2006年01月31日
2006年01月31日
【第21回】手足しびれ、はし持てない/東京医科大病院駒形正志助教授
頚椎症性脊髄症(上)
「最近、頚椎(けいつい)症性脊髄(せきずい)症で手術を受けられる方が増えてきました。私どもの施設では10年前は年間10例の手術でしたが、今は年間40~50例になっています」と指摘するのは、東京医科大学病院(東京・新宿区)整形外科の駒形正志助教授。
駒形助教授の分析では、増加の理由は3点に絞られる。<1>高齢化<2>手術の技術が大きく進歩した<3>成績が理解されるようになった。「古い論文をみると、頚椎症の手術を7例行って4例生存などと書いてあり、患者さんは怖くて手術が受けられなかったのだと思います。その技術が大幅に進歩し、手術後に車いす生活になるようなことはなくなったからです」。
頚椎症性脊髄症とは、05年に初めて発表された「診療ガイドライン」によると、「頚椎脊柱管の狭い状態に経年的な頚椎の変化に頚椎の前後屈不安定性や軽微な外傷が加わって脊髄麻痺(まひ)を発症する疾患の総称」となっている。これを分かりやすく紹介すると、頚(くび)の脊椎である頚椎部が加齢変化により、椎骨に新しい骨である骨棘(こつきょく)ができたり、椎間板が薄くなったり、断裂したり、靭帯(じんたい)が厚くなったりして、脊髄を圧迫するようになった病気である。もともと脊髄が通っている脊柱管が狭いと起こりやすい。
「40歳以降に見られますが、増えるのは50歳以降です。男女比では男性の方が女性の2倍多くなっています。その理由は不明です。肉体労働をしたり、より男性の方が活動的だからかもしれません」。このほか、頚の外傷経験があったり、激しいスポーツをしていたり、喫煙者は起こりやすいといわれている。
症状は感覚神経の症状として「手足がしびれる」「指の感覚が鈍い」といった四肢の感覚障害が出る。運動神経の症状として「手指が使いづらく、はしを持てない、服のボタンが留めにくい」「足がふらつき、手すりにつかまらないと歩けない」などの運動障害が出てくる。実際には両方の障害が出てくる場合が多い。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆骨棘 椎間板が薄くなったりすると、体はそれを補おうとするので骨の生成が活発になる。結果、棘のように出っ張った新しい骨ができる。これが骨棘で、脊柱管を狭くしてしまう。
◆頚椎症性脊髄症の名医
▽北海道大学病院(札幌市北区)整形外科・鐙邦芳教授
▽えにわ病院(北海道恵庭市)整形外科・佐藤栄修副院長
▽八戸市立病院(青森県八戸市)整形外科・末綱太部長
▽東北大学病院(仙台市青葉区)整形外科・国分正一教授
▽群馬脊椎脊髄病センター(群馬県高崎市)清水敬親センター長
▽埼玉医科大学総合医療センター(埼玉県川越市)
整形外科・平林茂助教授
January 31, 2006 08:22 AM | トラックバック (0)
2006年01月30日
2006年01月30日
【第20回】骨切りと人工関節/吉田整形外科吉田雅之院長
変形性股関節症の手術
変形性股(こ)関節症は股関節の関節軟骨が擦り減って、直接骨が擦れ合うために痛みと変形に苦しめられる病気である。診断がつくと、それぞれの患者に合わせた治療が行われるが、基本的には保存療法から入って、保存療法では進行を止められないなど、患者の状態を十分に知って手術のタイミングが考えられる。
手術には「骨切り術」と「人工関節置換術」がある。「40代くらいまでの比較的若い方の場合で、それほど進行していないものの今後さらに進行が予想されるケースには、骨切り術が選択されます」と、変形性股関節症を専門とする吉田整形外科(東京・港区)の吉田雅之院長(元東京女子医大助教授)は言う。
「人工物を体に入れない点がメリット。デメリットは100%の確実性がない点で、手術後も痛みがとれるのに1~2年かかるケースがあります」。骨切り術で最もポピュラーなのは「寛骨臼(かんこつきゅう)回転骨切り術」。大腿(だいたい)骨の最も先端部は骨頭(こっとう)といって球形になっている。その骨頭は骨盤の臼蓋(きゅうがい)というへこみに入り込み、簡単に外れないように臼蓋が屋根のように包んでいる。この屋根の形成不全が変形性股関節症の原因なので、その臼蓋部分の寛骨臼という骨をドーム状に切って外側へずらして屋根を作るのである。
「当然、切ってずらした骨との間にはゆがみができます。そのゆがみには骨盤から骨を削り取ってきて使います」。手術した部分の骨がしっかりすると、手術前のように足を引きずることなどはなくなり、ごく一般的な歩行ができるようになる。もちろん痛みも消える。退院までに1カ月半から2カ月を要する。
一方、人工関節置換術は-。「変形が重症なら50代でも行うが、60代が最もいい適応です。ただ、70代、80代の高齢者でも体力的に問題がなければ手術は可能です。股関節部分を人工関節に置き換えるのですが、材料は受ける部分が硬質プラスチック、骨頭部分はメタルが最も一般的です」。人工関節は50代以上が対象となる。
骨切り術か人工関節か悩むケースでは主治医とよく話し合って、納得した上で決めるべきである。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆変形性股関節症の名医
▽金沢医科大学病院(石川県内灘町)整形外科・松本忠美教授
▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)整形外科・長谷川幸治助教授
▽京都府立医科大学付属病院(京都市上京区)整形外科・久保俊一教授
▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)整形外科・菅野伸彦講師
▽関西医科大学付属病院(大阪府守口市)整形外科・飯田寛和教授
▽広島大学病院(広島市南区)整形外科・安永裕司教授
▽長崎大学医学部・歯学部付属病院(長崎市)整形外科・進藤裕幸教授
January 30, 2006 09:04 AM | トラックバック (0)
2006年01月29日
2006年01月29日
【第19回】ウオーキングで筋力アップ/吉田整形外科吉田雅之院長
変形性股関節症(下)
股(こ)関節の変形によってQOL(生活の質)が悪くなり、最も進行すると股関節が固まって動かなくなるのが「変形性股関節症」。問診、そして患者の足を曲げたり、開いたり、ひねったりして痛みの状況をチェック。さらにエックス線撮影、MRI(磁気共鳴画像装置)を撮って診断がつくと、治療になる。
治療には「保存療法」と「手術」がある。保存療法には「薬物療法」「食生活の改善」「運動療法」「温熱療法」がある。
◎薬物療法 「消炎鎮痛薬、筋弛緩薬などを使います。消炎鎮痛薬は使い方が難しいですね」と言うのは、吉田整形外科(東京・港区布)の吉田雅之院長(元東京女子医大助教授)。そして、難しい理由を話す。「単純に痛みを薬でとってしまうと、患者さんは痛みがないので今まで動かなかったところも体を動かしてしまいます。すると、関節の悪化を進めてしまい、痛みもより強くなってしまいます。だから、痛みの強いときに服用してもらって、日常生活では無理な運動などは控えるようにしてもらいます」。筋弛緩(しかん)薬は筋肉の張りを抑えて、筋肉の緊張をときほぐすのである。
◎食生活の改善 体重の重い人が股関節の変形が早い。股関節に全体重がかかるからで、動いたりすると体重の何倍もの重さがかかる。だから、食事は腹八分に抑えて減量に努める。
◎運動療法 過度な運動や重い物を持ったりするのは股関節に負担が大きい。ジャンプをするのも、階段の昇り降りも悪い。そんな中、吉田院長が勧めるのはウオーキング。「ウオーキングの時間はそれぞれの状態で異なります。1日30分くらいウオーキングしてもらうといいと思います。余力があれば40分でも50分でも構いません。バランス良く筋肉がついているといいと思いますが、筋肉質にする必要はありません」。
◎温熱療法 ホットパックもあるし、レーザーで温める方法もある。患部を温めると血行がよくなり、痛みは和らぐのである。基本的には毎日温めるのが効果的である。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆筋力をつける方法 バランス良く筋力をつけ、股関節に負担が少ない方法として勧められるのは水中ウオーキング。水中の浮力が股関節へかかる負担を軽くする。
◆変形性股関節症の名医
▽日産玉川病院(東京都世田谷区)整形外科・股関節疾患センター・松原正明センター長
▽聖路加国際病院(東京都中央区)整形外科・黒田栄史医長
▽昭和大学病院(東京都品川区)整形外科・宮岡英世教授
▽東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)整形外科・勝呂徹教授
▽湘南鎌倉人工関節センター(神奈川県鎌倉市)平川和男センター長
▽山梨大学医学部付属病院(山梨県玉穂町)整形外科・浜田良機教授
January 29, 2006 10:43 AM | トラックバック (3)
2006年01月28日
2006年01月28日
【第18回】臼蓋形成不全が原因/吉田整形外科吉田雅之院長
変形性股関節症(中)
関節の軟骨がすり減って、骨と骨が直接こすれあうために関節が変形し、QOL(生活の質)が極めて悪くなる股(こ)関節の病気「変形性股関節症」。「原因のほとんどは臼蓋(きゅうがい)形成不全です。大腿(だいたい)骨の先端部分の骨頭(こっとう)は球形をしています。それが骨盤に入っており、そこから外れないように屋根のように包む形にできているのが臼蓋です。その臼蓋が十分に包み込む形になっていないのです」と、変形性股関節症を専門とする吉田整形外科(東京・港区)の吉田雅之院長(元東京女子医大助教授)は言う。
では、臼蓋形成不全は何が原因で起こるのだろうか-。「もともと股関節脱臼があったり、臼蓋の形成がうまくいかずに適合が悪かったりするとなります。何枚も重ねたおむつが関係していたようで、今は紙おむつになってこのケースは減りました。このほかに、ペルテス病が原因のケースもありますし、最近は、高齢化によるケースも見受けられます」。
股関節脱臼が減少したのは、紙おむつ以外に生活の欧米化や食事の欧米化も大きい。そのため、変形性股関節症自体は減少している。それが証拠に、1980年ごろまでは「股関節を制する者は整形外科を制する」といわれ、股関節を専門とする医師が多かった。が、今はかなり減少してしまった。
最終的に歩けなくなってしまう変形性股関節症は、最初は「歩き始めたときに痛む」「座っていて立ち上がるときに痛い」など、違和感を覚えたら診察を受けよう。
診察は、小さいときに股関節脱臼がなかったか、どのような姿勢を取ると痛むかといった問診。さらに、足を曲げたり、外に開いて外にひねったりして痛みの状態をチェック。これにエックス線撮影を行い、必要に応じてMRI(磁気共鳴画像装置)、CT(コンピューター断層撮影)などを加えて、総合的に診断が下される。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆ペルテス病 4~8歳くらいの男児にみられる疾患。大腿骨の先端の骨頭が何らかの原因で大きくなってしまうため、将来、変形性股関節症を起こしやすい。軽症ではそのときに治療を受けていないケースもある。
