2005年12月04日
がんと向き合う
【第53回】みんなに相談しよう
「大隅寿男さんの選択(1)」
ジャズドラマーの大隅寿男さんが、悪性リンパ腫と告げられたのは、01年5月のことだ。「首のリンパ節がポコンと腫れたんです。バイ菌でも入ったかなと思っていたのですが、1月、2月たっても治らない。おかしいなと思って病院に行ったのがきっかけでした」。
いろいろ検査をしても分からず、結局組織を摘出して病理検査をすることになった。悪性の疑いもあると言われた大隅さんは「何かあったら私に話してください」と伝えていた。自覚症状もなかったし、この時はまだ安易に考えていたという。だが、医師の言葉は大隅さんの想像をはるかに超えていた。
「悪性リンパ腫(しゅ)で病期は4期。悪性度が高いタイプなので、進行が非常に早く、どんどん進んでいきます。急を要するので、この病院で治療を受けるかどうか、2日以内に決断してください」。悪性リンパ腫には多くの種類があるが、大隅さんの場合は、非ホジキンリンパ腫というタイプで、抗体を作るB細胞というリンパ球がガン化していた。それも4期は、すでに骨髄や血液など全身にがん細胞が広がった状態だ。
矢継ぎ早の医師の言葉に、頭がしびれるようだった。早ければ、あと半年から1年。それが医師の判断だった。
当時、大隅さんは58歳。ジャズドラマーとして長い下積み時代を送り、やっと自分のバンドをつくって好きなジャズのスタンダードナンバーも演奏できるようになり、世間でも認められるようになったのは50歳を迎えたころだった。前年には、音楽生活30周年を記念して初めて赤坂で個人名を冠したコンサートも開催した。
やっと表舞台に出て、これからという矢先に悪性リンパ腫の診断である。「もう終わったのかなと思いました」。だが、95歳になる母親を残して、先に逝くわけにはいかなかった。
とにかく、みんなに相談しよう。この「隠さずみんなに相談すること」が、生還への第1歩になるのである。
【医療ジャーナリスト祢津加奈子】
◆大隅寿男 1944年(昭和19年)、福井県生まれ。ジャズドラマー。明治大学で軽音楽クラブに所属、以来音楽活動に打ち込み、昨年ジャズ界への貢献が評価され南里文雄賞受賞。今年受賞を記念して「ON THE ROAD」を発表。
December 4, 2005 11:15 AM
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