健康連載ブログ

2005年12月07日

がんと向き合う

【最終回】ファンの声援が支えた

「大隅寿男さんの選択(4)」

リツキサンという分子標的治療薬と抗がん剤を組み合わせた治療が、5カ月間で6コース行われた。

 その副作用は、生易しいものではなかった。「抗がん剤を入れた途端、吐き気がこみ上げて、髪は抜ける、むくみで足がゾウのようになったこともありました。一番つらかったのは便秘」と大隅さん。医師からは、リツキサンががんを殺していく様子をイメージしなさいと言われた。そのための苦しさなんだと。

 そして、何より大隅さんを支えたのはファンや仲間の声援だった。レコード会社はわざわざ治療に合わせてレコーディングを早めてくれた。「普通ならもうダメと言われるところなのに、涙が出るほどうれしかった」と大隅さんは語る。治療の合間には、医師の勧めもあって帽子をかぶり、ライブで演奏を続けた。病気を知ったファンからそのたびに「ガンバレ」と大きな声援が飛んだ。

 そして、翌年の春、大隅さんはがんが消滅したことを告げられたのである。

 思えば、これは大隅さんが病気のことを隠さずに話したことから、すべてが始まったともいえる。みんなに相談したからこそ、セカンドオピニオンを受けることになり、診断が変わり、信頼する医師と巡り合えた。仕事を治療中もずっと続けることで多くの人から励ましや善意を受け、大隅さん自身もつらい治療の最中でも演奏の喜びを得ることができた。そのおかげで落ち込まずにすみ、免疫力の向上にもつながったのかもしれない。

 「元気になったのは、全国のファンのおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです」と大隅さん。見ず知らずの人の拍手や声援が身にしみるようになった。治療直前にレコーディングしたCD「グレイトフル」はちょうど治療が終了した3月に発売となり、全国ツアーに出発。ステージで「うれしくてよく泣きました」。今またジャズマンとして大隅さんは新たな出発をしたのである。(おわり)

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆治療 リツキサンはB細胞上のCD20という目印にとりつく抗体。B細胞ががん化した非ホジキンリンパ腫では、これと3種類の抗がん剤とホルモン剤を1つ組み合わせたCHOP療法を行うのが標準的。

December 7, 2005 10:13 AM

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