健康連載ブログ

2005年12月31日

2005年12月31日

【第23回】不安とうつのホルモン増加

「男性更年期障害で不安とうつのホルモンが増加」

 中高年の自殺の引き金になるうつ病。会社や家庭内でのストレスが蓄積されやすい年代は、うつ病に陥りやすく早めの受診は欠かせない。だが、抗うつ薬の治療でも、なかなか治らない重症のうつ病もある。

 会社員のAさんは、40歳を過ぎたころにうつ病になり、精神科の治療で症状は改善されていた。ところが、50歳になったころ、再び症状が悪化してしまう。イライラして夜は眠れず、仕事に集中ができない。言い知れぬ不安がどんどん膨らんでいく。抗うつ薬の治療を半年以上受けても、全く症状が改善されない。主治医から泌尿器科を紹介され、検査を受けた結果、男性更年期障害に伴う重症のうつ病になっていることが判明。男性ホルモン補充療法など、男性更年期障害の治療を同時に受けることで、3カ月後には症状が改善され、抗うつ薬の服用量も減少することができた。

 では、なぜ、男性更年期障害はうつ病を悪化させてしまうのか。「男性ホルモンのテストステロンは、不安とうつのホルモンコルチゾールとかかわりがあるのです」と、帝京大学医学部付属病院泌尿器科の堀江重郎主任教授は説明する。

 「頭の中には、恐怖を記憶し、悲しみを感知する扁桃(へんとう)体があります。通常は、その恐怖や悲しみは抑制されているのですが、コルチゾールが増加すると不安や悲しみ、恐怖に包まれるのです。テストステロンは、余裕のホルモンとして、コルチゾールと拮抗(きっこう)しています。テストステロンが多ければコルチゾールは抑制されますが、男性更年期障害によって男性ホルモンが減少していると、コルチゾールが増えてしまうのです」(堀江主任教授)。

 男性更年期障害の受診者のうち、40・4%は「大うつ病」とのデータがある。また、前立腺がんの治療の一環として、男性ホルモン分泌を遮断する治療を行った症例でも、不安やうつの症状は高まっていた。「コルチゾールにより不安や悲しみ、恐怖が慢性的になることで、うつ病は悪化します。男性ホルモンとコルチゾールのバランスを正常に戻さない限り、抗うつ薬だけでの改善は難しくなってしまうのです」(堀江主任教授)。

 泌尿器科における男性更年期障害の診断では、質問紙を用いたうつ病に対する症状評価を行っている。うつ病が進行する前に、早めの受診を心掛けたい。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 31, 2005 10:39 AM | トラックバック (3)

2005年12月30日

2005年12月30日

【第22回】生活習慣病発見の手がかり

「EDが生活習慣病発見の手掛かりに」

 男性ホルモンの低下に伴いさまざまな症状を引き起こす男性更年期障害。ED(勃起=ぼっき=障害)もその症状の1つ。日本におけるEDの割合は、加齢とともに上がり、中等度以上が50代以降で40%以上に上る。だが、男性更年期障害に陥っている場合、この割合は急激に上昇してしまう。「男性更年期障害患者のほぼ90%はEDです」と、帝京大学医学部付属病院泌尿器科の堀江重郎主任教授はいう。

 中高年になってEDと自覚しても、「年だから仕方がない」とあきらめてしまう人はいる。しかし、EDの陰に潜む病は、見逃せない。「EDは、生活習慣病を合併している割合が高いのです。米国でのED患者27万人の調査結果では、高血圧が42%、高脂血症42%、糖尿病20%、うつ病11%になっています。EDの診断は、このような生活習慣病発見の手掛かりとなるのです」(堀江主任教授)。

 男性更年期障害からED、そして生活習慣病へ。もちろん、これらと関係が深いのは男性ホルモンだ。その働きは、性機能だけでなく、脳の働きや血管、脂質代謝など、さまざまな身体機能にかかわっている。「性的刺激により勃起が促されるときに海綿体内皮細胞や神経からは、NO(一酸化窒素)が放出されます。このNOは、冠状動脈を軟らかくするなど、動脈硬化を防ぐ作用があるのです。また、男性ホルモンのテストステロンが減少すると、内臓脂肪は反比例して増加します。また、長寿の人ほど、男性ホルモンの量はキープされていることが報告されています」(堀江主任教授)。

 すでにEDと自覚しつつ、会社などの健康診断で生活習慣病を指摘されている人もいるだろう。生活習慣病改善として、内科では、食事や運動の改善、アルコールを控えめにし、禁煙というのがパターンとなっている。そのような指導に従って体調が改善している人はいいが、そうではない場合も…。「喫煙者が急に禁煙すると、男性ホルモンが減ることで体重が増えたり、イライラすることがあります。プログラムに従って、男性ホルモン量を測りながら適切に禁煙することが望ましいのです」(堀江主任教授)。

 生活習慣の改善は、男性更年期障害の治療を専門に行う泌尿器科で、適切に行うことが重要といえる。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 30, 2005 10:02 AM | トラックバック (0)

2005年12月29日

2005年12月29日

【第21回】“おっくう”になったら要注意

「“おっくう”の陰に潜む男性更年期障害」

 多忙な年末を迎え、ぐったりしている人はいるだろう。休日のゴルフも行く気になれない。毎週、目を通していた週刊誌でさえも読むのがおっくう。「あ~、疲れた。オレも年だな」と思ったときに、体に思わぬ病気が潜んでいることが…。「男性更年期障害の可能性があります。何事もおっくうになり、それまで習慣にしていたことをやめてしまったときには要注意です」と警鐘を鳴らすのは、帝京大学医学部付属病院泌尿器科の堀江重郎主任教授。男性更年期障害の診断と治療のスペシャリストだ。

 更年期障害といえば、閉経後の女性において、女性ホルモンの低下に伴うさまざまな症状が起こることで知られている。男性更年期障害も、男性ホルモンの低下に伴う症状は多岐にわたる。「男性ホルモンは、性機能だけではなく、認知機能や骨、筋肉、血液、血管、脂質代謝にかかわっています。そのため男性ホルモンの低下は、性欲の減少だけでなく、さまざまな症状を引き起こします。習慣としていたことがおっくうになったり、意欲がなくなり仕事が続けられないのも、男性更年期障害の1つの症状です」(堀江主任教授)。

 精神症状としては、健康感の減少、不安、いらいら、うつ、不眠、注意力散漫、記憶力の低下、性欲の減少。身体症状としては、筋力低下・筋肉痛、疲労感、ほてり・発汗、頭痛・めまい、性機能低下、頻尿。しかし、このような男性更年期障害の症状は「仕事で疲れたから」「年だから」などといって見過ごされがちだ。「女性は閉経後に100%女性ホルモンが低下します。が、男性ホルモンは、20代から低下するものの、加齢とともに極端に低下する人としない人がいるのです。そのため自覚に乏しい」(堀江主任教授)。

 50代の会社役員は、50歳を境に感情の起伏が激しく、怒りっぽくなった。イライラして仕事がはかどらない一方で、何かやろうとしても昔のように根気が続かない。ますますイライラして寝付きも悪くなった。そのうちに頻尿になり、夜中に何度もトイレに行ったり、身体がほてって急に汗をかいたり…。病院を受診すると、泌尿器科を紹介され、男性更年期障害と診断された。「治療により男性ホルモンを補充することで、症状は改善されます。何よりも、ほっておかないことが大切です」(堀江主任教授)。

 “おっくう”になったら男性更年期障害の可能性があることをお忘れなく。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 29, 2005 12:04 PM | トラックバック (0)

2005年12月28日

2005年12月28日

【第20回】自慰方法に問題

「子供のころのクセで射精障害に」

 バイアグラやレビトラといった勃起(ぼっき)不全治療薬の登場で、ED(勃起障害)は、10年以上も前に比べれば治療がスムーズに行われるようになっている。その一方で射精障害の問題が浮上していた。

 「射精障害の方は増えています」と言うのは、東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター(泌尿器科)の永尾光一講師。日本性機能学会の理事であり、専門医制度の事務局長を務めるスペシャリストだ。「東邦大学における射精障害の頻度は、膣内射精不能が最も多い」(永尾講師)。

 膣内射精不能は37%。マスターベーションでは射精はできても、膣内ではできないことを示す。早漏・遅漏は21%、膀胱(ぼうこう)内に射精していまう逆行性射精は21%、射精が全くないは19%、その他2%になっている。「膣内射精不能は、膣内では快感を感じることができずに中折れしてしまう。これはマスターベーションのやり方に問題があるのです」(永尾講師)。

 膣内射精不能に陥りやすいマスターベーションの方法は∧1∨布団や手で押さえつける∧2∨膣内よりも強い力∧3∨動きが速い。「セックスとは違う方法でマスターベーションを行うことで、膣内で快感を得られなくなってしまうのです。子供のころの情報が不十分で、独自に覚えた方法がクセになっており、結婚後に問題が発覚し、夫婦関係がうまくいかなくなるケースも珍しいことではありません。不妊の原因にもなっているのです」(永尾講師)。

 膣内射精不能では、バイアグラやレビトラで勃起を持続させつつ、ブリッジ法という手で刺激しつつセックスを行う方法が治療により指導される。「コツをつかめば、膣内射精ができるようになりますが、なかなかクセが抜けずに治りにくい方もいます」(永尾講師)。

