人々は、やはり衛生状態の悪い中に育ったかというと、そうとは限らない。母親からの食べ物の口移しが、感染のもとになっているとも考えられている。「かつては、ストレス原因説がほとんどでした。ところが、基本としてピロリ菌の感染があり、その上にストレスが加わると潰瘍になる、というのが今日の考えで、それが認められてノーベル賞に結び付いたのです」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆胃潰瘍 胃壁は内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5層からなっており、炎症が粘膜にとどまっているときは「びらん」といい、粘膜下層以上に達していると「潰瘍」という。

 ◆胃・十二指腸潰瘍の名医
 ▽北海道大学病院(札幌市北区)消化器内科・浅香正博教授
 ▽札幌厚生病院(札幌市中央区)消化器科・今村哲理部長
 ▽市立旭川病院(北海道旭川市)内科(消化器)・斉藤裕輔部長
 ▽福島県立医科大学付属病院(福島市)消化器内科・小原勝敏助教授

March 20, 2006 11:47 AM | トラックバック (0)

2006年03月19日

2006年03月19日

【第67回】副作用なくQOL維持の樹状細胞療法/ビオセラクリニック谷川啓司院長

がん免疫細胞療法(下)

 注目されている「がん免疫細胞療法」の最も基本的治療としては、患者のリンパ球を活性化して体内に戻す「活性化自己リンパ球療法(CAT)」がある。リンパ球を一律に活性化させるので、実際にがん細胞を見つけてたたくリンパ球がどれだけ活性化しているか分からないという弱点がある。

 「それより1歩進んだのが、がんを専門的に攻撃するTリンパ球を体内で教育し、リンパ球療法の効果を増強させる方法です」と言うのは、東京女子医大病院の関連施設、ビオセラクリニック(東京・新宿区)の谷川啓司院長。これが「樹状細胞療法」で、自分のがん組織の抽出物を教材に使う「自己ガン抽出抗原提示樹状細胞療法(TPDC)」と、がんに特徴的な抗原タンパク質を教材とする「人工抗原提示樹状細胞ワクチン療法(PPDC)」がある。どの治療を行うかは患者の置かれた状況による。

 「樹状細胞は白血球の1つ単球と呼ばれる細胞を特殊な条件下で培養し、変化させて得られます。樹状細胞の機能としてはがん細胞を食べて消化したり、がんの特徴である抗原を取り込んだりして、その特徴を細胞の表面に提示してリンパ球たちに伝えるのです」。つまり、実際にがん細胞をたたく兵士であるTリンパ球に対して、樹状細胞は教官。その教官が攻撃すべき相手の特徴を徹底的に兵士に教え込む。しっかり教育された兵士は体の中を巡回して、がんという攻撃相手を発見すると攻撃を開始する。だから、この教育係と活性化リンパ球を同時に入れる治療がより効果を発揮すると期待されている。

 このような免疫細胞療法は、原則として1~2週間に1回の治療が基本。採血後、1週間で投与準備ができ、点滴で患者の血管内に投与する。患者は採血とリンパ球投与があるため、2週間連続で来院する必要がある。合計4回の投与で1クールが終了する。「まだ歴史の浅い治療法ですが、将来的には手術、化学(抗がん剤)、放射線療法の一角に確実に組み入れられる治療法だと確信しています。副作用がなく、QOL(生活の質)の維持向上を可能にする点でも画期的な治療といえると思います」。

 現時点では保険は適用されていない。そのため、治療費は総額約300万円かかるという。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆がん免疫細胞療法の歴史 がん免疫細胞療法は1970年代にスタート。結核の病原菌としてあまりに有名なBCG。その免疫反応はがんを縮小させる、と報告されたからだ。結果的にはBCGに免疫細胞を増やす働きはなかった。

 ◆がん免疫細胞療法の名医
 ▽薬院CAクリニック(福岡市中央区)森崎隆院長
 ▽久留米大学医学部付属病院(福岡県久留米市)集学治療センター・山名秀明教授
 ▽九州大学生体防御医学研究所付属病院(大分県別府市)腫瘍外科・森正樹教授

March 19, 2006 07:58 AM | トラックバック (0)

2006年03月18日

2006年03月18日

【第66回】自己リンパ球移入と樹状細胞/ビオセラクリニック谷川啓司院長

がん免疫細胞療法(中)

 がんに対する「第4の治療法」といわれる「がん免疫細胞療法」。東京女子医大病院における膵臓(すいぞう)がんの治療法で補助療法として登場した。が、治療の対象は何も膵臓がんだけに限るわけではない。

 頭部から順に紹介すると、脳腫瘍(しゅよう)、頭頸部がん、食道がん、胃がん、胆管がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、腎臓がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、膀胱(ぼうこう)がん、大腸がん、白血病、悪性リンパ腫など数多い。

 多くのがんに対して臨床試験に入っているがん免疫細胞療法は、自分自身の体の免疫にかかわる細胞を利用した治療法である。「患者さん自身の細胞が『薬』と理解していただいて構いません。自分の一部を薬として、自分の中の異常をたたくのです」と、東京女子医大病院の関連施設で、がん免疫細胞療法を行っているビオセラクリニック(東京・新宿区)の谷川啓司院長は言う。

 注目のがん免疫細胞療法は、大別すると2つになる。「『自己リンパ球移入療法』と『樹状細胞療法』です」。自己リンパ球移入療法には「活性化自己リンパ球療法(CAT)」「がん特異的リンパ球療法(CTL)」の2つの方法がある。その中で、最も一般的なのがCAT。患者から血液を採取して、免疫にかかわる白血球だけを取り出し、さらに、その中からリンパ球だけを分離する。これを体外で人工的に刺激をかけ、活性化した状態になったリンパ球を患者の体内に戻す。こうして免疫力を高める方法である。

 「リンパ球は疑わしい人間を取り締まる警察官に例えられます。がん細胞という犯罪者を活性化自己リンパ球という警察官が取り締まるのです。しかし、残念なことに警察官は1人1枚の手配写真しか持っていません。そして、一番の犯罪者であるがんの指名手配写真を持っている警察官はわずかしかいないのです」。

 CATはすべての警察官を一律に増やす。だから、強力なリンパ球にはなるものの、どれだけがん細胞をたたく、つまりがんを見つけられる手配写真を持っているリンパ球が活性化しているか分からない。その点がこのCATの弱点ではある。が、その点については、「樹状細胞療法」がより期待できると考えられ、取り組まれている。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆リンパ球 血液の血球成分は赤血球、白血球、血小板の3種類に分けられる。免疫を担当する白血球はリンパ球、顆粒(かりゅう)球、単球に分けられ、さらに、リンパ球はB細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞に分類されている。

 ◆がん免疫細胞療法の名医
 ▽東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)臨床腫瘍部・落合和徳教授
 ▽大阪ガン免疫化学療法センター(大阪市北区)武田力院長
 ▽広島大学原爆放射線医科学研究所病院(広島市南区)腫瘍外科・山口佳之講師