◆変形性股関節症の名医
▽日本大学医学部付属練馬光が丘病院(東京都練馬区)整形外科・大幸俊三助教授
▽順天堂大学順天堂練馬病院(東京都練馬区)整形外科・野沢雅彦助教授
▽吉田整形外科(東京都港区)吉田雅之院長
▽東京大学医学部付属病院(東京都文京区)整形外科・高取吉雄助教授
▽日本医科大学付属病院(東京都文京区)整形外科・玉井健介助教授
▽東京医科大学八王子医療センター(東京都八王子市)整形外科・伊藤康二助教授
January 28, 2006 11:28 AM | トラックバック (0)
2006年01月27日
2006年01月27日
【第17回】軟骨すり減りが始まり/吉田整形外科吉田雅之院長
変形性股関節症(上)
人間の体の中で最も大きな関節は、またの付け根の関節である股(こ)関節。その疾患として「変形性股関節症」がある。
股関節が痛い、というよりも腰からお尻、ひざにかけてのジワッとした痛み、と感じている人が多い。事実、「座骨神経痛と思って整形外科を受診する人が多く、そこで変形性股関節症が発見されています」と、吉田整形外科(東京・港区)の吉田雅之院長(元東京女子医大助教授)は言う。
そして吉田院長は特徴的な症状を挙げる。「座っていて立ち上がるときに痛い、あぐらをかきにくくなる、足が開かなくなる、歩き始めに痛いといった症状です。関節の動きに制限が出てくるのです」。
この症状は状態の進行と一致し、悪化すると「足のつめが切れない」「靴下が履けない」といった状態になってくる。ただし、痛みは進行度合いとは関係ないことが多く。進行していても痛みがないケースもある。
原因となるのは股関節部分の軟骨がすり減ってくるからである。
股関節は骨盤と足をつないでいる関節。太い足の付け根が大腿(だいたい)骨で、その最先端部分は骨頭(こっとう)といって球形をしている。この骨頭部分が骨盤のくぼみに入り込み、そのくぼみの上部に臼蓋(きゅうがい)という屋根があって外れないようになっている。
そして、関節と関節は表面にある軟骨でスムーズな動きが行われている。ところが、軟骨がすり減ることから変形性股関節症が始まる。「骨の変形が始まるのです。まずは骨が出っ張った『骨棘(こっきょく)』ができ、次第に骨が硬くなります。骨に弾力がないとゆがみができ、骨の中に孔(あな)があいたりします。一般的には軟骨がなくなって硬い骨がこすれるようになります。こうなると激痛で、歩けないほどの痛さです。その先は、骨が固まって動かなくなります」。
当然、歩きにくくなるのでQOL(生活の質)が悪い。そこまで進む前に手術となるのが一般的である。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆両足の長さが違う これも変形性股関節症の症状の1つ。股関節の変形が両足の長さに違いを生む。さらに「左右の足の太さが違う」「お尻の形が左右対称ではない」といった症状も出てくる。
◆変形性股関節症の名医
▽旭川医科大学病院(北海道旭川市)整形外科・松野丈夫教授
▽弘前記念病院(青森県弘前市)整形外科・片野博院長
▽新潟県立新発田病院(新潟県新発田市)整形外科・堂前洋一郎部長
▽埼玉医科大学病院(埼玉県入間市)整形外科・二ノ宮節夫教授
▽千葉大学医学部付属病院(千葉市中央区)整形外科・原田義忠講師
▽松戸市立病院(千葉県松戸市)整形外科・飯田哲部長
January 27, 2006 10:23 AM | トラックバック (0)
2006年01月26日
2006年01月26日
【第16回】治療法なし 痛み抑えて完治待つ/東京逓信病院江藤隆史部長
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹(ほうしん)の痛みや赤い発疹は、治療を行うと2週間くらいで治り、何もしなくても4週間ほどで治ってしまう。もちろん、皮膚が治るにしたがって痛みも自然に消えていく。
ところが、帯状疱疹にかかった人の約10%は、皮膚が完全に治っても激しい痛みが残り、大変に苦しむケースがある。これが「帯状疱疹後神経痛」である。その痛みは激しく、さまざまに表現される。
「長期にわたり万力で締め付けられるように痛む」「皮膚の表面が焼けるように痛む」「皮膚のすぐ下が1日に何度も刺すように痛む」「身動きできないような激痛が1日に7、8回、1分から数分間続く」など。
「短い人は数カ月で痛みから解放されますが、長い人になると2~3年。いや、もっと長く10年くらい痛みに悩まされている人もいます」と言うのは、東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長。そして、続ける。「帯状疱疹後神経痛は神経がダメージを受けて変性しており、それを治す方法はほとんどありません。ゆっくり治るのを待つだけです。だから、痛みを和らげるしかないのです」。
四六時中痛みが続くと、患者はやる気がなくなるばかりか、うつ症状もでてきてしまう。
治療は、まずは薬物療法。消炎鎮痛薬で痛みを取り除く。「ある程度、痛みが抑えられるので、それを併用しながら局所麻酔外用薬や消炎鎮痛薬の外用薬も使います。さらに、抗うつ薬の併用を行うこともあります」。
また、麻酔科と相談して神経ブロックが週に3回くらい行われたりもする。いわゆるペインクリニックである。「重症になると入院して麻酔科で毎日神経ブロックを受けてもらうこともあります」。
痛みを取り除くことは非常に重要な治療なのである。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆神経ブロック 痛みの起きている神経の枝に局所麻酔薬を注射して神経の痛み伝達をブロックする方法。三叉(さ)神経ブロック、星状神経ブロック、硬膜外ブロックなどが帯状疱疹後神経痛には行われている。
◆帯状疱疹の名医
▽和歌山県立医科大学病院(和歌山市)皮膚科・古川福実教授
▽奈良県立医科大学付属病院(奈良県橿原市)皮膚科・浅田秀夫助教授
▽岡山大学大学院医学部・歯学部付属病院(岡山市)皮膚科・岩月啓氏教授
▽北九州市立医療センター(北九州市小倉北区)皮膚科・今福信一主任部長
▽福岡大学病院(福岡市城南区)皮膚科・中山樹一郎教授
▽久留米大学病院(福岡県久留米市)皮膚科・安元慎一郎助教授
January 26, 2006 09:14 AM | トラックバック (0)
2006年01月25日
2006年01月25日
【第15回】7から8日の入院が効果的/東京逓信病院江藤隆史部長
帯状疱疹(下)
痛みと小水疱(すいほう)に悩まされる帯状疱疹(ほうしん)は、子供のころに経験した水痘(すいとう=水ぼうそう)ウイルスの再活性化によって起こる皮膚疾患。全身のどの知覚神経にも出る可能性はあるが、部位によっては障害を引き起こすこともある。
「目に疾患が及ぶと角膜が障害されて視力が低下します。耳周辺の場合は聴力障害に加えて顔面神経麻痺(まひ)が高率に起こります。さらに、帯状疱疹が治った後も痛みに悩まされる帯状疱疹後神経痛もあります。そうならないためにも帯状疱疹の治療は、発疹(ほっしん)が出てできるだけ早く(3日以内)に行うのがいいといわれています」と、東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長は言う。
早期診断、早期治療が大事。一定の知覚神経にそって神経痛のような痛みがあり、3~4日後に浮腫性の紅斑を主体とする発疹やびらんが出て、次第に帯状に分布するので診断は容易である。
治療は薬物療法。抗ウイルス薬が使われる。塩酸バラシクロビル(商品名バルトレックス)の経口薬が多く用いられている。「抗ウイルス薬の内服は、かつて1日5回だったものが1日3回になり、有効性も高いですね」。
抗ウイルス薬を1週間服用。外用薬は抗菌外用薬を使って皮膚の潰瘍(かいよう)やびらんをそれ以上悪化させないようにする。不眠には睡眠薬。腹部の場合は便秘症状が出るので、下剤を併用。顔面のケースには早くから眼科、耳鼻咽喉科と協力して治療を行う。
「経口薬が良くなっているとはいえ、やはり抗ウイルス薬の点滴静注(静脈注射)の方がより効果的です。血中濃度がきちんと上がって組織にもしっかり移行しますから…。加えて、入院することで安静が保てます。私どもでは、病床にゆとりがあるので積極的にすぐに入院してもらうようにしています」。
抗ウイルス薬による治療に加え、免疫力の低下が原因なので体力回復も大きな治療の1つ。そのために7~8日間の入院はより効果的なのである。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆塩酸バラシクロビル 帯状疱疹の治療薬として2000年10月に認可された抗ウイルス薬。1日3回の内服で、帯状疱疹後神経痛に至る率を低下させるなど、極めて有用性が高いと評価されている。
◆帯状疱疹の名医
▽日本医科大学付属病院(東京都文京区)皮膚科・三石剛助教授
▽NTT東日本関東病院(東京都品川区)皮膚科・五十嵐敦之部長
▽かやば町皮膚科(東京都中央区)・新村真人医師(東京慈恵会医科大学名誉教授)
▽東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)皮膚科・小沢明教授
▽厚木市立病院(神奈川県厚木市)皮膚科・小松崎真医師
▽三重大学医学部付属病院(三重県津市)皮膚科・黒川一郎助教授
January 25, 2006 08:21 AM | トラックバック (0)
2006年01月24日
2006年01月24日
【第14回】後遺症にならぬよう早期発見/東京逓信病院江藤隆史部長
帯状疱疹(中)
帯状疱疹(ほうしん)は子供のころにかかった水痘(とう)ウイルス、つまり、水ぼうそうのウイルスが知覚神経節に眠っており、それが免疫バランスの崩れたときに再活性化した疾患である。
免疫力の低下ということから患者には高齢者が多いといわれてきた。が、最近は大分変わってきている。東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長によると、「高齢者に多いのは確かですが、近年は若い人でも発症します。まれに10歳未満の発症もあります」という。
人口10万人当たり年間300~500人が発症するとされている。「今は疲れたりして免疫が多少低下してきても帯状疱疹が起きますが、昔は『帯状疱疹をみたら悪性腫瘍(しゅよう)を疑え!』と教科書でも教えられていたほどで、全身検査をするように指示されていました」。
今日では、帯状疱疹も風邪のように誰にでも起こるとあって、必ず全身検査を行うわけではない。「ただ、重症の帯状疱疹、全身が水ぼうそうのようになったときは白血病やHIV(エイズ)が発見されることもあります。高齢者でも最近健康診断を受けて問題のないケースでは全身検査は必要ないと思われます」。
帯状疱疹は、神経にそって出る痛みや、それから4~5日後に出てくる赤みがかった水疱さえ我慢すれば、約1カ月もすると治療を加えなくても自然治癒してしまう。が、それは決して良いことではない。3カ月くらいすると後遺症である「帯状疱疹後神経痛」に悩まされる可能性が高くなるからである。
