健康連載ブログ

2006年02月28日

2006年02月28日

【第48回】爪白癬には抗真菌の内服薬/済生会川口総合病院加藤卓朗部長

水虫の治療(下)

 水虫の中にも抗真菌薬の外用薬ではなかなか治らないタイプがある。その代表ともいえるのが、水虫菌である白癬菌が爪(つめ)に感染した爪白癬である。

 「かつては爪の水虫に気付く人は少なく、小水疱(すいほう)型(足の土踏まずに粟=あわ=粒大の水疱ができるタイプ)や趾間(しかん)型(足の指の間に赤いビラン面が現れるタイプ)といった水虫で受診されたときに、医師に発見されるケースが多かったのです。ところが、爪白癬の啓発活動の効果か、爪白癬で受診される人が多くなりました」と、埼玉県済生会川口総合病院(埼玉県川口市)皮膚科の加藤卓朗部長は言う。

 その治療には抗真菌薬の内服薬を使う。「以前は1年以上服用する薬でしたので、副作用が心配されていました。今は服薬期間の短い薬が中心で、2種類あります」。「ラミシール」と「イトリゾール」で、治療開始前に肝機能障害の有無をチェックし、問題のない患者に対して薬が処方される。服用開始後も1カ月ごとに肝機能等の検査は行っていく。

 ラミシールは1日1錠を服用。これを6カ月続ける。一方、イトリゾールの場合は「パルス療法」が行われる。1日2回、4錠ずつを服用。これを1週間続け、次の3週間は薬の服用を休む。これを1クールとして、3クール行うのがパルス療法である。「患者さんとしては、実際に薬を服用するのは21日間と非常に短い日数になっています」。

 薬の服用が短期間とあって、パルス療法は患者に人気になっている。「パルス療法終了後も爪には薬の作用が残ります。だから、3カ月の治療が終了した時点で爪白癬が完治していなくても、その後も効果が続き6カ月で治っています」。

 “爪白癬は治らない”といわれたのは、もう過去の話。今日では、イトリゾールのパルス療法などの登場で「治癒率は70~80%になり、爪白癬も治しやすい病気になりました」。

 そして、治療を始めるならば、まだまだ寒いこの時期がお勧め。白癬菌の活動が弱まっているので、たたきやすい。加えて、夏場までに治って夏は恥ずかしがることなくはだしになれるからである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆皮膚科の名医
 ▽金沢医科大学病院(石川県内灘町)皮膚科・望月隆教授
 ▽東皮フ科医院(大阪府堺市)東禹彦院長
 ▽松田ひふ科医院(福岡県前原市)松田哲男院長
 ▽日本海員掖済会長崎病院(長崎市樺島町)皮膚科・西本勝太郎顧問

February 28, 2006 12:08 PM | トラックバック (0)

2006年02月27日

2006年02月27日

【第47回】抗真菌薬を最低3カ月/済生会川口総合病院加藤卓朗部長

水虫の治療(上)

 水虫と思ったら、まずは皮膚科を受診。「そのときは、自分で水虫と判断して市販薬を塗らないように。治療をしないで受診してください」と、埼玉県済生会川口総合病院(埼玉県川口市)皮膚科の加藤卓朗部長(東京医歯大臨床教授)はアドバイスする。それは「ちょっと治療していたり、他の病気を合併していると水虫菌である白癬(はくせん)菌が見つからないときがあるからです」と理由を話す。

 他の病気の場合には、状態を悪化させることもある。水虫と間違いやすい病気としては、かぶれの接触性皮膚炎、小さな膿疱(のうほう)がたくさんできる掌蹠(しょうせき)膿疱症、粟(あわ)粒くらいの水疱がたくさんできる汗疱角質増殖型の水虫とよく似ている足底角化症などがある。足底角化症は冬場に悪化して、足裏のかかとがひび割れる。水虫を合併していることもある。

 皮膚科を受診すると、診察は問診(患者に症状や経過などを聞く)、視診(患部の状態を診る)、触診(手で触れて診る)、そして「顕微鏡検査」を確定診断として行う。「角質の一部を削り取って、水酸化カリウム液を添加してふやかし、それを顕微鏡で見て白癬菌の有無を調べます。この検査で菌を確認して、そこから水虫治療が始まります」。

 治療は薬物療法で「抗真菌薬」の外用薬を使う。小水疱型や趾間(しかん)型では、まずは1カ月を目安に塗る。それで治らないときは他の抗真菌薬に替える。最低3カ月は塗るのが基本。「ステロイド薬は患部にのみ使いますが、抗真菌薬は罹患(りかん)範囲をしっかり調べ、最初の1~2週間はより広範囲に塗ります」。

 1日1回の薬が中心で、風呂上がりに塗るのがベスト。根気よく塗るのが完治への道だ。基剤としては<1>クリーム<2>軟こう<3>液、もしくはローション<4>スプレーがあるが、圧倒的にクリームが多い。安全性が高くて塗り心地も良いからである。「介護の現場ではスプレーが人気があります」。外用薬は2週間分、2週間分、1カ月分、1カ月分で処方することが多い。

 なお、角質増殖型と爪(つめ)白癬の治療には、内服薬の治療が中心になっている。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆水虫タイプ 水虫には4タイプがある。足の土踏まずなどに粟粒大の水疱ができるのが小水疱型、指の間に赤いビラン面が現われるのが趾間型、足の裏全体が白く粉をふいたようになるのが角質増殖型、爪がデコボコになるのが爪白癬である。

 ◆皮膚科の名医
 ▽帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)皮膚科・渡辺晋一教授
 ▽東京医科大学病院(東京都新宿区)皮膚科・坪井良治教授
 ▽昭和大学藤が丘病院(横浜市青葉区)皮膚科・清佳浩助教授
 ▽藤田皮膚科クリニック(新潟県長岡市)藤田繁院長

February 27, 2006 10:36 AM | トラックバック (0)

2006年02月26日

2006年02月26日

【第46回】軽く考えず皮膚科受診を/済生会川口総合病院加藤卓朗部長

水虫(下)

 日本人の5人に1人が「足がかゆい、ジクジクする、痛い、皮がむける」などの症状を出す慢性の感染症の水虫に悩まされている。真菌(しんきん=カビ)の一種の白癬(はくせん)菌が感染して起きる水虫には、起きる場所や症状によって以下の4つのタイプに分類できる。

 <1>小水疱(しょうすいほう)型 足の土踏まずを中心に足の縁、足の指の腹や側面などに粟(あわ)粒大の水疱が数多くでき、これが破れて輪のように丸く白く皮がむける。周辺は多少の赤みを帯び、強いかゆみがある。

 <2>趾間(しかん)型 指の間が白くふやけたようになり、赤いびらん面が現れる。ジクジクしたり、皮がむけたりし、ジクジク時には痛みやかゆみがある。

 <3>角質増殖型 水虫の慢性化タイプで広く足の裏全体に広がり、角質が乾燥して白く厚くなる。粉をふいたようにもみえる。

 <4>爪(つめ)白癬 つめに白癬菌が入ったつめの水虫。つめが白く厚くなり、ボロボロしてくる。色が黄色がかる人もいる。

 どのタイプかというよりも、実は埼玉県済生会川口総合病院(埼玉県川口市)皮膚科の加藤卓朗部長によると「1人が2つのタイプ、3つのタイプを合併しているケースが多い」という。それを裏付けるように、日本の約2500万人の水虫患者中、約半数が爪白癬にかかっているという調査結果が出ている。

 このような水虫事情を知らずに、患者が自己判断で市販薬を購入して治療を始めても、なかなか治らない。患者自身が水虫と思ったところに水虫の外用薬を塗り続けて、症状が消えると治療を終える。きちっと水虫が治っていたとしても、気付かないところにも水虫が出ていてそれでまた感染してしまう。

 また、“再燃”ということもある。「表面的には水虫が治ったようでも、治り切っていないケースが多いのです。完治していないのです。完治の早い小水疱型や趾間型でも3カ月くらいはかかります。症状は2~3週間で消えてしまうので、その時点で治ったと思って薬を塗らなくなってしまうのです。すると、治りきらなかった水虫が再登場、つまり、再燃してくるのです」。

 さらに、水虫と思って治療していて他の病気のケースがある、その場合は症状を悪化させてしまうことも多いので、水虫だからと軽く考えず、皮膚科を受診すべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆皮膚科の名医
 ▽済生会川口総合病院(埼玉県川口市)皮膚科・加藤卓朗部長
 ▽東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)皮膚科・原田敬之教授
 ▽哲学堂くすのき皮膚科(東京都中野区)楠俊雄院長
 ▽順天堂大学医学部付属練馬病院(東京都練馬区)皮膚科・アレルギー科・比留間政太郎助教授

February 26, 2006 10:40 AM | トラックバック (0)

2006年02月25日

2006年02月25日

【第45回】最短で36時間感染/済生会川口総合病院加藤卓朗部長

水虫(上)

 慢性の感染症の中で、最も日本人と仲が良く、歌にまでなっているのは「水虫」以外にはない。ジャパン・フット・ウィーク研究会が99~00年に行った実態調査では、日本の水虫患者は約2470万人。5人に1人が水虫に感染していることになる。