March 18, 2006 09:54 AM | トラックバック (1)

2006年03月17日

2006年03月17日

【第65回】第4の治療法として注目/ビオセラクリニック谷川啓司院長

がん免疫細胞療法(上)

 「21世紀までには撲滅できる」という声も多かったがん。だが、実際には21世紀に持ち越してしまった。

 今、がん治療の基本は手術療法、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法の3本柱。もちろん、この3本柱を2つ、3つ組み合わせた集学的治療は多く行われているが、それもこの基本治療内のものである。そこへ、第4の治療法として、大学病院などが取り組み始め、注目されているのが「がん免疫細胞療法」である。

 膵臓(すいぞう)がんの補助療法として前回紹介したが、東京女子医大病院では臨床試験として行われており、より多くの患者にその治療機会をと考えられ、関連施設として治療活動を行っているのがビオセラクリニック(東京・新宿区)。谷川啓司院長ががん免疫細胞療法の注目理由を、次のように分析する。「ここへきて、一段と患者さんのQOL(生活の質)の維持が医療に求められるようになっています。それが追い風となって、本来、人間が持つ治癒力を強化することで治癒を目指すがん免疫細胞療法に支持が集まってきたのだと思います」。

 がん免疫細胞療法を知るには、まずは免疫を理解する必要がある。

 免疫は体の自己防衛反応。私たちの体に異物(細菌、ウイルスなど)が入ってくるとこれを排除しようと体が働く、それが免疫である。「その免疫も2つによって成り立っています。1つは『自然免疫』で、もう1つは『獲得免疫』です」。自然免疫は非常に基本的な免疫で、外から侵入してきた異物に反応して、その異物を囲み、また、食べてしまう防衛システム。

 一方、獲得免疫とは、異物が1度侵入した後、次の侵入に備えて準備し、2度目以降は直ちに侵入物を排除する強力な防衛システムである。「予防接種としてワクチンを接種しますが、あれは疑似体験をさせる獲得免疫を利用しているのです。がん免疫細胞療法も、このような免疫システムを大いに利用したものです」。つまり、がん細胞を直接たたく免疫にかかわる細胞を利用した治療法なのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆免疫療法 免疫の担い手は血液中の白血球。自然免疫チームには貧食細胞、好中球、NK細胞、樹状細胞があり、獲得免疫グループにはB細胞、T細胞などがあり、これらを総称して免疫細胞という。

 ◆がん免疫細胞療法の名医
 ▽東京女子医科大学消化器病センター(東京都新宿区)消化器外科・有賀淳教授
 ▽ビオセラクリニック(東京都新宿区)谷川啓司院長
 ▽東京大学医科学研究所・先端医療センター(東京都港区)外科・田原秀晃教授

March 17, 2006 08:01 AM | トラックバック (0)

2006年03月16日

2006年03月16日

【第64回】手術、化学、放射線療法が3本柱/東京女子医大病院羽鳥隆講師

膵臓がんの治療(下)

 膵臓(すいぞう)がんの治療は手術療法、化学療法、放射線療法の基本3本柱が中心となる。「患者さんの状態によって手術単独、手術+化学療法、手術+化学放射線療法などが組み合わされます。ただ、手術1つとっても、昔とは大きく変わってきました」と、東京女子医科大学病院(東京・新宿区)消化器外科の羽鳥隆講師は言う。「大きな変化」とは-。「手術の根治性を損ねることなく残せる臓器はできるだけ残すことで、術後のQOL(生活の質)を悪くしないように努めています」。

 変化している手術療法は膵臓がんのできる場所によって異なってくる。膵臓は長さ20センチくらいのニンジン型の臓器で、十二指腸側から3つに分けられ、「膵頭部」「膵体部」「膵尾部」と呼ばれている。

 がんが膵頭部にできると「膵頭十二指腸切除」が行われる。これは膵頭部、十二指腸、胃を切除する。「従来はそれが一般的でしたが、私たちは術後の栄養を含めたQOLを維持するため、ほとんどの場合で3~4センチの十二指腸の入り口と胃全部を残す『温存膵頭十二指腸切除』を選択しています」。


 膵体部や膵尾部にがんができると「尾側膵切除」となり、膵頭を残して膵臓と脾(ひ)臓を切除する。そして、がんの広がりによっては膵頭十二指腸切除と尾側膵切除を一緒に行う「膵全摘」が行われる。が、ここでも羽鳥講師グループは臓器温存を心掛けるようにしている。「全摘は術後のQOLを落とすことになりかねません。通常の膵管にできる進行した膵管がんでは、全摘を行っても良い結果につながりません。ただし、同じ膵管にできるがんでも粘液をたくさんつくる『膵管内乳頭粘液性腫瘍(しゅよう)』は治りやすいタイプなので、病変が膵臓全体に広がっている場合でも根治性が期待できるので全摘を行うことがあります」。

 このように膵管がんでは手術療法でがん病巣を切除しても、がんを克服するのは難しいとあって、化学療法や放射線との組み合わせを考え、行われている。「米国は手術+化学放射線療法、欧州は手術+化学療法、日本では両者取り混ぜたさまざまな方法が行われています。私たちは手術の後に抗がん剤の『ジェムザール』を中心に治療を行い、免疫療法も補助的に行っています。手術ができない患者さんには抗がん剤『TS-1』も併せて行っています」。

 膵がんの国際的対応策は、まだまだ研究途上とあって、早期発見・早期治療が重要である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆膵臓がんの名医
 ▽大阪府立成人病センター(大阪市東成区)消化器外科・石川治副院長
 ▽国立病院機構九州がんセンター(福岡市南区)消化器内科・船越顕博医長
 ▽九州大学病院(福岡市東区)第1外科・田中雅夫教授

March 16, 2006 11:59 AM | トラックバック (1)

2006年03月15日

2006年03月15日

【第63回】超音波内視鏡で診断精度高める/東京女子医大病院羽鳥隆講師

膵臓がんの治療(上)

 膵臓(すいぞう)がんを疑って受診すると、以下のような検査が行われる。「問診」「血液・尿検査」「超音波検査」「CT検査」「MRI検査」「ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管検査)」「超音波内視鏡検査」など。「問診では現在の病状を聞くとともに、過去の病歴、家族の病歴、嗜好(しこう)品など詳しく聞いて、いくつかの可能性を考えます」と話すのは、膵臓がん手術を年間60~70例行っている東京女子医科大学病院(新宿区河田町)消化器外科の羽鳥隆講師。

 検査がオーダーされ、血液検査では血糖の項目や膵酵素、肝・胆道系酵素の項目がより注目される。加えて、腫瘍(しゅよう)マーカーも調べる。「CAI19-9というのが膵臓がんでよく使われるマーカーです。しかし、これが高いから100%膵臓がんと断定できるものではありません」。