「そのつらい帯状疱疹後神経痛に悩まされないようにするには、帯状疱疹の発疹が出て3日以内に治療を開始すれば、かなりの高い確率で避けられます。もちろん、絶対に大丈夫とはいえませんが…」。
帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹の重症度によって引き継ぐものではない。ただ、高齢者の方が可能性は高いので、早期発見・早期治療は極めて重要となる。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆帯状疱疹後神経痛 帯状疱疹は皮膚の発疹が治るにしたがって神経痛のような痛みも消えていく。が、帯状疱疹になった人の約10%は、皮膚は完全に治っても激しい痛みが残り、苦しむ場合がある。この痛みを帯状疱疹後神経痛という。
◆帯状疱疹の名医
▽東京逓信病院(東京都千代田区)皮膚科・江藤隆史部長
▽東京警察病院(東京都千代田区)皮膚科・五十棲健部長
▽東京都立駒込病院(東京都文京区)皮膚科・赤城久美子医長
▽東京大学医学部付属病院(東京都文京区)皮膚科・皮膚光線レーザー科・渡辺孝宏講師
▽東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区)皮膚科・本田まりこ助教授、松尾光馬医長
▽東京女子医科大学病院(東京都新宿区)皮膚科・川島真教授、桧垣祐子助教授
▽東邦大学医療センター大橋病院(東京都目黒区)第2皮膚科・漆畑修助教授
January 24, 2006 08:59 AM | トラックバック (0)
2006年01月23日
2006年01月23日
【第13回】水ぼうそうの再活性化/東京逓信病院江藤隆史部長
帯状疱疹(上)
皇后陛下が経験された病気としてよく知られているのが帯状疱疹(ほうしん)。水痘(とう)ウイルス、つまり水ぼうそうのウイルスの再活性化によって起こる病気である。
水ぼうそうのウイルスは子供のころに初めて感染したときは、のどの粘膜に感染して全身へ。そして、皮膚に水疱をたくさんつくるが、やがて抗体ができて治ってしまう。
「ウイルスが消えるのではありません。このヘルペスウイルスは神経との親和性が高く、知覚神経の中に入り込んで移動し、神経の奥深い神経節に、平家の落人のように隠れすんでいるのです」とは、帯状疱疹の治療で皇后陛下の主治医だった東京逓信病院(東京・千代田区)皮膚科の江藤隆史部長。ジッとしているウイルスが何故に活性化するのか-。
「年を取ったり、病気をしたり、ストレスなどで免疫力が低下したときに、これまで強い免疫力で抑えられていたウイルスが神経節で増殖し、神経を伝わって皮膚に赤みを帯びた小水疱をつくるのです」。
全身のどの神経にも出る可能性があるが、知覚神経は体表をちょうど半周しているので、小水疱は右か左の片側性に生じるのが特徴。
この赤みがかった小水疱が出る4~5日前に、神経が傷害されるので多くの場合は痛みやピリピリしたかゆみを自覚する。その痛みの強さは人によって異なるが、強い痛みと感じる人や、しびれとしか感じない人など、いろいろである。
「肩が痛くて五十肩を疑って整形外科を受診される人もいますし、頭痛がひどくて脳腫瘍(しゅよう)を疑って脳神経外科を受診される人も。また、右腹部の痛みで消化器外科を受診された人で、盲腸と診断され、手術の準備中に発疹がでてきて帯状疱疹と分かったケースもあったと聞いています。私どものところでは、各科の医師が痛みの分布・性状から皮膚科受診を勧めてくれるので、早く診断がなされます」。
帯状疱疹の場合も他の疾患同様に、早期発見・早期治療が重要である。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆帯状疱疹の名医
▽札幌皮膚科クリニック(札幌市中央区)根本治院長
▽岩手医科大学付属病院(岩手県盛岡市)皮膚科・赤坂俊英教授
▽群馬大学医学部付属病院(群馬県前橋市)皮膚科・安部正敏講師
▽国立病院機構霞ケ浦医療センター(茨城県土浦市)皮膚科・形成外科・村木良一部長
▽さくら皮フ科(埼玉県春日部市)・横井清院長
▽東邦大学医学部付属佐倉病院(千葉県佐倉市)第1皮膚科・吉田正己教授
▽東京慈恵会医科大学付属柏病院(千葉県柏市)皮膚科・石地尚興講師
January 23, 2006 08:54 AM | トラックバック (0)
2006年01月22日
2006年01月22日
【第12回】内臓脂肪減らすと薬も効く/東京逓信病院宮崎滋部長
メタボリックシンドロームの治療(下)
注目のメタボリックシンドロームの治療の第1歩は、食事療法と運動療法。それは、内臓脂肪型肥満がベースにあるからで、食事・運動療法で生活習慣を大いに改善できると、効果はてきめん。事実、第一線で診療に携わる東京逓信病院(東京都千代田区)内分泌代謝内科の宮崎滋部長は「内臓脂肪を減らせると、他の軽症の生活習慣病はすべて良くなります。現在の体重を5%減らすだけで良くなるのです」と話す。
もちろん100%とはいかない。「糖尿病になりやすい体質を持っている人とか、高脂血症、高血圧になりやすい人もいます。そういう人々は内臓脂肪を減らしても、なりやすい疾患は多少残ります。それが糖尿病であれば、糖尿病の治療をすることになります」。
中には食事・運動療法に取り組もうにも仕事が多忙で思うように内臓脂肪の減少がうまく進まない人も。その場合は薬物療法が行われることになる。「このように薬物療法に至ったとしても、これらの問題の上流にある内臓脂肪にきちっとアタックすることで、薬が効きやすくなる可能性は極めて高いし、合併している疾患が少しでも減ると服用する薬の種類も減らせ、薬の副作用によるリスクも減らせます」。
糖尿病、高脂血症、高血圧、それぞれに効く薬が投与されるが、それで治療が終わったわけではない。その後も常に食事・運動療法にしっかり取り組むようにしておくことが望ましい。
宮崎部長が治療を続けたR男さんのケースを紹介しよう。
60歳のサラリーマン。軽度の糖尿病で、まずは教育入院。この時点で高血圧があって降圧薬を服用していた。内臓脂肪はBMI(肥満度を測る国際指標で、25以上が肥満)が30・4。HDLコレステロールは低く、中性脂肪は基準値を軽くオーバーしていた。
教育入院が功を奏し、1年間でBMIは24・6と25を切るようになった。その時点でCT(コンピューター断層撮影)を撮ると内臓脂肪はきれいに減少。HDLコレステロールは上昇し、逆に中性脂肪は減少。血圧についてはまだ降圧薬を服用しているものの、本人はとても快適な日々の暮らしを満喫しているという。「決して難しいことではありません。心筋梗塞(こうそく)などの発作を起こす前に、ちょっと健康について自分の体の声を聞いていただければ治療に歩み出せます。薬も実際に減らせるのです」。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆メタボリックシンドロームの名医
▽大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)内分泌・代謝内科・中村正講師、船橋徹講師
▽住友病院(大阪市北区)内科・松沢佑次病院長
▽関西電力病院(大阪市福島区)糖尿病・栄養内科・清野裕院長
▽岡山大学医学部・歯学部付属病院(岡山市)腎臓・糖尿病・内分泌内科/リウマチ膠原病・膠原病・アレルギー科・槇野博史教授
January 22, 2006 11:50 AM | トラックバック (3)
2006年01月21日
2006年01月21日
【第11回】基本は食事と運動/東京逓信病院宮崎滋部長
メタボリックシンドロームの治療(上)
心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞といった血管病に結び付くメタボリックシンドローム患者は、日本だけで1300万人いるとされている。この最大の原因は内臓脂肪型肥満。そして、その上に糖尿病(境界型を含む)、高血圧(正常高値を含む)、高脂血症のうち2つ以上の軽症の生活習慣病が加わった状態である。当然、治療が必要となる。ところが、内臓脂肪型肥満が、男性であれば腹囲が85センチ以上だからといって病院を受診する人はいない。「必ずしも病院を受診する必要はありません」と、東京逓信病院(東京都千代田区)内分泌代謝内科の宮崎滋部長。そして、その理由を続ける。「内臓脂肪を減らすことが重要なのです。保健所などで行っている1次予防で生活習慣を改善して健康管理を行っていきましょうということなのです」。
内臓肥満型脂肪以外に他の疾患で高血圧が心配だ、糖尿病が心配だ、という方々はそれぞれの専門の診療科を受診する。「診療科という入り口はそれぞれ別々ですが、例えば糖尿病であれば、まずは内臓脂肪型肥満をチェック。さらに他のリスクもチェックしてメタボリックシンドロームであれば、まずは内臓脂肪を減らすことに専念してもらいますし、指導します。これをそれぞれの科の先生に認知してもらって実践していくのです」。
基本は食事療法と運動療法。
●食事療法 食事療法となると、すぐに過激なダイエット方法を思い描く人が多いが、その多くは科学的に証明されてはいない。現時点で科学的に証明されている内臓脂肪を増やす食生活は-。「満腹になるまで食べる」「脂っぽい物が好きでよく食べる」「砂糖がたくさん入った食べ物をよく食べる」人は内臓脂肪が増えるので、これを行わず、加えて禁煙を。「たばこは体重が減るからと吸う人がいますが、体重は減っても内臓脂肪は増えるのです」。
●運動療法 キーポイントは運動。その運動はウオーキングを毎日何十分という以上に、活動性をあげることが重要。常にこまめに動く。食事の後は横になったり、のんびりいすに座っているのではなく、立っているだけでも活動性が上がる。活動性を上げていくと食事療法の効果が良くなり、食事・運動療法を持続する自信が患者にはついてくる。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆メタボリックシンドロームの名医
▽順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)循環器内科・代田浩之教授
▽山梨大学医学部付属病院(山梨県中巨摩郡)第2内科・久木山清貴教授
▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)内分泌・代謝内科・中尾一和教授
▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)循環器内科・北徹教授
January 21, 2006 11:03 AM | トラックバック (2)
2006年01月20日
2006年01月20日
【第10回】腹囲基準で日米に相違/東京逓信病院宮崎滋部長
メタボリックシンドローム(下)
注目のメタボリックシンドローム(内臓脂肪型生活習慣病)の有病率は「端野・壮瞥町研究」「久山町研究」の疫学調査結果によると、40歳以上の中高年男性が約30%、女性が約10%。およそ日本人の1300万人がメタボリックシンドローム患者だという。
診断基準は「腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上」の内臓脂肪肥満がある。その上に以下の3つのうち2つ以上当てはまる。<1>中性脂肪が150ミリグラム/デシリットル以上、またはHDLコレステロールが40ミリグラム/デシリットル未満<2>上の血圧が130ミリHg以上、または下の血圧が85ミリHg以上<3>空腹時血糖値が110ミリグラム/デシリットル以上。