 水虫は真菌(しんきん=カビ)の一種、白癬(はくせん)菌が足や手に感染して起こる。それ以外の部位に感染するケースもあるが、その場合は名称が異なる。頭に感染すると「しらくも」、またに感染すると「いんきんたむし」と呼ばれている。
 家族に1人、水虫感染者がいると、家族は常に感染のリスクにさらされることになる。「水虫感染者がはだしで家の中を歩き回ると、至るところに水虫菌を散らします。水虫菌だけがフローリングの床に落ちると、2週間程度で死滅します。ところが、人間の皮膚片と一緒に落ちると半年間程度生きています」。「水虫博士」といわれる埼玉県済生会川口総合病院(埼玉県川口市)皮膚科の加藤卓朗部長(東京医歯大臨床教授)が言うように、水虫菌の生存力は強い。だから感染のリスクが高い。それは、人間と共に生きる菌だから……。
「白癬菌にはいくつもあります。土壌中にいるもの、ネコなど動物についているもの、そして人間にくっついているものです」。人間とともに歩む白癬菌は、体に必ずしもくっついているのではなく、人間の環境中にばらまかれている。「日本ではプールや共同浴場、スポーツセンターやゴルフ場の浴場など大勢の人がはだしになる環境が多いですが、このような場所からも足に白癬菌は付着し、感染が起こり得るのです」。加藤部長が行った調査では、多くの人々の集まる浴場のバスマットには、ほぼ100%白癬菌が付着していた。
 足に付着した白癬菌は皮膚の表面の表皮の中の、さらに表面の角質層の中に入り込んで増殖し、さまざまな水虫の症状を出す。もちろん、足が乾燥していると白癬菌は滑り落ちてしまうし、1日1回きれいに足を洗っていると落ちてしまう。ただ、高温多湿状態が長く続くと、最短で36時間で感染した報告もあるが、基本的には48時間以内に足を洗っていると、まずは大丈夫と考えられている。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆水虫罹患(りかん)率 加藤部長らの行った任意集団の調査では、会社員、大学生、ブーツ着用女性の罹患率は65%、24%、23%とかなり高かった。老健施設入居者では、施設A77%、施設B64%などとなっている。

 ◆皮膚科の名医
 ▽さとう皮膚科クリニック(岩手県盛岡市)佐藤俊樹院長
 ▽笠井皮膚科(宮城県多賀城市)笠井達也院長
 ▽高瀬皮膚科医院(茨城県つくば市)高瀬孝子院長
 ▽仲皮膚科クリニック(埼玉県川越市)仲弥院長

February 25, 2006 12:18 PM | トラックバック (0)

2006年02月24日

2006年02月24日

【第44回】画期的な神経内視鏡手術/日本医大付属病院喜多村孝幸助教授

水頭症の治療(下)

 高齢者に多い「特発性正常圧水頭症」。パーキンソン病、認知症と間違えられているケースもあることから分かるように、症状として歩行障害、尿失禁、認知症様症状が出てくる。これは「治るパーキンソン病」「治る認知症」といわれ、注目されている。

 治療は、多くなった脳脊髄(せきずい)液を管を使って脳室から腹腔(ふくくう)へ流す「脳室腹腔シャント術」で改善する。

 水頭症は特発性正常圧水頭症だけではない。その種類を、日本医科大付属病院(東京・文京区)脳神経外科の喜多村孝幸助教授は、次のように説明する。「脳脊髄液の『産生過剰』『循環障害』『吸収障害』の3つがあります。特発性正常圧水頭症の特発性とは原因不明という意味ですが、実際にはその多くが吸収障害と考えられています」。

 循環障害による水頭症では、画期的な「神経内視鏡治療」が登場し、脳外科の手術を大きく変えようとしている。脳脊髄液の循環障害は脳脊髄液の通り道のどこかが詰まったり、狭くなることで起きる。すると頭内の圧が上昇し、頭痛、吐き気、さらに進むと、生死にかかわる。

 「詰まったり、狭くなったりする原因としては、たとえば脳腫瘍(しゅよう)があります。腫瘍を切除するには、従来は開頭手術という大変な手術をしました。手術時間は最低でも5~6時間かかります。それが内視鏡で行うと、1時間30分程度で終わるのです」。まさに、患者の体に優しい手術である。

 その神経内視鏡手術は、患部にアタックしやすいところに孔(あな)を開けて、直径5ミリの内視鏡を患部まで挿入する。当然、大脳なども突き刺して行くことになるが…。「それは全く問題ありません。血管を傷つけない限り、大丈夫です」。そして、脳脊髄液の通り道を閉じている脳腫瘍を神経内視鏡を使って取り除いてしまう。

 「腫瘍以外のほかの何かが原因で生じた場合は、バイパスを神経内視鏡で作るだけで治療は終了します」。頭の傷はわずか3センチ程度で済んでしまう。体に優しいとあって、脳外科でも、今日では開頭手術よりも神経内視鏡手術に軍配が上がることも多い。「脳外科の新しい流れは、血管内治療と神経内視鏡手術だと思います」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆水頭症の名医
 ▽北野病院(大阪市北区)脳神経外科・石川正恒部長
 ▽島根大学医学部付属病院(島根県出雲市)脳神経外科・森竹浩三教授
 ▽久留米大学病院(福岡県久留米市)脳神経外科・重森稔教授
 ▽鹿児島市立病院(鹿児島市)脳神経外科・上津原甲一院長、平原一穂部長

February 24, 2006 02:21 PM | トラックバック (0)

2006年02月23日

2006年02月23日

【第43回】タップテストで手術判断/日本医大付属病院喜多村孝幸助教授

水頭症の治療(上)

 頭蓋(ずがい)内に脳脊髄(せきずい)液がたまって脳を圧迫し、急性の場合には生死にかかわる水頭症。この場合は救急車で運ばれ、まさに一刻を争う状態となる。一方、慢性的状況となる「特発性正常圧水頭症」では、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)などの画像診断のほかに、疑いが濃厚になった時点で「タップテスト」を行う。

 「髄液を取ることで体の改善の有無を診るテストです」と、日本医大付属病院(東京・文京区)脳神経外科の喜多村孝幸助教授は言う。髄液を取るのは腰椎(ようつい)からで、採取量は30ミリリットル。「採取後、2~3日で歩行などの動きが良くなった人は手術をすると良くなるので、水頭症と診断するとともに、手術を勧めます」。

 高齢者に多い特発性正常圧水頭症の手術は「脳室腹腔(ふくくう)シャント術」が多く行われている。
 全身麻酔で手術台に眠る患者の頭の前方の骨に孔(あな)を開け、そこからシリコン製の管を脳内の中央にある脳室に挿入する。次にその管を頭皮下を通して耳の後方に持ってくる。さらに、腹部、へその横あたりに孔を開け、やはりシリコン製の管を耳の後方から皮下を通して腹部の孔へまで持っていく。そして、頭とへその脇の孔を閉じる。シャントシステムの完成である。耳の後方の皮下にはバルブが埋設されている。

 「吸収しきれずに脳内にたまる脳脊髄液を腹腔に流して体に吸収してもらう方法です。ところが脳脊髄液を流しすぎると脳の内圧が低下してしまい、低髄圧症候群を起こしてしまいます。目覚めて起きようとすると頭痛がひどくて起きられない状態になってしまいます。だから、その時にバルブを使います」。

 今、最も新しいタイプは、外から磁石を用いて脳内からの脳脊髄液の量を調節できるようになっている。2、3カ月に1回、定期的に診察を受け、脳内の圧をチェックする。「この脳室腹腔シャント術のほかに、脳脊髄を心房に流す『脳室心房シャント術』もあります。ただ、バイ菌が心臓に入ると問題があるので、今は腹膜炎などで腹腔が使えない場合に限って行われています」。

 術後は、腹腔に圧力をかけすぎないような日常生活を送るようにする。埋設した管に詰まりが起きないためである。術後、歩行障害は早期に改善し、認知症様症状も1年もたつと大分改善するという。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆水頭症の名医
 ▽東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)脳神経外科・松前光紀教授
 ▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)脳神経外科・斎藤清助教授
 ▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)脳神経外科・吉峰俊樹教授

February 23, 2006 10:03 AM | トラックバック (0)

2006年02月22日

2006年02月22日

【番外編】疑問あれば権利行使を

セカンドオピニオン

 患者の権利を示す片仮名言葉が、最近の医療現場ではごく普通に使われるようになった。インフォームドコンセント(十分な説明を受け、納得しての同意)は最も知られているが、次いでセカンドオピニオンが浮上している。賢い患者として、最も自分に合った納得できる治療を受けようとするときには、セカンドオピニオンは非常に重要になる。

 日本語にすると「第2の意見」となるが、これではよく分からない。「主治医以外の専門医による第2の意見」がより正確だろう。たとえば、乳がんと告知された患者が医師と治療方法を語り合った。主治医は検査結果を示して、乳房の大部分を切除してしまう「胸筋温存乳房切除術」を勧めた。だが、「本当にがんなのか」「乳房を切除しなければならないのか」―疑問があればここでセカンドオピニオンをとるべきである。

 実際、このセカンドオピニオンで「がんではあるが、乳房を残す温存療法が可能」と診断され、セカンドオピニオンを受けた医師のところで治療を受けることになった人も多くいる。もちろん、第2の医師が主治医と同じ意見で、主治医のもとで手術を受ける人も当然多い。これはあくまで、正しい治療を受けるための患者の権利なのである。

 70年代後半に米国で生まれたセカンドオピニオン。日本でも80年代から、言葉は理解していなくても、主治医に話すことなく、他の専門医のもとで再診察を受けていた患者たちはいた。それでは検査を再度受けるので、時間と費用がかかるのみならず、エックス線、CT(コンピューター断層撮影)などでの被ばくが増えることにもなる。

 そのような患者の負担を解消すべく、00年ごろから「セカンドオピニオン外来」を設ける病院が出てきた。医療サービスとして無料で行う施設から3万円で行う施設などさまざま。相談時間は30分から1時間で、基本的には保険適用はない。03年あたりからは各大学病院、全国のがんセンターも積極的にセカンドオピニオン外来を誕生させた。

 セカンドオピニオンという患者の権利をしっかり行使するためには(1)主治医にセカンドオピニオンを求めたい旨を話す(2)主治医から病状や経過を記した「診療情報提供書」や検査データ、エックス線やCT画像などを一式借り受ける(3)セカンドオピニオンを受ける病院の外来に予約して受診する。

 この際、基本は主治医のもとに戻ることにあるが、主治医のところで行っていない治療等の場合は、第2の医師のもとでの治療となる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

February 22, 2006 10:51 AM | トラックバック (0)

2006年02月21日

2006年02月21日

【第42回】死に至る最も怖い脳ヘルニア/日本医大付属病院喜多村孝幸助教授

水頭症(下)