 まずは簡便で体に優しい超音波で膵臓を見る。「超音波では見えにくいところもあります。その場合、検査技師や医師が見えない部分は見えないと書いて報告がきます」。そして、膵臓がよく見えなかったり膵臓がんの疑いがあればCTやMRI検査に進む。「CT、MRIを行うと、直径2センチ以上であればほぼ診断がつきます。また、超音波内視鏡を使うと、より膵臓の近くからの超音波画像が得られるので診断の精度が高まります」。

 胆管や膵管が狭窄(きょうさく)しているようなときは、胆管と膵管を造影するERCPも行うし、その際に細胞も採ってくる。そして、確定される。確定される膵臓がんの病期(ステージ)は、日本膵臓学会で次の4段階に分けられている。

 ▽1期 膵がんの大きさが直径2センチ以下で膵臓の内部に限局している。
 ▽2期 大きさが直径2センチ以上だが、がんは膵臓内にとどまっている。または大きさが直径2センチ以下だが、第1群(最も近い)のリンパ節に転移がある。
 ▽3期 がんは膵臓の外へ少し出ているが、リンパ節転移はないか、第1群までに限られている。または膵臓内にとどまっているが、リンパ節転移は第2群(第1群より少し離れたところ)まである。
 ▽4期 がんが膵臓の周囲の大血管・神経・臓器を巻き込んでいるか、離れたところまで転移がある。
 検査でがんの状況を十分に把握して、最善の治療方針が決められていく。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆膵臓がんの名医
 ▽東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)消化器外科・今泉俊秀教授
 ▽静岡県立静岡がんセンター(静岡県長泉町)肝・胆・膵外科・上坂克彦部長
 ▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)消化器外科第2・中尾昭公教授
 ▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)外科・土井隆一郎講師

March 15, 2006 11:01 AM | トラックバック (0)

2006年03月14日

2006年03月14日

【第62回】高血糖値、黄疸は疑う/東京女子医大病院羽鳥隆講師

膵臓がん(下)

 「暗黒の臓器」といわれる膵臓(すいぞう)。早期発見が難しい膵臓がんとあって、着実に死亡者は増えている。04年の死亡者数は2万2260人で、肺がん、胃がん、大腸がん、肝がんに次いでいる。

 膵臓は胃の後ろにあり、右側が太く、左側に行くほど細くなる長さ20センチくらいのニンジン型をしている。消化液の膵液を分泌する外分泌の働きと、血糖をコントロールするインスリンというホルモンを分泌する内分泌の働きがある。「膵臓がんの多くは外分泌の働きを持つ膵液が流れる管の膵管にできる『膵管がん』で、浸潤性の強い悪性度の高いがんです。このほか、膵管にできるがんでも粘液をたくさんつくる『膵管内乳頭粘液性腫瘍(しゅよう)』や『膵粘液性嚢胞(のうほう)腫瘍』などがあり、こちらは膵管がんとは違って比較的早期に発見され、治りやすいものです」と、膵臓がん治療の第一人者、東京女子医科大学病院(東京・新宿区)消化器外科の羽鳥隆講師は話す。

 膵臓がんは早期発見が難しいので、そのリスクを十分認識しておくと、早期発見に結び付けることも可能。リスクには「遺伝的要素」「糖尿病」「ヘビースモーカー」「慢性膵炎」などがある。

 例えば糖尿病の場合、しっかり血糖コントロールを行っているのにコントロールが大幅に乱れてしまうことが起きる。「膵臓はインスリンを分泌しているので、そこにがんができると、それまで上手に血糖コントロールのできていた糖尿病患者さんでも、血糖コントロールが難しくなります。その変化を、コントロールが下手と思うだけではなく、一度は膵臓がんを疑ってみることが重要です」。

 糖尿病が全くなかった人が、急に血糖が高くなったときも膵臓がんを疑ってみるべきである。

 このほか、白眼が黄色くなる黄疸(おうだん)で発見されることもある。この場合は状況によっては膵臓がんが早期に発見されるケースも出てくる。黄疸の出るときは、膵臓の頭の部分、膵頭部にがんができ、胆汁の流れが妨げられたときである。

 「早期発見は難しい」と悲観的になるばかりではなく、リスクのある人は健康診断でも膵臓がんを頭の片隅に置いておくべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆インスリン 血液中のブドウ糖(血糖)を細胞内にエネルギーとして取り込むためのホルモンがインスリンで、血糖値が上昇しすぎないように調節している。インスリンは膵臓のランゲルハンス島という島のように散在している細胞集団のβ細胞(B細胞ともいう)から分泌される。

 ◆膵臓がんの名医
 ▽千葉県がんセンター(千葉市中央区)消化器外科・浅野武秀部長
 ▽東京女子医科大学病院(東京都新宿区)消化器外科・羽鳥隆講師
 ▽帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)外科・高田忠敬教授
 ▽国立がんセンター中央病院(東京都中央区)肝胆膵内科・奥坂拓志医長、肝胆膵外科・小菅智男第2領域外来部長

March 14, 2006 09:02 AM | トラックバック (0)

2006年03月13日

2006年03月13日

【第61回】特有の症状なく早期発見難しい/東京女子医大病院羽鳥隆講師

膵臓がん(上)

 「21世紀に取り残された悪性度の高いがん」と、東京女子医科大学病院(東京・新宿区)消化器外科の羽鳥隆講師が言うのは、膵臓(すいぞう)がんのことである。「暗黒の臓器」といわれるだけあって、早期発見が難しい。それには原因が大きく2点あるという。「第1は検査が難しい。第2は膵臓がん特有の症状がないからです」。

 検査が難しいのは膵臓のある位置が大きく関係している。体の中心部の奥にある。胃の後ろにあり、肝臓、十二指腸、胆のう、胆管、大腸、小腸など、多くの臓器に囲まれている。「超音波(エコー)検査で発見しようにも、検査を行う側の技量の問題もあれば、患者さん側の条件もあります。体形的に見えにくいこともあるのです」。

 見えにくいことで次の検査に進めばいいが、医師の技量の低さから「見えない」=「見つからない」=「異常なし」となってしまうと、膵臓がんがあっても見過ごされてしまう。早期発見のチャンスが消え去っていく。

 次は、膵臓がんには特有の症状のない点だ。膵臓がんがあって出てくる症状は「腹痛」「背中の痛み」「食欲不振」「体重減少」などがあるが、どれも他の疾患でもよく出てくるありふれた症状。これで患者が膵臓がんを疑うのには無理がある。「膵臓がん患者100人を調査したことがあります。ほとんどの方に何らかの症状がありました。あったのにほっておいた人は10%のみ、後の90%の方々は病院にかかっているのに見過ごされていました」。

 「胃が痛い」と訴えてある病院を受診した患者は、胃の検査の結果「胃潰瘍(かいよう)」と診断され、胃腸薬を処方されて服用。その後も胃の痛みというか、腹部の痛みが良くならないので超音波検査や血液検査を加え、膵臓がんが発見された。「患者さんが症状に気付いて膵臓がんと診断されるまで、平均2~3カ月を要しているのです」。

