健康連載ブログ

2005年11月30日

2005年11月30日

【第49回】区域切除で肝不全激減

「肝臓がん(3)」

 肝臓がんの場合、がんが1個で、直径2センチ以下ならば、手術か経皮的局所療法、いずれも選択可能だ。どちらを選択するかは、患者の考え方次第だ。

 手術の強みは、確実にがんを切除できること。一方で手術には合併症というリスクも伴う。日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授によると、後出血、胆汁の漏れ、肝不全が3大合併症といわれるそうだ。

 肝臓は血液の豊富な臓器なので、切除した部分から後で出血が起こることがある。これが後出血。ただし、高山教授によると「昔は、後出血のために再手術になる人が5~6%いたのですが、今はほとんどなくなった」そうだ。切除した肝臓の断面から胆汁が漏れることもある。わずかな漏れも含めると10%ぐらいになるが、漏れたままになるのは2~3%。こういう場合は、再手術が必要になる。

 もっとも深刻なのは、肝不全だ。肝臓が満足に働かなくなり、死に至る合併症だ。高山教授によると80年代には、約1割に肝不全が起きていたが、現在は全国平均でも1%と激減している。これは肝臓がん手術の進歩と出血量が減少したおかげだそうだ。高山教授によると、「昔は肝臓手術では5000~6000CC出血するのが普通でした。これは、成人の全血液量に相当する量。それが今は全国平均でも1000CCほどに低下している」という。これを実現したのが、手術法の進歩なのである。

 肝臓は、左右2つの葉からなる。昔は、この葉単位で大きく肝臓を切除していた。ところが、血管の支配領域に応じて肝臓は8つの区域に分割できることが分かり、がんを区域ごとに切除する「系統的区域切除術」を東大の幕内雅敏教授が開発。必要最小限の範囲を切除できるようになった。そのおかげで、肝不全も激減したのだ。

 1期では、この区域切除が中心だが、区域切除もできないほど肝臓の予備能力が低下している場合は、周囲に安全領域をとってがんの部分だけを切除する「腫瘍(しゅよう)核出術」が行われることもある。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆尾状葉の手術 肝臓の裏側にあたる部位。太い静脈と接しているため、この部位だけを切除するのは難しかった。高山教授は左右の肝葉を残して尾状葉のみを切除する術式を考案している。

November 30, 2005 09:05 AM | トラックバック (0)

2005年11月29日

2005年11月29日

【第48回】1期の手術5年生存率85%

「肝臓がん(2)」

 がんは、たいてい早期に見つかるほど治療の選択肢も多い。肝臓がんもその1つだ。

 日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授によると、「1期の場合、手術と経皮的局所療法と2つの選択肢があり、現状ではまだどちらがいいか、結論が出ていない状態」なのだそうだ。肝臓がんの場合、がんが1つで大きさが2センチ以下、血管に食い込んでいない状態が1期とされる。

 この状態だと、手術もできるし、エタノール注入療法やラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法など、皮膚から肝臓に針を刺してがんを殺す治療法、つまり経皮的局所療法も選択できる。

 どちらが優れているか、科学的に検証するためには、一定のルールのもとで比較試験を行わなければならないのだが、これはまだ行われていないのが現状だ。科学的な信頼性は落ちるが、治療を受けた人を過去にさかのぼって比較したデータはある。これによると、手術を受けた人の5年生存率は55%、エタノール注入療法は42%となっている。

 しかし「実際に手術を受けた人は、手術に耐えられるだけ肝臓に余力があった人が多いのです。つまり、同じがんの進行度でも、その分条件がいい人なので、単純に5年生存率では比較できないのです」と高山教授は指摘している。そこで、今は「経皮的局所療法と手術の長所短所をそれぞれの専門家から説明して理解してもらい、患者さん自身に選択してもらっている」そうだ。

 手術の利点は、何といっても確実にがんを摘出できること。したがって、生存率が高いことだ。高山教授によると「1期の5年生存率は、手術では80~85%に上る」という。一方、手術にはやはり合併症や手術死のリスクも伴う。肝臓は、血液が豊富な臓器なので、出血の危険もあるし、肝臓が満足に働かなくなって肝不全を起こす危険もある。しかし、高山教授によると「こうした合併症の危険は、手術法の進歩によって激減している」という。手術で命を失う人も全国平均で100人に1人足らずになっているそうだ。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆検査 超音波検査と造影剤を注入して行う造影CT検査、血管造影が中心。肝臓がんの場合、がんの大きさと数、血管や胆管にがんが食い込んでいるかどうかで、進行度が決められる。

November 29, 2005 10:30 AM | トラックバック (0)

2005年11月28日

2005年11月28日

【第47回】手術、エタノール、塞栓の3手法

「肝臓がん(1)」

 治療法が豊富で、たとえ手術が不可能でもいろいろな治療手段があるのが、肝臓がんだ。

 肝臓がんは原因がかなりはっきりしている。日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授によると、「肝臓がんの95%以上はウイルス性肝炎をベースに起こる」という。日本は肝臓がんの多発国。年間約3万人が、肝臓がんと診断されている。うち75%がC型肝炎、20%がB型肝炎によるものだ。肝炎ウイルスに感染後、慢性肝炎から肝硬変に移行し、ここから肝臓がんになる人が圧倒的に多い。

 高山教授によると「この中で手術を受けられる人は約3割」という。つまり、発見された時点ですでに約7割の人が手術できない状態にある。肝硬変がベースにあるので、肝臓の働きが低下していて手術による切除に耐えられない、がんが進行しすぎて手術ではとり切れないというのが、その2大原因だ。

 しかし、だからといってそう悲観することはない。肝臓がんは「手術できる人が限られているので、いろいろな治療法が開発されてきました」と高山教授。実は、そこで世界のリーダー的役割を果たしてきたのが日本。今、肝臓がんでは<1>手術<2>エタノール注入療法やラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法などの経皮的局所療法<3>がんを兵糧攻めにする肝動脈塞栓(そくせん)療法という3つの方法が主流。そのいずれもが日本で開発、あるいは完成された技術なのだ。

 「日本は、肝臓がんの治療では世界でもトップ。手術成績も世界一です」と高山教授は語っている。加えて、肝臓がんは胃がんや大腸がんなどに比べると進行が遅いことが多い。

 つまり、肝臓がんは原因がはっきりしているので、定期検診によって早期発見しやすく、たとえ手術ができない状態でも打つ手がいろいろある。高山教授によると「手術できる人が30%、残りの25%が経皮的局所療法、40%が肝動脈塞栓療法。治療法がないという人は5%ほど」だそうだ。一方で、肝硬変というがんの発生源を抱えているため、再発が多いのが問題だ。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆治療法の開発 手術法を完成させたのは東大の幕内雅敏教授、エタノール注入療法は千葉大第1内科が開発、塞栓療法の改良は和歌山県立医大のグループといわれている。

November 28, 2005 10:19 AM | トラックバック (0)

2005年11月27日

2005年11月27日

【第46回】放射線と抗がん剤で効果増強

「子宮頸がん(6)」

 子宮頸(けい)がんも、子宮頸部を越えて骨盤の壁にまでがんが食い込んだり、腟(ちつ)の下の方まで広がってくると、手術でがんを取り切ることはできない。しかし、幸いほとんどの子宮頸がんには放射線がよく効く。

 東京慈恵会医科大学産婦人科の磯西成治先生によると、「放射線治療が中心ですが、最近は欧米のデータから放射線と抗がん剤を同時併用すると、効果を増強させることができるとされている」という。

 一般的には、外から放射線を照射する方法と、腟から子宮内部に管を入れて内側からも放射線を照射する方法(腔=こう=内照射)を併用する。こうした治療で多くの人に延命効果が得られている。

 ただ、放射線は局所のがんを攻撃する治療法なので、ほかの臓器に転移するようになると、標準的な治療とはいえなくなる。「がんが膀胱(ぼうこう)や直腸などに限定していれば放射線治療をすることはありますが、たいていは全身的な効果が期待できる化学療法、あるいは化学療法と放射線治療の組み合わせになる」そうだ。

 肺や肝臓などどの臓器にどの程度の転移があるかで、治療の組み合わせは変わってくるそうだ。ただ、「この段階になると、治療はかなりきつくなるので、本人の全身状態や年齢などを考慮し、どのような治療法を選択するか、医師とも十分に話し合って慎重に決めるべきです」と磯西先生は語っている。