 パーキンソン病や認知症と思われている高齢者の患者の中に、特発性正常圧水頭症といって、治療をすると治る疾患の人々がおり、今、大きな話題になっている。水頭症は、頭蓋(ずがい)内を循環して脳や脊髄(せきずい)を保護している脳脊髄液が異常に増える疾患である。「原因には脳脊髄液の『産生過剰』『循環障害』『吸収障害』の3つがあります」と話すのは、日本医大付属病院(東京・文京区)脳神経外科の喜多村孝幸助教授。

 ●産生過剰 脳脊髄液は脳室内にある脈絡叢(そう)や血管などで1日500ミリリットル産生され、脳内から脊髄を循環し、同量吸収される。通常脳内には大人で150ミリリットルがたまっている。それが1日600~700ミリリットルも脳脊髄液を産生すると、脳内の脳脊髄液が過剰になって、頭蓋内圧を上げてしまう。脈絡叢が腫瘍(しゅよう)化したり、脳内に炎症が起きると産生過剰になる。

 ●循環障害 頭蓋内の脳脊髄液が循環する通り道に、脳腫瘍や髄膜炎ができて循環障害が起きてしまう。先天的なケースもある。

 ●吸収障害 くも膜下出血の後に起きる。くも膜下出血で血液が脳脊髄液に混じると、脳脊髄液が吸収される頭頂部の上矢状静脈洞の目が詰まってしまい、吸収障害を起こす。

 「このような原因で起こる水頭症で、最も怖いのが頭蓋内圧が上がって脳が下方の首の方へ逃げることで起きる脳ヘルニアです。昏睡(こんすい)状態になり呼吸が止まって死んでしまいます」。その前に頭痛、吐き気が強く、CT(コンピューター断層撮影)を撮ると診断がつくし、眼底を診ると「うっ血乳頭が出ているので分かります。患者さんは緊急処置が必要な状態です」。

 この急性の水頭症に対し、慢性に推移するのが「特発性正常圧水頭症」。歩行障害、尿失禁、認知症様症状が出るので、パーキンソン病、認知症などと間違えられているケースが多い。「MRI(磁気共鳴画像装置)やCTを撮れば診断はつきます。脳脊髄液が余分にたまっているのに、脳の表面の溝がはっきり見えないケースが特発性正常圧水頭症です」。このMRI、CTの前に問診や神経学的検査を行う。また、腰から脳脊髄液を試しに30ミリリットル抜いてみる(タップテスト)。このような診察を行うと、まず水頭症を見逃すことはない。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆くも膜下出血 突然死の大きな原因の1つが脳卒中の中の「くも膜下出血」。脳動脈にできたこぶ、脳動脈瘤(りゅう)が破裂するとくも膜下出血と呼ばれる。日本では毎年人口1万人あたり1・5人から2人に起きている。

 ◆水頭症の名医
 ▽順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京・文京区)脳神経外科・宮嶋雅一助教授
 ▽東京医科大学病院(東京・新宿区)脳神経外科・三木保助教授
 ▽東京慈恵会医科大学付属病院(東京・港区)脳神経外科・大井静雄教授

February 21, 2006 09:34 AM | トラックバック (0)

2006年02月20日

2006年02月20日

【第41回】原因はっきりしない特発性/日本医大付属病院喜多村孝幸助教授

水頭症(上)

 パーキンソン病や認知症と思われている患者の中に、正確に診断されずに治るものも治らずにいる人が7~8%はいるといわれている。正確に診断がつくと、それは「特発性正常圧水頭症」。高齢者に多い原因がはっきりしない水頭症である。

 「治療をすると認知症様症状、歩行障害が治ったとして、最近クローズアップされてきています」と言うのは、日本医大付属病院(東京・文京区)脳神経外科の喜多村孝幸助教授。水頭症は頭蓋(ずがい)内圧が上昇する疾患である。頭の中には無色透明な脳脊髄(せきずい)液が脳室内の脈絡叢(そう)や血管で作られ、循環している。脳を守るとともに物質の代謝にもかかわっていると考えられている。その脳脊髄液の循環障害が起きたり、産生過剰、また吸収障害が起きると頭の中に脳脊髄液が増え、頭蓋内圧が上昇する。症状は頭痛と吐き気。「急性の場合は生命にかかわります」。

 ところが、特発性正常圧水頭症では慢性に推移し、頭蓋内圧は正常なのである。「特発性なので原因ははっきりしませんが、脳脊髄液の吸収障害で起きているケースが多いと考えられています」。特発性正常圧水頭症の3大症状は「歩行障害」「尿失禁」「認知症様症状」。

 ●歩行障害 手の動きは問題ないが、歩きがパーキンソン病のように、歩幅が小さくチョコチョコ不安定な歩きになる。

 ●尿失禁 程度の差があるものの、基本的に尿意が分からない。

 ●認知症様症状 軽い認知症の症状で、もの忘れなどがあったり、ボーッとしていたりする。

 「パーキンソン病の専門医でも診断を間違えることがあります。それでも、受診するのは神経内科、脳神経外科です。私どもは、多くの専門医の方々に、このようなケースがあることを認識してもらうよう努めています」。特発性正常圧水頭症と分かると、その場合は「脳室腹腔(ふくくう)シャント術」が行われる。頭蓋骨に孔(あな)を開けてシリコン製の管を入れ、余分な脳脊髄液を管を通して腹腔に流す方法である。この方法で、患者は3大症状から解放されるのである。

 ◆パーキンソン病 中脳の黒質にある神経細胞の変性によって起こるのがパーキンソン病。特徴的な4大症状は「振戦」「固縮」「動作緩慢」「姿勢保持障害」である。

 ◆水頭症の名医
 ▽中村記念病院(札幌市中央区)脳神経外科・中村博彦院長
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)脳神経外科・冨永悌二教授
 ▽日本医科大学付属病院(東京都文京区)脳神経外科・喜多村孝幸助教授

February 20, 2006 10:33 AM | トラックバック (0)

2006年02月19日

2006年02月19日

【第40回】手術は機能再建のため/東京女子医大山中寿教授

関節リウマチの治療(下)

 関節リウマチの薬物療法は抗リウマチ薬を早く使って進行を抑えるのがポイント。その治療で十分に進行が抑えられないときに、次の方法として選択される治療薬は「生物学的製剤」である。

 「この生物学的製剤は関節リウマチを悪化させている滑膜から放出されるサイトカインという物質を無力化させる薬です」と説明するのは、東京女子医大膠原病リウマチ痛風センター(東京・新宿区)の山中寿教授。日本で最初の生物学的製剤「レミケード」が承認されたのは03年7月。検証によると5000症例のうち95%に効果がみられたとの声もあり、最先端の関節リウマチ治療となっている。「今はレミケード以外に『エンブレル』も認可されています」。

 レミケードは2時間かけて行う点滴で投与する薬。1回目の投与後は、2週間後に点滴。次は4週間後、その後は8週間おきに点滴する。一方、エンブレルは皮下注射。週に2回注射する。効果と安全が確認されると糖尿病でのインスリン注射のように、自己注射も可能。「投与量が決まっているので、症状の強く出ている人では抑えられないこともあります。が、関節の破壊はかなり抑えられます。長期間使う薬の中では最も効果のある薬です」。

 だが、患者全員が投与できる薬ではない。以下のような条件もある。

 <1>結核 かつて結核にかかった。生活をともにしている人が結核にかかった。ツベルクリン反応が強陽性になる人。胸のエックス線で影が出る。以上の人々は抗結核薬を使いながら使用する。

 <2>体力が低下している人 抗がん剤の投与も体の状態の悪い人には行わない。それと同じで体力低下、寝たきりといった人に使うとリスクが大きい。

 このような最先端の薬物療法で治療する一方で、関節の破壊が進行してQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)が悪くなると、機能を再建するために手術(人工関節置換術など)が行われる。「薬物療法か手術といった二者択一ではなく、それぞれが別の目的を持った治療法です。薬は治療のために、手術は機能再建のためです」。
 それ以前に、日々のリハビリは欠かせない。関節の可動域をキープするために、1日に1回はすべての関節の曲げ伸ばしを行うべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆関節リウマチの名医
 ▽松原メイフラワー病院(兵庫県社町)リウマチ・整形外科・松原司院長
 ▽一番町リウマチクリニック(愛媛県松山市)山本純己顧問
 ▽道後温泉病院リウマチセンター(愛媛県松山市)高杉潔理事長
 ▽産業医科大学病院(北九州市八幡西区)第1内科・田中良哉教授
 ▽近藤リウマチ・整形外科クリニック(福岡市中央区)近藤正一院長
 ▽長崎大学医学部・歯学部付属病院(長崎市)第1内科・江口勝美教授

February 19, 2006 10:52 AM | トラックバック (0)

2006年02月18日

2006年02月18日

【第39回】早期の抗リウマチ薬で炎症抑える/東京女子医大山中寿教授

関節リウマチの治療(上)

 関節リウマチは免疫システムの異常で関節などが破壊される自己免疫疾患の1つ。症状の強い弱いなど、まさに患者の状態は1人1人異なる。

 だから、東京女子医大膠原病リウマチ痛風センター(東京・新宿区)の山中寿教授は「それぞれの患者さんの症状、状態に合わせた治療が大事になります」と言う。オーダーメード医療だが、それには何より重要なポイントが的確な診断。その的確な診断にのっとって治療方針が決められ、治療がスタートする。
 80年代までは、弱い治療薬から強い治療薬へと段階的に積み上げていくピラミッド型治療だった。「今は最初から強い治療薬を使うといわれます。が、第一線の現場では有効性の高い治療法を徐々に積み上げているのが現状です」。