 その結果、80%の人が最も進行したステージⅣ、15%が進行がんのステージⅢ、残りわずか5%がステージⅠもしくはⅡという厳しい状況。「ちょっとした腹痛程度の症状で発見することが大事です。強い腹痛・背中の痛みになってしまうと発見されても進行しています」。早期発見のためには、処方された薬で良くならないときは、信頼できる病院へ行って「『膵臓がんを心配しているので』と言って検査を要求する方がいいと思います。医者任せでは発見されないことがあります」と、羽鳥講師はアドバイスする。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆膵臓がんの名医
 ▽手稲渓仁会病院(札幌市手稲区)消化器病センター・真口宏介センター長
 ▽北海道大学病院(札幌市北区)第2外科・近藤哲教授
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)肝胆膵外科・砂村真琴助教授
 ▽栃木県立がんセンター(宇都宮市)外科・菱沼正一外来部長

March 13, 2006 09:06 AM | トラックバック (0)

2006年03月12日

2006年03月12日

【第60回】新薬のGEP療法を臨床試験中/癌研有明病院福井巌部長

膀胱がんの治療(下)

 膀胱(ぼうこう)がんの早期には体に優しいBCGや抗がん剤による「膀胱内注入療法」や、内視鏡を使った「膀胱腫瘍(しゅよう)切除術」がある。が、それよりがんが進行した2期、3期の段階になると、膀胱をすべて切除するのが標準治療である。「2期の段階でも、化学療法(抗がん剤)と放射線療法を行う切除しない治療法も良くはなってきていますが、まだまだ手術と比較できる段階ではありません」と、癌研有明病院(東京・江東区)泌尿器科の福井巌部長(兼副院長)は現状を話す。

 切除範囲は膀胱のみならず、周囲のリンパ節、さらに、男性では前立腺、女性では子宮を切除する。それと同時に、排尿のための道を新しく作る必要がある。この尿路変向術にはいくつかの方法があるが、癌研では次の3つの造設術を行っている。

 <1>回腸導管造設術 患者の小腸の大腸よりの部分、回腸を15センチ程度切除して尿管とつなぐ。そして、右腹部に尿の出口をつくる。回腸を使うので出口は直径2センチ弱。ここに排尿袋をはって尿をためる。

 <2>導尿型膀胱造設術 代用膀胱は小腸を開いてつくり、虫垂や小腸をへそにつないで尿の出口にする。ただし、そこから尿が垂れ流しになるのではなく、代用膀胱に尿がたまってきたころに、自分でカテーテル(細い管)を挿入して尿を排出する。

 <3>自排尿型膀胱造設術 「最近は、自分の残った尿道を利用し、おなかに力を入れ、括約筋を緩めて排尿のできるこの方法でつくりたがる方が多いですね」。小腸でつくった代用膀胱を尿道につなぐ。これが可能となるのは尿道が残せた場合である。「尿意が強くないので尿失禁があります。夜は2回ほど目覚ましで起きて排尿するようにすると大丈夫です」。だが、最も希望者の多いこの方法にはリスクがある。「残した尿道にがんができやすいのです。だから膀胱がんでも悪性の上皮内がんの方々は、自排尿型はあきらめる方がいいと思います」。

 さらに進行し、4期になると化学療法が中心。標準治療はM-VACといって、4種類の抗がん剤メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンを組み合わせて使う。が、効果は弱く、最近注目を集めている臨床試験中の化学療法としては、福井部長の考案した「GEP」がある。シスプラチナム、ジェムザール、エトポシドの3種の抗がん剤の組み合わせ。有効率70%で、5年生存率25%。症例は40例とまだまだ少ない。ちなみに、M-VACCの5年生存率は5%前後である。

 ◆膀胱がんの名医
 ▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)泌尿器科・小川修教授
 ▽国立病院四国がんセンター(愛媛県松山市)泌尿器科・住吉義光医長
 ▽九州大学病院(福岡市東区)泌尿器科・内藤誠二教授

March 12, 2006 08:52 AM | トラックバック (0)

2006年03月11日

2006年03月11日

【第59回】医師の十分な監視下でBCG/癌研有明病院福井巌部長

膀胱がんの治療(上)

 どんながんでもそうであるように、膀胱(ぼうこう)がんも早期に発見すると、体に優しい治療で治すことが可能。ただし、膀胱がんの種類によって治療方法は異なる。

 種類は「上皮内がん」「乳頭状がん」「結節状がん」「潰瘍(かいよう)タイプ」の4タイプ。上皮内がんは早期であるが性質の悪いがんで、苔(こけ)のようながん。同じく早期の乳頭状がんは膀胱内に飛び出したカリフラワータイプで、粘膜とは細い茎でつながっている。性質のおとなしいがんである。結節状がんは膀胱内に飛び出すタイプのがんではあるが、粘膜との結び付きは太い茎や茎のないもので、浸潤性で転移の早いがん。潰瘍タイプは文字通り潰瘍のような状態を呈し、やはり浸潤性で転移が早い。

 「このような膀胱がんの中でも、早期に発見すると、乳頭状がんは内視鏡を使った『経尿道的膀胱腫瘍切除術』で生検兼治療になってしまいます」と、癌研有明病院(東京・江東区)泌尿器科の福井巌部長(兼副院長)。

 生検兼治療なので、入院は1週間程度。「性格の悪い上皮内がんは、粘膜のどこにあるか分かりにくいためがんの取り残しが多いので、BCGや抗がん剤(マイトマイシンCや塩酸ドキソルビシン)を膀胱に入れる注入療法を行います」。

 この「膀胱内注入療法」は膀胱という臓器の特性を利用した治療法。膀胱は尿をためる。そのためるところを利用してBCGや抗がん剤を注入する局所療法が注入療法である。注入療法を行う日は、朝から水分摂取を抑えて臨む。膀胱内にBCGや抗がん剤を長く(約2時間)かつ高濃度にとどめておくためで、BCGの場合、毎週1回の注入療法を6~8回行う。

 BCGとは、結核予防に用いられるもので「局所免疫療法」という。作用機序は十分に解明されていないが「BCGががん細胞を直接たたくのではなく、BCGを注入して炎症を起こすのです。するとリンパ球や免疫物質などが出てきてがん細胞をたたいてくれるのです」。

 BCGは抗がん剤より2~3倍効果が高いにもかかわらず、患者も医師も第1選択をためらう。「BCGは時に重い副作用があるからですが、私どもは第1選択です。十分な医師の監視のもとで行えば危険なことはありません」。BCG膀胱内注入療法は、内視鏡による切除術を受けたケースで、再発が心配される場合にも再発予防として行われている。

 ◆膀胱がんの名医
 ▽国立がんセンター中央病院(東京都中央区)泌尿器科・藤元博行医長
 ▽帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)泌尿器科・堀江重郎教授
 ▽静岡県立静岡がんセンター(静岡県長泉町)泌尿器科・鳶巣賢一院長

March 11, 2006 09:17 AM | トラックバック (0)

2006年03月10日

2006年03月10日

【第58回】尿細胞診で陽性率70%発見/癌研有明病院福井巌部長

膀胱がん(下)