このメタボリックシンドロームは動脈硬化に結び付き、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞といった血管病を引き起こすから、厚生労働省も今年からメタボリックシンドローム撲滅キャンペーンを後援する予定になっている。
ただ、この診断基準の基本は内臓脂肪肥満。その点には何の問題もないのだが、腹囲については、日本と米国では大きな違いがある。米国の診断基準では以前は男性が102センチ、女性が88センチだったのが新基準では男性94センチ、女性80センチに短くなったが、まだ日本とは男女逆の数値になっている。
この疑問について、メタボリックシンドローム診断基準検討委員会委員の、東京逓信病院(東京都千代田区)内分泌代謝内科の宮崎滋部長は次のように話す。「住友病院の松沢佑次院長の研究グループがCT(コンピューター断層撮影)を使って内臓脂肪面積を測定。その面積が100平方センチ以上あると肥満に関連する合併症が起こりやすいという事実を明らかにしました。そのときの腹囲が男性85センチ、女性90センチだったのです。ほとんどの女性は男性と違って内臓脂肪が蓄積するときには皮下脂肪の蓄積を伴うのです。一方、米国の場合はBMIが30の人の腹囲を測ってあの数値に決めたのです。BMIで決めると内臓脂肪型も皮下脂肪型もごちゃごちゃになり、男性の方の腹囲が大きくなります。日本は科学的根拠に基づいたものになっているのです」。
この数値についてはどのように整合性をとるのか。国際的課題になると思われる。
◆BMI ボディー・マス・インデックスの略。体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で計算された体格指数で、肥満度を知る。病気になる人の最も低い数値が22。これを標準にして25以上を肥満としている。
◆メタボリックシンドロームの名医
▽東京逓信病院(東京都千代田区)内分泌代謝内科・宮崎滋部長
▽東京大学医学部付属病院(東京都文京区)腎臓・内分泌内科・藤田敏郎教授
▽帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)内科・寺本民生教授
▽慶応義塾大学病院(東京都新宿区)血液・感染・リウマチ内科・池田康夫主任教授
January 20, 2006 11:11 AM | トラックバック (3)
2006年01月19日
2006年01月19日
【第9回】ベースは内蔵脂肪蓄積/東京逓信病院宮崎滋部長
メタボリックシンドローム(上)
05年は「メタボリックシンドローム」が大きな話題となった。04年から日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会など8学会によって検討され、05年4月に「メタボリックシンドロームの疾病概念の確立と診断基準」が発表された。その定義は「内臓脂肪の蓄積と、それを基盤にしたインスリン抵抗性および糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧を複数合併するマルチプルリスクファクター症候群で、動脈硬化になりやすい病態」である。
「つまり、動脈硬化の危険因子は高血圧、高脂血症、糖尿病など数多い。それらはそれぞれ単独でも十分動脈硬化の危険因子だが、それらが1つ1つ軽症でも、おなかの脂肪がたまり、その上にいくつか重なった場合、より短期間に動脈硬化が進むということなのです」と、メタボリックシンドローム診断基準検討委員会の委員でもある、東京逓信病院(東京都千代田区)内分泌代謝内科の宮崎滋部長は言う。
動脈硬化が促進すると、いわゆる血管病を引き起こす。狭心症、心筋梗塞(こうそく)といった虚血性心疾患や脳卒中で、死亡者数は約30万人、がん死亡者数と匹敵する。
怖い疾患に結び付くメタボリックシンドロームの診断基準は、次の通りである。まず、ベースになるのが「腹腔(ふくくう)内脂肪蓄積」。<1>肥満 おへその腹囲が男性は85センチ以上。女性は90センチ以上。「おへその位置の腹囲がポイントで、内臓脂肪がどれくらいたまっているかをチェックします。<1>がある人で、以下の3項目中2項目以上当てはまるとメタボリックシンドロームと診断されます」。
<2>高脂血症 中性脂肪が150ミリグラム/デシリットル以上、またはHDLコレステロールが40ミリグラム/デシリットル未満。
<3>高血圧 上の血圧が130ミリHg以上、または下の血圧が85ミリHg以上。
<4>糖尿病 空腹時血糖値が110ミリグラム/デシリットル以上。
「これまでは動脈硬化の原因となると、コレステロールばかりが注目されていました。が、もっと危険なものがありますよ、ということを強調したいのです」。今、メタボリックシンドロームと診断される日本人は1300万人以上いるという。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆メタボリックシンドロームの名医◆
▽札幌医科大学付属病院(札幌市中央区)第2内科・島本和明教授
▽筑波大学付属病院(茨城県つくば市)代謝内分泌内科・山田信博教授
▽埼玉医科大学付属病院(埼玉県入間郡)内分泌内科・糖尿病内科・片山茂裕教授
▽千葉大学医学部付属病院(千葉市中央区)糖尿病・代謝・内分泌内科・斉藤康教授
◆糖尿病の診断基準 糖尿病の診断では、空腹時血糖値で診ると126ミリグラム/デシリットル以上だが、メタボリックシンドロームでは110ミリグラム/デシリットル以上となっている。この数値は糖尿病予備軍と診断される数値。内臓脂肪型肥満があると、その段階からリスクになってしまう。
January 19, 2006 09:12 AM | トラックバック (1)
2006年01月18日
2006年01月18日
【第8回】置換手術は話し合って弁選択を/順天堂医院天野篤教授
「心臓弁膜症の外科治療」
心臓の弁に異常が生じ、進行すると心不全に結び付く心臓弁膜症。薬物療法で対応し切れない場合やカテーテル治療の対象にならない場合には外科治療が行われる。この場合は「弁置換術」か「弁形成術」が選択される。
心臓弁膜症で手術を受ける約97%を占めるのが「僧帽弁閉鎖不全症」と「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」。その僧帽弁閉鎖不全症の場合、弁形成術がよく行われる。どのように行うのか、第一人者である順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)の天野篤教授は次のように話す。「弁形成術は弁がずれて逆流しているところを矯正して正常な接合を回復させることで治すのです。患者さん自身の弁が残るため術後の療法が不要です。弁全体に細菌がついていたり、石灰化が高度でない限り弁形成術で対応できます」。僧帽弁閉鎖不全症では弁置換術も行われるが、形成困難な場合のみで5~10%である。
大動脈弁狭窄症の場合は、大動脈弁が十分に開かないので全身への血液量が減り、心筋の状態も悪くしてしまうので、症状がある場合には速やかに弁置換術を行う。「弁置換術は名称通り、弁を換える手術です。硬くなっている弁をいかにきれいにとれるかが、術者の腕の良しあしになります。固くなった弁を取った後、私はできるだけ大きいサイズの人工弁を入れるように工夫しています。そのほうが患者さんの心臓の負担がとれるからです。とはいっても正常な人の大動脈弁以上にする必要はなく、同じくらいで十分です」。
そして、換える弁には豚や牛などを用いた「生体弁」と、特殊カーボン製の「機械弁」とがある。機械弁はすでに25年以上にわたって全くデザインも変わらずに使われており、壊れることはなく、信頼度は高い。「ところが、機械弁では血栓ができるのを防ぐ抗凝固薬(ワルファリン)を毎日服用しなければなりません。内服の忘れは命取りになります。採血による検査のために定期的な通院も必要です。生体弁はその必要がありません。ただ、生体弁は15年くらいでゆっくりと硬化します。狭窄症状が出ると再手術が必要になりますが危険性は初回と同じです」。どちらを選択するかは、主治医と十分に話し合って納得した上で決定すべきである。
手術は人工心肺を使っての開胸手術。その開胸部はどんどん小さくなり、6~8センチという小切開手術も行われている。また、自己負担、もしくは病院側の研究費負担で腹腔(ふくくう)鏡を使った体に優しい手術を行っている施設もある。この点も十分に考慮すべきだろう。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆心臓弁膜症の手術の名医
▽神戸市立中央市民病院(神戸市中央区)胸部外科・岡田行功部長
▽島根大学医学部付属病院(島根県出雲市)心臓血管外科・樋上哲哉教授
▽小倉記念病院(北九州市小倉北区)心臓血管外科・岡林均主任部長
▽鹿児島大学医学部・歯学部付属病院(鹿児島市)循環器センター心臓血管外科・坂田隆造教授
January 18, 2006 09:24 AM | トラックバック (0)
2006年01月17日
2006年01月17日
【第7回】症状に合わせ治療法選択/順天堂医院天野篤教授
心臓弁膜症(下)
心臓弁膜症が増えている。<1>日本人の体形の欧米化<2>高齢化<3>食生活の欧米化<4>高血圧、糖尿病の増加、そして、それらが血管に引き起こす<5>動脈硬化などにより、心臓の弁に異常が起きる。初発症状は「息切れ」や「動悸(どうき)」が多い。
その症状を放置しておくと心不全に。また、不整脈を起こしてまれに突然死に結び付くこともある。「息切れ」の症状から呼吸器疾患と間違えられているケースもあり、しっかりと診察を受ける必要がある。
心臓弁膜症には8種類の疾患があるが、その多くを占めるのが「僧帽弁閉鎖不全症」と「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」。診断が確定すると、治療になる。心臓弁膜症の治療には内科治療である「薬物療法」「カテーテル治療」、外科治療の「弁置換術」「弁形成術」が行われている。患者の状態、症状などにより十分な話し合いの上で治療方法が選択される。
◎薬物療法 「血管拡張薬と利尿薬が中心となり、両方を一緒に使ったり、別々に使ったりします」。心臓弁膜症などの手術で定評のある順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)心臓血管外科の天野篤教授は言う。血管拡張薬は血管を拡張することでうっ血や逆流を改善させる。利尿薬は心臓のポンプ作用が不十分で起きるうっ血、むくみを尿量の確保によって改善させる。「このほかに、患者さんの症状を診ながら、心臓のパワーアップを図る強心薬などが加えられます」。もちろん、薬だけで改善するわけではなく、日常生活でも心臓に負担をかけ過ぎないようにする必要がある。強い運動をしたり、重い物を持ったりすることは控え、1日の流れをゆったりさせる。塩分や水分の取り過ぎも心臓に負担をかけるので制限する。