 コツをつかめなくても、不妊を解消する治療はある。射精後の精子をコップに取り、針のない注射で排卵日の妻の膣に挿入するのだ。いわば、自分たちで行う人工授精。1回で妊娠してしまった人もいる。妻はホッと胸をなで下ろし、家庭は安泰に。「膣内射精障害は、不妊や家庭不和の原因になるだけに、子供のころからの教育が必要と考えています」(永尾講師)。

 我が子がマスターベーションを行う時期になったら、正しい方法を教えよう。それが、将来の膣内射精障害を防ぐ最大の予防策といえる。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 28, 2005 09:25 AM | トラックバック (10)

2005年12月27日

2005年12月27日

【第19回】早漏にも治療がある

「射精障害でEDに」

 身体に異常のない心因性のED(勃起=ぼっき=障害)には、射精障害が関係していることがある。例えば「早漏」。パートナーが満足する前に射精しやすい場合だ。

 30代の会社員Aさんは、新婚初夜に「もう終わりなの?」と言われた。「前から思っていたけど、早過ぎない?」と新妻は不満タラタラ。Aさんはその言葉に深く傷つけられた。満足させようと最初のころは頑張ったが、仕事のストレスも重なり、ある日、性交に失敗してしまう。「信じられない!」と言う妻のあきれたような顔にさらに傷ついた。「今度こそ!」と意気込んだもののまた失敗。そのうち全く勃起しなくなり、泌尿器科を受診してEDと診断された。

 「米国の有病者データでは、EDが5%に対して早漏は21%に上ります。早漏はEDのおよそ4倍。日本では中等度以上のEDは1130万人と推定されていますから、4倍では4000万人以上。多くの方が『早漏』になっている可能性があります」と、東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター(泌尿器科)の永尾光一講師は言う。

 女性の膣内挿入希望時間を永尾講師が調べたところ、平均年齢26・9歳で平均時間は16・7分。「これはあくまでも平均値です。女性によって15秒~120分と幅広いのですが、おおむね満足するのは15分程度と考えられます。女性によって時間は異なりますので、いかに満足させられるかが問題です」(永尾講師)。

 自分自身は大満足でフィニッシュしても、女性は不満顔。「これが当たり前」と男性は思っていても、女性はそう感じていないことがある。そのため、女性の方が、性交ができなくなるケースも。「あまりにも早い『早漏』は、女性の性機能障害の原因になります。気持ちの良くない経験が積み重なるうちに、セックスが嫌いになってしまう人もいるのです」(永尾講師)。

 女性によって射精時間を変えなければならず、疲労感の伴うセックスから遠ざかればEDが待ち受ける。だが、治療によりセックスの方法を変えることで、夫婦ともにEDを回避することが可能だ。「現在、米国では早漏治療の薬が開発されています。抗うつ薬の1つ『SSRI』という薬の副作用として、射精が遅くなるのは分かっているのです」(永尾講師)。早漏にも治療があることを肝に銘じたい。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 27, 2005 01:06 PM | トラックバック (10)

2005年12月26日

2005年12月26日

【第18回】自覚がないケースも

「無自覚のEDで離婚の危機に」

 結婚後、妻に対する性欲が薄らぐ場合がある。カップル時代のロマンチックな夜とは、妻の態度ががらりと変わり「今日は排卵日よ」と、子作り目的の性交を求められ興ざめてしまう。あるいは、もともと性欲が淡泊で、結婚後は仕事や趣味に没頭。マスターベーションをするだけで性交に興味を失うなど、理由はさまざまだ。

 「明らかな問題もなく、1カ月以上も性交がない状態を『セックスレス』と定義しています。その原因がED(勃起=ぼっき=障害)にもかかわらず、ご本人は全く自覚していないケースも少なくありません。それが離婚の原因つながることもあります」と、東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター(泌尿器科)の永尾光一講師は説明する。

 同病院は、99年に日本初の「女性性機能外来」を開設。女性の性機能障害だけでなく、パートナーのED治療に伴う問題にも専門医が対応している。永尾講師の調べでは、この外来に訪れた女性の半数以上は、男性のEDに悩んでいた。「例えば、男性はセックスができなくても『愛している』と考えますが、女性は愛情とセックスは同一のものと認識しています。双方の考え方に隔たりがあるため、離婚に結び付いてしまうのです。セックスは、若い世代にとっては単なる楽しみではなく、人生にかかわるものだけに、EDは夫婦の危機に結び付きます」(永尾講師)。

 女性の性交に対する協力度の調査結果では、20~40代の女性はおよそ半数以上が積極的。男性がそれに応えることができないと「浮気をしているのではないか」「愛情が薄れた」など、女性の悩みは深くなっていく。「女性性機能外来でEDに悩まれているときには、ご主人にも一緒に受診していただくことをお勧めしています。バイアグラなど勃起不全治療薬で、EDの治療が可能だからです。しかし、ご主人が受診しないこともあります」(永尾講師)。

 仕事が多忙。マスターベーションはできるし、身体に異常はない。また、子供はほしくないなど、受診を拒否する理由はさまざま。永尾講師は「ご主人への手紙」を書き、受診を促すようにはしているが、それでも受診しない人はいる。「不妊外来の男性不妊症の原因の28%はEDであることから考えても、ご本人の自覚のないEDは非常に深刻です」(永尾講師)。1カ月以上も性交がないときはセックスレス。ED治療で離婚の危機は回避してはいかがだろうか。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 26, 2005 09:28 AM | トラックバック (0)

2005年12月25日

2005年12月25日

【第17回】9割は心因性

「30代ED(勃起障害)の9割は心因性」

 加齢とともに増加するED(勃起=ぼっき=障害)は、軽症を除く中等度および重症の人が、国内で1130万人と推定されている。40代では5人に1人はEDといわれ、その割合は年齢が高くなるにつれて増えていく。ところが、泌尿器科の外来にED治療に訪れるのは、30代が最も多い。東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター(泌尿器科)の永尾光一講師の調べでは、同病院受診患者数は30代が33・1%。40代の20・1%や50代の15・8%と比べても多いのだ。「30代のEDの9割は、心因性によるものです」(永尾講師)。

 EDの定義は「性交時に十分な勃起が得られないため、あるいは十分な勃起が維持できないために、満足な性交が行えない状態」。年齢が高くなると男性ホルモンが低下したり、勃起にかかわる神経や血流に障害が生じるなど、EDのリスクは自然に高まる。心因性というのは、このような身体的には全く異常がなく、心の問題によって引き起こされるEDを示す。

 「1度性交に失敗した経験が、セックスに対する不安を生み出したり、自信を失わせることがあります。それはEDの引き金になります。また、仕事のことで頭がいっぱいといった過重なストレスも、心因性のEDの原因になっています」(永尾講師)。

 ペニスが勃起するには、大脳の興奮が不可欠。大脳の興奮が脊髄(せきずい)神経を経由してペニスに伝えられることで、勃起のための反応が始まるのだ。しかし、不安やストレスは、この大脳の興奮を抑制してしまう。

 例えば、性行為の途中で「また失敗したら…」といった不安が膨らむと、大脳は性的な興奮が遮られ、勃起していたペニスはなえる。そんなとき、妻や彼女から不満を言われると、ますますセックスに対する不安が膨らむ。結果として、失敗が繰り返され、そのうち全く勃起しないような状態に陥る人もいる。

 「失敗が重なれば心因性のEDは、症状が悪化します。ただ、バイアグラやレビトラといった勃起不全治療薬によって、成功を積み重ねていけば治りやすい。成功が自信につながるからです」(永尾講師)。自信を取り戻すことが、心因性EDの改善に結び付く。治療は「患者さんによっても異なりますが、半年程度が目安です」(永尾講師)。1人で悩まずに医療機関へ受診を。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 25, 2005 09:53 AM | トラックバック (0)

2005年12月24日

2005年12月24日

【第16回】服用の仕方を守る

「バイアグラが効かないのはこんなケース」

 「バイアグラ」をのんでも効果がなかった-。ED(勃起=ぼっき=障害)治療の専門医を受診する人からは、こんな声が聞こえる。効果が高いと評判を呼び、98年に日本国内で発売された「バイアグラ」だが、効かなかったというのだ。

 「『バイアグラ』は性交の1時間前の空腹時にのむ必要があります。その説明を受けておらず、のみ方の説明をして再服用してもらったところ、効果があったという患者さんはいます」と、やじま泌尿器科クリニック(神奈川県相模原市)の矢島通孝院長は言う。

 「バイアグラ」は、ED治療の専門ではない内科などでも処方されているため、薬に関する説明が不十分な場合があるのだ。また、昨年6月に発売された経口ED治療薬「レビトラ」を扱っていない医療機関もあり、EDが改善されないままというケースが…。「服用の仕方を守り、効果がない場合には、全身状態を診ながら薬の量を増やすことで、多くの患者さんがEDを改善しています。ただ、初回限りで再受診されない人もいて、その方々が本当に改善したのかどうかは分かりません」(矢島院長)。

 経口ED治療薬を1回のみ、その後は薬に頼らなくても勃起するようになる人もいる。だが、処方された薬をのんでもダメ。4、5回試したが、全く効果がなかったという場合、病院へ行く気にならないということもある。「経口ED治療薬を1回試して効果が得られなくても、あきらめずに相談していただきたい。私たちED治療の専門医は、そういう方々のためにも治療を行っているのですから」(矢島院長)。

 経口ED治療薬は、狭心症の薬など併用禁忌の薬がある。また、全身疾患のチェックも必要。そのため、医療機関を受診するときには、現在のんでいる薬が分かるもの(調剤薬局等で出される薬の説明書)や、定期健康診断を受けているときにはその結果表を持参すると、診療がよりスムーズになる。

