健康連載ブログ

2006年01月05日

中年男の養生学

【第28回】失敗の責任転嫁から脱却を

「病気になりたい症候群が急増中」

 ストレス過多の時代。自殺者数は年間3万人を超え、うつ病やうつ状態に陥っている人は少なくない。だが、そんな時代を背景として、無意識のうちに「自分は病気だと思い込んでしまう」人がいる。

 50代の会社員Aさんは、配置転換されてから実績が伸び悩むようになっていた。同僚は取締役や部長などに出世し「オレも負けてはいられない」と意気込んだものの、仕事は思うように進まない。ミスも重なり、年下の上司から叱責され、Aさんは思った。「上司が悪いから実績が上がらないんだ」と。そんな状態が続いたある日、Aさんは「仕事がうまくいかないのは、何か心の病気にかかっているからかもしれない」と考え始めた。インターネットで調べてみると、うつ病の症状の1つに仕事の能率の低下があった。

 うつ病だと確信したAさんは、心療内科を受診した。しかし、「うつ病」の診断が下りない。Aさんは、実績が上がらないのを病気のせいにするため、無意識のうちに「病気になりたい症候群」に陥っていたのである。「中には、仕事ができない免罪符のように、うつ病であるとの診断書だけを求める人もいます」。こう話すのは、田中クリニック銀座(東京都中央区)の田中利幸院長。都心で開業する精神科医として多くの働く人を中心にメンタルケアを行っている。

 「30代や50代の男性に多くみられる傾向です。転職や昇進などで環境が変わりやすい時期であり、同僚との差もみえてくるため、うつ病にもなりやすい時期でもあります。しかし、うつ病ではなく、仕事ができないのは病気のせいに違いないと、“うつ病になりたい症候群”も増えているのです」(田中院長)。

 学校を卒業するまでは成績が優秀で、卒業後も順風満帆。このように挫折経験が乏しいと、仕事上のつまずきを受け止めることが難しい。しかも、社会では複雑な人間関係も絡んでいるだけに、試験問題のように正解が必ずしもあるわけでもない。そのため、不安と不満だけがどんどん膨らむことになる。

 「中には『親の育て方が悪かった』と、ご両親のせいにされる方もいます。上司が悪い、親が悪い、病気のためなど、責任転嫁をし続けても何も解決しません。失敗を方向転換のチャンスととらえる柔軟な姿勢や、あるがままの自分自身を受け入れることも必要です」(田中院長)。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

January 5, 2006 12:29 PM

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