◎カテーテル治療 患者の多い僧帽弁閉鎖不全症ではなく、僧帽弁狭窄症においてのみ行われているのが経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)。脚の付け根の静脈からカテーテル(細い管)を僧帽弁にまで入れ、狭窄している僧帽弁をバルーン(風船)で膨らませて広げる方法。ただし、この方法は5~10年くらいで再狭窄してしまう。閉鎖不全症に対するカテーテル治療も欧米では模索されているが、まだ十分な効果が確認されていないので日本国内では行われていない。
そして、次の治療方法は外科治療となる。
◆心臓弁膜症の手術の名医
▽名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)心臓外科・上田裕一教授
▽滋賀医科大学付属病院(滋賀県大津市)心臓血管外科・浅井徹教授
▽京都大学医学部付属病院(京都市左京区)心臓血管外科・米田正始教授
▽神戸大学医学部付属病院(神戸市中央区)心臓血管外科・大北裕教授
January 17, 2006 10:08 AM | トラックバック (0)
2006年01月16日
2006年01月16日
【第6回】狭窄と閉鎖不全の2タイプ/順天堂医院天野篤教授
心臓弁膜症(中)
心臓の弁が正常に機能しなくなる心臓弁膜症は、毎年約1万人が手術を受けている疾患である。病型としては弁の狭窄(きょうさく)と閉鎖不全の2つのタイプがあり、僧帽弁では閉鎖不全症が、大動脈弁では狭窄症が多くなっている。
「僧帽弁を支えている腱索(けんさく)が切れて弁がきっちり閉じなくなった僧帽弁閉鎖不全症は、日本人の体が欧米化して大きくなり、ヒョロっとしてきたことで増えてきました」と、順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)心臓血管外科の天野篤教授は言う。「さらに、高血圧の素因を持った人が増えており、それが弁に負担をかけているのです」。
一方、大動脈弁狭窄症は大動脈弁が動脈硬化によって変化し、狭くなってしまう。大動脈弁の開きが十分でないと、全身をめぐる血液量は低下して、心不全のみならず脳貧血症状から失神といった症状を引き起こすことさえある。「大動脈弁狭窄症は動脈硬化が原因なので、患者さんは60代以降の方々がほとんどです。ただ、動脈硬化の素因のある人はより早く発症する可能性があります。透析を受けている人、糖尿病のコントロールがしっかりできていない人はリスクが高まります」。
このほか、先天的に大動脈弁に異常のある場合もある。大動脈弁は3枚の葉っぱによって弁を形成している形になっている。が、その葉が2枚しかないのである。「カラ咳(せき)」「息切れ」「動悸(どうき)」「失神」などの症状を訴えて受診すると。次の検査が行われる。
◎問診、聴診 医師が患者に症状などを具体的に聞き、また、聴診器を用いて心音を聞く。これだけでも弁の異常は診断できる。
◎心エコー検査 超音波を使った心臓の画像検査。この検査で4つの弁のうち、どの弁に異常があるかが分かる。さらに重症度を「カラードップラー検査」で調べる。
◎経食道心エコー検査 胃カメラのような形状の超音波装置を患者の口から食道へ入れ、心臓内の弁の様子を調べる。食道が心臓後面に接しているため体外から観察するより画像が鮮明。
「弁と心臓の関係を詳細に調べることで必要な治療法と経過の予測を知ることができます」。
◆心臓弁膜症の手術の名医
▽順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)心臓血管外科・天野篤教授
▽半蔵門循環器クリニック(東京都千代田区)心臓血管外科・加瀬川均院長
▽葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)心臓血管外科・磯村正院長
▽豊橋ハートセンター(愛知県豊橋市)心臓血管外科・大川育秀副院長
◆大動脈弁の仕組み 左心室から血液が大動脈へ押し出されるところにある弁が大動脈弁。葉っぱのような膜が3枚ついた形の弁である。肺動脈弁、三尖(せん)弁も同じ形態だが、僧帽弁だけは2枚の膜からなっている。
January 16, 2006 10:00 AM | トラックバック (0)
2006年01月15日
2006年01月15日
【第5回】年間1万人が手術
順天堂医院 天野篤教授
心臓弁膜症(上)
生活習慣病は患者が多く、心臓病といえば多くの人々はすぐに狭心症、心筋梗塞(こうそく)を思い描く。ところが、東京医科大学病院での心臓外科手術のミスで、すっかり有名になったのが心臓弁膜症。推定患者数は200万人。手術が必要な患者は年間約1万人といわれ、実際、それくらいの人々が手術を受けている。
心臓の弁に問題が生じ、さまざまな症状を引き起こす。突然死に結び付くことも、まれにある。
症状を具体的に紹介すると、「息が切れる」「動悸(どうき)がする」「呼吸が苦しい」「夜寝ると苦しい」「体がむくむ」「疲れやすい」など。このような症状が出るのは、心臓の弁の異常により血液循環がスムーズにいかないからである。
「心臓には僧帽弁、大動脈弁、三尖(せん)弁、肺動脈弁の4つの弁があり、この中で全身に影響を及ぼしやすいのが僧帽弁と大動脈弁です」。心臓血管の手術で定評のある順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)心臓血管外科の天野篤教授は言う。
肺でガス交換された血液が肺静脈を通って左心房に入り、心房が収縮して左心房と左心室の間にある僧帽弁が開いて左心室に血液が流れ込む。心室の内圧が高くなると左心室の大動脈弁が開いて血液は全身へと流れ出て行く。この2つの弁で年間の心臓弁膜症手術の約97%を占めている。
「原因疾患は狭窄(きょうさく)症と閉鎖不全症です。基本的には4つの弁でそれぞれ起きるものの、多いのは僧帽弁と大動脈弁。さらに、僧帽弁では僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁では大動脈弁狭窄症が圧倒的に多くなっています」。その中の僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁を支えている腱索(けんさく)が心臓の中で強い負担を受けて切れ、僧帽弁がきっちり閉じなくなって血液が逆流する疾患。急性心不全状態が起き、典型的症状は「カラ咳(せき)」。受診すると、心臓がもともと弱い人は入院になる。
かつては、リウマチ熱がほとんどだったが、最近は高齢化と食生活の欧米化が原因で弁の形態が〝変性〟するケースが増えている。そのほかに感染した細菌が弁膜にとりついて弁を破壊することもある。
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
◆リウマチ熱 溶血性連鎖球菌が原因の感染症。13歳くらいの学童を中心に発病。風邪をひき、咽頭(いんとう)炎の後、2~3週間後に関節の痛みや心障害を引き起こす。今は抗生物質でリウマチ熱を抑えるので、リウマチ熱の後遺症による弁膜症は激減した。
◆心臓弁膜症の手術の名医
▽心臓血管センター北海道大野病院(札幌市西区)心臓血管外科・道井洋吏院長
▽岩手医科大学循環器医療センター(岩手県盛岡市)心臓血管外科・川副浩平教授
▽東北大学医学部付属病院(仙台市青葉区)心臓血管外科・田林晄一教授
January 15, 2006 11:50 AM | トラックバック (0)
2006年01月14日
2006年01月14日
【第4回】中耳炎、虫歯などにも関係
逆流性食道炎の最新事情
「胸焼け」「呑酸」「むかつき」「のどがつかえる」「胸がしみる」などの症状を出す逆流性食道炎。食事ができなくなるほどQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を悪くするばかりか、食道がんに結び付くと指摘されている。
その逆流性食道炎の治療は薬物療法が第1選択。薬を使って内科的に対応する。胃・十二指腸潰瘍の場合も、今日では手術をするケースはごくごくまれである。ただし、手術が選択されるケースもある。それは食道裂孔(れっこう)ヘルニアがひどい場合、患者が若く薬を何十年にわたって服用し続けなければならない場合、バレット上皮になって食道がんになりやすくなるなどの場合である。
手術は「ニッセン法」が行われている。これは腹部を開腹せずに、4個所程度に直径1センチ程度の孔(あな)をあけ、そこから治療機器や内視鏡を入れて手術を行う。胃壁の上部を緩んでいる食道下部に巻き付けて縫い付ける。これで胃液の食道への逆流を防止する。内視鏡なので入院期間は1週間程度。
「手術ではこの腹腔鏡下手術が行われていますが、米国ではより体に優しい口から内視鏡を入れて、食道の下部を狭める手術も行われています」と言うのは、兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)消化器内科の三輪洋人教授。
三輪教授の言う内視鏡下手術とは「経内視鏡的噴門部縫縮術(ELGP)」という。このELGPは、緩んでしまった胃の入り口の噴門部を、元のように胃液が逆流しない締まりのいい噴門部にする手術。内視鏡を口から入れ、噴門部の少し下の胃壁を内視鏡の先端につけた特殊な装置で吸引して縫い付ける。それで逆流を防ぐ壁にするのである。体に優しい手術とあって、今後普及すると思われるが、基本は薬物療法である。
そして、治療とは別に、逆流性食道炎の研究が大きな広がりを見せている。「逆流性食道炎が食道以外にも関係しているかもしれないのです。咽頭(いんとう)炎、喉頭炎、子供の中耳炎、虫歯、歯ぎしりなど。スタディーはまだ少ないのですが、耳鼻咽喉科と共同しての研究も始まっています」。胃液の逆流がベースとなった疾患がかなり広がりを見せそうである。
◆バレツト上皮 食道の粘膜の細胞は扁平(へんぺい)上皮細胞。ここが胃液にさらされることで胃粘膜のような細胞に変化する。それをバレット上皮という。
◆逆流性食道炎の名医
▽兵庫医科大学付属病院(兵庫県西宮市)消化器内科・三輪洋人教授
▽川崎医科大学付属病院(岡山県倉敷市)食道・胃腸内科・春間賢教授
▽島根大学医学部付属病院(島根県出雲市)消化器・肝臓内科・木下芳一教授、足立経一助教授
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
January 14, 2006 10:58 AM | トラックバック (1)
2006年01月13日
2006年01月13日
【第3回】胸やけも治療すべき/兵庫医大病院 三輪洋人教授
逆流性食道炎(下)
胃液が食道に逆流して食道に炎症や潰瘍(かいよう)をつくる逆流性食道炎。QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)が悪くなっているにもかかわらず、我慢し続けている人が意外に多い。
逆流性食道炎の治療・研究で知られる兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)消化器内科の三輪洋人教授は、第一線で聞いた患者の声を次のように語る。「みんな多かれ少なかれ胸焼けはあるだろうから当たり前、と思っていらっしゃる。それが、治療後は『胸焼けがないというのは、こんなに楽だったのか』と多くの患者さんが口にされます」。