 「今後は、現在の経口治療薬とは別のメカニズムの薬も開発されるでしょう。EDは“QOL(生活の質)疾患”ともいわれ、命にかかわる病気ではありませんが、人生を楽しむ上では改善すべきものです。年齢に関係なく、悩むときには、専門の医療機関に受診をすることをお勧めします」(矢島院長)。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 24, 2005 10:26 AM | トラックバック (0)

2005年12月23日

2005年12月23日

【第15回】3大ED薬の実力度

「バイアグラ、レビトラ、シアリス3大ED薬の実力度」

 昨年6月、ED(勃起=ぼっき=障害)の経口治療薬として、新たにバイエル薬品から「レビトラ」が発売された。98年に発売された「バイアグラ」とどう違うのか。

 これらの薬の治験を行ったやじま泌尿器科クリニック(神奈川県相模原市)の矢島通孝院長は、次のように説明する。「勃起を促すcGMP(サイクリックグアノシン1リン酸)を分解する酵素のPDE-5(ホスホジエステラーゼ・タイプ5)を阻害するという点で、どちらも同じです。ただし、服用の際の状況に差があります」。

 「バイアグラ」は、性交の1時間ほど前の空腹時に服用する必要がある。そのため、彼女や妻との食後にというわけにはいかない。一方の「レビトラ」は、空腹に関係なく1時間前に服用できるのが特徴。食事をしながらムードを盛り上げることも可能だ。

 「性交のタイミングが取りやすいことから、『バイアグラ』から『レビトラ』に移る患者さんは多い。ただし、『レビトラ』も、脂っこい食事の後に服用すると、効きが悪くなる傾向にあります」(矢島院長)。

 このようにED治療を行う専門医療機関では、2剤を扱っている。「バイアグラ」で効果がなくても、「レビトラ」という新たな治療薬により、EDは改善しやすくなっているのだ。

 さらに、矢島院長は昨年、米国イーライリリー社の経口ED治療薬「シアリス」の国内治験も行っている。この薬も、PDE-5の阻害薬なのだが、食事の有無に関係なく、効果の持続時間が長いのが特徴。
 「効果は36~48時間持続します。そのため、既に承認を受けて発売されている海外では“ウィークエンド・ピル”といわれています。土曜日にのめば日曜日にまで効果が持続するからです。3カ月の治験では評判が良く、日本でも承認されて発売されれば、さらに治療薬の選択肢が増えることになります」(矢島院長)。

 現在、ED3大治療薬として、個人輸入をしている人もいるが、まがい物も存在してるのでご用心。また副作用や服用禁忌の疾患もあるだけに、医療機関で診断を受けてか%

December 23, 2005 10:08 AM

2005年12月22日

2005年12月22日

【番外編】母方遺伝子で進行する脱毛

「脱毛は母方の遺伝子で加速する」

 父親や祖父が薄毛だと自分も…。一般的に、男性型脱毛症の体質的な遺伝は、科学的根拠のみならず、経験則的にも知られている。加えて、母方の祖父も男性型脱毛症の場合、ダブルに遺伝すると思われがちだ。しかし、男性型脱毛症における父方と母方からの体質的な遺伝は異なる。

 「男性型脱毛症と関連のある男性ホルモン(テストステロン)に対する感受性は、実は母方の体質遺伝なのです。父方の体質遺伝は、男性型脱毛症に関連した酵素活性。つまり、父方と母方の体質遺伝が組み合わさることで、男性型脱毛症はより進行しやすくなります」と、総合頭髪医療を行う脇坂ナカツクリニック(大阪市北区)の脇坂長興院長は説明する。

 ここで男性型脱毛症の起こる仕組みをおさらいしよう。まず、血中のテストステロンは、5α-還元酵素によって5α-ダイハイドロテストステロン(DHT)へと変換される。DHTは、生理活性がテストステロンより10~30倍も強い。このDHTが毛根で男性ホルモン受容体と結び付き、成長を抑制して抜け毛へと導く。

 「父方の体質遺伝は、5α-還元酵素の活性にかかわっています。一方、母方の体質は、DHTが毛根で男性ホルモン受容体と結び付く感受性にかかわっているのです。そのため、男性型脱毛症が進行しやすいのは、母方の体質遺伝が大きいと考えられます」(脇坂院長)。

 一方、体質的な遺伝において、体毛が濃くなるのは、テストステロンの量と、テストステロンに対する感受性が関係している。「実は、5α-還元酵素には、タイプⅠとタイプⅡがあります。タイプⅠは全身の毛根の皮脂腺と肝臓に集まっていますが、タイプⅡは前頭部、頭頂部、前立腺に集まっているのです」(脇坂院長)。思春期までは、テストステロンの量が多いと体毛や毛髪は成長しやすくなる。では、なぜ男性型脱毛症では、前頭部から頭頂部にかけての毛髪だけ抜けるのか。

 「タイプⅠが存在するのは全身の毛根の皮脂腺。男の方が毛深く脂っぽいのは、テストステロンの量と、タイプⅠが変換したDHTによるもの。タイプⅡは、前頭部や頭頂部の毛母細胞や毛乳頭に存在するため、その部分の毛髪だけが直接影響を受けて産毛になりやすい。結果として体毛は濃いのに薄毛という状態が起こるのです」(脇坂院長)。まさにこれが「体毛が濃くて精力の強い人は、髪が薄い」証しなのだ。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 22, 2005 08:41 AM | トラックバック (1)

2005年12月21日

2005年12月21日

【第14回】薬の選択肢増えたED治療

「バイアグラで9割の人がED改善」

 加齢とともに増加しがちな悩みの1つにED(勃起=ぼっき=障害)がある。しかし、その治療は98年4月に国内でファイザー社から発売された「バイアグラ」の登場で一変した。「バイアグラの投与によりおよそ9割の方は、EDが改善しています。発売される以前の器具や漢方薬などの治療に比べれば、雲泥の差があるといえます」と言うのは、やじま泌尿器科クリニック(神奈川県相模原市)の矢島通孝院長。

 聖マリアンナ医科大学泌尿器科助教授時代にバイアグラの治験を行い、その後もレビトラ、シアリスといったED治療薬の治験を手掛けている。「バイアグラが効きにくいのは、重度の糖尿病で末梢(まっしょう)神経に障害が起きているような器質性の場合です。薬のメカニズム上、効きにくいといえます」(矢島院長)。

 勃起は、脳から送られた性的な興奮がペニスに伝えられ、海綿体の細胞に作用して作り出されるcGMP(サイクリックグアノシン1リン酸)により、動脈や海綿体平滑筋が拡張し、多量の血流が流れ込むことによって起こる。cGMPは、海綿体の細胞にある酵素のPDE-5(ホスホジエステラーゼ・タイプ5)で分解され、時間の経過とともに勃起をなえさせてしまう。このPDE-5を阻害するのが「バイアグラ」だ。「性的興奮を伝える末梢神経に障害が起きていたり、血流が悪いなど器質性のEDには、あまり効果は期待できません。しかし、投与量を増やすことで効く場合もあります」(矢島院長)。

 「バイアグラ」には、25ミリグラム、50ミリグラム、100ミリグラムの錠剤があるが、日本では25ミリグラムと50ミリグラムのみが発売されている。症状に合わせて投与量を変えることで、効果が生じる可能性が…。「ただし、狭心症の薬といった併用してはいけない薬もあります。また、副作用を予防するために、全身の状態を把握した上で、投与量は決めているのです。自分勝手にのむ量を増やしていいというものではありません」(矢島院長)。

 「バイアグラ」は、狭心症の治療薬で知られるニトログリセリンなどの硝酸剤と併用すると、急激な血圧低下により命にかかわることも。やはり、服用するときは医療機関で診察を受けてからが基本。また「バイアグラ」だけでなく、昨年新たに「レビトラ」というED治療薬も国内で承認され発売された。薬の選択肢が増え、医療機関におけるED治療はさらに進歩している。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 21, 2005 09:28 AM | トラックバック (0)

2005年12月20日

2005年12月20日

【第13回】シミ取りが注目の的

「男性のシミ取りが注目の的」

 男性向けのエステサロンの登場や高齢化社会におけるアンチエイジングとして、昨今、イボやシミを取りたいという男性が増えている。「以前から皮膚がんではないかと心配されて診療を受けられる方はいました。しかし、最近はイボやシミを取り除きたいといわれる方が増えています」と、東京女子医科大学皮膚科学教室の川島眞教授は説明する。

 「男性は、普段は化粧をしないため、皮膚が紫外線によるダメージを直接受けやすい。長年の紫外線の影響により、皮膚の細胞内にメラニン色素が沈着する老人性色素斑(シミ)が、加齢とともに増えるのです」。

 目尻から額にかけて無数に生じたシミは、加齢とともに増え続け、色濃くなっていく。シワも加わり、老け顔を増長するのだ。「シミを除去する場合は、まず、皮膚科でがんの可能性がないかを調べてもらうことが重要です。皮膚がんと知らずにシミの除去を受け、悪化させてしまったケースもあるので注意してください。診断で単なるシミやイボと判明した後に、それを取り除かれるかどうかを判断されるべきでしょう」(川島教授)。