 放射線治療や放射線と抗がん剤の組み合わせで、中には5年たっても元気にしている人もいるそうだ。体力も含めて状況やその人の考え方次第で、選択肢も変わってくる。場合によっては、症状の緩和を図る緩和医療だけで、がんに対する積極的な治療は受けないというのも、現在では選択肢の1つと考えられている。

 磯西先生は「子宮頸がんに限らず、がんは医師との付き合いが長い病気です。ならば、相性のいい医師を選ぶのも1つの選択ではないでしょうか」と語っている。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆抗がん剤 進行がんではシスプラチンが中心だが、標準治療として提示される方法はない。古くから行われてきたBOMPという4種の抗がん剤の併用療法は古典的。

November 27, 2005 09:47 AM | トラックバック (0)

2005年11月26日

2005年11月26日

【第45回】副作用などで長所短所

「子宮頸がん(5)」

 子宮頸(けい)がんも進行がんになると、日本では周囲のリンパ節や腟(ちつ)の一部などを子宮と一緒に摘出する手術が標準治療とされている。転移の可能性があれば卵巣も一緒に切除する。これに放射線療法を補助的に行うことが多い。

 しかし、欧米では放射線と抗がん剤を同時に使う化学療法併用放射線治療が主流となりつつあるという。東京慈恵会医科大学産婦人科の磯西成治先生によると「両者の治療効果はほぼ同じですが、後者つまり化学療法併用放射線治療の方が有利とする報告がある」のだそうだ。

 治療成績が一番重要な問題だが、副作用や合併症の面ではどうなのだろうか。手術では、リンパ節摘出に伴う足の浮腫が、よく指摘される。リンパ浮腫は、リンパ液の流れが滞るために、足がむくむ症状。体形やがんの進み方によってはやむを得ないこともあるが、靴が履けないなど日常生活が障害されるほどむくむことは少なくなっているそうだ。

 一方、化学療法併用放射線治療は、子宮を失わずにすむのが精神的には大きなメリットだ。しかし、放射線治療にも副作用はある。皮膚がやけどのように赤くなったり、放射性の直腸炎や膀胱(ぼうこう)炎などの炎症、足のリンパ管炎や下痢など。晩期障害といって治療後しばらくたってから、障害が出ることもある。特に欧米での放射線療法は、放射線の照射量が多いようだ。「同時に投与される抗がん剤の毒性も重なるので、副作用が強く出ることもあるのです」と磯西先生は語っている。ちなみに、日本の放射線照射量は欧米に比べて少ないためか、個人差はあるものの強い副作用は割合少ないそうだ。

 ただし、卵巣は放射線に敏感な臓器。放射線を照射すると、卵巣の働きは普通完全に失われる。つまり、子宮は残っても卵巣が働かなくなるので、妊娠はできない。若い人ならば早く閉経を迎えることになる。

 副作用や合併症の面でも、それぞれに長所短所があるのだ。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆卵巣の働き 卵巣の機能を残すために、どこまでなら手術で卵巣を切除しないでいいのか、放射線を併用しないですむのか、といった研究を行っている専門家もいる。

November 26, 2005 09:56 AM | トラックバック (0)

2005年11月25日

2005年11月25日

【第44回】日本でも放射線が増

「子宮頸がん(4)」

 今のところ、子宮を残して子宮頸(けい)がんの治療ができる可能性もあるのは、子宮頸部にとどまるごく初期のがんまでだ。これよりがんが深く食い込んだり、子宮頸部を越えて広がると(1a2期から2期まで)、日本では手術が中心。広汎子宮全摘手術といって、リンパ節など周囲の組織と一緒に子宮を摘出する。

 東京慈恵会医科大学産婦人科の磯西成治先生によると「2期になると、リンパ節転移があれば、手術後補助的に放射線を照射するのが普通」。2期で手術だけで終わることはむしろ少ないそうだ。

 一方、欧米では手術より放射線が選ばれているという。「少なくとも1b2期以上は放射線治療の対象で、最近は放射線と抗がん剤を同時に併用する放射線化学療法が主流になっている」という。日本ならば手術の対象となる子宮頸がんを、欧米では放射線と化学療法で治療するのが主流となりつつあるのだ。これは放射線化学療法が、手術に匹敵する治療成績を挙げると報告されるようになったためだ。

 といっても、「欧米には、日本人の2倍ぐらい肥満した女性もいて手術操作も大変。血栓ができやすいなど手術に伴うリスクも高くなります。ですから、欧米でのデータがそのまま日本人に当てはまるかどうかは分からないのです」と磯西先生は語っている。

 最近は日本でも子宮頸部を越えてがんが広がってくる(2期)と、「広汎子宮全摘手術をしても、治療成績は放射線化学療法と変わらないか、むしろ放射線化学療法の方がいいのではないか」という議論が出ているそうだ。海外では、単純に子宮だけを摘出して、放射線化学療法を行うと患者さんの負担が少ないという報告もある。

 「手術と放射線、抗がん剤。この3つのうち何を主体にどう組み合わせていくか。結論は出ていない状態です。日本は広汎子宮全摘手術に放射線を補助的に照射するのが現状ですが、放射線化学療法を積極的に採用する施設も増えているようです」磯西先生は語っている。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆治療成績 欧米では、日本ではまだ手術の対象となる患者(1b期や早い2期)も放射線化学療法で治療しているので、その分治療成績が高いという面もある。

November 25, 2005 10:21 AM | トラックバック (0)

2005年11月24日

2005年11月24日

【第43回】円錐切除の限界は1a1期

「子宮頸がん(3)」

 子宮頸(けい)がんは、どの段階までに発見できれば、子宮を残して治療できるのだろうか。若い人にも少なくないだけに、これから子供が欲しいという人には切実な問題だ。

 がんが、子宮の上皮内にとどまる0期であれば、円錐(えんすい)切除でも治療できる。円錐切除ならば、子宮の入り口付近を、内側から円錐状に切除するだけなので、妊娠・分娩(ぶんべん)には問題がない。東京慈恵会医科大学産婦人科の磯西成治先生によると、その限界はⅠ期のごく初期(1a1期)。「症例は限られますが、患者さんの希望と状況に応じてこの段階でも円錐切除が可能な場合もあります」。

 つまり、がんが子宮上皮からその下の基底膜を越えてほんのわずかに食い込んだ程度ならば、場合によっては円錐切除で治療できる可能性もあるのだ。ただし、「そのためには、専門的な知識とその後の十分な管理が必要」と磯西先生。

 普通、1a1期は子宮だけを摘出する単純子宮全摘手術が標準だ。ごく浅い1a1期の子宮頸がんならば、リンパ節転移の心配はないが、まれに予想より深くがんが子宮の壁に食い込んでいることがあり得る。その場合でも、子宮を摘出してあれば、心配はないからだ。

 ここで円錐切除を選択するには、「浅い1a1期の確実な診断と細かい病理検査結果の判断という専門的な知識を必要とします」と磯西先生。円錐切除で治療を終わる病院は決して多くはないのである。万が一にも治るがんを取り残してはならないからだ。

 世界的には「円錐切除を行い、切除した組織を病理検査して確かに1a1期でもごく浅いがんと確認できれば、他に病変はないと考えられるので治療は終了と考える」そうだ。

 磯西先生自身は「1a1期ならば、標準的には子宮全摘手術ですが、ごく初期の限られた症例では円錐切除も考慮できます。基本的に非常に浅い1a1期は円錐切除の可能性をお話ししますが、患者さんの考え方でどちらの方法を選んでも良いと思います」と語っている。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆1a1期 上皮から基底膜を破って子宮の壁(間質)に食い込んだもの。その食い込みの深さが3ミリ以内で、広がりが7ミリを超えないものが1a1期。

November 24, 2005 11:04 AM | トラックバック (0)

2005年11月23日

2005年11月23日

【第42回】0期までなら円錐切除 妊娠問題なし

「子宮頸がん(2)」

 子宮の入り口付近にできる子宮頸(けい)がんの場合、がんになる前の段階ともいえる状態から発見できる。これを「異形成」という。がんではないが、細胞の形などが正常の細胞とは違っているという段階だ。

 東京慈恵会医科大学産婦人科の磯西成治先生によると「異形成でも、軽症であれば、必ずしも治療の必要はない」という。まだ、この段階ならば自然に元に戻る可能性が残されている。そこで「通常は3カ月以内に定期的に検診を行い、経過を追っていく」ことになる。

 これが、異形成でも高度の異常になると、「切除治療が望ましい」と磯西先生。ただし、この場合は、「円錐(すい)切除」といって、子宮頸部を円錐状に切除するだけなので、子宮は残すことができる。メスやレーザーで切る、高周波で焼き切るといった方法があるそうだ。