 膀胱(ぼうこう)がんを早期に発見するには「血尿、膀胱炎症状(頻尿・排尿痛)を見逃さないことです。そして、女性であれば若いか高齢かを考える。女性の高齢者は膀胱がんの疑いが強くなります。男性は最初から膀胱がんを疑ってかかるべきです」と、癌研有明病院(東京・江東区有明)泌尿器科の福井巌部長(兼副院長)は話す。

 「血尿」「膀胱炎症状」という膀胱がんの2大症状に気付いたら、何よりもまずは泌尿器科へ。診断には問診・尿検査から始まって以下の検査が行われる。「確定診断にたどり着く最も早い検査は『膀胱鏡検査』と『尿細胞診』です」。

 ▽尿細胞診 はく離したがん細胞が尿中に混ざっている。そのがん細胞の有無を尿を採って調べる検査。ただし、100%の確実性がなく陽性率70%、残り30%はがんがあっても陰性と出てしまう。ただし「患者さんにとってすぐ治療しないといけない悪性度の高いがんは、ほぼ陽性に出ます。これに対しおとなしい乳頭状がんは陰性に出てしまうのです。見逃してはならないがんの発見には極めて有用性の高い検査です」。

 ▽膀胱鏡検査 尿道の表面麻酔後、内視鏡を使って膀胱内を観察する検査。膀胱がんの形態を見ることで、膀胱がんの悪性度なども推測できる。

 「以上の検査で確定するのではありません。最終的に確定診断に結び付けるには『膀胱生検』が必要です」。

 ▽膀胱(経尿道的腫瘍=しゅよう=)生検 入院して行う検査。腰椎(ようつい)麻酔をして尿道から内視鏡を挿入してがんの一部を採ってくる。その組織を病理に回し、顕微鏡で調べる。「この生検のときに、おとなしい乳頭状がんの場合は内視鏡で腫瘍のすべてを簡単に削り採ってくることができます。だから、生検が治療も兼ねてしまうこともできるのです」。

 また、検査結果によっては、がんの深さや転移病巣を調べるためにCT、MRI検査、レントゲン検査などを必要に応じて加えていくことになる。

 以上、生検を行って、最終判断が下されて治療方針も決定する。

 ◆膀胱がんの名医
 ▽筑波大学付属病院(茨城県つくば市)腎泌尿器外科・赤座英之教授
 ▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)泌尿器科・木原和徳教授
 ▽癌研有明病院(東京都江東区)泌尿器科・福井巌部長(副院長)

March 10, 2006 10:40 AM | トラックバック (0)

2006年03月09日

2006年03月09日

【第57回】血尿出たらまず疑う/癌研有明病院福井巌部長

膀胱がん(上)

 がんの死亡者は年間32万人を超え、まだまだピークを迎える気配がない。そんながんの中の1つ、膀胱(ぼうこう)がんは04年の死亡者が5556人で、死亡者数は肺がんと比べると10分の1以下だが、着実に増加している。発生率は人口10万人あたり10~17人。男女比は3対1で圧倒的に男性に多く、死亡者数が少ないのは、悪性度の低いがんの割合が高いからである。

 膀胱がんの発生メカニズムについて、癌研有明病院(東京・江東区)泌尿器科の福井巌部長(兼副院長)は、「膀胱という臓器の働きが大きく関係している」と、指摘する。基本的には2つある腎臓で尿が作られ、尿管を通って膀胱にたまる。膀胱には成人で約300ミリリットル尿がためられ、尿が増えると尿意を感じて尿道を通して排出される。「膀胱に尿をためる」ことが膀胱がんを作り出すのに大きく関係しているという指摘なのである。

 膀胱がんに関与する物質はいろいろある。ゴム、皮革、織物、色素などの工場で使われるアニリン色素、ナフチラミンなどの染料によく接触している、アク抜きをしないゼンマイやワラビを大量に食べている、といったことで、発がん物質が体に入り、尿と一緒に排出される。そのとき、膀胱で少なくとも2~3時間はためられるので、接触している時間が長くできる。

 「多くの方々に影響を与えるのは、何といってもたばこです。煙の中に発がん物質であるナフチルアミンが微量ながら含まれているのです。たばこを吸う人のみならず、周囲の人々もたばこを吸うと、体にその発がん物質が入り、尿と一緒に体外に排出されます。このとき、膀胱で膀胱壁(粘膜)と長く接触してしまうのです」。すると、9番、17番染色体などにあるがん抑制遺伝子が変異し、膀胱がんが発生したり進行したりしてしまう。

 症状は、無症候性(痛みなどのない)の血尿が最も多く、痛みを伴う膀胱炎とは区別ができる。「ただ、痛い上に血尿の出る人もいます。痛みがあるから膀胱炎でよかったと思ってはいけません。痛くない方が悪性度が低く、痛みのあるのは悪性度の高いがんなのです」。男性では膀胱炎はないので、膀胱炎のような症状がある男性は、最初から膀胱がんを疑って対応するのが賢明である。

 ◆膀胱炎 膀胱に大腸菌などの細菌が尿道から侵入して起こるのが膀胱炎。尿道が3センチと短い女性の病気で、排尿に伴う痛み、排尿回数の増加、尿が濁ったり血が混じるといった症状が出る。

 ◆膀胱がんの名医
 ▽札幌医科大学付属病院(札幌市中央区)泌尿器科・塚本泰司教授
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)泌尿器科・荒井陽一教授
 ▽秋田大学医学部付属病院(秋田市)泌尿器科・羽渕友則教授
 ▽新潟県立がんセンター新潟病院(新潟市)泌尿器科・小松原秀一臨床部長

March 9, 2006 10:24 AM | トラックバック (0)

2006年03月08日

2006年03月08日

【第56回】チャレンジが光明、結果に/京大病院米田正始教授

閉塞性動脈硬化症の治療(下)

 動脈硬化で動脈が狭くなったり閉塞(へいそく)すると、血流障害を引き起こす。特に下肢で起こると「閉塞性動脈硬化症」という。思うように改善しないと脚が壊疽(えそ)を起こして切断する事態にも至ってしまう。

 治療は病態によってさまざまあるが、重症のケースに、今注目を集めているのが「血管新生療法」である。「血管新生療法というのは、閉塞してしまった動脈の代わりとなる新しい血管を多く再生し、血流を改善して脚が壊疽を起こさないようにしようという臨床研究中の治療です」。京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授が解説する血管新生療法は1つではない。「bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)治療」「HGF(肝細胞増殖因子)治療」「骨髄または末梢(まっしょう)血単核球細胞治療」などがある。

 米田教授グループの開発したのはbFGF治療。bFGFは人体内にもある物質で、すでに製品化されて使われている。「皮膚の潰瘍(かいよう)や床ずれの治療薬に使われているもので、血管を新生する働きがあります。脚の付け根から血管の閉塞部まで40~50カ所にbFGFを筋肉注射するだけです」。

