健康連載ブログ

2005年11月30日

がんと向き合う

【第49回】区域切除で肝不全激減

「肝臓がん(3)」

 肝臓がんの場合、がんが1個で、直径2センチ以下ならば、手術か経皮的局所療法、いずれも選択可能だ。どちらを選択するかは、患者の考え方次第だ。

 手術の強みは、確実にがんを切除できること。一方で手術には合併症というリスクも伴う。日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授によると、後出血、胆汁の漏れ、肝不全が3大合併症といわれるそうだ。

 肝臓は血液の豊富な臓器なので、切除した部分から後で出血が起こることがある。これが後出血。ただし、高山教授によると「昔は、後出血のために再手術になる人が5~6%いたのですが、今はほとんどなくなった」そうだ。切除した肝臓の断面から胆汁が漏れることもある。わずかな漏れも含めると10%ぐらいになるが、漏れたままになるのは2~3%。こういう場合は、再手術が必要になる。

 もっとも深刻なのは、肝不全だ。肝臓が満足に働かなくなり、死に至る合併症だ。高山教授によると80年代には、約1割に肝不全が起きていたが、現在は全国平均でも1%と激減している。これは肝臓がん手術の進歩と出血量が減少したおかげだそうだ。高山教授によると、「昔は肝臓手術では5000~6000CC出血するのが普通でした。これは、成人の全血液量に相当する量。それが今は全国平均でも1000CCほどに低下している」という。これを実現したのが、手術法の進歩なのである。

 肝臓は、左右2つの葉からなる。昔は、この葉単位で大きく肝臓を切除していた。ところが、血管の支配領域に応じて肝臓は8つの区域に分割できることが分かり、がんを区域ごとに切除する「系統的区域切除術」を東大の幕内雅敏教授が開発。必要最小限の範囲を切除できるようになった。そのおかげで、肝不全も激減したのだ。

 1期では、この区域切除が中心だが、区域切除もできないほど肝臓の予備能力が低下している場合は、周囲に安全領域をとってがんの部分だけを切除する「腫瘍(しゅよう)核出術」が行われることもある。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆尾状葉の手術 肝臓の裏側にあたる部位。太い静脈と接しているため、この部位だけを切除するのは難しかった。高山教授は左右の肝葉を残して尾状葉のみを切除する術式を考案している。

November 30, 2005 09:05 AM

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