 「治療内容はどれも同じですが、異形成だからといって必ずしも狭い範囲に限られるわけではないのです。その広がり方や病院にどういう治療機器が備えられているかで方法も異なってきます」。

 施設にもよるが、メスで切除する場合は、4~5日から1週間程度の入院が必要。レーザーの場合も、メスとして使えば入院期間は同じくらい。一方、レーザーで円錐状に頸部を蒸散する(焼き飛ばす)方法なら、日帰りも可能だ。高周波で焼き切る場合も、基本的に入院の必要はない。入院してもごく短期間だそうだ。ただし、「レーザーで蒸散すると、組織を顕微鏡で検査できないのが、欠点」と磯西先生。組織が蒸散して消えてしまうので、がんの有無を確認することができないのである。

 一般的に0期までは、円錐切除で子宮を残して治療することもできる。子宮頸がんは、子宮入り口の外側を覆う上皮細胞から発生するのだが、この上皮にがんがとどまるのが0期。転移の心配もまだないので、円錐切除で治療が行われることもある。もちろん、円錐切除ですめば、妊娠にも問題はない。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆異形成と0期 異形成から、0期の上皮内がんになるのは20%程度といわれている。現在は、0期でも多くの病院で円錐切除が行われている。

November 23, 2005 10:39 AM | トラックバック (0)

2005年11月22日

2005年11月22日

【第41回】検診普及、早期発見で死亡率減少

「子宮頸がん(1)」

 子宮がんで命を落とす人の率(死亡率)は、ここ40年ほどの間に4分の1にまで減少している。子宮がんにも、子宮の入り口付近にできる子宮頸(けい)がんと体部(子宮本体)にできる子宮体がんがあるが、子宮がんの7~8割を子宮頸がんが占める。

 しかし、子宮頸がんが、ほかのがんに比べて特に治療に反応しやすいわけではない。東京慈恵会医科大学産婦人科の磯西成治先生は「子宮頸がんが治りやすいと言われるのは、早期に見つかる人が増えたからです。子宮がんになる人が減っているわけではないし、進行がんで発見されれば厳しいのは、他のがんと同じです」と語っている。

 つまり、死亡率の減少は、ひとえに検診が普及して早期発見が増えたからなのである。

 子宮頸がんは腟(ちつ)から直接細胞を採取できるのが、検診では大きな強みになる。体の奥にできたがんは、普通レントゲンなど画像診断を行い、異常を認めた場合に細胞や組織をとって顕微鏡でがんの有無を検査する。しかし、子宮頸がん検診では、最初から頸部の細胞をとって顕微鏡で調べるので、精度が高い。それだけ、診断がつきやすく、検診の効果も高いのだ。

 異形成といって、がんになる前の段階から発見できるのも、子宮頸がんの特徴だ。検診を受けることが、子宮頸がんの第1の対策なのである。

 現在、子宮頸がん検診の対象は30歳以上とされている。しかし、「発症のピークは40~60歳ですが、20代から80代まで幅広い年齢でみられ、特に最近は若い女性に子宮頸がんが増えています。そこで、厚生労働省では2004年から、検診対象年齢を20歳以上の女性に広げることになった」そうだ。

 子宮頸がんの患者からは、高率にヒトパピローマウイルスというウイルスが発見される。性行為によってこのウイルスに感染することが子宮頸がんの引き金の1つとも言われている。とすれば、性行為が始まれば若くても子宮頸がんにならない保証はないのである。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆子宮がん 子宮頸がんと子宮体部にできる体がんがある。かつては日本人の子宮がんの大半は頸がんだったが、現在は体がんが増加し2~3割を占める。

November 22, 2005 08:19 AM | トラックバック (0)

2005年11月21日

2005年11月21日

【第40回】信頼できる病院で人間ドック

寺内タケシさんの選択(4)

 大腸がんを経験するまで、寺内タケシさんはそれほど医療や健康に関心があったとは思えない。大腸ポリープで内視鏡検査を受けた帰り、病院の隣にある温泉センターでひとっ風呂浴びたり、大腸がんの手術を終えて退院するときには、うれしくてスキップを踏んで、医師たちに怒られたり、あきれられたりしている。

 だが、がんになってずっと考えていたのは「なぜ、自分は大腸がんになったのか」という疑問だった。これは、がんになった人が多かれ少なかれ考えることだ。そこから、精神論に入っていく人もいる。ところが、ギターと同じで寺内さんは関心を持つと徹底的に追求する。医師には、500%再発はありませんと告げられていたが、がんを未然に防ぐには、その原因を知る必要があると考えた。

 残念ながら、現代医学ではまだがんの原因はよく分かっていない。熱心に医師を問い詰めて「遺伝的要因」も可能性があると聞くと、父方母方4代さかのぼって調べた。1人もがんになった人はいなかったというから、珍しい家系かもしれない。

 で、国会図書館や浄水場まで行って調べた結果、到達したのが、水と食べ物。寺内さんによると、日本人のがんの増加と同じ曲線を描いて増加しているのが、上下水道と欧米食の普及なのだそうだ。以来、肉好きで暴飲暴食に近かった寺内さんの食生活は、魚と野菜中心の和食に変化。寺内さんいわく「小鳥の生活」。面白いことに「ギターを弾くと、和食はスピードが出て、洋食は持続力が出る」そうだ。

 水もマイナスイオン水にした。さらに徹底したのが検査。年に1度の人間ドックは半年に1回に、腸の検査と血液検査はそれぞれ3カ月に1度。合計年に10回も検診を受けている。そして、ドックには家族親せき一同も同道して受診し、何かあれば自ら「指示医」と化しているそうだ。

 「健康でありたいのは、少しでも長くギターを弾いていたいから。皆さんにも信頼できる病院で人間ドックを受けることを勧めたい」。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆活動 以前からのハイスクールコンサートに加え、施設の慰問、災害救助犬の育成など幅広く活動。現在は、コンサート(11月29日、よみうりホール)に向けて準備に余念がない。

November 21, 2005 09:46 AM | トラックバック (0)

2005年11月20日

2005年11月20日

【第39回】おかしい病院のソフト

寺内タケシさんの選択(3)

 病院で何か不満があっても、たいていの人は「病院なんてこんなもの」と最初からあきらめているのではないだろうか。

 ところが、寺内タケシさんには全くそれがない。実に素直に驚き、文句を言う。それが新鮮でさえある。大腸がんの手術を受けた時もそうだった。「頑張れという言葉はありがたいけど、手術は麻酔で眠っている間に医師がするのだから僕は頑張りようがない」というのが、寺内さんの持論。だが、病院のソフト面には大いに文句があった。

 手術前、患者は震えるほど緊張してストレッチャーに乗る。なのに、ストレッチャーは廊下の接ぎ目を通るたびに音を立て、体が弾むほどの振動がある。見上げた天井には無機質な蛍光灯が並ぶばかりで、見ているだけでわびしくなる。

 「われわれも頑張ります。患者さんも気合を入れて頑張りましょう、くらいの張り紙でもあれば、どれだけ心細さが和み、励まされるか」。リラックスのためなのか、手術室に流されていた音楽もお経のように聞こえた。「なぜ、リクエストぐらいとってくれないのだろう」。

 一番ショックだったのは、麻酔から覚めた時のわが身の姿だった。体じゅうにコードや管がつながれ、尿意を訴えると、管が入れてあるからそのままどうぞという。何とか焼けつくような痛みをこらえて尿道の管は抜いてもらったが、失神するほどの痛みに耐えてトイレまで歩く羽目になった。癒着を防ぐためと渡されたガムには味もそっけもない。

 手術後の総回診で不満が言葉になった。「ウソつき」。教授が大勢を引き連れて病室を回る回診は、威圧感さえある。その中でこんなことを言う患者はまずいないだろう。「どこが大したことない手術なんだ」。腹腔(ふくくう)鏡下手術は体に負担が少ないという意味で、手術後の状態のことではないと説明されてやっと納得したが、それでも事前に説明があればこんなにうろたえることはなかったろうと言うのである。

 今、寺内さんの率直な意見は、病院づくりに反映されようとしている。

 【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆腹腔鏡下手術 肛門(こうもん)から入れた内視鏡ではとれない大きさのポリープや早期の大腸がんを対象とした手術法。傷口が小さく、開腹手術より体の負担が少ないとされる。

November 20, 2005 09:26 AM | トラックバック (0)

2005年11月19日

2005年11月19日

【第38回】ギターがショックを振り払う

寺内タケシさんの選択(2)

