2005年12月22日
中年男の養生学
【番外編】母方遺伝子で進行する脱毛
「脱毛は母方の遺伝子で加速する」
父親や祖父が薄毛だと自分も…。一般的に、男性型脱毛症の体質的な遺伝は、科学的根拠のみならず、経験則的にも知られている。加えて、母方の祖父も男性型脱毛症の場合、ダブルに遺伝すると思われがちだ。しかし、男性型脱毛症における父方と母方からの体質的な遺伝は異なる。
「男性型脱毛症と関連のある男性ホルモン(テストステロン)に対する感受性は、実は母方の体質遺伝なのです。父方の体質遺伝は、男性型脱毛症に関連した酵素活性。つまり、父方と母方の体質遺伝が組み合わさることで、男性型脱毛症はより進行しやすくなります」と、総合頭髪医療を行う脇坂ナカツクリニック(大阪市北区)の脇坂長興院長は説明する。
ここで男性型脱毛症の起こる仕組みをおさらいしよう。まず、血中のテストステロンは、5α-還元酵素によって5α-ダイハイドロテストステロン(DHT)へと変換される。DHTは、生理活性がテストステロンより10~30倍も強い。このDHTが毛根で男性ホルモン受容体と結び付き、成長を抑制して抜け毛へと導く。
「父方の体質遺伝は、5α-還元酵素の活性にかかわっています。一方、母方の体質は、DHTが毛根で男性ホルモン受容体と結び付く感受性にかかわっているのです。そのため、男性型脱毛症が進行しやすいのは、母方の体質遺伝が大きいと考えられます」(脇坂院長)。
一方、体質的な遺伝において、体毛が濃くなるのは、テストステロンの量と、テストステロンに対する感受性が関係している。「実は、5α-還元酵素には、タイプⅠとタイプⅡがあります。タイプⅠは全身の毛根の皮脂腺と肝臓に集まっていますが、タイプⅡは前頭部、頭頂部、前立腺に集まっているのです」(脇坂院長)。思春期までは、テストステロンの量が多いと体毛や毛髪は成長しやすくなる。では、なぜ男性型脱毛症では、前頭部から頭頂部にかけての毛髪だけ抜けるのか。
「タイプⅠが存在するのは全身の毛根の皮脂腺。男の方が毛深く脂っぽいのは、テストステロンの量と、タイプⅠが変換したDHTによるもの。タイプⅡは、前頭部や頭頂部の毛母細胞や毛乳頭に存在するため、その部分の毛髪だけが直接影響を受けて産毛になりやすい。結果として体毛は濃いのに薄毛という状態が起こるのです」(脇坂院長)。まさにこれが「体毛が濃くて精力の強い人は、髪が薄い」証しなのだ。
【医療ジャーナリスト安達純子】
December 22, 2005 08:41 AM
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