2006年02月21日
この病気にこの名医Part2
【第42回】死に至る最も怖い脳ヘルニア/日本医大付属病院喜多村孝幸助教授
水頭症(下)
パーキンソン病や認知症と思われている高齢者の患者の中に、特発性正常圧水頭症といって、治療をすると治る疾患の人々がおり、今、大きな話題になっている。水頭症は、頭蓋(ずがい)内を循環して脳や脊髄(せきずい)を保護している脳脊髄液が異常に増える疾患である。「原因には脳脊髄液の『産生過剰』『循環障害』『吸収障害』の3つがあります」と話すのは、日本医大付属病院(東京・文京区)脳神経外科の喜多村孝幸助教授。
●産生過剰 脳脊髄液は脳室内にある脈絡叢(そう)や血管などで1日500ミリリットル産生され、脳内から脊髄を循環し、同量吸収される。通常脳内には大人で150ミリリットルがたまっている。それが1日600~700ミリリットルも脳脊髄液を産生すると、脳内の脳脊髄液が過剰になって、頭蓋内圧を上げてしまう。脈絡叢が腫瘍(しゅよう)化したり、脳内に炎症が起きると産生過剰になる。
●循環障害 頭蓋内の脳脊髄液が循環する通り道に、脳腫瘍や髄膜炎ができて循環障害が起きてしまう。先天的なケースもある。
●吸収障害 くも膜下出血の後に起きる。くも膜下出血で血液が脳脊髄液に混じると、脳脊髄液が吸収される頭頂部の上矢状静脈洞の目が詰まってしまい、吸収障害を起こす。
「このような原因で起こる水頭症で、最も怖いのが頭蓋内圧が上がって脳が下方の首の方へ逃げることで起きる脳ヘルニアです。昏睡(こんすい)状態になり呼吸が止まって死んでしまいます」。その前に頭痛、吐き気が強く、CT(コンピューター断層撮影)を撮ると診断がつくし、眼底を診ると「うっ血乳頭が出ているので分かります。患者さんは緊急処置が必要な状態です」。
この急性の水頭症に対し、慢性に推移するのが「特発性正常圧水頭症」。歩行障害、尿失禁、認知症様症状が出るので、パーキンソン病、認知症などと間違えられているケースが多い。「MRI(磁気共鳴画像装置)やCTを撮れば診断はつきます。脳脊髄液が余分にたまっているのに、脳の表面の溝がはっきり見えないケースが特発性正常圧水頭症です」。このMRI、CTの前に問診や神経学的検査を行う。また、腰から脳脊髄液を試しに30ミリリットル抜いてみる(タップテスト)。このような診察を行うと、まず水頭症を見逃すことはない。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆くも膜下出血 突然死の大きな原因の1つが脳卒中の中の「くも膜下出血」。脳動脈にできたこぶ、脳動脈瘤(りゅう)が破裂するとくも膜下出血と呼ばれる。日本では毎年人口1万人あたり1・5人から2人に起きている。
◆水頭症の名医
▽順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京・文京区)脳神経外科・宮嶋雅一助教授
▽東京医科大学病院(東京・新宿区)脳神経外科・三木保助教授
▽東京慈恵会医科大学付属病院(東京・港区)脳神経外科・大井静雄教授
February 21, 2006 09:34 AM
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