 音楽が縁で始まった寺内タケシさんの年1回の人間ドック。そこで見つかった大腸ポリープが、がんと分かったのは、01年12月のことだ。このとき、寺内さんは「動揺はしたけれど、思ったほどのショックはなかった」と振り返る。なぜか。ここでも、やはりギターが寺内さんを支えるのである。

 5歳のときから兄のギターを隠れて弾き、三味線の家元だった母の三味線の音にギターの音がかき消されるのが悔しくて、エレキギターを作った寺内さんである。何でもギターになぞらえて考えるクセがついていた。「ギターだって、音が狂ったら0・3ミリの単位で調整するからね。人間の体だって、精密機械みたいなものだから、病気になったら治せばいい」。クヨクヨするより、そういう思いの方が大きかった。

 そして、信頼すべき主治医がいた。音楽を通じて知り合い、今では人間ドックの名医となったその医師を寺内さんは心から信頼し、互いに尊敬していた。「彼が病気の治癒を一番に考えて計画してくれることが、自分に悪いはずがない。あとは、信じて任せるだけだと驚くほど素直に思えた」と語っている。

 が、それで済まないのが寺内さんだ。手術は翌年2月、大学病院で行われることになった。手術前日、医師と看護師総勢10人からなるチームを前に、手術の説明を受けた。腹腔(ふくくう)鏡下手術といって腹部に3カ所穴をあけ、がんのできた大腸を15センチほど切除する。

 白衣に囲まれ、重々しい雰囲気の中で話を聞くうちに、寺内さんは耐え難く重苦しい気持ちになっていく。それが爆発したのは、全身麻酔の注射をすると聞いたときだった。小学生のとき、盲腸の麻酔で痛い思いをして以来、寺内さんは大の注射嫌い。「注射をするなら帰る」と言い出したのである。こうなるとだだっ子。白けた雰囲気の中で、「では、マスクの麻酔にしましょう」と教授が助け舟を出した。これで退路も絶たれたのである。実は意識が失われたところで注射は行われたらしいが…。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

November 19, 2005 10:09 AM | トラックバック (0)

2005年11月18日

2005年11月18日

【第37回】「お礼」の人間ドックがきっかけ

寺内タケシさんの選択(1)

 人とのつながりを大切にして、正直に生きること。寺内タケシさんの話を聞いていると、そんな生き方の大切さとおかしさが、両方伝わってくる。

 「ギターの神様」と異名をとる寺内さんが、大腸がん(S状結腸)の手術を受けたのは、今から4年前のことだ。毎年受けていた人間ドックで、大腸に親指の頭大のポリープが発見された。内視鏡で摘出した結果、これががんと診断された。

 つまり、人間ドックのおかげで早期発見ができたのだが、そのきっかけが寺内さんらしい。寺内さんは、子供のころから空手を習い、プロになってからは年間180本ものコンサートをこなすために体力づくりに励んできた。健康と体力には自信があった。「人間ドックなんて必要とも思わなかったし、病院に行くと具合が悪くなる方だった」と言う。

 ところが、80年ごろ、友人であるペドロ&カプリシャスのペドロ梅村さんから「面倒をみているバンドの演奏をぜひ聴いてやってほしい」と頼まれる。メンバー全員が医師で、ライブは女性でいっぱい、実は女性はみんな看護師という変わり種のバンドだった。

 付き合いで仕方なく見にいくと、高級住宅地に建つメンバーの自宅には能舞台があり、持っている楽器も素晴らしい。ところが、いざ演奏を始めると「これがひどいんだ」。

 その落差に腹を立てた寺内さんは、メンバー全員を床に正座させて、精神論や音楽論を説教して帰った。ちなみに寺内さんは禅寺で修行した禅僧でもある。

 すると、後日メンバーの1人から「お礼に人間ドックへご招待させてください」と電話が入る。これが、以後寺内さんが毎年人間ドックを受診するきっかけとなり、この時寺内さんに電話をかけてきたバンドのメンバーこそ、寺内さんにがんであることを告げた医師なのである。そして、この長い付き合いとお互いの信頼関係が、大腸がんと闘う力にもなった。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆寺内タケシ 1939年(昭和14年)茨城県生まれ。5歳からギターを手にし、世界初のエレキギターを独自に制作。63年にブルージーンズを結成、日本レコード大賞編曲賞、企画賞など受賞。全国の高校を回るハイスクールコンサートを続けている。

November 18, 2005 09:17 AM | トラックバック (0)

2005年11月17日

2005年11月17日

【第36回】補助化学の効果まだ不明

「胃がん(9)」

 胃がんも、肝臓や肺など離れた臓器に転移するようになると、手術でとり切ることは難しい。がんによる症状で患者さんが苦しんでいれば、胃の切除が行われることもあるが、これは症状の緩和が目的。基本的には、抗がん剤による化学療法が中心になる。

 胃がんは、抗がん剤がよく効くがんとはいえないが、中程度に効く。国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生は「抗がん剤は、1つダメなら次と、試すことができるのが長所。作用メカニズムの違う抗がん剤が増えれば、次々に試して寿命が延びる可能性も高くなるのです」と語っている。

 抗がん剤は、1つが効いてもやがてがんに耐性ができて効かなくなってくるのが常。しかし、抗がん剤ががんのどういう特徴を攻撃するものなのか。働き方の違うものを使えば、また効いてくれる可能性が高いのだ。

 実際に今は抗がん剤の種類が増え「3~4種類試せる人も増えてきました。その結果、1年以上生存する患者さんも増えています」と笹子先生。古くから使われているのは5FUという系統。これを元に開発されたTS1はのみ薬。単独でも4割以上の胃がんに奏効(がんが半分以上縮小する率)すると報告され、大きな注目を集めている。さらにシスプラチンや塩酸イリノテカンを併用したり、こうした抗がん剤が効かなくなった人にも、タキソールなどタキサン系の抗がん剤が効くことが多いそうだ。

 抗がん剤は、それぞれ粘膜が荒れたり、腎臓に毒性がある、白血球の減少、脱毛、吐き気や食欲不振などの副作用がある。しかし、それもある程度は薬で抑えることも可能になっている。「再発して手術でとれなかった場合でも、2年以上生存する人が2割近くになっています」。
 どういう抗がん剤や組み合わせが一番効果が高いのか、現在臨床試験が行われているところだ。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆拡大手術 がんが胃壁から外に出て、ほかの臓器に食い込んでいたり、遠くのリンパ節に転移していた場合に行う手術。膵(すい)臓や大腸など胃に接する臓器や大動脈周辺のリンパ節など離れたリンパ節も郭清する。

November 17, 2005 09:43 AM | トラックバック (1)

2005年11月16日

2005年11月16日

【第35回】補助化学の効果まだ不明

「胃がん(8)」

 日本では、以前から胃壁の筋層より深くがんが食い込むようになる(2期以降の進行がん)と、手術後、再発予防を目的に抗がん剤が使われることが多かった。しかし、国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生によると「補助化学療法の効果はまだはっきりしていない」という。最近、小規模な臨床試験で、手術後、抗がん剤を使った方が生存率が高いという成績が出たが、ほぼ同時に結果が判明したもう少し進んだがんを対象とした臨床試験では、全く差が出なかった。

 別の臨床試験では「補助化学療法を行った方が生存率が少し高かったのですが、手術単独でも90%以上治っているので、有為差にはならなかったのです」。つまり、意味のある差にはならなかったのだ。しかし、抗がん剤を使えば効果はなくても、副作用はある。

 現状では「進行がんだから術後に必ず抗がん剤が必要というものではありません」と笹子先生は語っている。抗がん剤を投与しても再発しないという保証はないのだ。

 ちなみに欧米ではどうなのだろう。笹子先生によると、米国では手術後、抗がん剤と放射線治療を行うことで、明らかに生存率が高まることが示され、今は手術後に放射線化学療法を行うのが標準。英国では、早期以外は手術の前に抗がん剤を使う方がいいという結果が出ている。

 しかし、この結果がそのまま日本に当てはまるかといえば、大いに疑問。「はっきり言って、欧米は日本ほど手術がうまくありません」と笹子先生。結局手術で取り残したがんを、放射線などでつぶしているのが実情らしい。「日本では手術単独でも6割治っているレベルのがんが、米国では放射線と抗がん剤を加えてやっと4割になっているのです」。従って日本では放射線を併用する方向にはないそうだ。

 英国では早期以外の胃がんすべてが術前化学療法の対象になっているが「日本では、進行がんでも筋層にとどまれば手術だけで5年生存率は9割。もっと進んだがんで検討しないと」と笹子先生。手術成績が高いので欧米の結果をうのみにはできないのだ。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆術後補助療法 来年、日本で1000人以上の患者を対象に術後補助療法を行った群と手術単独群の臨床試験の途中経過が検討され、大きな差がある場合に限り結果が公表される。

