2005年12月03日
がんと向き合う
【第52回】移植も選択肢
「肝臓がん(6)」
肝移植というと、まだ現実とはほど遠い医療と思っている人も多いと思う。しかし、今年発表された肝がんの診療ガイドラインでは、肝移植が選択肢の1つになっている。
日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授によると、肝移植は肝不全、つまりいろいろな病気で肝臓が満足に働かなくなった人を対象にした医療だそうだ。肝臓がんの場合も、肝臓の働きがあまりに悪くなると、最後の切り札と言われる肝動脈塞栓(そくせん)療法さえも行えなくなる。これまではその時点で治療手段もなくなっていたのだが、ここに来て登場したのが、肝移植だ。
高山教授によると、肝臓がんの場合、ミラノ大学が提唱した基準、つまりがんが1個で5センチ以下、あるいは3個以下で3センチ以下の場合がよい適応になるそうだ。「ミラノ基準に当てはまる人の場合、5年生存率は80%」とかなり高い成績が報告されている。実際には、肝移植ができないと、いずれ命を失うことになるので、ミラノ基準を超えても肝移植を受けている人は少なくない。この場合「5年生存率は60%ぐらい」になるそうだ。
日本では、1989年に最初の生体肝移植が行われ、現在までに3000例以上の肝移植が行われている。免疫抑制剤の進歩やウイルス性肝炎の治療法が進歩してきたことも、成績の向上に貢献している。日本では脳死ドナー(臓器提供者)が少ないので、そのほとんどが生体肝移植だ。親子、兄弟姉妹など近親者の間で移植が行われている。肝臓がんでの移植は、全体の1割ぐらいだそうだ。現在では、肝臓がんの場合、ミラノ基準に合致するなどいくつかの条件が合えば、健康保険で肝移植が受けられる。
高山教授によると、「移植後は、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を一生使い続けることになるので、免疫が低下して肝臓がんが再発しやすくなる傾向はある」そうだ。しかし、これまで肝不全のために肝臓がんの治療もできず、助からなかった人に、肝移植は大きな希望の道を開いたといえそうだ。
【医療ジャーナリスト祢津加奈子】
◆移植の条件 移植を受ける人も肝臓を提供する人も60歳くらいまでが目安。血液型が合致すること、提供者は健康な近親者に限られている。
December 3, 2005 09:56 AM
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