逆流性食道炎の診断は内視鏡検査。食道に「びらん」や「潰瘍」があると診断はつく。「ところが、患者さんの約50%は炎症を起こすまでに至っていないのです。炎症がないのにすでに症状が出ている人も多いのです。また、その逆もあります」。痛くてもびらんも潰瘍もないと、多くの医師は「気のせいです」と言って検査を終了してしまう。「私はそれは違うと思います。やはり、胸焼けを訴える患者さんには治療を行うべきです」。
内視鏡検査では胸焼けの原因となる食道裂孔(れっこう)ヘルニアの診断もつく。また、食道がんが疑われる場合には組織を探って調べる「生検」も行われる。
逆流性食道炎と診断がつくと治療になる。治療の基本は「薬物療法」。第1選択薬はプロトンポンプ阻害薬(PPI)。「逆流性食道炎のみならず、胃・十二指腸潰瘍の特効薬でもあります。胃酸の分泌を強力に抑えます。びらんや潰瘍をつくる胃酸を抑えれば炎症は改善していきます」。
PPIとともによく使われるのがH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)。作用機序はPPIとは異なるが、やはり胃酸分泌を抑制する。
もちろん、薬だけに頼るのではなく、より薬の効果を得るために、日常生活の改善でフォローすることも重要である。<1>食べ過ぎ、飲み過ぎ<2>脂肪の多い食事<3>肥満<4>前かがみ姿勢<5>食後はすぐに横にならない…といった点に注意する必要がある。
◆胸焼けを起こしやすい食べ物 カレーライス、天ぷら、ハンバーグ、シューマイ、マグロのトロ、揚げせんべい、さつまいも、たまねぎ、カボチャ、オレンジジュース、コーラ、ビール、シャンパン、チョコレート、甘味和菓子、コーヒー、ショートケーキなど。
◆逆流性食道炎の名医
▽名古屋市立大学病院(名古屋市瑞穂区)総合内科・城卓志助教授
▽滋賀医科大学付属病院(滋賀県大津市)第2内科・小山茂樹講師
▽大阪市立大学医学部付属病院(大阪市阿倍野区)消化器内科・樋口和秀助教授
▽大阪府済生会中津病院(大阪市北区)消化器内科・蘆田潔部長
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
January 13, 2006 09:58 AM | トラックバック (0)
2006年01月12日
2006年01月12日
【第2回】長期間続くと食道がんも/兵庫医大病院 三輪洋人教授
逆流性食道炎(中)
逆流性食道炎に悩まされる人が増えている。強い酸の胃液が食道に逆流して、食道の壁に炎症や潰瘍(かいよう)を起こすのが逆流性食道炎。物が食べられなくなるほどQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を悪くする。それだけでも大変なのに、さらに、その状態が長期間続くと食道がんにも結び付いてしまうから“たかが胸焼け”などと言ってはいられない。
「食道の管の最も内側は粘膜層で、この部分の細胞は扁平(へんぺい)上皮細胞からできています。逆流性食道炎を繰り返していると、扁平上皮細胞が胃粘膜に似たバレット上皮に変化しやすくなります」と話すのは、逆流性食道炎の治療・研究の第一人者、兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)消化器内科の三輪洋人教授。
日本人に多い食道がんは扁平上皮がん。皮膚や器官の粘膜表面に生じる。ところが、食道の扁平上皮細胞が逆流性食道炎でバレット上皮に変化すると、内臓の分泌物を出す上皮に生じる腺がんができやすくなる。一説では、バレット上皮ができていると、それのない人に比べて食道がんを発生する率が20~40倍も高くなるともいわれている。
「食道がんのリスクも確かにあります。可能性としてバレット上皮になるとより食道がんになりやすい。ただ、頻度としては高くはありません。米国でも約2億人のうちバレット上皮にできるがん死亡者は1万人いるかいないかの状態です。あまり不安がらないほうがいいかもしれません」と、三輪教授は優しく言う。が、今後の変化は分からない。
例えば今の10代、20代、30代の人は胃・十二指腸潰瘍の原因になっている胃にすむヘリコバクター・ピロリ菌の保菌率が数%から20%と低い。そのため、胃が元気で胃酸も豊富に出るので逆流性食道炎に悩む人が多い。さらに、保菌率80%を超える50代以降の人々も除菌をする人が増え、その除菌成功者の約10%に逆流性食道炎に悩む人が出ている。
このようにバレット上皮予備軍が増えれば増えるほど食道がん罹患(りかん)者も増えると思われる。逆流性食道炎は良性疾患ではあっても、自覚症状がある場合は、QOLを悪くしないうちに治療を受けるべきだろう。
◆食道 食道は飲食物を胃へ送る直径3センチ、長さ約25センチ程度の管状のピーンと張り詰めた器官。気管の背部、心臓の後ろを通って胃につながることで分かるように、背骨に近い奥を通っている。
◆逆流性食道炎の名医
▽東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)食道胃外科・河野辰幸助教授
▽虎の門病院(東京都港区)健康管理センター・星原芳雄付部長
▽東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)消化器外科・幕内博康教授(病院長)
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
January 12, 2006 09:22 AM | トラックバック (1)
2006年01月11日
2006年01月11日
【第1回】肥満などが助長因子/兵庫医大病院 三輪洋人教授
逆流性食道炎(上)
時代とともに、さまざまなところが、さまざまに変化を遂げる。病気もまたしかり。増える病もあれば減る病も-。
増えている病として注目されているものの1つに「逆流性食道炎」がある。典型的な症状は「胸焼け」「呑酸」「むかつき」「胃が重い」「胃が痛い」「のどがつかえる」「胸がしみる」など。代表症状の胸焼けは、胸のあたりにチリチリ焼けるような熱さを感じる。たかが胸焼けと思うなかれ。食事ができなくなるほどQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を悪くしてしまう。
「胸焼けは強い酸の胃液が食道に逆流することで起こります。胃酸の攻撃を受けても胃壁はその酸から守る仕組みになっていますが、食道はそうはなっていないので傷つき、食道粘膜に炎症や潰瘍(かいよう)が出てきてしまいます。これが逆流性食道炎です」。兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)消化器内科の三輪洋人教授は説明する。
逆流性食道炎のメカニズムには<1>胃酸過多<2>下部食道括約筋の機能低下<3>食道の蠕動(ぜんどう)運動の低下の3点が考えられている。
<1>胃酸過多 「食べ過ぎたり、揚げ物など油を使った物は胃酸の分泌を多くし、それが胃液を増やすことになり、逆流を起こしやすくするのです」。
<2>下部食道括約筋の機能低下 食道が胃につながる下部食道には括約筋がある。「通常、括約筋は収縮しています。だから、逆立ちしても食べ物が出てこないのです。それが加齢によって緩んだり、食道裂孔(れっこう)ヘルニアなどによって逆流しやすくなります」。
<3>食道の蠕動運動の低下 食道でも物を先へ先へと送ろうとする蠕動運動が行われている。「胃から酸が上がってきても、その運動で胃に戻してくれます。その働きが弱いと逆流性食道炎になりやすくなります」。
今の時代に逆流性食道炎が増えているのは、この<1><2><3>のメカニズムを助長する因子が多いからだ。若い年代に胃、十二指腸潰瘍に結び付くピロリ菌の感染者が少なく、胃液分泌が増加。食事の西洋化。そして、肥満の増加が逆流を起こしやすくしている助長因子なのである。
◆食道裂孔ヘルニア 胸部と腹部の間にある横隔膜には、食道が通過する孔(あな)がある。正常な状態はその孔の部分の横隔膜は下に下がって下部食道括約筋を締めている。その孔から胃の上部が上に出てしまった病気で、こうなると下部食道括約筋の力が弱まってゆるゆる状態になってしまう。
◆逆流性食道炎の名医
▽北海道大学病院(札幌市)光学医療診療部・加藤元嗣教授
▽東北大学医学部付属病院(仙台市)総合診療部・本郷道夫教授
▽東北大学医学部付属病院(仙台市)消化器内科・大原秀一医師(保健管理センター助教授)
▽群馬大学医学部付属病院(群馬県前橋市)光学医療診療部・草野元康助教授
【医学ジャーナリスト松井宏夫】
January 11, 2006 11:20 AM | トラックバック (0)
2006年01月10日
2006年01月10日
【最終回】3カ月後イメージし目標立てる
「楽しくなければ意味はない」
日ごろからかかりつけ医に「食生活改善を!」と言われ続けている人はいるだろう。ストレス発散の飲食を制限されてはたまらない。なんとかならないものか。
現在、米国では最先端のアンチエイジングのプログラムで、キレーション療法が盛んに行われている。血管を修復する点滴であり、生活習慣病改善や予防などにも役立つという。しかし、これも自分自身で行う食生活の改善が大前提。
昨年、キレーション療法のプログラムをスピックサロン・メディカルクリニック(神奈川県鎌倉市)に導入した杏林大学保健学部臨床内科学教室(杏林大学保健センター所長)柳沢厚生教授は「食生活改善が楽しくなければ続かないのは当然でしょう」と苦笑する。「もともと生活習慣病は、早期の段階では無症状のことが多い。ご自身では健康だと思っているからこそ、食生活改善の目標が立てにくいのです。だからこそ、ゴールを明確にすることから始めるとよいでしょう」(柳沢教授)。
まずは、3カ月後の自分がどういう身体状態になりたいかを考える。目覚めをスッキリしたいのか、頭のさえをさらにアップしたいのか、軽快に運動ができるようになりたいのか。「それを実現するために、ご自身でできると思うことを10個書いてみてください」(柳沢教授)。内容は「毎朝、ジョギングする」「同僚との飲み会を減らす」「毎朝、ヨーグルトを食べる」など具体的に。そのうち、最も大切なものにマルをつけ、優先順位を5位まで挙げる。そして、いつから始めるかをしっかり明記しておく。
「3カ月後のご自身の理想の姿をイメージし、それを目標にした上で、ワクワクしながら取り組んでみてください。楽しく生活改善をするように工夫しましょう。考えて、それを書いて、実行に移す。日々実行した結果も、書きとめて励みにしましょう」(柳沢教授)。
元日に誓いを立てる意味で取り組んではいかが。自分で続けられる目標であることも重要だ。3カ月後を目指してみよう。「キレーション療法などのプログラムは、理想をかなえるためのお手伝いにすぎません。個人に合わせた改善方法を見いだし、サポートするために最善を尽くしています」(柳沢教授)。
中高年になると、心身ともに悩みは生じる。だが、希望を忘れず、理想をはぐくみながら健康維持に努めよう。(おわり)
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 10, 2006 12:48 PM | トラックバック (1)