November 16, 2005 10:18 AM | トラックバック (0)

2005年11月15日

2005年11月15日

【第34回】リンパ節郭清の研究進む

「胃がん(7)」

 少し進んで、内視鏡や縮小手術(あるいは腹腔=ふくくう=鏡下手術)の対象にならないがんの場合、定型手術が基本になる。がんの進行期でいうと1b期から2期、3期の一部。分かりやすく言うと、がんが進んでいてもほかの臓器に食い込んだり、遠隔転移がなければ、定型手術ということになる。

 胃の3分の2以上を摘出し、周囲のリンパ節を摘出するのが定型手術。胃の出口の側を切除することが多いが、がんのできた部位によっては入り口側を切除することもある。場合によっては胃を丸ごと摘出することもある。国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生は「日本では以前から標準的に行われており、すでに確立された治療法です」と語っている。

 ただ、手術ではがんが進行した場合、リンパ節をどこまで摘出するか、そして手術後に抗がん剤を補助的に使うことに意味があるのかどうかが問題になっている。

 笹子先生によると、リンパ節郭清では「すでにがんが胃壁の外に出ている場合、大動脈周囲のリンパ節を郭清した方がいいのかどうか」が、検討されているのだそうだ。大動脈周囲のリンパ節は普通、定型手術ではとらないが、胃壁の外にまでがんが飛び出していると、それだけ転移も広範囲に及ぶ可能性がある。リンパ節は広範囲に摘出するほど、手術による危険性や合併症のリスクも高くなる。それを冒しても、大動脈周囲までリンパ節郭清を拡大する方がいいのかどうか。そこが、問題になっていたのである。

 これに関しては、来年日本で500例以上の患者さんを対象に行った臨床試験の結果が出る予定だ。「結果はまだ分かりませんが、おそらく全体的にどうするというより、こういう患者さんには大動脈周囲のリンパ節まで郭清する、そうでない人はそこまでやらなくても良いなど、グループ分けが進むようになるのではないかと思っています」と笹子先生は語っている。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆リンパ節郭清 欧米ではリスクの方が高いとして、日本ほどきちんとリンパ節郭清が行われてこなかった。しかし、笹子先生らがヨーロッパで行った比較試験を契機に現在は欧米でもリンパ節郭清が推奨されている。

November 15, 2005 09:05 AM | トラックバック (0)

2005年11月14日

2005年11月14日

【第33回】進行性なら腹腔鏡は不適切

「胃がん(6)」

 最近は、多少進んだ胃がんでも、腹腔(ふくくう)鏡を使って手術をする研究が進んでいる。今のところ、どこまで腹腔鏡下手術が可能なのだろうか。

 その基準となるのが、リンパ節転移の危険度だ。国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生は「胃がんは、胃壁に深く食い込むほど、リンパ転移の可能性が高くなります。転移の頻度が半分以上になったら、腹腔鏡の適応にはなりません」と語っている。

 具体的にいうと、早期でリンパ節転移の可能性が2割以下、もしくは転移のリスクが3人に1人かどんなに多くても5割まで、というのが目安だそうだ。これは、がんの深さでいうと、胃壁の筋層まで。一番外側にある漿(しょう)膜まで達していると、「もう腹腔鏡を考える人はいないでしょう」と笹子先生。

 腹腔鏡下手術でも、胃の周囲にあるリンパ節を摘出することはできる。しかし、情報量が違うという。開腹手術の場合、執刀医は「見た感じだけではなく、実際に手で触れて、固さや突っ張り方などを感じながら、手術をモディファイして行っているのです」。例えば、普段何でもない部位がはがしにくければ、怪しいと判断してもう少し深いところから切除するなど、臨機応変に工夫しながら手術を行っているのである。

 しかし、モニター画面で内部を見ながら行う腹腔鏡下手術では、こうはいかない。したがって「進行したがんにまで腹腔鏡下手術を行うのは、疑問です。筋層にとどまる胃がんでも、リンパ節転移の数が多ければ、腹腔鏡で行ったために再発したということもないとはいえません」と笹子先生は警告している。

 もう1つ、覚えておきたいのは執刀医の技術差。「腹腔鏡下手術は、うまい下手の差がより大きく出やすいのです」と笹子先生は指摘している。狭い空間で複雑な技術を駆使する腹腔鏡下手術。「上手な人の腹腔鏡下手術は、下手な人の開腹手術よりよほど上等」だが、その逆の場合は目を覆う結果になりかねないのである。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆入院期間 内視鏡の場合は入院期間は3~5日。腹腔鏡の場合はリンパ節郭清まで行うと10日前後が目安。開腹手術だと術後1~2週間入院することが多い。

November 14, 2005 09:19 AM | トラックバック (0)

2005年11月13日

2005年11月13日

【第32回】リスクを伴う腹腔鏡下手術

「胃がん(5)」

 早期の胃がんでも内視鏡による治療の対象にならない場合、最近では腹腔(ふくくう)鏡を使って縮小手術を行う病院も増えている。

 腹腔鏡下手術は、おなかにいくつか小さな切開を入れ、ここから腹腔鏡や器具を挿入。胃を部分的に切除したり、リンパ節を摘出する方法だ。おなかを開く開腹手術に比べて傷あとが小さく、痛みも少ない。体に負担が少ないので回復も早い、というのが売り物。内視鏡がダメなら腹腔鏡で、と思う人も多いはずだ。

 しかし、国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生は、慎重だ。「腹腔鏡下手術にはリスクも伴うことを理解して欲しい」と語っている。

 前にもお話したように、手術前にがんの広がりやリンパ節転移の有無を正確に把握することはかなり難しい。万が一、リンパ節転移があった場合、「腹腔鏡で手術をした人も開腹手術をした人と同じ率で治っているのかどうか、その評価がまだ行われていないのです」。何百人と例数が集まった段階で、開腹手術を受けた人と、生存率や再発率を比較してみないと、正確な判断はできないのである。

 ならば、体にやさしいというメリットはどうなのか。これに関しても笹子先生は「確かに開腹手術と比べると、手術直後の痛みは腹腔鏡の方が楽です。傷も小さいですが、それは手術後2~3カ月の話です」と説明している。つまり、おなかを開けるのだから、手術後1~2週間は開腹手術の方が痛みが大きい。つまり、1~2週間のメリット。傷あとも最初は腹腔鏡下手術の方が小さいが、2~3カ月して開腹手術の傷が治れば、ほとんど差はないという。つまり、「がんが治ることを心配するのならば、2~3カ月のメリットより、開腹手術の方が安全」となるのである。

 ただし、腹腔鏡の方が向く人もいる。スポーツマンや歌手など本格的に腹筋を必要とする人。「開腹手術だと腹筋に多少ダメージが残る」からだ。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆早期がん がんが粘膜下層までにとどまり、リンパ節転移がないのがⅠA期、胃に接したリンパ節に転移があるか、筋層まで食い込んでいるとⅠB期。早期がんは、ほとんどがこの範囲に入る。

November 13, 2005 10:33 AM | トラックバック (0)

2005年11月12日

2005年11月12日

【第31回】出口残す幽門保存胃切除術

「胃がん(4)」

 早期ではあるけれど、内視鏡的切除の対象から外れる場合には、基本的には「縮小手術」、選択肢として腹腔(ふくくう)鏡下手術という方法もある。

 胃がんの場合、手術は胃を3分の2以上切除して周囲のリンパ節も摘出する定型手術が基本になっている。しかし、早期でリンパ節転移の可能性も低い場合(胃の粘膜下層まで達しているけれど、2センチ以下でリンパ節転移の可能性が数%程度のもの)、手術後の後遺症を考えて、手術範囲を狭くした手術が行われている。

 具体的には、切除する胃の範囲を小さくしたり、摘出するリンパ節の範囲を狭くする。これにもいくつかの方法があるが、国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生によると、最近よく行われているのは「胃の幽門を残して胃を切除する方法」だそうだ。

 幽門というのは、胃の出口で、胃から小腸への食べ物の排出をコントロールしている。定型手術では、胃の下側3分の2を幽門ごと切除して、残った胃と腸をつなげることが多い。出口がなくなると「食べたものが一気に小腸に落ちて、ダンピング症候群などが起こりやすくなります。それで、患者さんは後遺症で苦しむのです」と笹子先生は語る。