 その有効性の高い治療は-。「それには2つあります」。

 <1>「非ステロイド系抗炎症薬」と「ステロイド薬」 現在起きている関節の症状、痛みを抑える治療薬。

 <2>「抗リウマチ薬」と「生物学的製剤」 「関節リウマチそのものを抑えて、10年、20年後も関節破壊が進まないようにする薬です」。

 この<1>と<2>を上手に使い分けていき、<2>では抗リウマチ薬の使い方がキーポイントとなる。早期から抗リウマチ薬で炎症をきっちり抑えるのである。

 抗リウマチ薬としては、リマチル、アザルフィジンEN、リウマトレックスがよく使われている。とりわけリウマトレックスは世界的にもリウマチ治療の標準薬と評価されている。「私どもの施設でも60%以上の患者さんが服用されています」。もともとはがんを抑える薬だったが、少量で関節リウマチを抑えると分かって、抗リウマチ薬として承認された。1週間に1日か2日のみ服用する。

 「リウマトレックスは免疫を抑制する作用があるので、ひどい風邪などをひいたときは服用を中止します。そのほか、肝障害、間質性肺炎といった副作用もあるので、定期的に受診して検査を受ける必要があります」。これで関節リウマチの進行が抑えられないときは、生物学的製剤を使うことになる。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆間質性肺炎 酸素と二酸化炭素のガス交換は肺の末端の肺胞、その肺胞腔で行われる。肺胞を囲んでいるのが間質で、そこに炎症が起きるのが間質性肺炎。慢性化して肺が線維化すると肺線維症といわれる。

 ◆関節リウマチの名医
 ▽富山大学付属病院(富山市)整形外科・木村友厚教授
 ▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)臨床免疫科・三森経世教授
 ▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)呼吸器・免疫・アレルギー・感染内科・西本憲弘教授
 ▽大阪市立大学医学部付属病院(大阪市阿倍野区)整形外科・小池達也助教授
 ▽兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)リウマチ・膠原病科・佐野統教授

February 18, 2006 10:29 AM | トラックバック (0)

2006年02月17日

2006年02月17日

【第38回】触診が最も信頼できる/東京女子医大山中寿教授

関節リウマチ(下)

 関節のつらい症状に悩まされる関節リウマチも、やはり早期発見・早期治療が大事。高齢化とともに増えている「変形性関節症」と思い込んで治療開始が遅れるケースもあるので、しっかりとリウマチの専門医の診察を受けるべきである。

 診察は問診、身体所見から始まる。「何よりも患者さんの症状が最も大事」と、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター(東京・新宿区)の山中寿教授は言う。そして、しっかりとした診察のためには「患者さんのすべての関節を、1つ1つ押さえて痛みはどうか、腫れ具合はどうか診ていきます」。早期の診断では最も信頼できる方法である。
 逆に、患者からすると、1つ1つの関節に触れて診察をする医師かどうかで、良医の判断もできる。その上で「関節リウマチ診断基準(米国リウマチ学会1987年)」に当てはめて診断する。以下の7項目中、該当するのが4項目以上あると関節リウマチと診断する。<1>~<4>の項目については、その症状が6週間以上続いていることが条件となっている。
 <1>朝のこわばりが1時間以上続く。
 <2>3つ以上の関節が腫れる。
 <3>手首や首の付け根、指先から2番目の関節が腫れる。
 <4>左右対称に腫れる。
 <5>皮下結節がある。
 <6>リウマトイド因子が陽性になる。
 <7>手のエックス線写真に異常所見がある。
 この項目に入っているリウマトイド因子を検査し、手のエックス線写真も撮る。「リウマトイド因子は血液検査でチェックします。これは自己抗体の1つで、関節リウマチの人は多く陽性に出ます。が、陰性に出るケースもあるので、あくまで参考です」。エックス線写真については関節リウマチの特徴的な骨の変化を診るが、この症状が出る前に治療を開始すべきである。
 早期診断は身体所見だが、早期の腫れはMRI(磁気共鳴画像装置)でもある程度診断がつく。「血液(赤沈)、CRP(C反応性たんぱく)はともに血液検査ですが、体内の炎症が分かり、関節リウマチの人はこの数値が上がっているので診断の助けになります」。
 早期治療の必要性から、関節リウマチ診断基準が4項目を満たす以前に治療が開始されることもある。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆関節リウマチの名医
 ▽東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター(東京都新宿区)鎌谷直之所長、山中寿教授
 ▽日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)整形外科・龍順之助教授
 ▽東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)リウマチ膠原病センター・川合真一教授
 ▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)整形外科・石黒直樹教授
 ▽藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)リウマチ感染症内科・吉田俊治教授

February 17, 2006 10:15 AM | トラックバック (0)

2006年02月16日

2006年02月16日

【第37回】過労禁物、不明治療ダメ/東京女子医大山中寿教授

関節リウマチ(上)

 関節の痛みと腫れ、さらに進むと関節の変形にも苦しめられる関節リウマチ。ここで「あれっ?」と思われた人もいるだろう。「慢性が頭に付いていないぞ」と。02年から日本リウマチ学会の提案で正式に病名から「慢性」を外したのである。

 「その理由には2点あります」と言って、東京女子医大膠原病リウマチ痛風センター(東京・新宿区)の山中寿教授は話す。「慢性という言葉が患者さんに与える精神的重圧を軽減したいことが第1点です。第2点は、治療方針や治療薬が改善され、慢性経過をたどらずに治癒に向かっていくことに期待を込めてです」。
 関節リウマチと聞くと、高齢者の病気と思う人が多い。が、年齢的には30代から50代の人に多く発症しており、男女比では1対4で圧倒的に女性に多い。患者は100万人を超えているとも推測されている。「病気は何でもそうですが、リウマチも早期発見・早期治療が大事です。そして症状をとる対症療法だけでは駄目で、病気自体を治さないと進行してしまいます」。
 関節リウマチのメカニズムは、免疫の異常によって起こる。いわゆる自己免疫疾患である。本来、免疫は体の外から侵入してくる細菌やウイルスなどをたたく自己防御システム。ところが、その免疫が自分自身の体をたたいてしまうのが自己免疫疾患。関節リウマチの場合は関節の中でそれが起こってしまう。
 「関節は関節包に包まれており、その内側は滑膜で包まれています。いわゆる背広の裏地のような組織です。その滑膜が現時点ではなぜか分からないが増殖し、軟骨を溶かし、骨を溶かし、関節を破壊するのです」。滑膜の増殖原因は分かってはいないものの、体質的な面に何らかの引き金があって起きているのでは…と考えられている。
 「生活習慣病ではないことははっきりしています。だから、何をしたから発症に関係するということがないが、それは逆に、何をしたら改善するということもないのです」。そこで、山中教授が患者に話すポイントは2点。よく覚えておこう。
 <1>体力を落とさないようにしましょう。「過労は禁物、また無理なダイエットをしない」。
 <2>効果が証明されていない治療に手を出さない。「早く治療を始めることが大事なので、効くか効かないか分からない治療に大切な時間を費やしている暇はありません」。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆関節リウマチの名医
 ▽北海道大学病院(札幌市北区)第2内科・小池隆夫教授
 ▽公立黒川病院 (宮城県大和町)整形外科リウマチ科・力丸暘院長代理
 ▽埼玉医科大学総合医療センター(埼玉県川越市)第2内科・竹内勤教授
 ▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)膠原病・リウマチ内科・宮坂信之教授
 ▽東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)整形外科・井上和彦病院長

February 16, 2006 10:09 AM | トラックバック (1)

2006年02月15日

2006年02月15日

【第36回】QOL悪化したら3つの手術療法/慶大病院松本秀男助教授

変形性膝関節症の治療(下)

 変形性膝(しつ)関節症の治療には「保存療法」と「手術療法」があり、まずは保存療法で状態を多少なりとも改善したり、痛みを抑えるようにする。が、あくまでも対症療法。軟骨を再生することが現時点ではできないので、進行して、あまりにQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)が悪くなってしまうと手術療法を選択することになる。

 手術療法には「鏡視下手術」「高位脛(けい)骨骨切り術」「人工膝関節置換術」の3方法が行われている。
 ●鏡視下手術 関節鏡、いわゆる内視鏡を用いる手術。少ないときは2個所、多いときは4個所膝関節に直径5~7ミリ程度の穴を開け、そこから内視鏡や手術器具を入れ、モニターを見ながら手術を行う。慶応義塾大学病院(東京・新宿区)整形外科の松本秀男助教授は次のように話す。「半月板が断裂したり、軟骨がはがれたりして、これが関節に挟まって痛みが出るような場合には保存療法では痛みはとれないので、鏡視下手術が効果を発揮します」。そのとき、変形が軽いことも大きな適応条件となる。「根治療法だと思う患者さんがいらっしゃいますが、これは挟まっている半月板を取り除くなど、部分的な手術ですので、これで変形性関節症のすべてが解決するわけではありません」。手術後、2~3日で歩け、4~5日で退院するのが一般的。これを日帰り手術で対応しているところもでてきた。
 ●高位脛骨骨切り術 膝関節を悪化させるのがO脚。O脚はひざの内側の関節軟骨を擦り減らし、さらに内側に体重がかかるようになるのでO脚に。まさしく悪循環。この悪循環を断ち切るために、すねの骨の脛骨の上部の骨を切り、O脚を矯正する。骨がつくまで、リハビリを行うのに時間がかかる。が、「人工物が入らないので感染の心配が小さいのが特徴です。また、一度骨がつけば、人工関節のように緩む心配がないので、ある程度の運動も可能です」という。
 ●人工膝関節置換術 骨を削って膝関節を人工関節に置き換えるもので、膝関節の下の脛骨側はプラスチック、上の大腿(だいたい)骨側は金属にするのが一般的。膝関節の外側が全く問題がないときは内側だけを置換する、全体のケースは「全置換術」が行われる。「人工関節の寿命は昔は10~15年程度といわれましたが、今は素材も手術方法も進歩しましたので、将来入れ替えることはあまり考えずに使ってもいいでしょう」。入院期間は2~3週程度が一般的である。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆形性膝関節症の名医
 ▽香芝旭ヶ丘病院(奈良県香芝市)整形外科・近藤誠副院長
 ▽神戸大学医学部付属病院(神戸市中央区)整形外科・村津裕嗣講師
 ▽兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)整形外科・吉矢晋一教授
 ▽福岡整形外科病院(福岡市南区)整形外科・王寺弘副院長
 ▽九州大学病院(福岡市東区)リハビリテーション部・三浦裕正助教授
 ▽大分大学医学部付属病院(大分県挟間町)整形外科・津村弘教授