2006年01月09日
2006年01月09日
【第32回】管修復、米では年間80万件
「キレーション療法で血管がよみがえるる」
加齢とともに動脈硬化が進み血管がボロボロに。狭心症や心筋梗塞(こうそく)の発作を起こせば、治療を受けても再発の恐怖が付きまとう。その血管をよみがえらせる治療として、米国では現在「キレーション療法」が盛んに行われている。
キレーション療法とは、合成アミノ酸の「EDTA(エチレンジアミン4酢酸)」を主成分とした点滴による治療。EDTAは、もともと体内の有害な金属を排出する治療薬で、鉛中毒患者に用いられていた。その後、動脈硬化にも有効ではないかと推測され、米国では、狭心症や心筋梗塞、慢性関節リウマチ、糖尿病、腎臓結石などの治療でも使われている。
「有害な金属を排出するだけでなく、血管を修復する作用もあります。そのため、米国では、約2000施設で年間80万件(02年現在)のキレーション療法が行われているのです」と説明するのは、杏林大学保健学部臨床内科学教室(杏林大学保健センター所長)の柳沢厚教授。米国最先端医療会議キレーション治療の専門医でもある。
「2万3000人以上の心臓病患者の80%が、キレーション療法で改善したというデータも出されています。しかし、米国では、ほとんど副作用が認められないものの、本当に効果が得られるのか、賛否両論があるのも事実です」(柳沢教授)。
まだこれからの療法だ。日本では、昨年からスピックサロン・メディカルクリニック(神奈川県鎌倉市)が、日本人向けのキレーション療法による治療プログラムを導入した。「狭心症や心筋梗塞、あるいは、生活習慣病にかかってしまった人は、治療の限界を知っています。その限界を超えるため、治療を希望される方は後を絶ちません」(柳沢教授)。
血管を修復するため、キレーション療法は、アンチエイジングとしても注目され始めている。だが、点滴を受ければOKという話ではない。「生活習慣病改善や予防には、やはりご本人が食生活を見直すのが基本です。ストレスを軽減し、バランスの良い食事、適度な運動は欠かせません。ご自身の努力を補うのが、キレーション療法やサプリメント。努力なくしては健康は望めないのです」(柳沢教授)。
どんなに自分で努力をしても、壊れてしまった機能は元には戻らない。そのとき頼るべき適正な医療は、まだ日本では普及されていないのが現状だ。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 9, 2006 10:02 AM | トラックバック (3)
2006年01月08日
2006年01月08日
【第31回】「解毒」食生活に改善
「知的健康術の勧め」
年を重ねるたびに、生活習慣病などの疾患が忍び寄る。医師から「食生活の改善」を勧められ、懸命に取り組んだはずなのに心筋梗塞(こうそく)。長年痛めつけられた身体は、なかなか思うように改善するのが難しい。そんな人々に、昨今、注目を集めているのがデトックス。「解毒」という意味で、身体にたまった毒素を排出するとして、サプリメントや入浴剤、スキンケア用品などで盛んに用いられている言葉だ。しかし、単に解毒だけで、健康を取り戻せるかというと、それほど簡単な話ではない。
「米国の予防医学においてデトックスは、単なる解毒の意味ではありません。トータル的な食生活の見直しを指しています」。こう指摘するのは、杏林大学保健学部臨床内科学教室(杏林大学保健センター所長)の柳沢厚生教授。米国心臓病学会でフェローを授与され、心臓病をはじめとするさまざまな病の予防医学に積極的に取り組んでいる。
トータル的な食生活の見直しは、かかりつけ医などから指摘されている人もいるだろう。その1歩先に踏み込むのが、米国におけるデトックス。
「バランスの良い食事といっても、目まぐるしい環境の変化で、食品添加物や農薬、化学物質などで汚染されている食材は多い。そのような食材はなるべく食べない。食べたとしても、腸管から吸収させない。また、中和もしくは排出する。それが、米国におけるデトックスの意味なのです」(柳沢教授)。
例えば、マグロなどの大型の回遊魚は、食物連鎖の結果、体内に水銀を蓄積していることは周知のこと。厚生労働省によれば、健康への悪影響はないと推測されている。が、アトピー性皮膚炎の原因ではないかと指摘する声もあり、健康への影響は懸念が尽きない。とはいえ、魚は日本人の食事に不可欠だ。「魚は摂取した方が、健康に役立ちます。そのため、含まれる水銀を吸収させない、出すことを考えればよいのです」(柳沢教授)。
水銀の排出を促すビタミンやミネラルは、カルシウムやマグネシウム、亜鉛、ビタミンCなどがある。また腸管からの吸収を抑制するには「乳酸菌のたっぷり入ったヨーグルトや食物繊維」(柳沢教授)が役立つそうだ。「食生活をトータルに賢く見直す知的健康術が、本来のデトックス。1つのことにとらわれず、広い視野で見直しましょう」(柳沢教授)。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 8, 2006 09:31 AM | トラックバック (11)
2006年01月07日
2006年01月07日
【第30回】肩の力抜いてうつ病予防を
「肩の力を抜いてうつ病予防を」
日本では、15人に1人、もしくは6人に1人はうつ病の経験があるといわれている。ストレス過多といわれる時代、職場環境などの変化もめまぐるしく、うつ病に陥りやすい要因は山ほど。さらに、うつ病になりやすい性格もある。
「うつ病を発症しやすい性格には、3つのタイプがあります」と、銀座で心療内科を開業している田中クリニック銀座(東京都中央区)の田中利幸院長は説明する。3つのタイプとは「循環性格」「執着性格」「メランコリー親和型性格」。
「循環性格」は、社交的で親切、善良で温厚、明朗で活発である半面、物静かで気弱。優柔不断で八方美人的性格のため、決断力が弱く、板挟み状態になってうつ状態に陥る。
「執着性格」は、きちょうめん、仕事(勉強)熱心、凝り性、強い義務感や責任感などがあり、きまじめでごまかしができない。仕事や勉強を無理にでもこなそうとするため、心身ともに疲れ果ててうつ状態に陥る。
「メランコリー親和型性格」は、基本的には「執着性格」とほぼ同じだが、献身的で人と争えないタイプ。頼まれると嫌と言えず、正確さにこだわりすぎて仕事の量と質の矛盾に悩むタイプ。対人関係では、人との一体感を大切にするため、親しい人との別離には精神的に耐えられない。
「近年増えてきた『軽症うつ病』や『仮面うつ病』(胃かいようなど身体症状として現れるうつ病)などは、ストレスによる影響が大きいので、性格にあまりこだわる必要はありません。大切なのは、うつ病にならないために、ゆとりをもった計画や、疲れる前に休息を取るなどの工夫をして、先手を打つことです」(田中院長)。
うつ病予防の心掛けは次の5つがポイントと、田中院長がアドバイスする。
<1>ゆとりのある生活…何事にも「八分目くらいがちょうどいい」と考えるようにすること。頑張りすぎない。
<2>物事に優先順位をつける…大切なものから順番に片付け、終わらなかったら「明日やればいい」と考えるようにする。
<3>自分だけで抱え込まない。
<4>肩の力を抜いてマイペースな生活を送る。
<5>生活の変化に注意する…生活に大きな変化があったときには、意識してリラックスすること。
「頑張りすぎない」で、うつ病予防を心掛けよう。
January 7, 2006 09:39 AM | トラックバック (4)
2006年01月06日
2006年01月06日
【第29回】軽度のうつ状態で不眠に
「不眠はうつ病のサイン」
仕事や家庭の問題などを抱え、布団に入ってもなかなか寝付けないという人はいる。あれこれと思考を巡らし、気が付けば夜が白むころに。しかし、そんな状態が長く続けば続くほど、別の病気が牙をむく。
「軽度のうつ状態により、不眠になるケースは増えています。ご本人は、うつ状態に気付かず、不眠の症状に悩み、睡眠薬などの薬を服用して解決しようとします。しかし、根本的なうつ状態が解決しない限り、不眠を解消することが難しいのです」と、精神科医として多くの治療にあたっている田中クリニック銀座(東京都中央区)の田中利幸院長は言う。
「『自分はダメな人間だ』などと考えたり、物事を決めたり実行することが困難になるなど、うつ状態が2週間以上も続くと、日常生活に支障が生じます。これがうつ病です」(田中院長)。自覚のない軽症のうつ病は、不眠だけでなく、食欲不振、体重減少、頭痛、肩凝り、目まい感などの身体症状として表れやすい。さらに、やる気はあるのに仕事に集中ができない、判断力の低下などの精神症状が加わる。
「よくうつ病は、心の風邪で薬を短期間でのめば治るという言葉を聞きます。しかし、原因が身体の病気や性格、環境などが関係しているときは、それほど簡単に治るものではありません」(田中院長)。うつ病の要因は、自分にとって大切なもの(対象)を失った「心因的要因」、職場や家庭内の問題などが悪化した「環境的要因」、ストレスや慢性的な疲労により身体のバランスを崩した「身体的要因」、きちょうめんでまじめな性格など「性格的要因」がある。このような要因により脳の中の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスが崩れ、うつ病を引き起こすと考えられている。
「うつ病の原因は大きく分けて3つあります。身体の病気や薬が原因の『身体因性うつ病』、性格や環境が原因となって起きる『神経症性うつ病』、そして、原因がはっきりしないうつ状態による『内因性うつ病』です。内因性うつ病は、短期間で治ることがありますが、その他のうつ病は、治療は容易ではないのです」(田中院長)。
だからこそ、重症化する前に「早期発見早期治療が重要」と、田中院長は強調した。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 6, 2006 08:32 AM | トラックバック (2)
2006年01月05日
2006年01月05日
【第28回】失敗の責任転嫁から脱却を
「病気になりたい症候群が急増中」
ストレス過多の時代。自殺者数は年間3万人を超え、うつ病やうつ状態に陥っている人は少なくない。だが、そんな時代を背景として、無意識のうちに「自分は病気だと思い込んでしまう」人がいる。
50代の会社員Aさんは、配置転換されてから実績が伸び悩むようになっていた。同僚は取締役や部長などに出世し「オレも負けてはいられない」と意気込んだものの、仕事は思うように進まない。ミスも重なり、年下の上司から叱責され、Aさんは思った。「上司が悪いから実績が上がらないんだ」と。そんな状態が続いたある日、Aさんは「仕事がうまくいかないのは、何か心の病気にかかっているからかもしれない」と考え始めた。インターネットで調べてみると、うつ病の症状の1つに仕事の能率の低下があった。
うつ病だと確信したAさんは、心療内科を受診した。しかし、「うつ病」の診断が下りない。Aさんは、実績が上がらないのを病気のせいにするため、無意識のうちに「病気になりたい症候群」に陥っていたのである。「中には、仕事ができない免罪符のように、うつ病であるとの診断書だけを求める人もいます」。こう話すのは、田中クリニック銀座(東京都中央区)の田中利幸院長。都心で開業する精神科医として多くの働く人を中心にメンタルケアを行っている。