 基本的にシミの除去は、保険適用外によるレーザー治療が主流。医療機関にもよるが、親指程度の大きさで2万~3万円。通院で行えるが、治療後の傷が癒えるのに10日間ほどかかる。そのため「盆暮れの比較的長期間に取れる休暇の間に、治療を受けたいと希望する人が少なくありません」(川島教授)。
 つまり、年末を控えた今の時期に、シミ除去の治療を受ける人は、増加する傾向にあるのだ。「年齢を問わず、容姿を気にされる方はいます。特に対外的に人に会う職種の方々は、手の甲やすね毛の脱毛も希望されるほどなのです」(川島教授)。

 シミを取り除きたいと願う理由は人それぞれだ。ある80代の男性は、孫に顔のイボを「汚い」といわれ、大きなショックを受けた。それまでイボを気にすることはなかったが、意を決し皮膚科を受診することに。皮膚がんの検査も受け、単なるイボと判明し、液体窒素凍結療法を受けることにした。治療開始から2週間程度でイボはポロリと取れ、孫にも喜ばれたそうだ。「イボの場合は、液体窒素による凍結療法であれば、保険適用になります」(川島教授)。

 シミやイボを取り除き若さを保つことが、高齢化社会の中では、より注目を集めそうだ。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 20, 2005 08:42 AM | トラックバック (0)

2005年12月19日

2005年12月19日

【第12回】太くするにはさらなる工夫

「将来的には毛根の培養で毛髪がよみがえる」

 育毛剤や男性型脱毛症薬などで効果が得られず、自分自身の毛髪量の多い側頭部を利用して植毛に取り組む。カツラではなく自分の毛髪を取り戻したい人には、最終手段ともいうべき方法だが、側頭部の毛髪量にも限りがある。生え際や頭頂部の脱毛を補うべきたっぷりとした毛髪量があればよいが、そういうケースばかりとは限らない。

 「将来的には、ご自身の毛根を人工培養で増やし、植毛するという方法が行われる可能性はあります。現在、そのような研究が進められているのです」と、東京女子医科大学付属女性・自然医療研究所美容医療科の若松信吾所長(教授)は言う。

 現在、1本ずつ行う植毛では、側頭部の頭皮の一部を切り取り、毛根を痛めないように1本ずつに分けて植毛されている。この毛根を人工培養により増やすことができれば、側頭部の毛髪量に関係なく、自分自身の髪をよみがえらせることは可能だ。再生医療技術が進歩する中で、毛髪に関しても人工培養が進んでいた。

 「しかし、そう簡単にできるものではないのです。人工培養によって新しい毛根が生じても、太い毛はなかなか生えません。産毛は生えるのですが、太い毛にまで育たない。1本植毛においても、毛根を傷つければ産毛しか生えません。太い毛が生えるには、それなりの組織が必要と考えられるのです」(若松所長)。

 人体の構造は計り知れない。毛根だけを人工的に増やすことはできても、太い毛を生やすには、さらなる工夫が必要になる。「10年か、20年後には開発されるかもしれません」(若松所長)。

 いずれにしても、男性型脱毛症に関する治療は100%完ぺきなものはない。人によっては功を奏しても、そうでない場合もある。「ヘアサイクルでは、成長期、退行期、休止期を繰り返していますが、休止期から成長期にかけて毛根は下の方に伸びます。いわばネギが柔らかい畑に根を伸ばすようなもの。若い人は、それを繰り返しているため組織が柔らかい。しかし、加齢とともに進行する男性型脱毛症になると、毛根が伸びなくなり組織は繊維化してしまいます。だからこそ、早い段階で男性型脱毛症用薬などによる治療を受けることが、今は最善の策だと思います」(若松所長)。

 男性型脱毛症治療の未来はまだ開けてはいない。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 19, 2005 11:30 AM | トラックバック (1)

2005年12月18日

2005年12月18日

【第11回】一朝一夕に量は増やせない

「1本植毛も一朝一夕に毛髪量は増やせない」

 結婚適齢期を迎えた30歳前後の男性の希望者が多い「植毛」。男性型脱毛症では、頭頂部や前頭部の毛髪量が減少しやすく、側頭部は髪がフサフサとしている。その側頭部の毛髪を活用し、1本から数本ずつ植毛する方法が注目を集めている。

 「以前は、パンチ法という側頭部の頭皮を丸い小さな穴状に切り取ったものを植毛する方法が主流でした。しかし、丸状の植毛では生え際が不自然になってしまう。そのため、現在は1本植毛、あるいは数本ずつのミニグラフト法が導入されています」と、東京女子医科大学付属女性・自然医療研究所美容医療科の若松信吾所長(教授)は言う。

 頭頂部の脱毛した個所には、パンチ法で1センチ程度のまとまった植毛を点在させる。そして、生え際に近いところは数本程度のミニグラフト法。さらに、生え際は1本植毛で自然な毛髪を実現するという。「ご自身の毛髪のため、95%以上は根付きます。ただし、1回だけの植毛で自然な毛髪量をよみがえらせることはなかなか難しいといえます」(若松所長)。

 1本ずつの植毛では、毛髪量の多い側頭部の頭皮を幅1・5センチ×長さ15センチ程度に切り取り、毛根を付けた状態で1本ずつに分けて、前頭部や頭頂部に植毛していく。「通常は、1平方センチに80本程度の毛髪が生えています。しかし、1本植毛の場合は、1回に1平方センチで20本から30本が限界。密度を濃くすると、毛根が根付きにくいのです」(若松所長)。

 1回の1本植毛では、通常の4分の1~3分の1程度の毛髪量しか植えられない。薄毛の進行度にもよるが、2回、3回と植毛を繰り返し、徐々に毛髪量を通常の量に戻していくケースもある。しかし、植毛は保険適用ではないため、医療機関にもよるが300万~500万円程度の費用がかかってしまう。

 「数本まとめて植毛するよりは、1本ずつの方が自然な生え際になります。しかし、1本ずつ切り分けるには、毛根を傷つけずに行う技術が必要です。毛根を傷つけると、太い毛髪が生えずに産毛になってしまうのです」(若松所長)。

 せっかく植毛に取り組んでも、産毛になっては元のもくあみ。技術レベルの高い医療機関で植毛は行うべきといえる。「日本臨床毛髪学会に加入している医療機関を選ぶようにすると良いでしょう」(若松所長)。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 18, 2005 09:29 AM | トラックバック (3)

2005年12月17日

2005年12月17日

【第10回】30代前後の男性から注目

「30歳前後の男性に注目のピンポイント植毛」

 育毛剤や男性型脱毛用薬でも改善されない薄毛は、結婚適齢期の男性の悩みのタネになることが…。カツラの使用も1つの方法だろう。近ごろでは引っ張ってもはがれない、あるいは洗髪もOKというカツラが登場し、注目の的だ。しかし、メンテナンスが必要などの理由から、やはり自分の髪をよみがえらせたいと思う人はいる。そんな希望者の選択肢として、医療機関に存在しているのが「植毛」。

 自分の毛髪で行う植毛に精通している東京女子医科大学付属女性・自然医療研究所美容医療科の若松信吾所長(教授)は言う。「植毛では、頭皮に傷あとが残ります。加齢とともに毛髪全体が薄くなれば、傷あとが目立つ可能性が高くなるのです。そういう説明をしても、植毛を望まれる30代前後の方は多い」。

 植毛方法は、大きく分けて3種類。1つは「頭皮伸縮法」だ。頭頂部の頭皮を切り取り、毛髪量の多い側頭部の頭皮を頭頂部に寄せて縫い縮める。欧米では行われているが、日本では一般的ではない。「東洋人の場合は、頭がい骨が大きく頭皮の緊張感が強いため、縫い縮めた部分が開きやすく不向きです。頭皮を伸ばす方法もありますが、はやりません」(若松所長)。

 2つ目は「皮弁法」。側頭部を細長く動脈に沿って一部の頭皮を除いて切り取り、ねじって頭頂部に縫い合わせる方法。側頭部の毛髪量の多い髪をそのまま頭頂部や前頭部に持ってくることができ、毛根への血流が維持されるため、毛髪が活力を失わずに済む。「とても良い方法ですが、傷あとが5~6センチ幅で大きく残るため、加齢とともに薄毛になれば目立つようになってしまいます」(若松所長)。

 「皮弁法」の傷あとよりも小さくて済み、昨今、希望者が増えているのが「1本植毛法」。側頭部の一部の頭皮を切り取り、髪の1本ずつを毛根ごと切り分けて、植毛していく。「1本ずつだけでなく、数本ずつ植毛する方法もあります。植毛では自然な生え際が一番大事。1本ずつの植毛は、それを実現するためにメリットが多いのですが、毛根を切り分けるには技術が必要です。どこの医療機関でもできるものではありません」(若松所長)。

 30代前後の人々に注目を集める「植毛」だが、メリット、デメリットを見極めることを心掛けたい。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 17, 2005 09:44 AM | トラックバック (1)

2005年12月16日

2005年12月16日

【第9回】「脂漏性脱毛」は間違い

「脂漏性皮膚炎が男性型脱毛症を加速する?」

 多忙のため、入浴すらままならない人はいる。頭皮は脂っぽくなり、フケがたまり、抜け毛の原因になると思われがちだ。では、なぜ、頭皮を不潔にしておくと抜け毛に結び付くのか。ちまたでいわれているのは「脂漏性脱毛」である。頭皮を脂っぽい状態のままにしておくと、毛が抜けやすい状態になるとの考え方。しかし、これは間違い。