February 15, 2006 12:43 PM | トラックバック (0)

2006年02月14日

2006年02月14日

【第35回】筋トレなどの保存療法/慶大病院松本秀男助教授

変形性膝関節症の治療(上)

 中高年者に多い変形性膝(しつ)関節症は重症になると、安静にしていてもひざの関節が痛む。また、ひざの曲げ伸ばしが十分にできなくなる。整形外科で診察を受け、変形性膝関節であると診断されると、治療方針が決められる。

 治療は「保存療法」と「手術療法」。患者の状態から判断されるが、基本的にはまず保存療法で様子をみる。保存療法には「筋力トレーニング」「サポーター」「足底板」「薬物療法」がある。

 ●筋力トレーニング 「ひざの関節を支えている筋肉が弱くなると軟骨の擦り減りはより早くなります。そこで筋力をしっかりつけましょう。とりわけ太ももの筋肉の大腿(だいたい)四頭筋を強化するトレーニングが重要です」。慶応義塾大学病院(新宿区信濃町)整形外科の松本秀男助教授は言う。さらに松本助教授は「スイミング、それもバタ足。あとは水中ウオーキング」を勧めた。水の中は浮力があり、膝関節への負担が小さいからである。

 ●サポーター 膝関節の負担をサポーターを使って少なくする方法。ひざを安定させるにもいい。「ひざが痛いときはいいですが、いつも装着しているとサポーターに頼ってしまい、筋力がより低下してしまいます。普段は極力装着しないように指導しています」。

 ●足底板 変形性膝関節症に悩む九十数%は膝関節の内側だけが擦り減っているケース。O脚を生む悪循環に-。「内側に負担をかけず均等な負担となるように使うのが足底板です。靴の中に使う中敷きで、外側が厚くなっています。この矯正装具で悪循環を断ち、痛みも軽減します」。

 ●薬物療法 炎症を抑えるために「消炎鎮痛剤」ののみ薬と外用薬。注射薬としては「ヒルアロン酸製剤」。このヒルアロン酸製剤は「関節軟骨を保護し、治療薬としてはいいのだが、速効性に乏しい。1~2週間に1回の注射を5回行う。これがワンクール。その後は症状を診ながら使います」。ステロイド薬の注射は今日ではあまり使わない。大腿骨の壊死(えし)を起こしたり、感染症を起こしたりするからである。

 最近はサプリメントとして「コンドロイチン」や「グルコサミン」が欧米のみならず、日本でも人気になっている。それについて、「まだ十分に予防、治療に効果があるかは証明されていません」と松本助教授は現状を話した。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆変形性膝関節症の名医
 ▽長野松代総合病院(長野市)整形外科・秋月章副院長
 ▽済生会高岡病院(富山県高岡市)整形外科・金粕浩一副院長
 ▽名古屋医療センター(名古屋市中区)整形外科・リウマチ科・衛藤義人部長・リウマチ科医長
 ▽星が丘厚生年金病院(大阪府枚方市)整形外科・林田賢治医師
 ▽大阪労災病院(大阪府堺市)整形外科・関節外科クリニック・格谷義徳関節外科部長
 ▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)整形外科・富田哲也医師

February 14, 2006 09:07 AM | トラックバック (0)

2006年02月13日

2006年02月13日

【第34回】問診そして触診も大事/慶大病院松本秀男助教授

変形性膝関節症(下)

 男女比9対1と圧倒的に女性を苦しめる変形性膝(しつ)関節症は軟骨や骨が擦り減って痛みが出てくる“膝関節の老化”。

 症状はひざの痛みだが、ひざが痛むからすべて変形性膝関節症ではない。ひざが痛む疾患はいろいろあるので、まずは整形外科を受診して診察を受ける。「正しく診断するのに最も重要なのは問診です。患者さんから症状を詳しく聞くことです」。慶応義塾大学病院(東京・新宿区)整形外科の松本秀男助教授。膝関節の疾患が専門である。

 多くの患者が挙げる変形性膝関節症の症状を紹介しよう。まずは「動くと痛い」。動作を起こす最初だけ痛みがあり、歩き続けているうちに痛みが治まってくることもある。このほか、立ち上がったとき、階段を下りるときに痛むこともある。「動くときにひざへの刺激が強く、炎症を起こしてしまうので痛みが出ます」。

 これがかなり重くなってくると「安静時にも腫れたり痛みが出る」ようになる。つらい状態である。さらに進むと「ひざに水がたまる」ようにもなる。ひざを曲げたり伸ばしたりといった動作も思うようにできなくなり、QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)がどんどん悪くなる。

 「問診、そして触診も大事です。患者さんのひざに手を置いて、患者さんの足を動かすと、膝関節がスムーズに動かず、キッコキッコという感じが伝わってきます。そしてもう1つ、エックス線の画像検査も基本中の基本です」。さらに、状況によってはMRI(磁気共鳴画像装置)検査も加える。状態が軽症で、まだ軟骨だけに多少の変化が出ているときはエックス線ではその変化が写らないので、MRIで変化を確認する。

 また、エックス線検査では膝関節のどの部分に変化が出ているかも、はっきり分かる。「特徴的なのは日本人は九十数%が膝関節の内側だけがすり減るためにO脚になる人がほとんどです。これはO脚矯正などで治ることはありません」。さらに、血液検査で関節リウマチとの識別を行い、最終診断が下される。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆O脚 両足をそろえて立ったときに、両ひざの内側が離れるものをO脚という。症状の程度差はあるものの、日本人は九十数%がO脚。欧米人では約70%といわれている。

 ◆変形性膝関節症の名医
 ▽東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)整形外科・勝呂徹教授
 ▽慶応義塾大学病院(東京都新宿区)整形外科・松本秀男助教授
 ▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)整形外科・宗田大教授
 ▽日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)整形外科・龍順之助教授
 ▽横浜市立大学付属病院(横浜市金沢区)整形外科・斎藤知行教授

February 13, 2006 10:19 AM | トラックバック (0)

2006年02月12日

2006年02月12日

【第33回】90%女性、老化が大きな要素/慶大病院松本秀男助教授

変形性膝関節症

 「立ち上がろうとするとひざが痛む」「歩き出すとひざが痛む」、さらに進むと「ジッとしていてもひざが痛む」までになってしまう。このような症状を訴えるかなり多くの人が変形性膝(しつ)関節症の疑いがある。

 「中高年以降の方々に発症がみられ、90%以上が女性です」とは、ひざを専門とする慶応義塾大学病院(東京・新宿区)整形外科の松本秀男助教授。そして、その理由を続ける。「女性が男性に比べて筋力が弱いこと、女性ホルモンとの関係などさまざまな理由が考えられていますが、正確な理由はまだはっきりしていません。ただ、いえるのは、変形性膝関節症は老化が大きな要素です」。
 明らかな原因がなく老化によるケースがほとんどで、これを1次性変形性膝関節症という。もう1つ、2次性変形性膝関節症は昔、ひざにけがをしたり、関節炎を起こしたことがあり、そういった原因の分かっているケースである。
 では、患者の多い1次性変形性膝関節症のメカニズムは-。膝関節は体の中で最も大きな骨である大腿(だいたい)骨と脛(けい)骨を結ぶ関節である。この2つの骨が直接ぶつからないように、また、スムーズな動きができるように骨と骨の各先端部分は弾力性のある関節軟骨でできている。
 さらに、2つの関節軟骨間に半月板があって、ショックアブソーバーの役割を果たしている。「その軟骨が加齢によって擦り減ります。また擦り減ると人間の体が反応して余分な骨もできてきます。この余分な骨、骨棘(こつきょく)といいます。このようになると、それまでツルツルだった関節面がデコボコになって動くと痛みの原因になります。また、関節は関節包で包まれていますが、その関節包を関節軟骨の擦り減ったカケラなどが刺激することでも炎症を起こします」。
 ひざに水がたまることもある。関節の内側を包んでいる滑膜は関節液を作って軟骨に適度な潤いをもたせたり、栄養を与えている。ところが、その関節液を過剰に作ってしまい水がたまる状態になってしまうのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆滑膜 関節の内側を包んでいる膜で、関節液を分泌する以外に、関節腔(くう)内の老廃物を取り除いてしまう清掃屋の働きもある。

 ◆変形性膝関節症の名医
 ▽北海道大学病院(札幌市北区)スポーツ医学診療科・安田和則教授
 ▽NTT東日本札幌病院(札幌市中央区)整形外科・井上雅之部長
 ▽函館中央病院(北海道函館市)整形外科・大越康充診療部長
 ▽川口工業総合病院(埼玉県川口市)整形外科・星野明穂院長
 ▽帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)整形外科・高井信朗教授

February 12, 2006 10:31 AM | トラックバック (0)

2006年02月11日

2006年02月11日

【第32回】HRTの他に漢方とサプリメントも/西川婦人内科クリニック西川潔名誉院長

更年期障害の治療(下)

 日本で更年期障害に対する「女性ホルモン補充療法(HRT)」を受ける女性が多少上向き始めた2000年7月、その上昇を抑えるようなニュースが米国で発表された。

 米国国立衛生研究所(NIH)は91年から15年の計画で、閉経後の女性16万人を対象に大規模臨床試験を行ってきた。ところが、その中の約1万6600人を対象としたHRTの影響を追跡する研究の一部で、HRTを受けた人々の乳がん、冠動脈疾患、脳卒中、静脈血栓症の発症率が極めて高くなり、これ以上の研究は必要なしとして中止されてしまったのである。

 「より効果的で安全なHRTを行うために、いくつか注意が必要だと思います」と、西川婦人科内科クリニック(大阪市中央区)の西川潔名誉院長。そして、日本更年期医学会などの統一見解として、次のポイントを挙げた。