「30代や50代の男性に多くみられる傾向です。転職や昇進などで環境が変わりやすい時期であり、同僚との差もみえてくるため、うつ病にもなりやすい時期でもあります。しかし、うつ病ではなく、仕事ができないのは病気のせいに違いないと、“うつ病になりたい症候群”も増えているのです」(田中院長)。
学校を卒業するまでは成績が優秀で、卒業後も順風満帆。このように挫折経験が乏しいと、仕事上のつまずきを受け止めることが難しい。しかも、社会では複雑な人間関係も絡んでいるだけに、試験問題のように正解が必ずしもあるわけでもない。そのため、不安と不満だけがどんどん膨らむことになる。
「中には『親の育て方が悪かった』と、ご両親のせいにされる方もいます。上司が悪い、親が悪い、病気のためなど、責任転嫁をし続けても何も解決しません。失敗を方向転換のチャンスととらえる柔軟な姿勢や、あるがままの自分自身を受け入れることも必要です」(田中院長)。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 5, 2006 12:29 PM | トラックバック (5)
2006年01月04日
2006年01月04日
【第27回】太陽光不足がうつ病原因に
「日照不足がうつ病の原因になる」
冬場は外出を控えたいと思う人はいるだろう。身が縮むほどの木枯らしの中、ゴルフどころかスキーをするのも避けたい。休日は、暖かい布団の中でゴロゴロ。しかし、そんな生活が、うつ病に結び付く。
「太陽光不足は、軽症うつ病の原因になると考えられています」と警鐘を鳴らすのは、ひもろぎ心のクリニック(東京都豊島区)の渡部芳徳理事長(精神科医)。男性更年期障害に伴ううつ病の治療を、帝京大学医学部付属病院泌尿器科と連携して行うなど、心の病のエキスパートである。
「患者さんの中では、SE(システム・エンジニア)でうつ病にかかる人が多い。その方々の生活パターンと、冬場にかかりやすい季節性のうつ病に共通してるのは、日照不足なのです」。SEとして室内の仕事を行っていると、外出する機会がない限り、あまり日光に当たることはない。30代のSE、Aさんは早朝から深夜まで仕事に打ち込んでいた。運動することはなく、食事も職場で済まし、休日はひたすら眠る生活を続けていた。そんなある日、体が重く出勤するのがつらい状態になった。仕事への意欲も薄れ、小さなミスも連発するようになった。上司の勧めで病院を受診し、うつ病であることが判明した。
では、なぜ日照不足が、うつ病を引き起こすのか。「脳内の神経伝達物質セロトニンとメラトニンが関係していると考えられます。セロトニンの不足によりうつ病が起こる報告は数多くありますが、セロトニンは暗くなると活動を停止し、代わってメラトニンが活動するのです。メラトニンの分泌が多くなり過ぎても、うつ病を引き起こすといわれています」(渡部理事長)。
仕事柄、日中の室内での作業が多くても、日照時間の短い冬場に外出を控えていても、セロトニンは不足しやすくメラトニンは過剰になりやすい。「セロトニンのもとになる必須アミノ酸の1つトリプトファンが不足すると、炭水化物を摂取したくなります。女性はパスタばかりを食べたくなったり、ごはんやうどん、そばなどを食べたいと思うようになるのです」(渡部理事長)。
日の光に当たる時間が少なく、炭水化物を欲するようになったら要注意。うつ病にならないためにも「太陽光線に十分あたること」(渡部理事長)。日照不足はうつ病の原因になると心得よう。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 4, 2006 08:35 AM | トラックバック (3)
2006年01月03日
2006年01月03日
【第26回】併発すると自殺危険率19.5%
「パニック障害とうつ病で自殺の危険度アップ」
一般的に、うつ病は、症状の進行とともに自殺を考えたり、実際に実行に移してしまうことで知られる。この自殺の危険率は、パニック障害に伴ううつ病において、一気に上昇する。
「自殺を考える割合は、うつ病のみならば7・9%ですが、パニック障害にうつ病が併発していると、19・5%になるとのデータがあります。パニック障害だけを発生している場合は、他の精神障害に比べて自殺をする比率は、それほど高くないという説もありますが、うつ病やアルコール依存症、さまざまな不安症などを併発しているときは、自殺の危険率が高くなるのです」と、ひもろぎ心のクリニック(東京都豊島区)の渡部芳徳理事長(精神科医)は言う。
パニック障害は、何の前触れもなく起こる「パニック発作」が特徴の心の病。激しい動悸(どうき)や呼吸困難、全身の震えなどの身体の変調に加え、死や発狂を意識するほどの強い不安が伴う症状が数分程度続く。重症の場合は、2日に1回以上の割合で発作に見舞われることもある。「次のパニック発作がいつ起こるのか不安で、物事を楽しめず、いつも不安な精神状態を持つようになります。それが、やがてはうつ状態へ移行し、うつ病を併発させるのです。パニック障害と正しく診断されないまま放置すると、かなりの確率でうつ病に移行します」(渡部理事長)。
激しい動悸や呼吸困難状態などの症状が現れたとき、最初はパニック発作とは気付かず、心臓病や肺の病気を疑い受診する。しかし、エックス線検査や心電図には異常なし。心の病と診断されたものの、心臓神経症や不安神経症、自律神経失調症などと間違われ、適切な治療を受けられないと、症状はどんどん悪化する。「患者さん自身が、別の病気だと思い込み、いくつも病院巡りをすることがあります。それは治療を遅らせ、大変危険な状態へと結び付きます」(渡部理事長)。
重症化し、うつ病を伴うだけでなく、ほかの病を併発することもある。「不安や恐怖を酔うことで紛らわせているうちに、アルコール依存症になってしまうケースもあります」(渡部理事長)。他の心の病が併発される前に、そして、なによりも重症化する前に、早めに専門医による適正な診断を受けることを心掛けたい。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 3, 2006 10:44 AM | トラックバック (4)
2006年01月02日
2006年01月02日
【第25回】「低血糖症」に注目
「不規則な食生活でパニック障害」
多忙な日々を送っていると、食生活は不規則になりがち。だが、それが引き金となりパニック障害に陥ることが…。激しい動悸(どうき)や呼吸困難、体の震えといった症状に加え、急激に膨らむ強い不安などが伴う発作が繰り返されるのだ。
「女性の方が男性の2倍かかりやすいといわれていますが、最近、男性の患者さんも増えています」。こう話すのは、ひもろぎ心のクリニック(東京都豊島区)の渡部芳徳理事長(精神科医)。「パニック障害は治る」(主婦の友社)の著者である。
パニック障害は、1960年代にニューヨークの精神科医クライン博士が見い出した。世界的にその病名が使われるようになったのは90年代。日本ではパニック障害に適応する薬「パロキセチン」が処方され始めた00年ごろからだ。「福島県白河市でもクリニックを開設していますが、パニック障害が見られるのは主に東京のクリニックの患者さんです。いわば大都市病。私は、食生活が関係していると考えています」(渡部理事長)。
パニック障害は、脳の中の神経伝達物質がうまく伝わらなかったり、間違って伝わったりすることから、予期しない発作や不安、恐怖に襲われるといわれている。その原因は、神経伝達物質の1つセロトニンが不足する、あるいは、別の神経伝達物質ノルアドレナリンが分泌過剰になるなど、諸説ある。渡部理事長は、食生活の乱れに伴う「低血糖症」に注目している。
血糖値は、甘い物などを食べると急激に上昇。それを正常に戻すためにインスリンが分泌される。しかし、甘い物などを食べ続けていると、血糖値を正常に戻す必要がないときにも、インスリンが多量に分泌され、低血糖の状態に陥ってしまう。「低血糖になるとイライラします。そのため、甘い物が欲しくなります。しかし、その状態が続くと、血糖値の上昇が緩やかな穀類などを食べたときに、急性の低血糖症に陥り、気分が悪くなることがあるのです。それがきっかけで、パニック障害になった患者さんはいます」(渡部理事長)。
食生活の乱れは、生活習慣病などの身体的な疾患だけでなく、心の病にも結び付く。パニック障害は、重症になると日常生活にも支障をきたす。発作が起きたならば、早めに専門の病院を受診しよう。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 2, 2006 10:42 AM | トラックバック (5)
2006年01月01日
2006年01月01日
【第24回】不規則な睡眠が引き金に
「不規則な睡眠が男性更年期障害のきっかけに」
男性更年期障害の治療では、男性ホルモン補充療法など薬剤を用いるだけでなく、生活環境の改善も指導している。そのカギを握る1つが睡眠だ。「不眠は男性更年期障害の最大の危険因子です。遠距離通勤の不規則な睡眠が、引き金になることがあります」と、帝京大学医学部付属病院泌尿器科の堀江重郎主任教授は言う。
1時間以上も通勤電車に揺られ、座席で居眠りという光景はありがち。帰宅時の電車の中でもしばし夢の中。このような中途半端な睡眠のために、布団に入っても寝付きにくくなってしまうことがある。遠距離通勤でもともと睡眠時間が短いにもかかわらず、寝付きの悪さからさらに短縮。翌日に疲労を持ち越し、その積み重ねが男性ホルモンの減少へと結び付く。
「不規則な睡眠を改善することは、非常に重要です。遠距離通勤の方の場合は、週に1度は会社の近くに泊まり、適度な運動をし、ぐっすり眠ることを指導しています。また、頭の緊張を取ることも大切。ヨガや太極拳、温泉などによりリラックスすることも、男性更年期障害の予防に結び付きます」(堀江主任教授)。
睡眠時間が不規則で、何をするのも「おっくう」になったときは、男性更年期障害の可能性大。しかし、自覚がないだけでなく、男性更年期障害の治療の1つ「テストステロン補充療法」を避けたいと思う人もいる。男性ホルモンのテストステロン補充に対して、オリンピックのドーピングや強精剤などのイメージが根強く残っているからだ。そのため、米国での03年のテストステロン処方件数が200万件以上であるのに対して、日本では100分の1のおよそ2万件に過ぎない。「テストステロン補充療法により、男性更年期症状のスコアは3カ月後に改善されています。しかし、この治療は日本全国に広まってはいないというのが現状です」(堀江主任教授)。
精神症状や身体症状といったさまざまな症状を引き起こす男性更年期障害。別の病気と診断されることもあるからご用心。やはり、専門に治療を行う泌尿器科で、診断と治療を受けることが望ましい。「泌尿器科はいわばメンズクリニックです。男性更年期障害以外の疾病に関しても、当然、専門的な診断や治療を行っていますので、気になる症状があるときは受診してください」(堀江主任教授)。
【医療ジャーナリスト安達純子】
January 1, 2006 10:50 AM | トラックバック (0)