 「皮膚にはマラセチア菌という真菌が常在しています。不衛生にしていると異常繁殖し、皮膚炎を引き起こした状態を脂漏性皮膚炎といいます。脂漏性皮膚炎がひどい状態になったときには、脱毛が起こる場合がありますが、私が診断をしたケースでは、1万人のうち数人しか脱毛に至ってはいませんでした」と、脇坂ナカツクリニック(大阪市)の脇坂長興院長は説明する。

 頭皮を不衛生にしておくと脂漏性皮膚炎になりやすい。しかし、脂漏性脱毛には、相当進行しない限りなりにくいのだ。「不潔のままでいいというわけではありませんが、頭皮が脂っぽいから髪の毛が抜けるわけではないのです」(脇坂院長)。

 脂漏性皮膚炎により、皮膚の表面をつめでかいたとしよう。毛髪を支える毛根の中までは、なかなかつめは届かない。炎症は頭皮の表面にとどまっているのだ。そのため、頭皮が相当ダメージを受けなければ、毛根までには至らない。脂漏性皮膚炎は、男性型脱毛症とは、直接は結び付いていないのである。
 「男性型脱毛症を促進させる5α-ダイハイドロテストステロン(DHT)は、皮脂の量も増やします。加齢による体質の変化で、皮脂も増えます。脂っぽいために、不衛生な状態で脂漏性皮膚炎が生じ、その一方で男性型脱毛が進行しているケースはあるのです。このような場合、脂漏性皮膚炎は治療で治っても、男性型脱毛症は、そのまま進行しています」(脇坂院長)。

 脂漏性皮膚炎の治療はもちろんのこと、男性型脱毛症の治療も受けなければ、脱毛は止まらない。頭皮を清潔にして脂漏性皮膚炎を防ぐだけでは、食い止められないのである。「フケや脂が抜け毛の原因ではありません。男性型脱毛症は、それだけでは防ぐことができません」(脇坂院長)。

 ただ頭皮を清潔にしておけば、男性型脱毛症を食い止められるというのは、誤った考え方だったのだ。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 16, 2005 09:51 AM | トラックバック (1)

2005年12月15日

2005年12月15日

【第8回】無意識のストレスで進行も

「ストレスを感じない円形脱毛症」

 円形脱毛症といえば、イコール・ストレスという人は少なくない。ストレスが軽減されれば、自然に毛が生えてくることを経験的に知っている人もいるだろう。だが、無数の円形脱毛症ができる“多発型・融合型”、さらに症状が全身に及ぶ“進行型”では、あまりストレスを感じていないケースがある。

 これまで数多くの重症度の高い円形脱毛症の治療を行っている脇坂ナカツクリニック(大阪市)の脇坂長興院長は、次のようにいう。「重症度の高い患者さんは、概して明るくサバサバし、ご本人はストレスを感じていないと言います。ところが、ストレスを評価するテストを行うと、いわば毎日飛び込み営業で過重なストレスを感じている会社員と、同じ程度のストレス度になっているのです。無意識のうちにストレスがたまっているといえます」。

 円形脱毛症は、ストレスを誘因とした自己免疫疾患の一種である。本来は、ストレスが軽減されれば治るはずなのだが、アトピー性皮膚炎のように、無意識のうちに過重なストレスにさらされ、“多発型・融合型”から“進行型”と、症状が悪化していく。

 「重症度が高くても、全身状態をチェックした上で、生活習慣の改善やビタミン・ミネラルの大量投与、セファランチン(免疫賦活=ふかつ=剤)、ミノキシジル(育毛薬)、グリチロン内服(肝臓機能の庇護=ひご=剤)、ステロイド内服といった治療により改善します」(脇坂院長)。

 脇坂ナカツクリニックでも行っている低出力レーザーで2~3日に1回、血流を良くすることも効果的だという。「円形脱毛症は、治って生えてきた毛が白髪で、徐々に黒くなることもあります。メラニン細胞に対するアレルギー反応によるもので、血流が改善することによって黒くよみがえるのです。これも1つの特徴といえます」(脇坂院長)。

 無意識のうちにたまっているストレスが、円形脱毛症を進行させてしまう。予防策としては、当然のことながらストレス解消。だが、無意識にたまるものを解消するのは、はなはだ困難といえる。「頭部全体から間引きするように抜ける円形脱毛症もあります。症状が出た場合には、医療機関で適切な治療を受けるように心掛けましょう」(脇坂院長)。

 【医療ジャーナリスト安達純子】

December 15, 2005 08:25 AM | トラックバック (1)

2005年12月14日

2005年12月14日

【第7回】年末ストレスで突然

「年末のストレスで円形脱毛症に」

 師走は、年内納めの仕事や忘年会など多忙を極め、ストレスがたまりやすい。そんな時期に、20代のある男性は洗髪時に、左側頭部の500円玉ほどの脱毛に気が付いた。「昨日は髪が生えていたはずなのに…」と、大ショックを受けて病院へ。円形脱毛症と診断された。

 前日には正常だったはずの毛髪が、翌日には円形脱毛症になってしまう。

 「動物実験で、円形脱毛症は半日で生じた例があります。毛髪は、成長期、移行期、休止期のサイクルを繰り返していますが、円形脱毛症では移行期を経ずに、成長期の髪が抜けてしまうのです。ストレスが誘因であることは明らかですが、なぜ成長期の髪が突然抜けてしまうかの、その原因ははっきりと分かってはいません」。こう説明するのは、脇坂ナカツクリニック(大阪市)の脇坂長興院長。頭髪医療において、重症度の高い円形脱毛症の治療を数多く行っている。

 「円形脱毛症の毛根を調べると、リンパ球がたくさん集まっているため、自己免疫疾患の1つと考えられます。しかし、自己免疫疾患による炎症で髪が抜けるのか、あるいは、髪が抜けたために炎症が起きているのか、はっきりしていないのです」(脇坂院長)。

 軽度の場合は、一般大衆育毛薬にも配合されている塩化カルプロニウムにより、血流を改善し、頭皮に刺激を与えることで、毛髪はよみがえってくる。

 「単発型円形脱毛症は、血流改善、あるいは、ストレスがなくなれば、2~3カ月で発毛が始まるケースが多い。しかし、円形脱毛が多発したり融合したりする“多発型・融合型”になると、治るのに時間がかかります。また、進行型へ移行すると、毛髪だけでなく全身の毛、すなわち、体毛やまつ毛まで抜け落ちる状態になるため、注意が必要です」(脇坂院長)。

 “多発型・融合型”は、血流改善だけでは完治が困難。自己免疫疾患であることから、ステロイドの外用薬、セファランチン(免疫賦活=ふかつ=剤)、グリチロン内服(肝臓機能の庇護=ひご=剤)などによる治療が行われる。医療機関によっては、ステロイドの局所注射や、人工的にかぶれを起こす感作療法を行うことも。

 「“多発型・融合型”になったときには、すぐに適切な治療を受けることが重要です」(脇坂院長)。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 14, 2005 09:14 AM | トラックバック (3)

2005年12月13日

2005年12月13日

【第6回】生活改善だけでは難しい

「生活習慣の改善で毛髪は増えるか」

 脱毛を食い止めるには、一般的に、脂っこい食事は避けた方がよいといわれている。その根拠は、血流の改善だ。壮年性脱毛症における発毛薬のミノキシジル(一般大衆薬「リアップ」の配合成分)は、もともと高血圧治療剤として米国で開発された。しかし、治験中の患者に毛髪や胸毛が生え、発毛剤として研究が進められた結果、血管拡張作用と毛根活性作用が判明している。

 「生活習慣を正し、血管の動脈硬化を食い止め、血流を良くすることは確かに男性型脱毛症予防としては、大切なことです。血流が良くなれば、毛根が活性化されることは正しい考え方でしょう。しかし、それだけでは脱毛を食い止めるのは、難しい」と、総合頭髪医療で月間約2500人の治療を行っている城西クリニック(東京都新宿区)の小林一広院長は言う。

 中には、生活習慣を改め、健康診断でオールAになり、男性型脱毛の進行が改善された人もいる。が、すべての人がそうなるわけではない。「生活習慣は、加齢による男性型脱毛症の進行を止める手助けにはなります。しかし、脱毛してしまった髪をよみがえらせることは、容易なことではありません」(小林院長)。

 正しい生活習慣は、進んでしまった脱毛を100%よみがえらせるパワーはないのだ。一方で、店頭にあふれる育毛用のシャンプーやトリートメントは、どう考えればよいのか。毛穴の皮脂を取り除き、育毛剤などを浸透しやすくするために、提唱されているが…。「清潔にすることは重要ですが、洗い過ぎれば頭皮や毛髪を痛めることにつながります」(小林院長)。

 1日2~3回一生懸命に髪を洗い、トリートメントをつけたものの、逆に髪がパサパサになり抜けやすくなってしまった人もいる。「素手で皿洗いを一日中していると、手の肌がアカギレて、パサパサになるでしょう。頭皮も同じです。洗い過ぎれば肌が乾燥し、毛髪も痛んで切れ毛や断裂に結び付くのです」(小林院長)。

 過ぎたるは及ばざるがごとし。男性型脱毛症に悩むときには、生活習慣改善、治療薬、ヘアケア用品など、自分自身に合った方法を見つけることがカギとなる。「信頼できる医療機関で、男性型脱毛症を改善するためにはご自身に何が本当に必要なのか、きちんと診断を受けることが大切です」(小林院長)。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 13, 2005 11:13 AM | トラックバック (0)