 ウサギの動物実験で成功し、05年2月から臨床応用がスタート。すでに5人の患者に治療を行い、4例が著効で1例が有効と、極めて良好に進んでいる。1例目の患者は20代で、バージャー病で脚の血管が閉塞し、片足の4、5趾(し)が切断され、足の外側に潰瘍もできていた。脚に2センチおきに筋肉注射でbFGFを投与した。「車いすで入院した患者さんが、治療1週間後には痛みが軽くなって松葉づえで歩行可能に改善。3カ月後には痛みが消え、足の潰瘍も治ってしまい、今は普通に歩いて仕事復帰もしていらっしゃいます」。注目すべき結果になっている。

 このほか、HGF治療は、肝細胞を増殖させる物質の遺伝子を用いた治療。これは肝細胞の増殖のみならず、血管新生に作用することも分かって大阪大学で治療が始まった。

 そして、末梢血単核球細胞治療。血管は筋肉細胞と内皮細胞でできている。その内皮細胞を患部に注入すると血管が新生されることから、内皮細胞のもととなる血液成分「単核球」を患者の血液から採って移植するものである。

 さまざまなチャレンジが、閉塞性動脈硬化症患者の光明となっている。

 ◆バージャー病 難病指定されている疾患の1つでビュルガー病ともいう。血管に炎症が起きる原因不明の疾患で、血管が閉塞してしまう。

 ◆閉塞性動脈硬化症の名医
 ▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)老年・高血圧内科・森下竜一教授
 ▽岸和田徳洲会病院(大阪府岸和田市)循環器科・横井良明副院長
 ▽川崎医科大学付属病院(岡山県倉敷市)胸部心臓血管外科・正木久男助教授
 ▽久留米大学病院(福岡県久留米市)循環器センター・勝田洋輔講師

March 8, 2006 09:44 AM | トラックバック (0)

2006年03月07日

2006年03月07日

【第55回】薬物、カテーテルなど治療法多数/京大病院米田正始教授

閉塞性動脈硬化症の治療(上)

 動脈硬化は全身の血管で起きるが、とりわけ脚の血管が動脈硬化によって血流が悪くなるのを閉塞(へいそく)性動脈硬化症という。一定の距離を歩くと脚が痛くて歩けなくなる「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」、さらには安静にしていても脚が痛くなり、ついには脚に潰瘍(かいよう)ができ、壊疽(えそ)に至ってしまう。

 「そこまでくると、脚を切断することになってしまいます。この閉塞性動脈硬化症の方々の脚の痛みは、痛みを通り超えた痛み。とにかく大変な痛みです」と言うのは、心筋症、閉塞性動脈硬化症で新しい治療にチャレンジし続けている京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授である。

 この閉塞性動脈硬化症は、1度から4度に分類されており、問診で症状を聞いて分類できる。診察は問診に続いて「上下肢血圧測定」「超音波ドップラー検査」を行うと、閉塞性動脈硬化症の診断はつく。上下肢血圧測定は腕と脚の血圧を測り、上腕動脈最高血圧を足関節の最高血圧で割った数値が0・9以下で疑いがあるものの、間歇性跛行が出てくるのは0・6以下。ちなみに正常なのは1・0以上である。「超音波ドップラー検査」は超音波機器を使って脚の血流状態をみる。このほか、CT、MRI検査、下肢動脈造影検査などで、治療方法を決定する。

 治療方法には「薬物療法」「カテーテル治療」「レーザー血管形成術」「バイパス手術」「血管新生療法」がある。

 薬物療法は、血栓のできるのを抑える抗血小板薬、血管を広げて血流量を少しでも増やす血管拡張薬を中心に使う。これに運動療法のウオーキングを加えると、詰まった血管以外の血液の通り道が細くはあってもバイパスのようにできることが期待できる。

 カテーテル(細い管)治療は狭心症や心筋梗塞(こうそく)のカテーテル治療と同じ血管内治療。閉塞した場所にカテーテルを通し、風船を膨らませて閉塞を治す。再閉塞を防ぐためにコイルを置いてくるステント療法も行われている。

 レーザー血管形成術は、太ももの動脈から直径0・9ミリのカテーテルを挿入し、患部でレーザー光を発すると血栓は霧のように散ってしまう。

 バイパス手術は静脈や人工血管を使って、閉塞した動脈に代わるバイパスを手術で作る治療である。

 「治療方法は数多いので、患者さんは医師と十分に話し合い、納得して最も適した治療を受けるべきでしょう」と、米田教授はアドバイスする。

 ◆閉塞性動脈硬化症の名医
 ▽杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)心臓血管外科・須藤憲一教授
 ▽神奈川県循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)心臓血管外科・梶原博一部長
 ▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)循環器内科・室原豊明教授
 ▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科・米田正始教授

March 7, 2006 10:48 AM | トラックバック (0)

2006年03月06日

2006年03月06日

【第54回】大いなる生活習慣病/京大病院米田正始教授

閉塞性動脈硬化症(下)

 下肢の血流が血管の動脈硬化によって悪化し、下肢にさまざまな症状を引き起こす「閉塞(へいそく)性動脈硬化症」。「進行すると壊疽(えそ)を起こしてしまいます。そのときは脚や足の指を切断することにもなります」と、最終状態を話すのは、京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授。

 下肢の血流が血管の動脈硬化によって悪化し、下肢にさまざまな症状を引き起こす「閉塞(へいそく)性動脈硬化症」。「進行すると壊疽(えそ)を起こしてしまいます。そのときは脚や足の指を切断することにもなります」と、最終状態を話すのは、京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授。

 病状は1度から4度に分類されている。

 ▽1期 しびれ、冷感。患者が最初に気付く症状で、脚のしびれ感や冷たさを感じる。冷え性と思う人もいる。

 ▽2期 間歇性跛行(かんけつせいはこう)。下肢の血流が悪いことの代表的症状。一定の距離を歩くと、脚の筋肉に痛みが出てくる。痛くて歩けないのでしばらく休む。すると、再び歩けるが、また、一定距離で痛みが出てくる。その距離が300メートルから150メートル、そして100メートルを切るようになると、症状はかなり進行している。

 ▽3期 安静時疼痛(とうつう)。2期では安静時の血流はかろうじて保たれている。が、3期は横になって安静にしていても痛みが出てくる。脚を低くすると多少は血液が流れるので脚の痛みが軽くなる。「この段階になると壊疽を起こしやすくなりますので、必ず治療を受けましょう。もちろん、1度の段階から生活改善に取り組んだり薬を使ったりするのがより良い方法といえます」。

 ▽4期 潰瘍(かいよう)・壊疽。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、その患部は血流の悪さからさらに進行し、ついには足が腐ってしまう。ここまで進むと足の切断という事態になる。

 50歳以降の人々に多くみられる疾患だが、その原因は高脂血症ばかりではない。<1>たばこ<2>肥満<3>高血圧<4>糖尿病<5>腎不全<6>ストレスなども大きく関係している。高血圧、糖尿病は動脈硬化を促進させることは科学的根拠が多くの学会で報告済み。肥満もそうである。肥満に結び付く食べ過ぎ、運動不足も改善しなければならない。たばこは、血管にコレステロールを付着させやすくするし、ストレスはほとんどの病気に関係してくる。