 <1>HRTは薬物療法の選択肢の1つ。リスクとベネフィットを慎重に判断する。

 <2>短期のHRTは問題にされていないが、それを患者に説明し、治療開始後は体の異常の有無をしっかりチェック。

 <3>心血管系疾患の予防を目的としてはHRTを行わない。

 <4>十分な説明をし、納得を得た上で行う。

 HRT以外の治療を、と考える人には「漢方薬治療」「代替療法」などがある。漢方薬治療でよく使われるのは「四物湯(しもつとう)」「加味逍遥散(かみしょうようさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」など数多い。患者の体質、病態などをトータルに診て処方される。「漢方薬はマイルドな効果発現でHRTで効果のない人などの自律神経失調症により効果があります」。

 代替療法としては、米国でサプリメントが人気。「特にイソフラボンに注目が集まっています」。注目の大豆イソフラボンの中でも「DRIA」に研究は集中。「更年期症状のほてりについての研究で、8週後には明らかに症状が改善した、と報告されているのです。ただし、このサプリメントは、現時点では補助的なものです」。大豆イソフラボンなので、日本人は食生活でもっと大豆製品を見直す必要があるのかもしれない。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆DRIA 大豆イソフラボンは通常は糖と結合したグリコシド型。これから糖が外れるとアグリコン型になり、抗酸化作用が非常に強い。DRIAとはアグリコン型イソフラボンの略である。

 ◆更年期障害の名医
 ▽徳島大学病院(徳島市)産科婦人科・苛原稔教授
 ▽すみい婦人科クリニック(福岡市南区)澄井敬成院長
 ▽清水医院(佐賀県武雄市)清水正彦院長
 ▽さがらクリニック21(鹿児島市)古謝将一郎院長
 ▽琉球大学医学部付属病院(沖縄県西原町)産婦人科・山城貴恵医師

February 11, 2006 09:04 AM | トラックバック (0)

2006年02月10日

2006年02月10日

【第31回】中心は女性ホルモン補充/西川婦人内科クリニック西川潔名誉院長

更年期障害の治療(上)

 更年期外来を打ち出している医療機関で更年期障害の診察を受け、他の疾患の症状ではなく、出ている症状が更年期障害と診断されると、その治療に入る。

 今、中心的に行われているのは「女性ホルモン補充療法(HRT)」である。女性ホルモン補充療法は卵巣の機能低下で減少した女性ホルモンを、薬を使って補う治療法です」。更年期障害、不妊症の治療で知られている西川婦人科内科クリニック(大阪市中央区)西川潔名誉院長は言う。

 薬でホルモン量を十分に満たすので、イライラ、のぼせ、疲労、憂うつなど、さまざまな更年期障害が改善する。その薬は女性ホルモンの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の使用である。

 「かつては注射による投与法もありました。しかし、注射で一度に大量投与すると、注射をした直後は症状が軽くなったりしますが、1週間もすると元のもくあみになってしまいます。つまり、効果の出方に波ができてしまうのです」。そこで、主流はのみ薬。肝機能が低下している人に対しては皮膚から直接血液中に成分が吸収される張り薬が用いられる。

 また、治療を受ける患者の状況によって薬の服用方法が違ってくる。

 <1>閉経前の女性 エストロゲンを月経5日から21日間服用し、7日間服用を中止する。エストロゲン服用の後半12~14日間にプロゲステロンを併用する。これを周期的に繰り返していく方法である。

 <2>閉経から55歳くらいの女性 エストロゲンを休薬なく服用し続け、プロゲステロンは月のうち前半か後半に12~14日間併用する。

 <3>閉経後で55歳以上の女性 エストロゲンとプロゲステロンを、一緒に連続して服用する。

 「女性ホルモン補充療法は更年期症状を改善するだけではなく、子宮体がんの発症率の低下、老化の予防、脂質代謝の改善や骨粗鬆(そしょう)症を予防することが分かっています。その一方で、副作用もあるので、十分に専門医と相談すべきです」。専門医に、リスクとメリットを科学的根拠を示した説明を受け、よりよい選択をする必要がある。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆更年期障害の名医
 ▽かなくらレディスクリニック(名古屋市中村区)金倉洋一院長
 ▽大阪医科大学付属病院(大阪府高槻市)産科・内分泌科・後山尚久助教授
 ▽西川婦人科内科クリニック(大阪市中央区)西川吉伸院長、池上博雅副院長
 ▽真田病院(広島県南区)真田光博副院長

February 10, 2006 10:17 AM | トラックバック (2)

2006年02月09日

2006年02月09日

【第30回】「あきらめ」よりまず「外来」受診

更年期障害(下)

 更年期にある女性の約70%が更年期障害に悩まされている。それは、女性ホルモンの分泌が急激に減少し、副腎皮質からスムーズな減少にするべく分泌される代償ホルモンへの移行が上手にいかないことが発端となる。代償ホルモンへの移行がうまくいかないと、そのホルモンの分泌指令を出す間脳(視床下部)-脳下垂体-卵巣系に混乱が出てしまう。

 「中枢系が過剰に興奮しますと、近くにある自律神経系の中枢も混乱を起こしてしまいます。結果、自律神経失調症となり、更年期障害特有の不快な症状を引き起こすのです」と、女性ホルモン減少と更年期障害との関係を、西川婦人科内科クリニック(大阪市中央区)西川潔名誉院長は話す。

 更年期障害と思うと、患者はその時点で上手に付き合うことを考えながらも、あきらめの気持ちが強く出てきてしまいがち。それは決して良い対応ではない。更年期障害と思っていて、実はほかの疾患の症状ということもある。まずは「更年期外来」を設けている医療機関を受診しよう。

 更年期外来を受診すると、受付で専門医の問診時に必要となる書類が3~4枚渡される。1枚目は病気の既往歴などを調査する書類。2枚目は「クッパーマン更年期指数調査表」、3枚目は「SDS健康調査表」など。「2枚目、3枚目の調査表は更年期障害の状態を知る上で重要な判断材料になります」。

 次いで専門医の問診が行われる。初診時には患者はさまざまな症状を訴える。「その症状が本当に女性ホルモンの減少によるものなのか、症状だけでは判断できません。そこで原因を正しく鑑別するためにさまざまな検査を行います」。

 検査は数多い。「血液生化学検査」「尿検査」「心電図」などで更年期障害類似疾患である心疾患、高血圧、甲状腺疾患、その他の疾患を除外する。子宮・卵巣・乳がんを除外するためには「子宮がん検診」「子宮卵巣超音波断層撮影検査」「乳がん検診」。骨粗しょう症の有無を知るために「骨密度測定」。

 1週間後に問診を含めた数多くの検査結果から患者と話し合って治療方針が決定する。内科、整形外科、精神科などと連携しての治療になることもある。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆更年期障害の名医
 ▽東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)産婦人科・高松潔部長
 ▽小山嵩夫クリニック(東京都中央区)小山嵩夫院長
 ▽赤松レディスクリニック(東京都練馬区)赤松達也院長
 ▽国際医療福祉大学付属熱海病院(静岡県熱海市)産婦人科・五來逸雄教授
 ▽金沢大学医学部付属病院(石川県金沢市)産科婦人科・小池浩司助教授

February 9, 2006 09:40 AM | トラックバック (0)

2006年02月08日

2006年02月08日

【第29回】女性の70%に何らかの症状/西川婦人科内科クリニック西川潔名誉院長

更年期障害(上)

 40代半ばを越えた女性が何人か集まると、話題の1つに挙がってくるのが、体の不調。「暑くもないのに汗が滴り落ちてくる」「のぼせる」「眠りが浅くて眠った気がしない」といった声が行き交う。「その不定愁訴こそ、更年期障害と呼ばれている更年期特有の不快な症状なのです」というのは、更年期障害、不妊症の治療で有名な西川婦人科内科クリニック(大阪市中央区)西川潔名誉院長。

 実際、どのような不快な症状が多いのか、同クリニックでの患者の訴えを多い順に取り上げよう。神経過敏症、のぼせ、疲労・衰弱、興奮性、便秘、目まい、不眠、憂うつ、動悸(どうき)、記憶力減退、頭痛、冷え、しびれなど。
 この症状が出る更年期とは-。今日では女性の閉経は50歳くらいとなっており、その前後5年、トータル10年を更年期と呼んでおり、その時期特有の症状なので更年期障害という。
 つらい更年期障害は女性ホルモンの分泌の急激な減少が大きく関係している。「生まれたときから女性ホルモン(卵胞ホルモン)が分泌され、11歳ごろに女性ホルモン量が50ピコグラム/ミリリットルを超えると月経が始まります。22歳から24歳で女性ホルモン量がピークに達し、それから緩やかに低下し、45歳くらいからより低下するようになり、50歳くらいで再び女性ホルモン量が50ピコグラム/ミリリットルを割るようになります。ここが閉経です」。45歳くらいからそれまで順調だった月経の周期も乱れ始めるのは、卵巣からの女性ホルモンの分泌が急激に減少するからである。
 女性ホルモンが急激に減少する45歳くらいから、副腎皮質からの代償ホルモンにうまく移行でき、女性ホルモン量が緩やかな減少をみせる人は、スムーズに更年期を乗り越えてしまう。「女性の70%の人に何らかの症状が出ていますので、スムーズに移行できる人はわずか30%にすぎないのです」。
 このように、女性の一生は、まさに女性ホルモンに支配されての一生なのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆更年期障害の発症原因 更年期障害の原因の多くは、女性ホルモンの分泌の減少である。ただし、それ以外にもストレス過多の環境要因、また、そのストレスをどのように受け止めるかといった性格もサブ要因として関係している。

 ◆更年期障害の名医
 ▽札幌マタニティ・ウィメンズ南1条クリニック(札幌市中央区)八重樫稔院長
 ▽朋佑会札幌産科婦人科(札幌市北区)郷久鉞二理事長
 ▽弘前大学医学部付属病院(青森県弘前市)産科婦人科・水沼英樹教授
 ▽東京医科歯科大学付属病院(東京都文京区)産科婦人科・麻生武志教授

February 8, 2006 10:47 AM | トラックバック (1)

2006年02月07日

2006年02月07日

【第28回】軽症、高齢者には左心室縮小形成術/京大病院米田正始教授

心筋症の治療(下)