2005年12月12日

2005年12月12日

【第5回】フサフサなのにクヨクヨ

「男性脱毛症ではなく薄毛強迫症も増えている」

 薄毛とは、どれだけの毛髪量になったことを指すのか。頭皮が見えたときか、生え際が後退し始めたときか、髪が自然にバサバサ抜けたときか…。

 「男性型脱毛症における初期の薄毛の量に対する医学的診断基準は、はっきりしていません。ご自身で判断しなければならず、そのため、他人の評価でも悩まされてしまうのです」と、総合頭髪医療を行う城西クリニック(東京都新宿区)の小林一広院長は説明する。

 薄毛かそうでないかの境界線がはっきりしていないため、悩みは十人十色になってしまう。はたから見れば髪はフサフサなのに、1人思い悩むケースも。

 30代の会社員Aさんは、話題となっている男性型脱毛用薬や、店頭に並ぶヘアケア用品の情報を見ているうちに、自分の髪が気になり始めた。シャンプー後に排水溝に目を向けると、抜け毛がたくさん落ちている。「やっぱり、男性型脱毛症になったんだ!」。

 その日から、毎晩、排水溝の毛髪を集め、何本抜けたか数えるようになった。また、通勤途中で出会う人や同僚の目も、自分の毛髪に向けられているようで、気になって仕方がない。悩みに悩んだ揚げ句、男性型脱毛症の治療を受けるため医療機関へ。すると、脱毛ではなく心の病の1つ「強迫神経症」と診断された。

 「毛髪は、自然に1日およそ100本は抜け、新しい髪に生え代わっています。ところが、抜けるのは目で確認できますが、生えてくるのはご自身で実感できない。インとアウトのアンバランスにより、心の病に結び付くことがあるのです」(小林院長)。

 10~20代前半では、男性型脱毛とは無縁と思えるが、「父親がハゲている。自分も同じになる」と思い込み、薄毛が気になり不安が増幅し、外出することすら嫌になってしまうこともある。

 「身体醜形(しゅうけい)障害といい、心の病の1つです。心ない友だちや彼女の一言で、心の病に結び付くことは珍しいことではありません。頭皮のトラブルか、心の病か、あるいは、身体の病が原因なのか、その診断が行えるのはきちんとした医療機関でなければ不可能です」(小林院長)。

 薄毛の基準はあいまいで、人の感覚によるところが多いだけに、脱毛か否か、脱毛の原因は何か、専門の医師に見極めてもらうのが何より。1人で悩まないようにしよう。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 12, 2005 11:09 AM | トラックバック (12)

2005年12月11日

2005年12月11日

【第4回】ミノキシジルと併用効果

「プロペシアとミノキシジルの併用での効果」

 世界初ののむ発毛剤「プロペシア」(一般名フィナステリド)のわが国における治験では、男性型脱毛症の進行を止め、毛が生えるなど改善が見られたのは58%。つまり42%の人は、1年たっても毛髪量をよみがえらせることはできなかった。42%の人に何か手だてはないのか。

 「今のところ、世の中に100%髪の毛が生える薬剤はありません。しかし、薄毛に悩む患者さんに対し、あらゆる手だてを尽くすのが医師の使命です。そのため、フィナステリドだけでなく総合的な治療を行っています」。こう話すのは、城西クリニック(東京都新宿区)の小林一広院長。皮膚科、形成外科、精神神経科を中心とした総合頭髪医療を行っている。全身状態の検査を始め、フィナステリドの有効性を調べる遺伝子検査や、ストレスや毛髪ミネラルの分析などにより、男性型脱毛症に対する薬物投与に、生活習慣病の改善やメンタルヘルスなども組み合わせているのが特徴。

 月間約2500人の患者が治療を受けているが、フィナステリド以外に、一般大衆発毛薬「リアップ」の配合成分ミノキシジルも投与している。フィナステリドが男性型脱毛症を進行させる酵素を阻害する一方、ミノキシジルは、血管を拡張させ毛根を活性化させる働きがある。

 「2つの異なる薬効の薬を使うことで、相乗効果が得られると考えています。遺伝子検査により、フィナステリドに対する感受性が低い方もいますので、併用することで改善効果は得やすい。さらに、ビタミンやミネラルも投与といった総合的な治療が、重要だと思います」(小林院長)。

 患者の1人は、半年間の治療後になじみのレストランへ行ったところ、毛髪量が増えたために「店長から別人と間違えられた」という。もちろん、すべての人がこのように毛髪をよみがえらせることは難しい。
 「どこまで毛髪量が増えれば満足かは、患者さんによって異なります。しかし、ミノキシジルも含めた多角的な医療により、10年前の治療に比べて進歩しているのは間違いありません。10年後には、さらに新薬の開発等により、進歩すると考えています」(小林院長)。

 男性型脱毛用の薬の併用で相乗効果が見られている。フィナステリドで効果が出なくても、あきらめずに別の治療を受けることで、開ける道もあるのだ。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 11, 2005 09:56 AM | トラックバック (1)

2005年12月10日

2005年12月10日

【第3回】重大な性機能副作用なし

「プロペシアの副作用インポテンツの対応策」

 医師の処方によるのむ男性型脱毛症用薬「プロペシア」(一般名フィナステリド)は、ちまたで「インポテンツになる副作用がある」とうわさされている。薄毛も悩みだが、解消するためにインポテンツになるのも、男性にとっては新たな悩みの種になりかねない。

 「プロペシア」の治験を統括した東京女子医科大学皮膚科学教室の川島眞教授に直撃すると、「治験において重大な副作用は見られませんでした」という。

 治験においては、1日1回、フィナステリド1ミリグラム投与群と、プラセボ(偽薬)投与群とを比較検討している。「性機能に関連した副作用」としては、ファイナステリド1ミリグラム投与群では139例中4例(2・9%)、プラセボ投与群は138例中3例(2・2%)。「統計学的に副作用の有意差はありません。すなわち、フィナステリドを服用しても、性機能に関連した副作用は起こりやすいわけではありません」(川島教授)。

 「プロペシア」は、重大な副作用もなく、ほかの薬とののみ合わせによる相互作用も、今のところは起こっていない。そのためか、万有製薬が12月にも「プロペシア」の発売を開始すれば、頭皮とは無縁の内科医でさえも、処方することが可能といわれている。どこの医療機関でも、受診をすれば処方してもらえるという手軽さは、勃起(ぼっき)障害用の薬でも起こっていることだが、本当に大丈夫なのだろうか。
 「フィナステリドは、男性型脱毛症用の薬であり、すべての脱毛症に効くものではありません。脱毛症には、円形脱毛症や地肌の湿疹(しっしん)、膠原(こうげん)病などの全身疾患によるものなど、いくつかの種類があります。その診断は、専門の医師でないと難しい。男性で毛が抜けているからといって、すぐに診断できるものではないのです」(川島教授)。

 地肌の湿疹で脱毛が進行してるのに、「プロペシア」をのんでも意味はない。男性型脱毛症の進行を止めるには、受診したときの的確な診断が重要になる。副作用が統計学的には「少ない」とされる薬でも、やはり、受診するときには、その医師が頭皮に関しての専門的な知識を持っているか否かのチェックが不可欠だ。また、「プロペシア」は、1日1回の投与が0・2ミリグラムから1ミリグラムを上限とされている。その処方のさじ加減も、やはり、専門の医師に委ねた方がよいといえる。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 10, 2005 11:15 AM | トラックバック (2)

2005年12月09日

2005年12月09日

【第2回】長期間のんでも効果薄

「長期間のむとプロペシアの効果はなくなる?」

 “のむ発毛剤”として注目を集めている「プロペシア」(一般名フィナステリド)は、男性型脱毛症にかかわる5α-還元酵素を阻害する薬である。5α-還元酵素は、血中の主な男性ホルモンテストステロンが毛乳頭細胞に入ったときに、5α-ダイハイドロテストステロン(DHT)へと変換。DHTが毛母細胞に作用して、毛髪が育ちにくく、抜け落ちやすくしてしまうのだ。

 「毛髪のサイクルは、髪が伸びる成長期、成長が止まる退行期、抜け落ちる休止期を繰り返しています。男性型脱毛症では、このサイクルが止まり、退行期へと誘導して休止期を長くしてしまうのです。結果として、休止期が長く続くと毛根は委縮し、やがて閉じ、毛穴のない状態へとなってしまいます」と、「プロペシア」の治験を統括した東京女子医科大学皮膚科学教室の川島眞教授は、男性型脱毛の仕組みについて説明する。

 「プロペシア」は、5α-還元酵素を阻害し、毛髪のサイクルを正常に戻す。しかし、毛穴が完全に閉じて毛根がなくなってしまっている場合には、それを元に戻すことはできない。「フィナステリドを1日1回のむと6カ月程度でピークを迎えます。委縮した毛根がヘアサイクルを取り戻すのです。しかし、1年を超える長期間にわたってのみ続けても、それ以上はなかなか毛髪量は変わらないと考えられます。男性型脱毛症の進行を止め、ヘアサイクルを取り戻しても、そもそも毛穴がなければ生えてはきません」(川島教授)。

 長期間にわたってのみ続けても、1年を超えれば、それ以上には見た目は大きく変わらない。それをどう考えるかは、患者の判断といえる。では、毛穴がなくなってしまっているか、まだあるのか、どう判断するかも1つの疑問だろう。「毛髪が薄くなり始めた段階で、毛根が残っている可能性が高ければ、毛髪の量もフィナステリドをのむことにより戻る可能性が高くなります」(川島教授)。