 閉塞性動脈硬化症は、大いなる生活習慣病なのである。

 ◆壊疽で足を切断 閉塞性動脈硬化症で足を切断する人は、日本では1万人から2万人といわれている。生活習慣病患者の増加から、その数はさらに増えるとみられている。

 ◆閉塞性動脈硬化症の名医
 ▽東京大学医学部付属病院(東京都文京区)循環器内科・平田恭信助教授
 ▽日本医科大学付属病院(東京都文京区)第1内科・宮本正幸助教授
 ▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)血管外科・岩井武尚教授
 ▽日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)心臓血管外科・根岸七雄教授

March 6, 2006 09:50 AM | トラックバック (0)

2006年03月05日

2006年03月05日

【第53回】脚に壊疽、切断も/京大病院米田正始教授

閉塞性動脈硬化症(上)

 「閉塞(へいそく)性動脈硬化症」の病名を言われても、ピンとこない人が多い。が、次のような説明をすると、周囲にその患者が結構いることが分かる。「道を歩いていて途中で休まないと足が痛くて歩けないという年配の人がいます。そして、しばらく休むとまた歩けるようになります。それはこの疾患の症状です」。

 進行すると、脚に血液がいかずに壊疽(えそ)を起こし、脚を切断することにもなってしまう。「動脈硬化によって血管の内腔(ないこう)がどんどん狭くなって、血流が悪くなることが原因で起きるのが『閉塞性動脈硬化症』です」と、京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授は言う。

 動脈硬化が原因となると、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞へ結び付けるが、それだけではない。「全身の血管に動脈硬化は起こります。その中で閉塞性動脈硬化症というと、下肢の血管に起こる動脈硬化症を一般的には言っています」。

 全身の血管に起きる動脈硬化の原因は数多いが、問題の1つは高脂血症である。高脂血症といえばコレステロール。その中でも“悪玉”といわれるLDLコレステロールが血液中に増え過ぎると、血管壁に入り込んでしまう。

 血管は内側から内膜、中膜、外膜の3層になっていて、内膜の表面はレンガを敷き詰めたような内皮細胞でコーティングされている。LDLコレステロールは内皮細胞から内膜に入り込み、酸化される。酸化された変性LDLコレステロールを、白血球の一種のマクロファージが食べて泡沫(ほうまつ)細胞になる。

 泡沫細胞や破裂した泡沫細胞が集まって脂質プラークを作り、血管は狭くなってしまう。プラークの中は粥状(じゅくじょう)といって、おかゆのような状態なので非常に破れやすく、そのため、血栓ができやすい。「その血栓で血管が詰まる。下肢で起きると閉塞性動脈硬化症です」。

 すると、さまざまな症状を引き起こすことになる。

 ◆閉塞性動脈硬化症のできる場所 全身の血管の動脈硬化症で四肢への血行不良が起こる。いわゆる血行障害。腕にも起きるものの少なく、多くは下肢。それも太ももの部分にある太い動脈、大腿(だいたい)動脈に多く起こる。

 ◆閉塞性動脈硬化症の名医
 ▽福島第一病院(福島市)心臓血管病センター・緑川博文センター長
 ▽千葉大学医学部付属病院(千葉市中央区)循環器内科・小室一成教授
 ▽千葉西総合病院(千葉県松戸市)心臓センター・循環器科・三角和雄院長
 ▽東京慈恵会医科大学付属柏病院(千葉県柏市)心臓外科・益子健男助教授

March 5, 2006 09:41 AM | トラックバック (0)

2006年03月04日

2006年03月04日

【第52回】「永田法」は手術2回/永田小耳症形成外科クリニック永田悟院長

小耳症の治療(下)

 先天性疾患の「小耳症(しょうじしょう)」は、耳が極端に小さい状態をいう。片側の耳のみが小耳症のケースから、両耳のない無耳症まで、胎児形成期のどの段階で異常が起きたかにより、形態は無限。その治療となると、1985年に開発され、小耳症手術の世界の標準術式となっている「永田法」が、最新治療である。

 「かつてはタンザー法やブレント法が欧米を中心に行われていましたが、それぞれ手術回数が6回、4回と多いのです。なのに耳の細かい構造物のすべての再建は不可能でしたし、最もポイントとなる耳を立てることもできませんでした」と、永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)の永田悟院長は問題を指摘した。この問題点が永田院長開発の永田法によってすべてクリアされたのである。

 永田法は2回、手術が行われる。第1回の手術で耳全体を形成し、その6カ月後に行う2回目の手術で耳を立てる。まず、耳の位置を決め、耳の正確な型紙を作る。「耳の形はトーレスという人が論文を書いていて、その比率を計算すると型紙が作れます。その型紙通りに耳の軟骨格を作ります」。耳の軟骨格は胸の肋軟骨(ろくなんこつ)で作る。患者の胸を5センチ切り開いて肋軟骨をとり、型紙に合わせて軟骨を削って形を作り、耳のあるべき位置に移植する。「3次元的に作るために、軟骨を曲げたり3段重ねにしたり、軟骨はワイヤで85カ所をとめます。タンザー法は5カ所しかとめません」。

 余った軟骨は細かくスライスして、患者の元の部位に戻す。肋軟骨は肋軟骨膜に包まれており、その膜は残してあるので、肋軟骨は約2カ月で再生してしまう。「耳垂(じすい)といって、耳たぶ部分が残っていると、その裏にあった皮膚を表に出すことで表面積が増やせ、また、頭側の皮膚をひっくり返して使うので、ほかから皮膚を移植しなくても大丈夫なのです」。頭皮を使うことで耳の皮膚の色は周囲と全く同じになる。第1回の手術は約8時間かかって終了。入院は第1回、第2回ともに25日間で包帯がとれる。補聴器からサヨナラする両側内耳症の人は、1回目と2回目の手術の間に、アメリカのバージニア大学のジャスドーパ教授に聴力改善術を受ける。

 「6カ月後に2回目の手術です。再度、肋軟骨をとって耳の後ろの14ミリの厚みを与え、生きた血管膜で覆うと移植は成功し、耳もしっかり立ちます」。永田法は熟練を要するため、世界でも限られた医師しか行えないのが現状である。

 ◆小耳症の名医(日本には1人)
 ▽永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)永田悟院長

March 4, 2006 11:26 AM | トラックバック (0)

2006年03月03日

2006年03月03日

【第51回】世界の標準術式「永田法」/永田小耳症形成外科クリニック永田悟院長

小耳症の治療(上)