 “心臓のがん”という呼ばれ方もした心筋症。内科的治療の範囲を超えてしまうと、患者は内科から外科へと紹介される。外科で行われる治療としては<1>心臓移植<2>補助循環(人工心臓を使う方法)<3>左心室形成術の3方法がある。

 「移植をしたくともドナーがいない状況だし、できるとしても60歳を超えていては対象にはなりません。補助循環は2000年ごろからだいぶ良くなりましたが、感染症、出血、脳梗塞(こうそく)といった合併症があり、金銭的にも莫大(ばくだい)です」と指摘するのは、京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授。あくまで客観的意見である。「まだ元気を取り戻せる『軽症』の人や60歳を超えてしまった人の場合には『左心室縮小形成術』で良くしようという方針で臨んでいます」。

 左心室縮小形成術の1つ「バチスタ手術」は90年代にブラジルのR・バチスタ医師が始めた。拡張した左心室の心筋の一部を切除して縫い合わせる手術。左心室を小さくすることで収縮力をアップさせようというもの。日本では98年に保険適用され、一時かなり行う施設が増えた。ところが、治療成績が良くなく、そのため世界的に衰退し、日本のごく一部と欧州の一部でのみ行われている。ただ、バチスタ手術も今は改良された。左心室の先端・心尖部を残して切除すべき心筋が切除され、成功率90%を超える(米田教授)良い成績を見せている。

 「心筋の手術にはバチスタ手術、ドール手術、SAVE(セーブ)手術があります。1つの手術だけでいいというのではなく、状態にしっかり適した方法で手術を行うことが大事です。左心室と右心室の間の壁が問題の場合はSAVE手術、先端部の場合はドール手術、左心室の側面の場合はバチスタ手術を行います」。

 ではSAVE手術を紹介しよう。この場合は心室中隔が悪くなった場合で、人工血管に使われているパッチを使う。パッチは化学繊維の布で編んだものの外側がタンパク質でコーティングされている。このパッチを左心室の間仕切りにつかって左心室を縮小させる。

 このように左心室縮小形成術全体でも87%と、極めて高い成功率に達している。そして、今、米田教授は心筋の再生医療にも力を注ぎ、その点でも心臓血管外科のトップランナーである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆心筋症の手術の名医
 ▽心臓血管研究所付属病院(東京都港区)心臓外科・須磨久善スーパーバイザー
 ▽葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)心臓血管外科・磯村正院長
 ▽京都大学医学部附属病院(京都市左京区)心臓血管外科・米田正始教授

February 7, 2006 09:58 AM | トラックバック (0)

2006年02月06日

2006年02月06日

【第27回】カテーテル使うPTSMA/京大病院米田正始教授

心筋症の治療(上)

 心筋に何らかの原因で変性が生じ、心臓の働きが悪くなってしまう「心筋症」。症状は心不全と共通するところが多いが、症状に気付いたときには心筋症がかなり進行しているケースが多い。それだけに、早期発見が望まれる。

 心筋症の診察は聴診、心電図を基本とし、これに心エコー(超音波)検査を加える。さらに、カテーテル検査も加えることが多い。心エコーでは左心室の拡張、動きの低下のほか、弁の異常も診断がつく。これらの診察で心筋症と診断がつくと、まずは内科での薬物療法、生活指導、食事療法となる。とりわけ、心筋症の5年生存率を50%から80%に上げた薬物療法に力が入る。

 「心筋が伸び切ったゴム風船のように拡張してしまう拡張型心筋症では、利尿薬のほか、心臓の負担を少なくするACE阻害薬、心筋の酸素消費量を減らすベータ遮断薬がよく使われます。心筋が肥厚する肥大型心筋症には不整脈に用いるジソピラミドやベータ遮断薬など。心筋が硬くなる拘束型心筋症では拡張型とほとんど同じです」と薬物療法を話すのは、心筋症の外科手術で有名な京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授。

 これらの薬物療法は、あくまで対症療法であって、根本治療ではない。「3種類の心筋症の中では、肥大型が不整脈が出るといったことはあるにしても、心臓のパワーが保たれていることが多いのです。この肥大型の場合で、大動脈への通り道が狭くなる閉塞(へいそく)性肥大型心筋症ではカテーテルを使った内科的治療もあります」。

 その治療は「PTSMA」。薬物療法で効果のなかった患者が対象である。患者の足の付け根の2本の動脈、1本の静脈から心臓にアタック、1本の動脈から左心室にカテーテル(細い管)を通し、左心室の圧を持続的に測る。もう1本の動脈からは、肥大化している左心室と右心室を分ける心室中隔という壁の動脈、中隔枝にバルーンのついたカテーテルを入れる。

 そこでバルーンを広げて動脈を遮断。バルーンの先からエタノールを注入する。すると、肥大化していた心筋が壊死(えし)に陥って薄くなる。静脈からのカテーテルは治療中に不整脈が起きた場合の対応策として、一時的にペースメーカーを入れておくのである。

 薬物療法が無効なケースで著効するケースがある。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆心筋症(内科)の名医
 ▽岡山大学医学部・歯学部付属病院(岡山市)循環器内科・大江透教授
 ▽久留米大学医療センター(福岡県久留米市)循環器科・古賀義則教授(病院長)
 ▽長崎大学医学部・歯学部付属病院(長崎市)循環器科・矢野捷介教授

February 6, 2006 10:38 AM | トラックバック (0)

2006年02月05日

2006年02月05日

【第26回】症状出にくいのが特長/京大病院米田正始教授

心筋症(下)

 心臓移植の対象疾患としてあまりに有名な「心筋症」。これには心筋が薄く伸び切ってしまう「拡張型心筋症」と、心筋が肥厚してしまう「肥大型心筋症」に分けられる。「大きくはその2つですが、それ以外に『拘束型心筋症』もあります」と付け加えるのは、心筋症の外科手術で有名な京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授。拘束型心筋症は問題となる左心室の心筋の厚さは正常ではあるが、全体に硬くなるとともに、左心室の中が多少狭くなる。やはり心臓の機能が十分に果たせなくなる。

 種類を問わず心筋症の症状は心不全の症状と共通するところが多い。血液が十分に全身に行き渡らないので「動くと息切れする」。全身の血管に血液が停滞するので「足がむくんだり、全身にむくみがでる」。肺うっ血が起こるので「あおむけに寝ると息ができない」。風邪でもないのに「せきが出る」「すぐに疲れてしまう」。これなら患者もすぐに気付きそうなのだが-。「心筋症の場合は、症状がはっきりとは出にくいという特徴があるのです。だから、気がつくと重症になっていることが多いのです」。致命的な不整脈が起きることもあり、かつては5年生存率が50%といわれ、“心臓のがん”と例えられてもいたほどである。

 「実際、患者さんは内科の先生が『このままでは死んでしまいますよ』と、手術をすべき状態の患者さんに言っても、患者さんは十分に理解できません。ご本人は体力をセーブして動きませんので、強い症状が出ていないのです。だから、このままじゃ危ない、手遅れになる前に手術を受けようという実感をなかなか持てないのです」。この状態になると、患者は腎臓や肝臓も悪くしており、内科的治療だけでは多臓器不全になってしまう。「多臓器不全になるまでに手術をすれば90%以上の患者さんは元気さを取り戻せますし、良い状態が長持ちするようになってきています」。

 最近は拡張型心筋症に限ってみると、02年に患者数1万7000人、死亡者数は2111人。それでも、最近は薬物治療の進歩によって、50%といわれていた5年生存率が80%にまで改善している。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆肥大型心筋症と遺伝 左心室の壁が全体的に肥厚し、特に大動脈への出口を狭くする閉塞(へいそく)性の肥大型心筋症は遺伝的要素がかなり大きい。家族にこの疾患があるときは、ほかの人々も早く診察を受けるべき。不整脈を起こして突然死することもあるからだ。

 ◆心筋症(内科)の名医
 ▽心臓血管研究所付属病院(東京都港区)飯沼宏之副所長
 ▽東京女子医科大学病院(東京都新宿区)循環器内科・笠松宏教授
 ▽湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)循環器科・斉藤滋部長
 ▽藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)循環器内科・平光伸也助教授

February 5, 2006 09:25 AM | トラックバック (0)

2006年02月04日

2006年02月04日

【第25回】拡張型と肥満型の2タイプ/京大病院米田正始教授

心筋症(上)

 心臓や血管の病気は数多いが、生活習慣病で第2位の死亡原因となっていることから心筋梗塞(こうそく)の知名度は高い。心筋梗塞のように患者は多くはないが、重症であるため知名度の高いのが「心筋症」。それは、心臓移植の対象となるのがこの疾患に苦しむ人々だからである。

 重症疾患である心筋症は、心筋の細胞が何らかの原因で変質し、ゴム風船を膨らませ過ぎた後のように伸び切ってしまったり、あるいは逆に、心臓の壁がグンと厚くなる病気。当然、心臓からは体が欲しがる十分な血液量を送り出せなくなってしまう。心臓自体の働きが悪いのである。

 「この心筋症はいくつかのタイプがあり、大きく分けると『拡張型心筋症』と『肥大型心筋症』の2つになります」とは、心筋症の外科手術で有名な京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科の米田正始教授。そして、続ける。「拡張型には虚血性と非虚血性があります。冠状動脈が動脈硬化を起こして詰まってしまう心筋梗塞の後、心筋が薄くなって伸びてしまい、心臓が拡張しゆがんでしまう、これが虚血性です」。

 一方、非虚血性は-。「原因不明のいわゆる難病が多いです」。ウイルスなどに感染して起こる心筋炎などが原因になるものもあるが、原因不明が多い。日本の心臓移植のほとんどが拡張型心筋症である。

 一方、肥大型心筋症は高血圧や大動脈弁狭窄(きょうさく)症が原因で起きる2次的なケースを除き、心筋そのものの異常で心臓の壁が肥大したケースをいう。「原因不明の病気です。これには、左心室から血液が押し出される大動脈弁近くがより肥大して血液を流れにくくしてしまう『閉塞(へいそく)性』と、全体的に肥厚する『非閉塞性』とがあります」。