 つまり、既に長年、薄毛が進行し、頭皮の露出度が多ければ多いほど、フサフサの髪を取り戻すことは難しくなる。では、家系的に薄毛になりやすい人の場合、予防的に使用し、男性型脱毛症を食い止めることはできないか。「予防的な投与は行いません」(川島教授)。

 「プロペシア」は、男性型脱毛が進行し始めたころにのむと効果が期待できる。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 9, 2005 10:20 AM | トラックバック (4)

2005年12月08日

2005年12月08日

【第1回】“飲む毛生え薬”58%の人に改善例

「治験医師に聞くプロペシアの実力度」

 “のむ毛生え薬”として話題を集めている「プロペシア」(一般名フィナステリド)が今年10月に厚生労働省の承認を得て、「12月に発売予定」(万有製薬)とされている。この医師が処方する世界初の内服による男性型脱毛症用薬は、当初11月に発売される予定だったが、予想以上に高い需要に対する増産のため、年内発売へと延期されたという。

 日本では800万人もの薄毛に悩む男性がいるとの報告がある。「プロペシア」は、本当にその悩みを解消してくれるのか。01年6月から各医療機関で行われている治験を統括した東京女子医科大学皮膚科学教室の川島眞教授は、次のように説明する。

 「フィナステリドを1日1回のんでもらった群と、プラセボ(偽薬)をのんでもらった群を1年間比較検討しています。その1つである頭頂部の写真評価では、フィナステリド1ミリグラムの群では58%の改善が見られました。プラセボでは6%に過ぎません。しかも、プラセボでは22%の人が1年後に脱毛が進行しているのです。私は以前から育毛剤を幾つか試験していますが、これほどの効果があるのは初めてといえます」。

 治験では、フィナステリドを1日0・2ミリグラムのませた群と1ミリグラムのませた群についても比較しているが、「数字上は若干後者が勝るものの、統計学的有意差は見られませんでした」(川島教授)。

 のめば男性型脱毛症の進行を止めるだけでなく、58%の人は改善されるという「プロペシア」。明らかな改善例としては、頭頂部に毛が生え、脱毛個所が少なくなっている。1日1回のむだけで毛が生えてくる“夢の発毛剤”との期待が膨らむが、すべての人がそうなるわけではない。

 「一部の人においては毛髪が増えますが、現在のところ、増える人とそうでない人の差は分かっていません。ほとんどの人では男性型脱毛症の進行が止まる薬と考えた方がよいでしょう」(川島教授)。

 脱毛は止まっても、毛髪がよみがえるかどうかはのんでみなければ分からない。また、のみ始めて途中でやめると「脱毛が再び進み始めることが分かっています。のみ始めたらある程度の年齢に達するまでのみ続ける必要があります」(川島教授)。

 男性型脱毛症に薬で立ち向かうには、長期戦の覚悟が必要。のめばすぐに毛が生えるわけではない。

【医療ジャーナリスト安達純子】

December 8, 2005 08:44 AM | トラックバック (9)

2005年12月07日

2005年12月07日

【最終回】ファンの声援が支えた

「大隅寿男さんの選択(4)」

リツキサンという分子標的治療薬と抗がん剤を組み合わせた治療が、5カ月間で6コース行われた。

 その副作用は、生易しいものではなかった。「抗がん剤を入れた途端、吐き気がこみ上げて、髪は抜ける、むくみで足がゾウのようになったこともありました。一番つらかったのは便秘」と大隅さん。医師からは、リツキサンががんを殺していく様子をイメージしなさいと言われた。そのための苦しさなんだと。

 そして、何より大隅さんを支えたのはファンや仲間の声援だった。レコード会社はわざわざ治療に合わせてレコーディングを早めてくれた。「普通ならもうダメと言われるところなのに、涙が出るほどうれしかった」と大隅さんは語る。治療の合間には、医師の勧めもあって帽子をかぶり、ライブで演奏を続けた。病気を知ったファンからそのたびに「ガンバレ」と大きな声援が飛んだ。

 そして、翌年の春、大隅さんはがんが消滅したことを告げられたのである。

 思えば、これは大隅さんが病気のことを隠さずに話したことから、すべてが始まったともいえる。みんなに相談したからこそ、セカンドオピニオンを受けることになり、診断が変わり、信頼する医師と巡り合えた。仕事を治療中もずっと続けることで多くの人から励ましや善意を受け、大隅さん自身もつらい治療の最中でも演奏の喜びを得ることができた。そのおかげで落ち込まずにすみ、免疫力の向上にもつながったのかもしれない。

 「元気になったのは、全国のファンのおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです」と大隅さん。見ず知らずの人の拍手や声援が身にしみるようになった。治療直前にレコーディングしたCD「グレイトフル」はちょうど治療が終了した3月に発売となり、全国ツアーに出発。ステージで「うれしくてよく泣きました」。今またジャズマンとして大隅さんは新たな出発をしたのである。(おわり)

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆治療 リツキサンはB細胞上のCD20という目印にとりつく抗体。B細胞ががん化した非ホジキンリンパ腫では、これと3種類の抗がん剤とホルモン剤を1つ組み合わせたCHOP療法を行うのが標準的。

December 7, 2005 10:13 AM | トラックバック (0)

2005年12月06日

2005年12月06日

【第55回】免疫力増強でリンパ腫縮小

「大隅寿男さんの選択(3)」

 がん専門病院で、セカンドオピニオンを受けたジャズドラマーの大隅寿男さんは、そのままこの病院で治療を受けることに決めた。

 担当医が治療の前に「約束して下さい」と挙げたのは、禁煙、民間療法を一切行わないこと。そして、入院中に病気の説明をするので自分の病気を自分で知り、医者任せにしないで自分で立ち向かってほしいということだった。

 この時を境に、どうしてもやめられなかったたばことも手を切った。「何よりありがたかったのは、仕事を含めてふだんどおりの生活をしていいという先生の言葉でした」と大隅さんは語る。まだ大黒柱として働かなくてはならない年齢だった。

 ただ1つ、担当医が尋ねたのは「仕事は楽しいですか?」という質問だった。もちろんである。聴衆の前でドラムをたたくことは大隅さんにとって何より幸せなことだった。実はここにも伏線があった。

 肝心の治療はなかなか始まらなかった。診断が下りたのが7月。秋を迎えてもまだ2週間に1度通院して様子をみるだけだった。「大丈夫なんでしょうか?」。不安げな大隅さんに医師は言った。「もう全身に広がっているのですから、慌てても仕方ありません」。このタイプのリンパ腫(しゅ)は全身のリンパ節が腫れるなど発病後5年目くらいが危ないのだそうだ。大隅さんの場合、1年半から2年前に発病しているので、あと2~3年は大丈夫。それが医師の答えだった。

 治療が始まったのは、冬も間近な11月。この時点ですでに奇跡的ともいえる変化が起きていた。治療のためにあらためて検査を行ったところ、悪性リンパ腫が縮小していたのだ。

 この間、大隅さんがしたことといえば、禁煙と規則正しく妻の食事をとるようになったこと。そして、仕事を通して病気を知った多くの仲間やファンから受けた励ましだ。これが、免疫力を上げることにつながった可能性も大きいのである。「がんの縮小は免疫力の増強と時の運でした」と大隅さんは語る。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆免疫力の増強 主治医は、免疫力を上げることも治療の一環と見ていたようで、仕事をはじめ気分が高揚して楽しいことは大いに勧めていた。

December 6, 2005 08:02 AM | トラックバック (0)

2005年12月05日

2005年12月05日

【第54回】セカンドオピニオンが救った

「大隅寿男さんの選択(2)」

 悪性リンパ腫(しゅ)にも、年単位でゆっくり進行していくものから、週単位で悪化していくものまで、さまざまな種類がある。極めて進行が早いタイプと診断されたジャズドラマーの大隅寿男さんは、とにかく家族や姉、所属事務所の仲間や友人に相談することにした。「サラリーマンならば、仕事への影響も考えて隠すのかもしれませんが、私は隠す気持ちは全くありませんでした」と大隅さんは語る。

 そこで、強くセカンドオピニオンを勧めたのが、3人の姉たちだった。大隅さん自身は「病気も見つけてもらったし、診断を受けた病院に命を預けようと思っていた」という。

 セカンド・オピニオンは、ほかの専門医から意見を聞くこと。最近では流行語のようになっているが、実際に実行するには、それなりに勇気がいる。このとき大隅さんも、姉に背中を押されてようやくその気になったのである。結果として、これが大隅さんを救ったともいえる。

 翌日、主治医に紹介状を書いてもらうと、がん専門病院を受診した。ここからがしんどかった。「検査は、一からやり直しと言われたのです」。1カ月に及ぶ検査期間。前の病院で、どんどん悪くなっていくと言われていただけに、気持ちが焦った。「不安で眠れず、1人で泣いたこともしばしばでした」と、大隅さんは振り返る。

 7月。検査結果は非ホジキンリンパ腫で、4期という診断までは同じだった。しかし、悪性度の診断が違っていた。以前の病院で高悪性度と言われたが、低悪性度という診断だった。つまり、進行速度も遅い。少しホッとしたものの「高悪性度のリンパ腫は治療でたたきやすいけれど、低悪性度の場合むしろ治療に対する反応は良くない」とクギを刺された。

 ズバズバと事実を告げる担当医の言葉は厳しくもあったが、自信にも満ちていた。大隅さんはこの医師に命を託そうと決意するのである。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆悪性リンパ腫 免疫に働くリンパ球が、がん化する病気。多くの種類があるが、基本的にホジキンリンパ腫と、それ以外の非ホジキンリンパ腫に分けられる。日本人には圧倒的に非ホジキンリンパ腫が多い。