 胃切除後に起こる食後の不快症状は、ほとんどがこのダンピング症候群によるものだ。食べたものが一気に小腸に流れ込むので、腸の働きが異常に高まったり、多量のインスリンが分泌されて血糖値が低下しすぎて、めまいや動悸(どうき)、冷や汗が出る、手指が震えるなどいろいろな症状が出る。だんだん慣れるとはいっても、胃を切除した後、多くの患者さんが悩む症状だ。

 そこで、胃の出口、つまり幽門を十二指腸側につけたまま残して、胃を切除するのが、「幽門保存胃切除術」。すでに、がんセンター中央病院では500人以上の患者さんに実施している。「胃の入り口も出口も残しているので、胃の働きが大きく低下する心配はありません」と笹子先生は語っている。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆縮小手術 胃を部分的に小さく切除したり、胃の下にある大網という脂肪組織を残す方法もある。大網を残すと、手術後、腸が癒着して腸閉塞(へいそく)などを起こす危険も低くなるとみられている。

November 12, 2005 09:57 AM | トラックバック (0)

2005年11月11日

2005年11月11日

【第30回】内視鏡切除は2センチまで

「胃がん(3)」

 内視鏡で切除できる胃がんは、基本的に粘膜内にとどまる2センチ以下のがんとされている。

 2センチというのは、一般的に行われている内視鏡的粘膜切除術で、ワイヤを引っかけて一括してとれる大きさという意味だ。国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生は「内視鏡でも、十分な安全領域をとって切除できていれば、局所再発はほとんど起こりません」と語っている。

 その確認のために重要なのが、切除した組織の病理検査だ。切除した組織を顕微鏡で検査し、周囲にがんの取り残しがないか、粘膜より深くがんが食い込んでいないかを確認する。

 この検査でOKとなって、内視鏡による治療は初めて完了となる。ところが、実際には「手術前の診断は、2割ぐらい間違っているのです」と笹子先生。手術前に行われる検査で、おおよそのがんの広がりや深さは分かるのだが、それでも実際に内視鏡で組織をとってみると、予想外にがんが広がっていることがある。こうした場合は、直ちに胃を切除し、周囲のリンパ節をとる定型手術などに変更して手術が行われる。

 「万が一の場合、ただちに開腹手術に移れるのも、内視鏡的粘膜切除術の利点です」と笹子先生。内視鏡切除後の検査から開腹手術に移行する場合も、まれではないのである。これも、内視鏡で治療を受ける場合には、覚えておきたい。

 2センチ以上の大きさでも、分割して内視鏡で切除することは可能だ。しかし、そうすると分割した境目の組織が、焼き切る時の高周波の熱で焼き固まり、顕微鏡でみてもがんの有無がよく分からなくなってしまう。

 笹子先生によると、実際に分割切除の方が再発率は高いという。「一括切除と分割切除では、同じ内視鏡的粘膜切除術でも、安心感が全く違うのです」。だから、内視鏡で切除できるのは2センチまでとされているのである。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆ITナイフ ワイヤではなく特殊なナイフで、粘膜下層まで病巣を切除する内視鏡的切除。2センチより大きながんも一括切除可能だが、できる人は限られており、まだ評価も定まっていない。

November 11, 2005 09:15 AM | トラックバック (0)

2005年11月10日

2005年11月10日

【第29回】内視鏡切除は条件あり

「胃がん(2)」

 胃がん、それも早期で発見された場合、多くの人が考えるのは「内視鏡でとれないか」ということだろう。

 内視鏡的粘膜切除術は、簡単にいえば口から入れた内視鏡で、胃の内側からがんを切除する方法だ。胃壁に生理食塩水などを注入して、胃がんの病巣部を盛り上げ、ここにワイヤ(スネア)をかけて高周波で焼き切る。胃袋を切除する手術と違って、体への負担が少ないだけでなく、胃がそのまま残るのでほとんど後遺症の心配もないのが利点。可能ならば、内視鏡で切除したいというのが人情だろう。

 国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生は、がん治療法を選択する場合の基本をこう語っている。「まずがんの性質を知ること。つまり、がんは周囲の組織に食い込みながら広がっていき(浸潤)、リンパ節や遠くの臓器に飛び火(転移)してそこで新たな病巣を作っていきます。こうしたがんの性質にいかに対応するかで、治療法が決まってくるのです」。

 そこで、内視鏡的粘膜切除術を考えると、内視鏡で胃の内側からがんの病巣を切除する方法なので、胃の周囲にあるリンパ節は1つも切除することはできない。したがって「リンパ節転移がないこと」、加えて1度にワイヤを引っかけて切除できる(一括切除)大きさであることが、条件になる。

 これに当てはまるのが、胃の一番内側にある粘膜にとどまるがんで、大きさは2センチ以下、さらに潰瘍(かいよう)やその痕跡がないこと、分化型の腺がんといって胃がんの中でもあまりタチの悪くないがんなのである。

 笹子先生によると「粘膜内にとどまるがんの場合、リンパ節転移の危険性は3%ほど、おとなしいがんならばゼロに近い」という。同じ早期がんでも、粘膜下層にまでがんが食い込むと15~20%にリンパ節転移がある。そのため、基本的には内視鏡の適応にはならない。また、潰瘍があると、その下にがんが潜り込んだりして、内視鏡でとることが難しくなる。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆胃壁の構造 胃壁は、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿(しょう)膜下層、漿膜という5つの層からできている。がんは一番内側を覆う粘膜から発生する。

November 10, 2005 10:14 AM | トラックバック (0)

2005年11月09日

2005年11月09日

【第28回】日本の治療切除率83%

「胃がん(1)」

 胃がんは、最も日本人に多いがんの1つ。国立がんセンター中央病院外科部長の笹子三津留先生によると、高齢者の増加もその一因のようだ。胃がんは、高齢になるほどかかりやすい。「1970年以降、胃がんになる人の割合や死亡率は、減少しているのですが、一方で急激に高齢者が増加しています。その結果、依然として日本人が一番多くかかるがんになっているのです」。

 しかし、それが日本のがん治療の進歩を引っ張ってきたともいえる。胃がんを克服するために、早期診断の方法が進歩し、治療の上でも胃の周囲のリンパ節を摘出してがんを徹底的にとる手術法が進歩してきた。摘出するべきリンパ節の位置を示した地図も作られている。その結果、日本では胃がんは「治りやすいがん」の代表に挙げられるまでになったのだ。

 進行した人も早期の人も含めて胃がん全体の5年生存率は7割を越えている。ごく早期に見つかって治療をすれば、95%以上の人が治る。

 笹子先生によると、日本の治癒切除率、つまり手術でいったんは完全にがんが取り切れる人の率は83%にのぼるそうだ。10人手術を受ければ、そのうち8人以上はがんが取り切れるのである。

 これに対して、欧米では胃がんはがんの中でも少ないがん。そのため、早期発見が少なく、胃がんは治りにくいがんの仲間に入っている。「おそらく米国での治癒切除率は6割程度でしょう」と笹子先生は語っている。実は、こうした背景や歴史の違いが、欧米と日本での胃がん治療法の違いにもなっているのである。

 日本では、胃がん治療は「胃の3分の2以上を切除して、胃の周囲のリンパ節(2群まで)をすべて摘出する」定型手術が基本。しかし、今では治るがんはより体にやさしい方法で治そうという方向に進んでいる。その代表が、口から入れた内視鏡で胃がんを切除する内視鏡的粘膜切除術や腹部の小さな切開から腹腔(ふくくう)鏡を挿入してがんを切除する腹腔鏡下手術だ。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆発見のきっかけ 半数は、胃痛や胸焼け、膨満感などで病院を受診し、発見されている。ただし、これはがん周囲にできた炎症や潰瘍(かいよう)による症状。胃がん特有の症状はない。

November 9, 2005 09:58 AM | トラックバック (0)

2005年11月08日

2005年11月08日

【第27回】ドセタキセル→イレッサ

肺がん(8)

 肺の非小細胞がんが再発したり、ほかの抗がん剤が効かない場合の治療薬として、期待されているのがイレッサだ。

 その期待があまりに大きかっただけに、副作用で間質性肺炎が発生。死亡者まで出た時には、社会問題にまでなった。しかし、北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生によると「最近になって、どういう人に効果があるのかが分かってきました」という。

 実際、イレッサは信じられない効果を挙げることがある。「スーパーレスポンダーといって、転移で見つかった肺の非小細胞がんがイレッサをのんで1週間で消えてしまう人もいるのです」。今までの抗がん剤ではあり得なかったことだ。