 拡張型は遺伝的要因は少ないといわれ、肥大型は遺伝要因が強いといわれている。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆心筋症の発病年齢 拡張型では40歳くらいで診断されるケースが多いが、若年者も少なくない。虚血性は心筋梗塞後ならどんな年齢でも起こる。肥大型は20代の若い人から50代の人まで、幅広く発症している。

 ◆心筋症(内科)の名医
 ▽仙台厚生病院心臓センター(仙台市青葉区)循環器・目黒泰一郎院長
 ▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)循環器内科・下川宏明教授
 ▽日本医科大学千葉北総病院(千葉県印旛村)循環器内科・水野杏一教授
 ▽埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)循環器内科・河本修身助教授

February 4, 2006 08:42 AM | トラックバック (0)

2006年02月03日

2006年02月03日

【第24回】歩けるうちに踏み切るべき/東京医科大病院駒形正志助教授

頚椎症性脊髄症の手術

 四肢のしびれ、手指の運動障害、歩行障害を引き起こす頚椎(けいつい)症性脊髄(せきずい)症。高齢化によって患者は増加をみせている。症状が出て頚椎症性脊髄症と診断されると、軽症の場合は保存療法を行う。ところが、保存療法の効果はそれほど高いものではない。保存療法の予後調査報告(森田雅和ら、西日脊椎研会誌1994)によると、改善21%、不変23%、悪化9%。そして、47・5%が手術に移行したのである。

 その手術について、東京医科大学病院(東京・新宿区)整形外科の駒形正志助教授は「タイミングが重要」と言う。「歩行障害や、手指の運動障害が出ているならば手術選択も行われます。また、進行性の場合も手術になります。高齢者では保存療法の選択が多いものの、歩けなくなってから手術というのでは回復が期待できません。歩けるうちに手術をすべきです」。

 手術には「前方法」(前方除圧固定術)と「後方法」(脊柱管拡大術)とがある。前方法は患者の体の前面からアタックする手術。そして、椎骨や椎間板など、神経を圧迫して症状を起こしている部分を取り除く。取り除いた部分には骨盤の骨を移植し、脊椎を固定する。今は骨盤の骨ではなく、セラミックや、チタン合金も使われている。

 一方、後方法は患者の体の後面からアタックする手術。狭くなっている脊髄の通り道の脊柱管を広げて、圧迫をなくすもの。その脊柱管をつくっている椎弓の一方を切り離し、セラミックスペーサーを、切り離した骨の部分にはめ込んで脊髄の通り道を広げる方法である。

 それぞれの手術には条件がある。前方法の条件は「脊柱管の直径が14ミリ以上」「圧迫個所が2椎間まで」。一方、後方法の条件は、「脊柱管の直径が13ミリ以下と狭い」「圧迫個所が3椎間以上」。では、予後はどちらの方法が良いのか。「10年を超す長期成績の論文では、条件を守って行われた場合、両方とも成績が良いとされています」。そして、今、体に負担の少ない手術として、この疾患においても内視鏡的手術が行われ始めた。「前方法では5~6センチの切り口。これが2センチになったところでメリットは大きく変わりません。手術は時間が2時間以内で終わります。ところが内視鏡的手術は2時間30分から3時間かかります。時間的には手術に軍配が上がります」。

 主治医のみならず、もう1人の専門医にも相談。いわゆるセカンドオピニオンをとって最も良い選択をすべきである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆頚椎症性脊髄症の名医
 ▽京都府立医科大学付属病院(京都市上京区)整形外科・長谷斉助教授
 ▽国立病院機構大阪南医療センター(大阪府河内長野市)整形外科・米延策雄副院長(骨・運動器疾患センター部長)
 ▽和歌山県立医科大学付属病院(和歌山市)整形外科・吉田宗人教授
 ▽厚生連広島総合病院(広島県廿日市市)整形外科・藤本吉範主任部長
 ▽山口大学医学部付属病院(山口県宇部市)整形外科・リウマチ科・田口敏彦教授
 ▽総合せき損センター(福岡県飯塚市)整形外科・植木尊善部長

February 3, 2006 09:58 AM | トラックバック (1)

2006年02月02日

2006年02月02日

【第23回】軽症の場合は保存療法/東京医科大病院駒形正志助教授

頚椎症性脊髄症(下)

 頚椎(けいつい)症性脊髄(せきずい)症は四肢のしびれ、手指の運動障害、歩行障害を引き起こし、対応が遅れると車いす生活や寝たきりにもなってしまう。

 頚椎症性脊髄症と診断がつくと、軽症のケースには保存療法が一般的である。保存療法には「薬物療法」「装具療法」「頚椎けん引療法」「温熱療法」「生活指導」がある。

 ◎薬物療法 薬物療法で使われるのはビタミンB12、ビタミンE、消炎鎮痛薬、筋弛緩(しかん)薬、抗不安薬、プロスタグランディン製剤、ステロイドなど。「神経の働きを助けたり血液の循環を良くするために使われるのがビタミンB12とEです。手指にしびれがきているときです。消炎鎮痛薬は痛みが強いときに処方します。筋肉が固くなって肩凝りの強いとき、また、手の動きがぎこちないときには筋弛緩薬を使います」と、東京医科大学病院(東京・新宿区)整形外科の駒形正志助教授は薬の処方を話す。

 急性の場合には炎症を抑えるために1週間くらいステロイドが使われることがある。また、血液循環を良くするために血管を拡張するプロスタグランディン製剤も使われる。また、患者が眠れないときには抗不安薬。「抗不安薬や筋弛緩薬については、高齢者では服用すると転びやすくなるケースがあるので、あまり使いません」。

 ◎装具療法 装具を使って頚椎に負担を掛けないようにする方法。よく使われるのが頚に巻き付けるように装用する「頚椎カラー」がある。

 ◎頚椎けん引療法 神経への圧迫を軽くするために、首をけん引する方法。これを行っても症状が全く改善しない人には中止する。

 ◎温熱療法 電気、超音波、極超短波などで患部を温める療法。圧迫されている脊髄に血液がより流れるようになると、症状は楽になる。
 ◎生活指導 「転ばないようにする」「上ばかり見るのをやめる」「たばこはやめる」「寒い日には外出を控える」など、頚椎に負担を掛けない生活を指導する。

 以上の保存療法を行うと、「頚椎症性脊髄症の保存治療の予後調査」(森田雅和ら、西日脊椎研会誌1994)では、改善21%、不変23%、悪化9%であり、47・5%が手術に移行したと報告されている。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆頚椎症性脊髄症の名医
 ▽日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)整形外科・徳橋泰明助教授
 ▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)整形外科・四宮謙一教授
 ▽東京女子医科大学病院(東京都新宿区)整形外科・伊藤達雄教授
 ▽杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)整形外科・里見和彦教授
 ▽けいゆう病院(横浜市西区)整形外科・鎌田修博副部長
 ▽東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)整形外科・持田謙治教授


【第24回】歩けるうちに踏み切るべき/東京医科大病院駒形正志助教授

February 2, 2006 10:14 AM | トラックバック (0)

2006年02月01日

2006年02月01日

【第22回】10秒で「グー」「パー」何回できる?/東京医科大病院駒形正志助教授

頚椎症性脊髄症(中)

 40代以降で、手足のしびれや運動障害、歩行障害がありませんか。ひょっとしたら、高齢化に伴って患者が増えている「頚椎(けいつい)症性脊髄(せきずい)症」かも-。この場合、診療科は整形外科になる。

 診察では、まずは問診。患者から詳しく症状を聴く。「頚椎症性脊髄症では手足のしびれ、運動・歩行障害だけではなく、便秘、排尿障害など、膀胱(ぼうこう)直腸障害も出てきます」。東京医科大学病院(東京・新宿区)整形外科の駒形正志助教授は言う。

 問診に続いて神経の身体所見をチェックする。整形外科医はこういうときの検査のために、常に小さなハンマーを持ち歩いている。このハンマーで患者の体をたたいて〝腱(けん)反射〟を診るのである。「ひざのところをたたくとポンとのびます。脊髄が圧迫されると膝蓋(しつがい)腱反射が高進します。手の指の病的反射。足首の異常反射など、神経学的所見を診ます」。

 神経学的所見を診るのに、「10秒テスト」もある。手を前に伸ばして「グー」「パー」を何回できるかを調べる。「20回以上で正常。普通は25~26回くらいはできます。20回以下の場合は脊髄障害が疑われます。障害のある人の手の動きは、手を伸ばす、パーを出すのがゆっくりになります」。

 さらに画像診断が加わる。単純エックス線の画像からは椎間の狭さ、新しくできる骨である骨棘(こつきょく)の有無、脊柱管の狭窄(きょうさく)などが分かる。CT(コンピューター断層撮影)では脊柱管の断面を診ることができる。「その断面は楕円(だえん)形が良いが、頚椎症では三角形になっています」。

 MRI(磁気共鳴画像装置)では脊髄の圧迫されている状態が分かる。「さまざまな画像診断も加えますが、最も大事なのは問診と神経学的所見です。MRIで脊髄が圧迫されているように見えても、症状のない人が多いのです。まずは患者さんを診ることが大事です」。
 そして、診断が下されるのである。

 【医学ジャーナリスト松井宏夫】

 ◆MRI 磁気を体内の水分に反応させ、得られた信号をコンピューター解析して画像を作る。その画像から病変部を発見する。あらゆる角度の断面像を見ることができる。

 ◆頚椎症性脊髄症の名医
 ▽東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)整形外科・白石建教授
 ▽東京医科大学病院(東京都新宿区)整形外科・駒形正志助教授
 ▽慶応義塾大学病院(東京都新宿区)整形外科・戸山芳昭教授
 ▽東京大学医学部付属病院(東京都文京区)整形外科・星地亜都司講師
 ▽九段坂病院(東京都千代田区)整形外科・中井修副院長
 ▽駿河台日本大学病院(東京都千代田区)整形外科・松崎浩巳教授

February 1, 2006 10:26 AM | トラックバック (0)