December 5, 2005 08:52 AM | トラックバック (0)

2005年12月04日

2005年12月04日

【第53回】みんなに相談しよう

「大隅寿男さんの選択(1)」

 ジャズドラマーの大隅寿男さんが、悪性リンパ腫と告げられたのは、01年5月のことだ。「首のリンパ節がポコンと腫れたんです。バイ菌でも入ったかなと思っていたのですが、1月、2月たっても治らない。おかしいなと思って病院に行ったのがきっかけでした」。

 いろいろ検査をしても分からず、結局組織を摘出して病理検査をすることになった。悪性の疑いもあると言われた大隅さんは「何かあったら私に話してください」と伝えていた。自覚症状もなかったし、この時はまだ安易に考えていたという。だが、医師の言葉は大隅さんの想像をはるかに超えていた。

 「悪性リンパ腫(しゅ)で病期は4期。悪性度が高いタイプなので、進行が非常に早く、どんどん進んでいきます。急を要するので、この病院で治療を受けるかどうか、2日以内に決断してください」。悪性リンパ腫には多くの種類があるが、大隅さんの場合は、非ホジキンリンパ腫というタイプで、抗体を作るB細胞というリンパ球がガン化していた。それも4期は、すでに骨髄や血液など全身にがん細胞が広がった状態だ。

 矢継ぎ早の医師の言葉に、頭がしびれるようだった。早ければ、あと半年から1年。それが医師の判断だった。

 当時、大隅さんは58歳。ジャズドラマーとして長い下積み時代を送り、やっと自分のバンドをつくって好きなジャズのスタンダードナンバーも演奏できるようになり、世間でも認められるようになったのは50歳を迎えたころだった。前年には、音楽生活30周年を記念して初めて赤坂で個人名を冠したコンサートも開催した。

 やっと表舞台に出て、これからという矢先に悪性リンパ腫の診断である。「もう終わったのかなと思いました」。だが、95歳になる母親を残して、先に逝くわけにはいかなかった。

 とにかく、みんなに相談しよう。この「隠さずみんなに相談すること」が、生還への第1歩になるのである。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆大隅寿男 1944年(昭和19年)、福井県生まれ。ジャズドラマー。明治大学で軽音楽クラブに所属、以来音楽活動に打ち込み、昨年ジャズ界への貢献が評価され南里文雄賞受賞。今年受賞を記念して「ON THE ROAD」を発表。

December 4, 2005 11:15 AM | トラックバック (0)

2005年12月03日

2005年12月03日

【第52回】移植も選択肢

「肝臓がん(6)」

 肝移植というと、まだ現実とはほど遠い医療と思っている人も多いと思う。しかし、今年発表された肝がんの診療ガイドラインでは、肝移植が選択肢の1つになっている。

 日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授によると、肝移植は肝不全、つまりいろいろな病気で肝臓が満足に働かなくなった人を対象にした医療だそうだ。肝臓がんの場合も、肝臓の働きがあまりに悪くなると、最後の切り札と言われる肝動脈塞栓(そくせん)療法さえも行えなくなる。これまではその時点で治療手段もなくなっていたのだが、ここに来て登場したのが、肝移植だ。

 高山教授によると、肝臓がんの場合、ミラノ大学が提唱した基準、つまりがんが1個で5センチ以下、あるいは3個以下で3センチ以下の場合がよい適応になるそうだ。「ミラノ基準に当てはまる人の場合、5年生存率は80%」とかなり高い成績が報告されている。実際には、肝移植ができないと、いずれ命を失うことになるので、ミラノ基準を超えても肝移植を受けている人は少なくない。この場合「5年生存率は60%ぐらい」になるそうだ。

 日本では、1989年に最初の生体肝移植が行われ、現在までに3000例以上の肝移植が行われている。免疫抑制剤の進歩やウイルス性肝炎の治療法が進歩してきたことも、成績の向上に貢献している。日本では脳死ドナー(臓器提供者)が少ないので、そのほとんどが生体肝移植だ。親子、兄弟姉妹など近親者の間で移植が行われている。肝臓がんでの移植は、全体の1割ぐらいだそうだ。現在では、肝臓がんの場合、ミラノ基準に合致するなどいくつかの条件が合えば、健康保険で肝移植が受けられる。

 高山教授によると、「移植後は、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を一生使い続けることになるので、免疫が低下して肝臓がんが再発しやすくなる傾向はある」そうだ。しかし、これまで肝不全のために肝臓がんの治療もできず、助からなかった人に、肝移植は大きな希望の道を開いたといえそうだ。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆移植の条件 移植を受ける人も肝臓を提供する人も60歳くらいまでが目安。血液型が合致すること、提供者は健康な近親者に限られている。

December 3, 2005 09:56 AM | トラックバック (2)

2005年12月02日

2005年12月02日

【第51回】塞栓は7~8割有効

「肝臓がん(5)」

 肝臓がんも、がんの数が多くなったり、大きさが3センチを超えるようになると、手術が基本になる。手術ができない場合には、肝動脈塞栓(そくせん)療法を行うのが、標準的だ。

 日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授によると「例えば、がんの数が2~3個でも3センチを超える場合には、手術か肝動脈塞栓療法、肝臓の機能が低下していたり、がんが4個以上あれば肝動脈塞栓療法」になるそうだ。この場合は、がんも大きいことが多いので、肝臓も区域切除ではなく、葉単位で大きく切除することもある。

 肝動脈塞栓療法は、いわゆる肝臓がんの兵糧攻め。肝臓は、門脈と肝動脈という2つの血管から栄養や酸素の供給を受けているが、がんは肝動脈からだけ栄養を補給されている。そこで、肝動脈に詰め物を入れて遮断するのが、塞栓療法。一緒に抗がん剤も注入して、効果の増強を図るのが一般的だ。

 塞栓療法そのものは1時間ほどで終わるが、治療後3~4日は38~40度の高熱が出る。そのため、1週間ほどの入院が必要。「1回の治療でがんが死滅することは少ないので、何回か繰り返すのが基本」と高山教授。きつい治療なので、1カ月は間をあけて肝臓の機能が回復するのを待ち、がんが完全に壊死(えし)するか、効果がなくなるまで繰り返す。

 「70~80%の人に有効です。手術に匹敵するほど効果のある人は少ないけれど、全く効果がない人も少ない」そうだ。がんが3センチ以下で「手術と同じくらい効果を挙げて、完全にがんが壊死することもある」という。手術ができないから、絶望ではないのである。

 また、「消化器の中でも肝臓の手術は難しいので、専門的な病院で受けることをお勧めしたい」と高山教授。さらに治療法の選択に関しては今年「肝癌(がん)診療ガイドライン」が出版されている。高山教授は「20年前までさかのぼり、7000編もの論文をもとに作成したもの。治療を受ける前に読んで治療法を一緒に考えてほしい」と語っている。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆肝動脈塞栓療法 足の付け根(腕のこともある)の動脈から肝動脈まで細い管を通して詰め物を注入する。一緒に注入する抗がん剤は、エピルビシンやシスプラチンなどが一般的。

December 2, 2005 12:48 PM | トラックバック (0)

2005年12月01日

2005年12月01日

【第50回】一時的なつらさより生存率

「肝臓がん(4)」

 肝臓がんで1期の場合は、手術のほか、経皮的局所療法も選択できる。

 経皮的局所療法にもいくつかの方法があるが、現在の中心はラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法とエタノール注入療法。いずれも、肝臓の働きが低下して手術を受けられない人にも可能な治療法として開発されてきたものだ。そのため、手術に比べて肝臓に負担が少なく、何度でも繰り返し治療ができる点が長所とされている。どちらも、肝臓にできた3センチ以下で3個以内のがんに適応。

 エタノール注入療法の場合は、おなかから肝臓に針を刺して、がんの病巣にエタノールを直接注入。がん全体に万便なくエタノールを注入することと、CTによる検査で確認しながら、がんが完全に壊死(えし)するまで治療を繰り返すのがポイント。平均すると、治療回数は3~6回ほどで、入院期間は1カ月ほどになることが多い。

 一方、ラジオ波焼灼療法は、がんに腹部から電極を刺して、高周波でがんを殺す方法。1回の治療で3センチぐらいの範囲の細胞を壊死させることができる。したがって、エタノール注入療法より治療回数は少なくてすみ、その分入院期間も短縮される。

 いずれも治療当日から食事ができ、翌日には歩くこともできる。ラジオ波焼灼療法では高熱などの副作用が出ることもあるが、命にかかわるほどの合併症はほとんどないとされている。肝臓がんは、肝硬変という発生源を抱えている人が多いので、再発が多い。手術後5年間で7~8割の人が再発する。経皮的局所療法は、条件の範囲内であれば、あまり体に負担をかけないで何度でも繰り返し治療を行えるのも利点とされている。

 今のところ、1期の肝臓がんに対しては手術とどちらが成績がいいのか、分かっていない。外科の立場から日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授は「経皮的局所療法は、簡便で患者の負担が軽いのがメリットとされていますが、大切なのは一時的なつらさより生存率。条件の枠を超えて経皮的局所療法を受けようという場合は、きちんとデータを確認して納得してから受けるべきです」と語っている。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆経皮的局所療法 最近発表された全国集計では、肝臓がんに対するエタノール注入療法の5年生存率は42%と報告されている。ラジオ波は新しい治療法なので5年生存率は出ていない。

December 1, 2005 07:33 AM | トラックバック (0)