 先天性疾患の「小耳症(しょうじしょう)」の子どもは、誕生後、専門医のもとで年に1回は成長をみてもらい、将来のきちっとした手術に向けて歩む。その手術の条件について、小耳症手術の世界の指導者である永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)の永田悟院長は、次のように言う。「10歳で手術します。耳の大きさが大人の95%に成長しているからで、ここで耳を作ると正常な耳と大きさ的に変わらずにずっと暮らせるからです。加えて、胸囲が60センチを超えることも必要です」。胸囲にこだわるのは、胸の肋軟骨(ろくなんこつ)を耳の軟骨格として使うからである。

 手術は、今日では「永田法」が世界の標準術式となっている。永田法の名称で分かるように、1985年に永田院長が開発した術式。小耳症手術のまさに世界一の医師である。ところが、世界には数人、永田法を行える弟子がいるものの、日本には永田院長以外にこの手術のできる人はいない。「今、私のところに国内はもとより、海外からも患者さんが訪れ、手術を行っています」。

 85年に永田法による第1例を手術して以来、永田院長の手術数は1000例を超えた。「国内の患者さんの80%は私のところで手術を受けられます。残り20%は、他の施設で行われています。ところが、他の施設で行われた手術の中には、形成した耳から毛が生えてきたり、耳の中央部と周囲との色が違ったり、耳のあるべき位置が違ったり耳が立っていなかったりと問題が多く、患者さんの親は泣きながらお子さんと一緒に私のところへ作り直しに来られます。きちっとした小耳症手術があるのに、それが行えずにいいかげんな耳を作るのは、犯罪ですよ」。

 永田院長は、患者の親の気持ちを強く代弁する。それもそのはず、日本ではいまだに、もう過去の術式になってしまっている「タンザー法」や「ブレント法」を行っている施設が多い。タンザー法は手術を6回、ブレント法は手術を4回。対して、永田法は手術はわずか2回。それ以上に大きな違いは見ての違い。

 <1>他の方法では耳が立っていないが、永田法では正常な耳と同様に立っている。

 <2>他の方法では耳全体が同じ皮膚を使っていないので色の違いがある。が、永田法では皮膚の色の違いはない。

 <3>永田法では、耳の細部まで正常の耳に近づけてあり、まったく違和感がない。

 ◆小耳症の名医(日本には1人)
 ▽永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)永田悟院長

March 3, 2006 10:28 AM | トラックバック (0)

2006年03月02日

2006年03月02日

【第50回】「耳作り」10歳が手術適応年齢/永田小耳症形成外科クリニック永田悟院長

小耳症(下)

 生まれつき右耳が小さい、両耳がないといった先天性の疾患「小耳症(しょうじしょう)」の子供は毎年110人から180人程度生まれている。

 耳には音を聴くという五感の1つがある。子供が小耳症と分かると、治療のために耳鼻咽喉科や形成外科を受診する。「患者さんたちは医師や親の会の紹介で私どものところへ来られます。まずは両耳が小さい両側小耳症では、耳鼻咽喉科で言語発育を得るために、頭からかけるヘッドバンド型補聴器が必要で、幼児期から装着します」と言うのは、永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)の永田悟院長。小耳症手術の世界の第1人者である。

 耳鼻咽喉科で聴力改善手術を行うか否かの検査を受け、手術適応と判断されるのが小耳症患者の2人に1人、50%。「患者さんが日本の耳鼻咽喉科の専門医の手術を受けた場合、補聴器を外せるようになるのは10人中1人です」。

 ところが、世界に目を向けると、改善率はグンとアップする。「米国のバージニア大学の場合、補聴器なしで日常生活が送れるほどになるのが90%以上です」。患者が少ないまれな先天性疾患だけに、医療の舞台は地球規模になってしまう。

 両側小耳症ではなく片側小耳症は、耳鼻咽喉科の聴力検査で、一方の聴力に問題がなければ、あとはきちっと生きた耳をつくることになる。「形成外科医として、ごく普通に、昔から当然あったように耳を作ります。耳作りに専念するのです」。

 形成外科で耳を作るのは、適応年齢がある。「10歳くらいが手術適応年齢です。この年齢になりますと、成人の耳と大きさがほとんど変わらなくなります。95%くらいの大きさです。そして、胸囲が60センチを超えていることが大事です」。

 6歳くらいで手術が行われていた時代もあった。が、それでは左右の耳の大きさが異なり、将来、再度耳を作り直すことが生じたため、今は10歳となっている。「出生時から、専門医とともに歩むことが大事で、成長をチェックしていくことで、10歳が11歳で手術、もしくは12歳になるかもしれません」。だから、永田院長の手術予定ノートは、10年後まで入っている。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆小耳症の名医(日本には1人)
 ▽永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)永田悟院長

March 2, 2006 10:40 AM | トラックバック (0)

2006年03月01日

2006年03月01日

【第49回】妊娠初期の異常が原因/永田小耳症形成外科クリニック永田悟院長

小耳症(上)

 生活習慣病は、本人が生活を改善することで治ったり、コントロールできる。自分でコントロールなどまったくできないのが先天性の疾患である。生まれつき片耳が小さかったり、両耳がなかったりする「小耳症(しょうじしょう)」も、その先天性疾患の1つ。

 「母親の妊娠初期は、胎児の器官形成の期間にあたります。この期間に何らかの原因で異常が起きますと、発育不全となって器官形成ができなくなってしまいます。すると、耳が極端に小さいなどの小耳症になってしまうのです」と、小耳症の発生について解説するのは、小耳症手術の世界の第1人者、永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)の永田悟院長。

 発生頻度は6000人から1万人に1人。04年の出生数が110万7000人なので、年間110人から180人と、非常にまれな先天性疾患といえる。性別の比率は男児2に対して女児は1と、男児に多く、両耳、右耳、左耳のどこに異常があるかについては、両耳の子供が20%、右耳の子供が50%、左耳の子供が30%と、右耳に最も多く発生している。

 「耳の形成不全の重症度は、耳発生期のどの段階で異常が起きたかで、形態は無限です」。つまり、百人百様の耳の形成不全がある。その中から代表的なケースを分類すると、以下のようになる。

 <1>耳垂残存(じすいざんぞん)型小耳症 「一般に耳たぶといっている耳垂と丘状の膨らみがあるだけで、全体としてピーナツ状の形態をしています。耳穴はありません」。

 <2>小耳甲介(しょうじこうかい)型小耳症 ほとんど<1>の状態と同じだが、多少耳の陥没が加わっている。

 <3>耳甲介型小耳症 耳の中央部の耳甲介陥没があり、その中に耳穴があいている。耳垂も存在している。

 <4>無耳症 ほとんど耳のない状態。

 さらに、耳の位置も関係する。

 <5>頭髪低位 「本来、耳のあるところまで、頭髪がはえている状態です」。

 <6>耳甲介型小耳症と頭髪低位の合併

 <7>無耳症に広範囲な頭髪低位の合併

 以上のような状態に対し、耳鼻咽喉科と形成外科が協力して対応することになる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆小耳症の名医(日本には1人)
 ▽永田小耳症形成外科クリニック(埼玉県戸田市)永田悟院長

March 1, 2006 09:10 AM | トラックバック (2)