 では、どういう人にこうした効果が期待できるのか。「非小細胞がんでも腺がんというタイプの肺がんで女性、かつこれまで喫煙経験のない人」だ。この3つの条件がそろうと、5割以上の人に効果がある。ただし、これにはアジア人という前提が付く。

 なぜこういう人に効果があるのかはよく分かっていないが、「ある種の遺伝子変異がある人ではないか」と言われている。そして、イレッサをのみ続けると、ある時点で効かなくなることが多い。これも「次の遺伝子変異が起きているらしい」と益田先生。

 では、男性で喫煙者は絶望なのかというと全く可能性がないわけでもないそうだ。そこで、現在再発、あるいはほかの抗がん剤が効かない場合には、まず効果が明らかなドセタキセル、それがダメならはイレッサという順に使われる。ただし、上の条件に当てはまる女性はドセタキセルの代わりにイレッサという選択もあり得ると益田先生は語っている。

 「イレッサは、決して夢の薬ではありません。間質性肺炎のほか、皮疹(しん)や下痢も起こり得ます。分からない点もまだたくさんあります。しかし、発売から3年、イレッサを服用して1年以上長生きしている患者さんもいます。その効果とデメリットを承知して服用することが必要です」。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆イレッサ 細胞の増殖に関係するEGFR(上皮成長因子の受容体)のチロシンキナーゼの働きを阻害するとみられている。この遺伝子に変異がある人に効きやすいらしい。ただし、欧米人にはあまり効果がない。

November 8, 2005 08:41 AM | トラックバック (0)

2005年11月07日

2005年11月07日

【第26回】のみ薬の抗がん剤、イレッサ

「肺がん(7)」

 肺の非小細胞がんが再発した場合も、今は治療法がある程度確立されている。北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生によると、再発、あるいはそれまでの抗がん剤(シスプラチンとほかの抗がん剤の組み合わせ)では効果が認められなかった場合、「ドセタキセルを使うのが標準的」だそうだ。

 ドセタキセルという抗がん剤が出るまで、再発した非小細胞がんには全く治療法がなかったのだから、これも大きな進歩。益田先生によると、「臨床試験で、ドセタキセルを使うと生存期間が延びることが証明されている」そうだ。

 そして、もう1つ大きな注目を集めているのが、「イレッサ」だ。イレッサは、分子標的治療薬といって、がんの生物学的特性に焦点を当てて攻撃する薬。分かりやすく言うと、がん細胞がどういうメカニズムで増えたり、生存しているのか、そのしくみを分子レベルで研究して生まれた薬だ。従来の抗がん剤は、細胞を無差別に攻撃し、分裂速度の早い細胞がより強くダメージを受けるという特性を利用したもの。そのため、がん細胞だけではなく、ほかの健康な細胞も傷害され、いろいろな副作用が出た。ところが、イレッサはがん細胞だけに的を絞って攻撃する。しかも、のみ薬で家で使うことも可能だ。そのため副作用が少なく、効果の高い薬として大きな期待を集めたのだ。

 ところが、実際に治療に使われるようになると、時に激しい副作用を起こすことも明らかになった。間質性肺炎である。死亡者も出て、「4人に1人に効果があり、100人に1人が副作用で死亡する」といわれた。そのため、一時は使用中止を求める声も出たほどだ。

 しかし、益田先生によると、イレッサによる副作用死は特別ほかの抗がん剤に比べて多いわけではないという。「問題は、手術できる症例や間質性肺炎の発見もできないようなところで、イレッサを使ったことです」。最近になってどういう人に効果があるのかも分かってきた。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆抗がん剤と体力 化学療法にはある程度体力も必要。イレッサを含めて基本的に時に手助けは必要でも身の回りのことは自分ででき、半日以上起きている人が対象。

November 7, 2005 09:46 AM | トラックバック (0)

2005年11月06日

2005年11月06日

【第25回】集学的治療でいろんな分野から検討

「肺がん(6)」

 肺の非小細胞がんで、「手術はできません」と言われたらどうするか。実際には、こういう人の方が多いのだ。そこであきらめてはいけない。

 3a期か3b期で、手術できない場合、つまりがんが肺の外に出て周囲のリンパ節に転移はしているが、まだほかの臓器には転移していない段階。北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生によると、この場合は、放射線と抗がん剤の同時併用療法を行うのが、標準的な治療だそうだ。

 「一般的には、シスプラチンとナベルビンという抗がん剤を併用することが多い」と益田先生。同時に、放射線治療を行う。治療効果が高いと、まれにはここから手術をできるようになる人もいる。手術ができそうだとなったら、放射線の照射量を途中で減らして手術に備える。放射線の量が多いと肺が線維化して手術が難しくなるからだ。

 「この段階では、化学療法を担当する内科医と手術を行う外科医、放射線科の医師が集まって、1人1人の患者さんの状態を見て最適な治療法を検討します。これを集学的治療というのですが、こういうシステムのある病院で治療を受けるのがいいですね」と益田先生。1つの専門分野の医師だけでは、判断が偏ったり、ほかの治療の効果を十分に評価できない可能性もあるからだ。

 ただし、3b期でももう少し進んで片側の肺の半分以上にがんが広がってしまうと、放射線治療は難しくなる。間質性肺炎など合併症が起こりやすく、時にはそれが命取りになる危険もあるからだ。

 このように3b期でも放射線を併用できないケースやほかの臓器に転移した場合は、化学療法が中心になる。場合によっては、転移した部位に放射線を照射することもあるが、これは症状の緩和が目的だ。

 延命効果だけではなく、化学療法で肺がん末期の呼吸困難が楽になることもあるそうだ。「昔は、副作用の割に効果が低かったので進行した非小細胞がんには無治療という選択肢もありました。しかし、今は化学療法をすれば生存期間が倍ぐらいに延びています」。

【医療ジャーナリスト祢津加奈子】

 ◆化学療法 放射線治療を併用できない場合、化学療法はプラチナ製剤と新規抗がん剤の2剤で行うことが多い。これで半数近い人が1年前後生存する。

November 6, 2005 09:37 AM | トラックバック (0)

2005年11月05日

2005年11月05日

【第24回】術後に化学療法で生存率UP

「肺がん(5)」

 非小細胞がん、つまり腺がんや扁平(へんぺい)上皮がん、大細胞がんなど、小細胞がん以外の肺がんと診断された場合には、手術が第1に考えられる。

 北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生によると、「手術できるかどうかの境目はⅢa期」。Ⅲa期は、がんは肺の周囲を覆う胸膜まで広がっているが、リンパ節転移は胸のリンパ節(縦隔リンパ節)にとどまるという段階だ。これ以上がんが広まり、胸水がたまってくると、手術は難しくなる。実際には、手術できる段階で非小細胞がんが見つかる人は、3~4割と限られている。

 3センチ未満のごく早期のがんならば、手術だけで、8割以上の人が治っている。が、それ以上がんが大きかったり、肺を覆う胸膜まで広がるようになると、「手術の後、補助的に化学療法を行った方がいい」と益田先生は話している。ここ数年、米国のがん学会でも、その方が治療効果が高いことが報告されているそうだ。

 「以前は手術後に化学療法をしても5%ぐらいしか治療成績は向上しない、といわれていました。ところが、最近のデータをみると、5年生存率が15%ぐらい高くなっているのです」。この差は大きい。がんの場合、5年生存率は、がんが治った指標とされている。手術だけでは5・5割しか治らなかったのが、7割の人が治れば、大きな違いだ。

 もちろん、胸を開いて肺を摘出する手術をした後に、化学療法をするのは決して楽とはいえない。しかし、今、益田先生は「治療成績をお話して『やりたい』と言う患者さんには、手術後に化学療法を実施しています」と言う。すると、高齢者は別にして8割以上の人が術後の化学療法を希望するそうだ。

 補助療法として欧米では、2種類の抗がん剤を併用するのが基本だが、高齢者や体力がなくてきつい化学療法は難しいという場合には、UFTと言う抗がん剤を使う手もある。これはのみ薬なので入院しないで通院で済むのもメリットだ。

 ◆補助化学療法 欧米ではシスプラチンとナベルビンの併用、カルボプラチンとタキソールの併用効果が報告されている。手術単独より15%ぐらい成績がよい。

November 5, 2005 10:16 AM | トラックバック (0)

2005年11月04日

2005年11月04日

【第23回】再発時には化学療法

「肺がん(4)」

 肺の小細胞がんが再発した場合、どういう治療が可能なのだろうか。北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生は「以前は、再発したらもう治療法はありませんでした。しかし、今は延命を期待できる治療があります」と語っている。

 以前行った化学療法が1度は効いたのに、再発した場合。これは、抗がん剤が効くタイプなので「同じ抗がん剤をもう1度使ってもいいし、別の組み合わせでもいい」そうだ。一方、抗がん剤が効かなくて、治療の最中に再発したり、治療後短期間(3カ月以内)で再発した場合は、かなり厳しい。ほかの抗がん剤を試すことになるが、今はアムルビシンを使うことが多いそうだ。

 しかし、化学療法には副作用がつきまとう。そのつらさが延命効果に引き合うものなのだろうか。益田先生によると、「下痢と白血球の低下などが一番の問題ですが、専門家にとっては手慣れた治療です」と語る。塩酸イリノテカンは、激しい下痢を起こすことがある。これも下痢止めを大量に投与することで、かなり治まるそうだ。白血球の減少に対しては、回復を促す薬がある。

 逆に化学療法には、がんの進行による苦痛を緩和する作用もある。「例えばリンパ節にがんが詰まって、顔がパンパンにはれることがあります。化学療法をするとがんが縮小するので、はれがひくほか、痛みや血たん、がんによる発熱なども治まることが多い」という。また、がんの進行で体重が減少したり、食欲が低下している人でも、それが回復することが少なくない。

 抗がん剤に多い吐き気のコントロールも「新しい吐き気止めが出て、さらに良くなっている」そうだ。

 「中には根負けしてやめる人もいます。でも、効果のある人は効かなくなるまで治療を続ける人がほとんど」だそうだ。ただし、化学療法はある程度体力が維持されていないとできないので、再発時に実際にできる人は3分の2ぐらいという。

 ◆延命期間 再発した場合、無治療だと余命は4カ月前後といわれる。以前、益田先生らが塩酸イリノテカンとエトポシドの組み合わせで再発患者の治療を行った結果、延命期間の中央値は9カ月だった。

November 4, 2005 10:34 AM | トラックバック (0)

2005年11月03日

2005年11月03日

【第22回】日本初の新薬が登場

「肺がん(3)」

 小細胞がんも、がんが片側の肺の外にまで広がり、他の臓器に転移するようになると、進展型と呼ばれる。小細胞がんは、進行が早いので、実際にはこの段階で発見される人も多い。

 北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生によると「この段階では、全身的な効果が期待できる化学療法(抗がん剤による治療)が治療の基本」という。放射線治療は、照射部位にだけしか効果がないので、全身にがんが広がると手に負えないのである。

 抗がん剤は「日本では、塩酸イリノテカンとシスプラチンの併用療法が標準になっている」そうだ。抗がん剤の標準治療は欧米での臨床試験に基づくものが多いのだが、これは日本で初めてその効果が確認された治療法。おかげで、進展型でも半数以上の人が1年以上延命するようになっている。それだけ、と思うかもしれないが、治療をしなければ余命2~3カ月の段階なのである。

 もう1つの朗報は、アムルビシンという新しい抗がん剤が登場したことだ。これは、日本で全合成された抗がん剤で、進展型の患者さんに単独で使っても、半数以上の人が11・7カ月生存するというので、注目された。それならば、ほかの抗がん剤と組み合わせれば、もっと効くのではないか、と専門家は考える。

 益田先生によると「今、シスプラチンと組み合わせた臨床試験が進んでいるところ」だそうだ。さらに、従来のシスプラチンと塩酸イリノテカンの組み合わせとアムルビシンとシスプラチンでどちらがより効果が高いか、という比較試験も進行中だ。

 益田先生は「今の段階では、どちらの組み合わせでも奏効率(がんの大きさが半分以上縮小する割合)は8割以上に上っています。おそらく、延命効果は同等ではないかと思います。治療の上では、選択肢が1つ増えたことが、大きなメリットです」と語っている。

 では、抗がん剤による副作用はどうなのだろうか。

 ◆アムルビシン 抗がん剤は微生物の産物やこれを少し加工したものが多いが、アムルビシンは日本ですべて合成した薬。臨床試験では、単独でも生存期間の中央値(半分の人が生存する期間)は11・7カ月。

November 3, 2005 10:11 AM | トラックバック (0)

2005年11月02日

2005年11月02日

【第21回】放射線と化学療法を同時

「肺がん(2)」

 がんは、手術でとるもの。そう思っている人が多いのではないだろうか。最近はこの常識もだいぶ変わりつつあるが、肺の小細胞がんもその1つ。小細胞がんは、進行が早く、転移を起こしやすい。そのため、手術でとっても目に見えないがんが残り、再発することが多い。そこで、放射線と抗がん剤を組み合わせた治療を行うのが標準治療になっている。

 北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生によると、治療は「限局型」と「進展型」に分けて考えられる。限局型は「がんが片側の肺にとどまり、周囲のリンパ節にだけ転移があるもの」。簡単に言うと、放射線を1度に照射できる範囲に限局したがんという意味だそうだ。胃がんなどでいう早期がん=治るがんとは意味が違うのである。

 この場合は、化学療法(抗がん剤による治療)と放射線治療を同時に行う。どちらかを先にやるより、並行して行う方が成績がいいと証明されたからだ。化学療法は、2種類の抗がん剤(シスプラチンとエトポシド)を4週ごとに4コース行うのがスタンダード。

 同時に、放射線を1日に2回、朝晩1・5グレイずつ、全部で45グレイ照射する。「放射線照射を加えると、化学療法単独の場合より、3年生存率が5%上乗せされる」ことが証明されているそうだ。

 その結果、がんが肉眼的に消滅した場合には、「予防的全脳照射」という放射線治療が行われる。「脳には、血液脳関門という関所があるので、抗がん剤が入りにくいのです。そのため、肺の病巣が消えても、数年後に脳に再発を起こすことがある」のだそうだ。これを防ぐために、あらかじめ脳に放射線を照射しておく。

 こうした治療で、限局型の小細胞がんは、5年生存率が20~25%まで向上している。益田先生は「しっかり治療すれば4人に1人は治るのですから、放射線と化学療法の専門医がいる病院で治療を受けるべきです」と語っている。治る1人に入るためには、適正な治療を受けることが条件だからだ。

 ◆化学療法 シスプラチンは初日だけ、エトポシドは初日から3日間連続して投与する。これが1コース。限局型で発見される人は4割くらい。

November 2, 2005 09:50 AM | トラックバック (0)

2005年11月01日

2005年11月01日

【第20回】早期発見は難しい

「肺がん(1)」

 肺がんは、年々患者数が増加しているにもかかわらず、早期発見の難しいがんだ。男性では、がん死のトップ、女性でも胃がん、大腸がんに次いで3位を占めている。北里大学呼吸器内科教授の益田典幸先生によると「日本では、毎年約6万人が肺がんになり、年間5万人以上が肺がんで命を失っている」そうだ。

 日本人の場合、男性の肺がんは7割、女性でも3割近くが喫煙と関係している。セキやタン、息切れなどの症状で、早期発見できればラッキーで、進行するまでほとんど症状が現れないことが多い。益田先生によると、「進行の早いタイプになると、定期的に検診を受けていても、進行がんで発見されることがある」という。

 肺がん治療を考える時には、まずそのタイプを知る必要がある。肺がんは、小細胞がんとそれ以外の非小細胞がん(腺がん、扁平=へんぺい=上皮がん、大細胞がん)に分けられる。小細胞がんは、たばこと関係の深いがんで、「がん細胞の増殖が早いので、進行が早く、転移しやすいのが特徴」。つまり、がんとしてのタチはあまりいいとは言えない。

 しかし、幸いこのがんには、放射線や抗がん剤が良く効く。そのため、「ごく早期の小細胞がんには、昔は手術をしたこともあるのです。しかし、目に見えないがんが残って再発するケースが多く、今では放射線と化学療法を行うのが世界的な標準治療になっている」そうだ。

 一方、非小細胞がんの方は、小細胞がんに比べれば進行のしかたはゆっくりとしている。そのため、このタイプは可能ならばまず手術が優先して考えられる。

 益田先生は「肺がんは代表的な難治性がん(治りにくいがん)です。昔は肺がん全体の5年生存率はわずか9%と言われていました。しかし、それに比べると今は治療法も進歩し、成績も向上しています。分子レベルの研究成果がようやく治療の現場に届き始め、これから加速度的に治療は進歩していくと思います」と語っている。

 ◆肺がんとたばこ 喫煙と関係が深いのは小細胞がんと扁平上皮がんで、男性ではこのタイプの肺がんの9割以上が喫煙が原因。米国では禁煙が普及した結果、小細胞がんは減る傾向にある。

November 1, 2005 08:59 AM | トラックバック (0)